Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

山で迎える55回目の朝…針ノ木岳

8月20~21日 蓮華岳・針ノ木岳
初めてテントを担いで登った鹿島槍ヶ岳。その途中、柏原新道や稜線から眺めたピラミダルな山容。それが山行上「針ノ木岳」と僕の最初の出会い。あれから7年…ようやく訪ねることが出来ました。

8月20日 蓮華岳
針ノ木岳とは対照的に重量感のある山容を持つ「蓮華岳」。最近は七倉尾根や船窪小屋から眺めることが多かった山。針ノ木峠を境に異なった二つの山の登山起点は「立山黒部アルペンルート」の長野県側起点「扇沢」駅。
そこから第一目標「大沢小屋」へは、自然散策路のような森を歩き出し、何度か小さな沢を渡りながら針ノ木大雪渓がある大沢を目指します。「山を想えば人恋し…」の一節が有名な百瀬さん縁の小屋が「大沢小屋」だと知ったのは針ノ木小屋に着いてからのことでした。
雪の多かった昨シーズンと言えど、この時期になると雪渓を歩ける区間は30分もありません。と言うことで、巻道を歩く訳ですが、ロープや鎖を設置された箇所が数ケ所あり、特に、ノドと呼ばれる箇所の巻道は落石(人的)にも注意が必要でした。
しかし、核心部は峠直下、標識が見えてからのジグザグ登りでしょう。ここは体力ではなく、精神力が問われる登りとなります。
幕営後、蓮華岳を目指します。急な登りもほどなく終わり、山容通りの広い尾根道を歩くと、ポツンポツンとピンクの花が砂礫地に点在…コマクサでした。この時期、まだ咲いていることに驚きましたが、この後、山頂直下の群落には更に驚くことになります。
日本庭園のような稜線の先に山頂が望め、そこからは雲が織り成すモノクロの世界と華やかな高山植物の対比がとても印象的な道です。晴天の下、大展望の稜線を歩くのも夏山の醍醐味でしょうが、蓮華岳は墨絵のような落ち着いた雰囲気がとても似合う山だと思いました。
陽が沈み、月明かりのないテント場にボンヤリと浮かぶマイハウス。聞こえてくるのは小屋の発電機の音。それを子守唄とし深い眠りにつきました。

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これから登る蓮華岳(左)と明日登る針ノ木岳(右奥)
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ブナ林を抜けて 大沢小屋へ
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雪渓取付地点までの巻き道
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山で見るスターマイン…シモツケソウ
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針ノ木大雪渓取付地点
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雪渓に引かれた紅ガラを辿ります
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雲が追いかけてきました
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稜線が見えてきました…ノド
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愛嬌がありますよね…ミヤマコゴメグサ
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素晴らしい群落でした…ミヤマダイモンジソウ
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あ~たまを 雲の う~えにだぁ~し…(笑)
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採掘場のような核心部…ガンバ ガンバ
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船窪小屋から蓮華岳につづく尾根筋…針ノ木峠
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荷揚げのヘリが 下りていきました
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明日登る針ノ木岳に 想いを寄せます
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背後に聳える 剱岳 長次郎谷
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前回歩いた立山連山(雄山・大汝山・富士ノ折立)
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稜線がコマクサ色に染まる 蓮華岳
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厳しい環境で際立つ この繊細な造形美
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日本庭園のような先に待つ 蓮華岳山頂
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高らかに音楽を奏でます…イワギキョウ
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また楽しみながら 帰りましょう
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谷間に響く 雲の協奏曲
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北アルプスのランドタワー…槍ヶ岳見参
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夕方 雲と光のドラマがありました

8月21日 針ノ木岳
前日夕方の予報は当初より悪くなっていたため、フライシートのファスナーを上げる時は「期待と不安」が交差します。あれ?思ったほど悪くなさそう…期待が不安を上回りました。昨日見ることが出来なかった鹿島槍ヶ岳が雲に浮かびます。特徴ある双耳峰の頂は山人生第3幕が開けた場所。
針ノ木岳も最初は急登から始まります。蓮華岳は横に登る感じですが、針ノ木岳は縦に登ります。
山容が異なれば花の植生も異なり、特に、ウサギギクやミヤマダイコンソウの黄色系が目立っていました。やがて、雲の切れ間から朝陽が顔を覗かせます。諦めていた僕にとって大切な1日の御来光。しばらく足が止まりました。
歩く分だけ山頂が近付いてきます。前回、稜線からご対面出来なかった剱岳の東面が見えてくると更に期待が膨らみます。ところが、山頂直下で黒部側から吹き上げる雲に稜線が覆われ始め、出発時刻を誤ったかと思いながら山頂へ。薄らと山頂標識越しに見える立山三山に剱岳。その時、淡いレースに包まれた山頂は、黒部湖から吹き上げてくる風と雲が繰り広げる舞台の特等席となりました。稜線は刻一刻と姿を変える雲の名脇役。爆発的なエネルギーが一瞬のうちに消えていく様はイリュージョン。晴天では決して見ることが出来ない光景に、ただただ山に感謝。素敵なプレゼントをありがとう。
前回歩いた立山連山やこの7年間に歩いた北アルプスの稜線を眺め、健康な身体に再び感謝。また1年、事故なき山行を誓います。これほど立ち去りがたい山頂は珍しく、バディに促されての下山となりました。
下山後は、夏の終わりをトロピカルにいつもの…(笑)

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7年前を思い返す夜明け前…
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今年は山で迎えた大切な日の朝
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岩稜の向こうに岩稜…剱岳
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イエローバンドと呼びましょうか?
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今年はすでに30座を越えました
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ビックウェーブが 北ア北部を襲います
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針ノ木岳と言えばこの景色…黒部湖
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見るもの全てが 雲の物語
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僕の山の原点…白馬三山
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7年かけて歩いてきた稜線…そして頂
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そろそろ物語もエピローグです
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高瀬湖を見ると思い出すのは「船窪小屋」
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名残は尽きませんが 下山の時間です
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朝露が溢れる ミネウスユキソウ
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七倉岳と船窪小屋の青い屋根
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雲海に向かって 下ります
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大きくなりましたね…
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シルバーグレーが素敵な チングルマ
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上段のテント場には4張、下段は3張でした
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気温は夏山でも 空は秋ですね
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針ノ木小屋名物?(笑)… トイレの槍ヶ岳
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次は 峠まで雪渓が続く時に 訪れてみたい
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ここも核心部のひとつ 丸太橋
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素晴らしいプレゼントをありがとう
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今年もいい夏味でした…(笑)

曼陀羅の夏…立山縦走

8月3~6日 富山県立山三山・奥大日岳
昨夏、計画していた立山は天候に恵まれず、山麓にて信仰や史跡、地形など立山について学びました。そのお陰で今回の山行に深みが増したと思えます。梅雨明け後も太平洋高気圧に勢いがない今夏。期待と不安が入り混じり、まずは登山口へ。

8月3日 室堂⇔浄土山~雷鳥沢野営場
観光ルートとして人気の高い立山黒部アルペンルート。自宅から室堂に入るには、富山県側の立山駅が時間的にも経済的にもお得でした。ケーブルカーと高原バスを乗り継いで向かう「室堂」の標高は2,450m。途中の弥陀ヶ原が近付くと車窓からは薬師岳に大日岳。そして、草原の池塘にワタスゲが揺れるのが見えます。やがて剱岳が見え始めると、いやが上にも気分が盛り上がります。とは言え、475mの立山駅から1時間強で約2,000mの標高を上げるため、軽く食事をしたり、荷物の準備をしたりして標高に身体を慣らします。
天気予報から一面ミルキーウェイかと思った室堂は立山連山の稜線に雲がかかっているだけで、高山植物が咲き、伸びやかに広がる草原が我々を出迎えくれました。初日は「浄土山」を周回したあと、雷鳥沢へ向かうため、サブザックに荷物を詰めてからの出発。(大型ザックは駅事務所で預かっていただけます)
石畳調の散策路から登山路へ。雪田を渡ると更に道は傾斜を増し、大きな岩が続く道を花を愛でながら登ることになります。浄土山は北峰と南峰があり、それぞれを緩やかに結ぶ稜線を歩く頃には立山にかかった雲は取れ、明日歩く別山へ続く稜線が綺麗に望めました。立山信仰では浄土山、雄山、別山立山三山と呼び、それぞれ過去、現在、未来を表わしているそうです。
国の重要文化財、日本最古の山小屋「室堂山荘」に立ち寄ってから室堂BTへ。荷物を受け取った後は、みどりが池、みくりが池、血の池、りんどう池や地獄谷と言った観光名所を巡りながら雷鳥沢野営場へ。ネットで有名な階段を下りながら「テントをどこへ張ろうか」と高見から良い物件を探します。日暮れ時、再び、稜線の雲は取れ、少し青味がかった立山連山をテントから眺めます。峰々に囲まれたテント場は涸沢や南竜ヶ馬場でも経験はありますが、こんなにも山の懐の深さを感じるテント場は初めてでした。明日、あの稜線を歩いた後、この景色はどのように変わるのだろうと思いながら、まずは、今の時間を大切にしました。


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初めての地は 立つだけで心が躍ります
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夏山と言えば この組み合わせ
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室堂BTの背景には 3日目に登る奥大日岳
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稜線直下は 火山らしい道となります
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晴天なのに お散歩中でした
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雛と高山植物…どちらがお好みですか?
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明日の山行に思いを寄せます
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過去(浄土山)から未来(別山)へ続く道
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チシマギキョウの紫に涼風を感じます
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2800m 南の展望は…雲でした
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山肌の白さが 立山の特徴でしょうか
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雷鳥沢野営場が遠くに望めます
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ブーケのような…タカネツメクサ
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クルマユリのオレンジが 緑に映えます
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チシマギキョウとは同居しないそうです…イワギキョウ
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御無沙汰でした…タカネバラ
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思わず「エーデルワ~イス」と口ずさんでしまう…ミネウスユキソウ
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室堂BTへの下山路には まだまだ雪が残っていました
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みどり池…室堂を散策するだけでも楽しいですね
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4日間お世話になります 雷鳥沢野営場
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室堂から約1時間のアクセスは とても魅力的
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カラフルなテントにも負けていません
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鰻トッピングばら寿司+ミニうどん 頂きます
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テントサイトから眺める景色…プライスレス
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立山上空を白く染める 11夜

8月4日 雄山~別山
まだ暗い3時頃から出発準備の音が聞こえてくる夏のテントサイト。フライシートから顔を覗かせる瞬間が朝の楽しみ。稜線は雲に覆われていましたが、これは想定内の景色。
雷鳥沢から一ノ越へは室堂BTを経由しないダイレクトルートで向かいます。大走りの分岐点を過ぎると、数度の徒渉があります。下山ルートとして利用する際、増水が予測される場合は室堂BT経由が安全だと思います。また、地図には(迷)マークがあるように視界が悪い場合も避けた方が安全でしょう。
道の両側に咲く高山植物を楽しみながら、静かな山行が続きます。やがて、室堂BTからのルートと合流すれば一ノ越まであと僅か。相変わらず、稜線はベールに包まれていますが、黒部側の中腹は陽が射している様子でした。目印はあるものの、踏み跡がいくつもあり、浮石や石を落とさないように注意しながらの登りが続きます。次第に空が明るくなる中、雄山神社授与所の建物が浮かび上がってきました。山頂3,003mに立つには、雄山神社峰本社の参拝料(500円)が必要になります。まだ若い神主さんから説明を受け、8時丁度に御祈祷が始まりました。山頂で聞く詔。厳かな雰囲気に包まれます。神事の最後、全員が頭を垂れてお祓いを受け終わった瞬間、一条の陽光が山頂を照らします。「立山大権現」から安全登山を約束された気分です。
雄山、大汝山、富士ノ折立。この総称が「立山」。そして、立山の最高峰3,015mは大汝山です。ここには映画「春を背負って」の舞台となった菫小屋。大汝山休憩所があります。屋根越しに剱岳の頂が見えた時、木村監督の2作品が繋がりました。
縦走ルートから外れる富士ノ折立の頂へはルーファイが必要になります。標高は2,999m。剱岳と同じですね。そこから一気に下り、真砂岳へ。時々、視界が晴れ、室堂から雷鳥沢へ続くジオラマ風景が足を止めます。残雪の白と山肌の緑。美しきかな日本の山。
頂で来た道を振り返ると、雄山神社からの連なりがテントサイトから見た景色とリンクし、目前には最後の頂、「別山」が聳え立つように迎えています。夏山の陽射しを受けながらしばし急登が続き、祠の建つ別山の稜線の向こうには今にも隠れそうな剱岳が待っていてくれました。
圧倒的な存在感。破壊的な力強さ。間近で見た剱岳の感想です。
剱御前小舎周辺は登山者で賑わっており、それは雷鳥坂を下る間も続きました。剱岳の人気の高さが窺えます。
テントに戻り、今日歩いた道を眺めると「こんなに歩いたのかなぁ」と思えるほど、楽しい稜線歩きでした。展望は限られていましたが、こうして眺めていると、その一つ一つの頂やルートが思い浮かびます。そして「立山曼荼羅」の世界観を知ってから登って良かったと思うと共に、昨年登れなかった理由がわかった気がします。

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小屋番さんも薦めるルートに期待満載
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ミネズオウがまだ咲く立山の夏
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唯一 慎重に通らねばならなかった箇所
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立山大権現に見つめられているようです
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雄山神社の神主さんが 社に向かいます
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御祈祷の後 雄山山頂から縦走路を望みます
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雲の上の神職…お祓いは感動しました
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雲が晴れると 山肌を飾る雪形が広がります
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みくりが池からりんどう池 そして 地獄谷
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大汝山へ続く稜線は 荒々しい景観
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なだらかな真砂岳の稜線と剱岳…天上界と地獄の境界線
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映画のラストシーンが思い返されました
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本当に「菫小屋」はありました
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富士ノ折立の最高点…道が読めますか?
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雛鳥の勢いがありそうな チシマギキョウ
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思いのほか遠くに見える 真砂岳からの別山
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左から「富士ノ折立」「大汝山」「雄山」
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雷鳥沢野営場から稜線を望む自分が見えそうです
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別山北峰から…剱岳 八ツ峰
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渋滞を起こした…雷鳥の砂浴び(笑)
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下山者よりも登山者が多かった雷鳥
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ミヤマキンポウゲのレモンイエローは甘酸っぱい感じ
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野菜が欲しくなる テントサイトの夜
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夕焼けと思っていいのでしょうか…?
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月夜より明るい 夏のテントサイト

8月5日 奥大日岳
遠征3日目の朝。立山の稜線が綺麗に浮かんでいます。涸沢が3000m峰の揺り籠なら、ここ雷鳥沢はグリーンスタジアム。今日の目的地「奥大日岳」のCTは2時間30分。見た目以上にそのCTは短い感じがします。雷鳥坂の分岐を過ぎ、地獄谷を俯瞰しながら登っていくと、お花畑の木道になります。自然と足取りは軽くなるも、足を止める回数は増えます。剱御前小舎へ続く稜線に出るまで30分。昨日歩いた立山を背景にテント場が小さくなってきました。
ここからしばらくは起伏の少ない稜線トラバース。そして、チングルマやハクサンイチゲ、シナノキンバイなど咲き乱れるフラワーロードとなります。続いて現れるのは、早月尾根を従えた「剱岳」。まだ陽の当たらない山頂は黒々と静まり、別山から眺めた時よりも鋭角です。立山信仰で「地獄の針の山」と畏れていた当時の人々の心境がわかります。
剱岳の反対側は天狗平の広大な緑が広がります。その中を蛇の道のように曲がりくねる高原道路。そしてその向こうには、白山、薬師岳、笠ケ岳、槍穂高連峰裏銀座等、ダイナミックな峰々から嫋やかな峰々までが一望です。
そんな時間を過ごしながら歩いていると、気がつけば眼前に頂が…。2,606m 奥大日岳の三角点に登頂です。奥大日岳の稜線を境に剱岳立山は明暗分かれる世界。ここにも立山曼荼羅の世界観がありました。
奥大日岳の最高点2,611mはルートから少し外れたところにあり、下山時に立ち寄って、ここでも剱岳と対峙。「試練と憧れ」の文字が湧く雲のように浮かんでは消えていきます。
9時前だと言うのに、早くも稜線には雲が湧き始めます。晴れてはいても、まだ夏空にはほど遠いようですね。昼前にはテント場に戻り、昼食後は、お待ちかねの源泉掛け流し温泉へ。小さな露天風呂から眺める雄大な景色。
「いい3日間だったなぁ~」と叫びたくなりました(笑)

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今日は別の角度から 雷鳥沢野営場
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そのまま待っててね…奥大日岳
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いつの日か あの尾根からこちらを眺めたい…早月尾根
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昨日までの道は 今日の思い出
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別山からの御来光は 未来から放たれた「光の道」
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地獄谷を治めるのが浄土山だろうか?
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花好きには堪らない 奥大日岳への道
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太陽を身体全体で受け止める…シナノキンバイ
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凛々しく聳える剱岳
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剱岳とは対照的な薬師岳
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広大な天狗平の大地に大日岳…遠望は白山
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圧巻の景色でした…チングルマ
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池畔を過ぎると 奥大日岳まであと僅か
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全周囲が楽しめる 奥大日岳山頂
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半端なく尖って見える 槍ヶ岳
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剱岳加藤文太郎さんと縁がありますよね
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室堂BTから始まる 大地のキレット
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秋風を思わせるような 夏の空
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足元を飾るフラワーベル…アカモノ
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至る所に ハクサンイチゲのお花畑
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男湯のみの解放感
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2軒目でGet…至福のひととき
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夕陽に染まる富士ノ折立と雄山に迫る入道雲
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最後の宵を飾っていただきました
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テントの灯りも 今夜で最後

8月6日 雷鳥沢~室堂
4日目の朝をテントサイトで迎えるのは、一昨年、荒川三山を周回して以来。その時は、毎日テント装備のザックを担いで山行を続けましたが、今回はベースキャンプ方式だったこと、テントサイトが平坦であったこと、温泉があったこと。様々な好条件と共に不安定ながらも天候に恵まれたことで、充実したテントライフと軽快な山行が出来ました。雷鳥沢野営場は「また訪ねてみたい場所」となりました。
帰途、いきなり始まる石段を辛いと思うのか、ゆっくり時間をかけて別れを惜しむと思うのかは、その人の心次第。僕はこの3日間に歩いた峰々が見送りをしてくれている。そんな心境です。
陽が射すことで、初日とはまた違う顔を魅せてくれた池巡りの後、3日振りに戻った室堂は何だか懐かしく思えました。
バスに乗車する前、最後の余韻をいつものとともに過ごし、下山後もやっぱりいつもの…(笑)

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真夜中の雨で 潤い気味の朝でした
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4日間お世話になったテントのケア中です
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名残は尽きませんが 出発です
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噂通りに登り始めは なかなかの急登です
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また 会う日まで…
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今山行初のフル装備による登り…(笑)
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地獄谷にも オアシスがあるのですね
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ここから眺める立山連山は 美しかったです
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池の色が名前の由来ですよね?…りんどう池
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名前とは違って美しい池塘の風景…血の池
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稜線の陰からそうっと見送っているようですが 半端ない存在感(笑)
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完全に観光客状態…みくりが池
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剱岳は姿を隠してしまいました
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目にやさしい 室堂BT周辺
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立山の名水で作った コーヒーゼリーパフェ
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高原バスは滝見台でスロー運転…称名滝
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全ては ここから始まりました
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そして 全てはここで終わります…(笑)

コマクサロードをゆく…御嶽山(継子岳)

7月16日 岐阜県御嶽山(継子岳)
御嶽山は主峰剣ヶ峰を初めとして、摩利支天山、継母岳等の外輪山の総称となっています。今回はその北端、継子岳を目指して、名湯濁河温泉から入山しました。
 
今日の北・中央アルプスは、午後から雷雨等急変する恐れがあるとの予報。濁河温泉から飛騨頂上を経由して継子岳に登頂し、四ノ池を周回するルートのコースタイムは8時間。このルートは昨年のGWに登っており、森林限界を超えてから五の池小屋までの間、草木谷から吹き上げる風が核心部だと思っています。当然、稜線は風の影響を受けやすく、急変の兆候を感じれば、いち早く森林限界まで下らねばなりません。
御嶽山へ登るルートは今回の小坂口を初め、胡桃島、日和田口、長野県側の開田口、黒沢口、大滝口等があります。ご存じのように剣ヶ峰周辺は立ち入り禁止となっており、二ノ池から北側が山頂部の登山コースとなります。
御嶽信仰の古道は随所に祠や鐘などが見受けられ、木道と石畳が続く登山道をほぼ直線的に登ります。やがて、シラビソやトウヒの美しい森となり、ダケカンバが混じりだすと空が見え始め、森林限界が近いことがわかります。8合目を過ぎてほぼ直角に曲がるとハイマツロードの始まり。冬道と夏道の違いを確認しながら進みます。谷から吹き上げる風を受け始め、ザレた道になれば五の池小屋が見え始めます。その手前、コマクサの群生地があり、朝陽を受けた花が小さく輝いていました。御嶽山には最高峰以外に長野県側に王滝頂上、開田頂上、そして岐阜県側の飛騨頂上と呼ばれる場所があり、祠が建っています。(開田頂上は不明)
飛騨頂上から継子岳へは四ノ池を周回するルートとなります。我々は時計回りとしましたが、継子岳の岩場を上下どちらで通過するか、また、ルート上の登り返しをどうするかが判断ポイントかと思います。
時折、雲が稜線や剣ヶ峰を隠しますが、周囲の視界と較べ、御嶽山の天候は安定していました。継子岳山頂周辺のコマクサロード以外にも高山植物が咲き乱れ、荒涼とした世界でも育つ自然の力をじっくりと感じることができました。周回最後に眺めた三ノ池越しの剣ヶ峰。今は静かなこの世界に起きた悲劇を思い起こさずにはおれませんが「安全な登山を続けること」がご供養になると思います。
五の池小屋に戻ると西側はミルキーウェイの世界。簡単に昼食を済ませ、下山の途につきます。8合目を過ぎたあたりから薄日の射す天気になり、下山する頃には夏の昼下がり。この状況の中、森林限界を超えた時の天候を想像して行動しなければならないことをあらためて感じながら、前回の分を取り戻そうと、いつもの…(笑)

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ヘルメットを持参して 出発
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葉が一枚なので…イチヨウラン
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登山道を整備された方に感謝
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雲の上から 何を望まれるのか…
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まずは最初の コマクサロード
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瑠璃色に輝く三ノ池と剣ヶ峰
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四ノ池は高層湿原になっています
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元気に育ってね
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チングルマの緑が 目を惹きます
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高天原越しに アルマヤ天・剣ヶ峰・摩利支天山
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針の山を越えねば 極楽はなし…
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山上の極楽に咲く 蓮色の女王
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コマクサロード2号線…踏み荒し禁止
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いつの日か あの頂に 還るぞ
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コマクサロード3号線…継子二峰へ続く道
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コマクサだけが花ではない…ミヤマダイコンソウ
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でも コマクサロードの主役は私です…
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継子二峰南斜面の岩場…横バージョン
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周回ルートの最鞍部…四ノ池から幻の大滝へ
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ハクサンイチゲの主張…(笑)
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自然は厳しくも美しい…三ノ池
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アオノツガザクラロードを過ぎれば 五の池小屋
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下山が待ち遠しい…(笑)
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一つ一つが手作りの山バッチ
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女王の花色にも負けない 今日のいつもの…

盛者必衰の理をあらはす…天女花

7月10日 奈良県八経ヶ岳

国の天然記念物に指定されている「天川村のオオヤマレンゲ自生地」。天女の羽衣を表すのか、清楚なこの白い花を中国語で書くと「天女花」。ちょうど見頃を迎えた時に訪ねて来られた千葉県の山友をご案内して、近畿最高峰「八経ケ岳」に向かいました。

タイタン尾根登山口?90番ポストから先は夜間(午後6時~午前6時)の通行規制がされていました。6時開門と同時に通過し、登山口の行者還トンネル東口へは一番乗り。管理人さんから不安定な空模様であるが故の心得を得てから、2年3ヶ月振りの入山となりました。まずは大峯奥駈道の稜線を目指します。今日は安定している午前中に下山開始をしたく、谷コースは利用せず、往復共に尾根コースとしました。
曇り空とは言え、そこは関西の7月。朝露のような汗が全身を覆います^^; 稜線の奥駈道に立つと風の便りを受けてクールダウン。そこからしばらくは、時折、陽が射す苔の林を進みます。やがて、バイケイソウが咲く九十九折の登りが始まり、第二展望地を過ぎれば弥山小屋まであと僅か。上空には青空が見え隠れしてきました。
この青空を大切にしたく、まずは自生地へと「八経ケ岳」に向かいます。一旦下った後、苔の大海原を見ながら登り返すと出迎える鹿除けネットが自生地の玄関口。
背の丈を超える中を縫うようにして進みます。オオヤマレンゲは花びらが散るのではなく、その白い花弁全体が茶色に染まっていきます。そのため、満開のままドライフラワーのようになった花やこれから咲こうとする純白の花弁。そして、やや緑かかった固い蕾などがひとつの株に混在する様子に僕は、平家物語の冒頭を思い起こします。
天女の舞をたっぷりと楽しんだ後は最後のひと登りで1915m 近畿最高峰「八経ヶ岳」に登頂です♪今日の空模様は、熊野から吉野へと続く奥駈道を見渡すことは出来ませんが、今、歩いてきた奥駈道を振り返ることは出来ました(^^)
小屋に戻った後、弥山山頂にお詣り。そして最後にいつもテントを張る場所でランチタイム。天女花の白さに負けじと今度は緑の絨毯が食事をする手を止めます。
11時45分 下山開始。とその時、大粒の雨が ザァー…。トイレの軒下をお借りし、雨具の準備をしてから出発。助かりました(^^)
時々、雷鳴が響く中、道は小川から沢になり、沼地は池となり、段差のある箇所では滝となっています。雨によって一瞬で姿を変える森を見ることが出来ました。
第56番靡 石休宿跡で修験者の装いをした集団とすれ違いました。靡で彼らが吹く法螺貝の音は雨で霞んだ森を貫き、般若心経の読経が梢を揺らします。少し離れた場所で窺っていた私達までが浄化された思いです。
読経が終わる頃には雨も上がり、更に綺麗に洗われた緑を楽しみながらの下山となりました。
下山後は、温泉、夕食、お見送り準備と言うことで、いつものは、ひと休み…(笑)

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梅雨と言えば 紫陽花でしょうね
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ハートのエースは出ているでしょうか?
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笹原が広がると まもなく奥駈道に合流
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山という漢字はこれが手本?…鉄山
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昨夜の雨を受けて 瑞々しい苔たち
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シダ類の波が そよ風を緑に染めます
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この時期 意外と花が少ない奥駈道…バイケイソウ
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この辺りの森歩きが 身体と心にやさしい
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大木の幹に育ってます…オトギリソウ
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我々の周りを飛び回っていました…ルリビタキ?
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立ち枯れと三角錐八経ヶ岳のイメージ
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誰の寝床になるのでしょうか…
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そんな見つめられると手が止まる…オオヤマレンゲ
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次の主役が 出番を待ちます
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外側3枚は花弁ではなく「がく片」…創造主に感謝
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熊野へ続く道は…黄泉への道ではありません(^^)
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弥山小屋とトンボ
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天女が舞う 花道
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何を語るのか…天女花
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苔の大海原の向こうには 人が入ってはいけない世界…
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新芽と呼べばよいのでしょうか?
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いつもより緑が映える テントサイト
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この時間は 大切にしたいと思います
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時には こんな山行も いとをかし
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前夜 自宅にて いつもの…(笑)

八ケ岳東稜…ウルップソウを訪ねて

7月2日 長野県横岳(三叉峰)
ウルップソウ…本州では白馬岳、雪倉岳、硫黄岳(八ヶ岳)とここ横岳にのみ咲く紫色の花。花のガイド本を手にし、まずはその名前に惹かれ、次は、目立つ姿とその色。初めて出逢ったのは、開花時期が終わった8月上旬の白馬岳。雪田の縁に一株だけ咲いていました。ウルップソウより少し早く咲くツクモグサも白馬岳と横岳周辺のみ生育しており、どちらかと言うと、こちらの方が人気者。夏の花便りが聞こえ始めた八ヶ岳。大好きな杣添尾根で逢いに行きました。

先週、このブログで紹介された杣添尾根。曇り空の今日、6時過ぎに登山口に着いた時は3台の先客。雨雲レーダーで天候を確認しながら車中停滞をし、6時45分に出発しました。山麓の雑木林を進むと、時折、強風が駆け降ります。雲に隠れた稜線に不安を感じながらも「雨さえ降らねば…」と静かな八ヶ岳の森を登り始めます。苔たちは生き生きとし、ひと周りも大きくなった感じ。シラビソの森を歩いていると突然、甘い香りが漂い、また、我々の足音を打ち消すほどの囀りが森に響き渡ります。天からの潤いか森の潤いか…八ヶ岳東稜はこんな日が丁度いい。
冬道の分岐点から始まるダケカンバのトラバース道。山頂直下にあるハイマツの海へと続く並木道。残雪で遅れたバイケイソウとダケカンバの新芽が季節を春へと巻き戻します。冬道に合流するとハイマツの海。麓の町が明るく見えるのは、半年前、凍てつく寒さの中登った時と同じ。違うのは、今日は稜線まで登ること…。
三叉峰…雲と風が通りすぎる三叉路。今日は長袖を一枚羽織っても肌寒い、花冷えの日です^^; 展望は先週投稿した方にお任せし(笑)、今日の目的、夏花と対話をします。南八ヶ岳の岩稜帯を覆い隠す花の絨毯は、展望がなくても遜色はありません。
季節を感じる出来事は人それぞれお持ちでしょうが、僕にとって山に咲く花は、四季折々を感じることができる大切な存在。そんな夏の扉を開いてくれる門番が「ウルップソウ」です。
例え照り付ける陽射しがなくても、風が強くて長袖を羽織っても、今日が僕にとって「2017年の夏山開き」。
下山後は、いつものお店でいつもの…あぁ、八ヶ岳…(笑)

追記)杣添尾根の登山口に入ってすぐ木橋を渡ったところに、手摺の付いた金属製の階段があります。上から3段目の踏み板は片流れになっており、しかも、谷側へ傾いています。下山時(特に、雨に濡れた時)は手摺をしっかりと持ち、慎重に下りる必要があります。

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厚い雲が東稜を隠します
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冬 真っ赤だったケショウヤナギは 萌黄色
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杣添尾根の玄関口ですね
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足元の苔を楽しむのが 前半の楽しみ
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適度な標識が 静かな山歩きを守ります
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時間が止まったような世界観…ナルコユリ
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「苔の万歳三唱の図」…(笑)
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笠雲が 雪のようです
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冬道の分岐点…背景は 金峰山方面
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八ケ岳のコイワカガミは苔が似合う(^^)
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ダケカンバの並木道から東面
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この日 一番の視界…^^;
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杣添尾根冬ルートを振り返る…今冬こそ
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ハイマツで隠れん坊…キバナシャクナゲ
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これぞ 夏花! ミヤマシオガマ
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岩と共に生きる クモマナズナ
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リーフパイのような葉っぱ チョウノスケソウ
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花の競演が楽しめるのが 南八ケ岳の稜線
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曇り空でも光沢のある白.‥ハクサンイチゲ
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後ろ姿が素敵? ツクモグサ
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力強さと愛嬌を備え持つ ウルップソウが好き
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チョウノスケソウは花弁以外でも魅力的です
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バイケイソウを見ると 大峯奥駈道を思い出します
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八ケ岳東稜グラデーション
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本当は前日に食べたものを載せたかった いつもの…(笑)

車で登る遠征山行…週末2day's

梅雨真っ只中の週末。こんな時は空模様を窺いながらショートコースで登り下り。山頂近くまで車で登って午前中に下山をし、午後からはドライブ観光の週末2day's。

6月24日 岐阜県三方岩岳
白山白川郷ホワイトロード(旧白山スーパー林道)を利用し、三方岩岳登山口へ。ここから山頂まで片道1時間ほどで登れます。今年開通40周年を迎えたホワイトロードは石川県白山市岐阜県白川村を結ぶ全長33.3㎞の有料道路。今回は世界遺産白川郷」からの片道利用で山行とドライブを楽しみました。
三方岩岳は飛騨岩(岐阜県側)、越中岩(富山県側)、加賀岩(石川県側)の岩壁が名前の由来になっており、ホワイトロードから見上げる山容も特徴のあるものでした。しかし、登山道に危険な箇所はなく、足元には「ゴゼンタチバナ」「ミツバオウレン」「マイヅルソウ」、見上げれば「タムシバ」「ナナカマド」の白い花が、駐車場からのホワイトロードを引き継ぎます。笈ヶ岳~大門山の特徴ある稜線を背に登ること一汗、石川県側の展望が開けた途端に本日のお目当て「白山」がやや霞み調に望めました。更に、緩やかに登ること一汗。少し開けた山頂に到着。全体に霞んでいるため、遠望はありませんが、先ほどの山に加え、籾糠山、猿ヶ馬場山の飛騨高地など全周囲の展望が楽しめました。
心地よい風に火照った身体を冷ました後、次なる課題に向け(笑)、山頂を後にしました。
下山後は、素敵なBGMとともに いつもの…(笑)

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ホワイトロードから見上げる三方岩岳
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駐車場脇に一輪 ハクサンチドリ
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夏の陽射しが似合う オオカメノキ
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ハート型の葉が可愛い マイヅルソウ
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定番中の定番 ゴゼンタチバナ
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ホワイティ三種(^^) マイヅルソウ・ゴゼンタチバナ・ツマトリソウ
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オシベが花火のような ツマトリソウ
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力強い木が 陽射しを和らげます
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清涼感が溢れるタムシバの白さ
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振り返ると 笈ヶ岳~大門山の稜線
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コイワカガミも最盛期を迎えていました
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これぞ鈴なり サラサドウダン
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山頂から ホワイトロードを眼下に…
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白山は やはり白かった
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これからが楽しみ マイヅルソウ
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落差86m…ふくべ大滝…ホワイトロードより
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日本の滝百選に選ばれた「姥ヶ滝」…ホワイトロードより
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世界遺産白川郷」…城跡展望台より
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飛騨りんごがずっしりのいつもの…美味(笑)

6月25日 富山県白木峰
標高1,596mでありながら、複雑な気象条件が影響し、草原のような山稜に池塘や湿原植物が広がる桃源郷…それが「白木峰」。10㎞ほどの林道を抜けた8合目登山口から山頂までは1時間程度。そこからは整備された木道を楽しみます。
移動性低気圧の通過と山行時刻を合わせて、霧雨状態の登山口を出発。山頂直下までは樹林帯のため、ミストの森を歩くようです。しかし、明け方までの雨で地面は濡れており、特に木の根や踏み石には注意が必要でした。今日も足元にはミツガシワやマイヅルソウが小さく揺れ、タニウツギのピンクがミストの森に一際光っていました。
樹林帯を抜けたところで雨も上がり、雫に頭を垂れたニッコウキスゲが数輪、出迎えてくれます。稜線から山頂までは数分。周囲は真っ白なベールに包まれていますが、日本海から能登半島が描かれた山頂案内板は、ここが富山県であることを示していました。
山頂から小屋の分岐点まで下ると、池塘を巡る木道の始まり。緩やかにアップダウンを繰り返しながら、湿原の一本道を進みます。ニッコウキスゲが満開になった時を想像し、薄紫色したギボウシの群生に日本庭園を感じ、透き通るような白いユキザサの花に目を奪われる。笹薮に覆われたこの稜線に木道を整備された先人に感謝をしながら先へ進むと、本日のお目当て「ワタスゲ」の登場。ミルキーウェイの世界に揺れる白い穂は、幻想的であり、童話の舞台に紛れ込んだ感じです。この天気だからこその景色がここにはありました。まさに「一期一会」です。
木道の終着点「浮島の池」。時折、自然界の創造主は見事な作品を私たちに披露してくれます。しばらくの時間、私たちだけでこの桃源郷を楽しめたのは、今回の遠征で最も印象に残る時間でした。次回は展望を楽しめる天候に訪れ、この素晴らしい日を、思い出したいと思います。
下山後は、雨に濡れる越中八尾を訪ね、本日最初の珈琲と一緒にいつもの…(笑)

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最初の15分は 急登が続きます
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アカモノの葉が 雨に光っています
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少し寒そうな ウラジオヨウラク
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梅雨らしい色合い…ギボウシ
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色の濃淡が楽しめました タニウツギ
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山頂へ続く木道は 不思議の国への道か?
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この花が満開になると夏ですね ニッコウキスゲ
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白木峰は ここにあります
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池塘への玄関口
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丸まった葉が特徴の イワイチョウ
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雨に濡れ いつもより下向き加減の コイワカガミ
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名前の通りの花穂 ワタスゲ
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ミルキーな世界だからこそ 映えます
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白いベールが取れた日に 再訪を誓う…
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池塘とワタスゲとミルキーウェイ…梅雨の絶景トライアングル(笑)
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今日のニッコウキスゲは まだ脇役です
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アザミ…これも咲くと夏ですね
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ユキザサの花は 白い線香花火のようです
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唯一花芽が出ていました コバイケイソウ
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浮島の池…素晴らしいの一言
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池の周りに咲くワタズゲは 天使のようです
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今日の出会いに感謝
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今年のお初 チングルマ
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雨が降らねば 梅雨の山行も 良いものです
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遠征終了間際にしてようやくいつもの…(笑)

梅雨の晴れ間…紅美人を訪ねて

6月9日 奈良県学能堂山
先週梅雨入りをした関西地方。自宅近くの山で「ベニバナヤマシャクヤク」が見頃を迎えていることを知り、奈良県側から入山。
「学能堂山」は三重県奈良県の県境にある山で三重県では「岳の洞山」と書きます。かつて山頂付近に学問の神様・文殊菩薩を祀られていたのが山名の由来らしく、登山道では「学能堂」と案内されていました。
登山口は霧氷で有名な三峰山登山口の手前、自宅から40分程で到着。しばらく林道でウォーミングアップした後、植林地の登山道を進みます。倒木の多い沢筋はまるで障害物レースのようですが、次第に急登へと変わります。三峰山北尾根と合流する「コスマ峠」から山頂まで「白土山」「東俣山」の2つのピークを越える縦走路となり、「学能堂山」を含め、これらピークは地形図に記載がない、言わば、無名山(笑)
木漏れ日が照らす登山道は思ったより蒸し暑くなく、急登も汗をかくことなく登りきれます。なだらか山頂へ続く最後の急登も、半ばを過ぎると視界を遮るものがなくなり、全周囲の展望。そんな中、挨拶代わりに一輪のベニバナヤマシャクヤクが出迎えてくれました。
山頂手前の東側斜面に見頃を迎えたベニバナヤマシャクヤクが広がっており、緑の中からすっと立ち上がり、風に揺れるその姿は正しく「紅美人」。
山頂ではおらが山の「尼ヶ岳」や室生火山群の名峰たち、ピラミダルな高見山に三峰山から局ヶ岳へと続く縦走路。県境尾根に相応しく、三重県奈良県の山々が一望です。霞みがかかっていたものの、思わぬ山頂からの展望を楽しみながら一杯の時間。自宅を出て2時間半で味わえる至福の場所となりました。
山は名前ではなく、ピークでもなく、高さでもない。「山に登らせてもらっている幸せ」をあらためて感じた山行でした。
下山後は、いったん自宅に戻ってリセットしてから、いつもの…(笑)

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ヤマボウシが初夏の光を照らします
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清涼感たっぷり…ウツギの白い花
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林道の終点 ここから登山道へ
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林床の葉が 鏡のように光ります
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新緑の季節から梅雨の晴れ間へ…三峰山
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展望地から望む 学能堂山
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最後の一咲でした モチツヅジ
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木陰に一咲 レンゲツツジ
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最後の登りを振り返れば…
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ベニバナヤマシャクヤクとは初めまして…
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咲く間際の姿も 愛らしい
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立てば芍薬とは このことか…
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花脈が美しく浮かび上がっていました
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もう少し 花を楽しめそうです
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関西のマッターホルン 霧氷で有名な「高見山
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伊勢の名峰「局ヶ岳」は南伊勢の槍ヶ岳
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おらが山「尼ヶ岳」と大洞山(左)
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山名が異なるのは 地元の方に愛されている証
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西側に広がる 山のグラデーション
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室生火山群からおらが山…中央は自宅方面
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美しき木漏れ日の道
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林床に浮かぶ フタリシズカ
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フタリシズカに呼ばれて出会えました…エビネ
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ヒメシャラのベンチは 一人掛け(^^)
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初物のチェリーで いつもの…(笑)