ホーム解禁…女王と紅の羊たち
10月30日 三重県竜ヶ岳
蛭休みだったホーム鈴鹿。晴れ予報に期待しながら、今週末は混雑が予測される駐車場に向かいました。
ホームが再開されると季節は秋本番。ところが、今年はようやく朝晩が秋らしくなってきた程度で、紅葉も遅れ気味。天候と所用でひと月以上も山行から離れており、慣らし程度の山と思っていましたが、平日の晴れと言うことで、週末には登れない人気の竜ヶ岳に決めました。
ここは開放的な稜線「遠足尾根」を楽しめることから、近年は季節を問わず人気が高く、特に、シロヤシオの咲く頃や紅葉が始まると大勢の登山者で賑わいます。また、冬になれば関西屈指のスノーシュールートは、時には登頂を拒む難コースにもなります。この時期、牧歌的な景色を楽しめる山頂直下は、白い羊と称されるシロヤシオが紅の羊となり、谷を駆け抜けます。四季折々、訪ねる人に違う表情を魅せる竜ヶ岳は、ホームの中でも変化に富んだ山です。
台風の影響を心配しましたが、林道や登山道に倒木はなく、青空を背にした女王を目指し、植林帯の急登と向き合います。支尾根にのると、頭上を覆っていた針葉樹は広葉樹となり、稜線と斜面は昼と夜の境界線に見えます。昨年の11月中旬、このあたりの紅葉は見頃を迎えていました。今は少し色づき始めた程度ですが、台風の影響か、葉を落とした木々も多くあります。
アップダウンやトラバースを経て、ロープの張った痩せ尾根区間を過ぎると、尾根の名前に相応しい「大人の遠足気分」が味わえるルートの始まりです。
前回ここを訪ねたのは2月。山仲間、バンビー4の冬遠足。今年は雪不足で真っ白な女王とは成りませんでした。今は、ちょっと秋色になった女王の頂が稜線の向こうに見えています。
ここから女王の下へは、アセビの庭園やシロヤシオの林、天に続く笹原の一本道など、移り行く季節を楽しむかの如く、素敵なプロムナードを進みます。昨日の雨の影響か、朝、自宅周辺は濃い霧に包まれていました。今も山麓の町並みは霞んで見え、伊勢湾の海岸線も光の中に浮かんでいます。
気の早いシロヤシロが「紅一点」と言わんばかりに仲間の林で色付き、際立っていました。斜面一帯が染まる紅葉は見事ですが、オンリーワンの紅葉も目を引きます。そんな秋色とは対照的に、濃い緑色の葉を陽光に照らすアセビの若木。誰かが手入れをしているわけでもないのに、その配置は日本庭園を思わせます。年々、泥濘度合が進み、歩きにくくなる直登を終えると、金山尾根分岐。周回する場合に利用するルートのひとつです。ただ個人的には、登りと下りで表情が異なる遠足尾根のピストンをお勧めします。
近付きそうで近付かない女王。それでも、頂部分が覗いていた最初とは違い、その姿を現す毎に奥深さを増していきます。蛇谷に向かって流れるように折り重なった斜面はしなやかで、見る者の心に安心感を呼び起こします。気品に溢れたその表情は、いつ見ても「鈴鹿の女王」。
山頂上空だけ雲が沸き、この一帯だけが陰となるのは「竜ヶ岳あるある(笑)」。時々、雲間から現れる陽射しが斜面を照らすと、まるで命を吹き込まれたかのように紅の羊が駈け抜けます。次々と谷を駈け上っては、遠足尾根を越えていく羊たち。そして、雲に覆われて陰になれば、動きがピタッと止まります。そんな寓話の世界がここに広がります。
山頂は思った以上の賑わい。風も穏やかでそれぞれが昼食を楽しんでいる様子でした。我々はいつもの場所へと移動し、女王と向き合いながらのランチタイム。展望よりも…「We LOVE 女王」です。
ホームを初め、関西周辺の秋はこれから。そんな思いを抱きながら、いつもの場所に向かいます。
下山後は、ハロウィン仕様に一瞬心が動いたものの、定番でいつもの…(笑)
いつ見てもワクワクする稜線…車中からの遠足尾根
第1ポイント…岩山の展望台
木洩れ日が優しい 冬枯れ風な「秋の稜線」
下部は枯れていました…トリカブト
さて 遠足気分の始まりです
ここで お月見をしたい気持ちになります
緑のグラデーション…もうひとつの秋景色
紅葉を先取り…シロヤシオ
あの登りが遠足尾根の核心部
核心部から振り返れば ちょうど良い 休憩ポイント
秋の雲とは思えない…10月30日の空
羊を見守る貴方は…竜の羊飼いか…
蛇谷へ下りて行く 紅の羊たち
派手さはないが 心を打つ 関西の秋
小高い丘を乗り越えて…
羊が一匹、羊が二匹…zzz
陽射しとともに振り返る…登頂がまた遠くなる…(笑)
今日の出逢いは…一期一会
さて 昼食場所に向かいましょう…
この辺りから望む姿が 一番美しいと思う
次は 雪の頂を 魅せてください
日本の秋は 素敵ですね
結構 気に入っています…アセビ庭園
ようやく 秋らしい空に なってきました
秋の大人をイメージしたいつもの…(笑)
秋と夏が交差する…奥秩父テントライフ
9月14~15日 山梨県金峰山、瑞牆山
16日の天気に確証が持てず、今回も出発当日に山行計画を変更。各地の登山口では早々と満車になった情報が届き、若干の不安を抱きながら駐車場に向かいました。
9月14日
急きょ予定を変更したとは言え、富士見平で幕営し、金峰山と瑞牆山を訪ねる計画を立てたのは3年以上前。登山口から小屋まで約1時間で着くこと。南アルプスの大展望が楽しめること。そして、初めての山域だということが魅力でした。
前夜、心配していた駐車場は、出発時(6時)でも半分に満たない状況。秋を思わす、ひんやりと透き通った空気。気温は13℃。それでも登り始めれば、じんわりと汗ばむのは夏の終わり…。
樹林帯の緩やかな登りが変化を見せ始め、林道を横切った後も、しばらくは登りが続きます。踏み跡がいくつも分かれ、目印となるテープも少ないことから最初は戸惑いましたが、結局、道は繋がっており、歩きやすい道を進むのが正解のようです。頭上を覆う広葉樹は夏から秋へと衣替えの途中で、まるで新緑を思わす瑞々しい色を発し、やがて本格的な秋を迎えたこの森の光景に思いを馳せます。
前方に尾根らしいシルエットが見え、そして、忽然と現れる「瑞牆山」の岩峰群。イタリア南部チロル地方のドロミテ山塊を彷彿させる一瞬です。
茶色くなった葉にも関わらず、まだ大きな黄色い花を付けているマルバダケブキが見えると「富士見平」。その開けた地に建つ「富士見平小屋」からは樹間に富士山が顔を覗かせていました。
鳥のさえずりが響く朝の森。その緑濃い中に、人工色のテントがポツンポツンと点在しています。人通りの少ない奥か、小屋に近い手前かは迷うところですが、奥に行くほど下り坂になっていることから、小屋近くに張りました。
ここから金峰山までのCTは往復6時間20分。荷物を詰め替えて出発です。
最初のポイント「大日小屋」までは、苔の森を横目に緩やかな登り下りを繰り返す「横八丁」と呼ばれる道。次のポイント「大日岩」へは「縦八丁」と呼ばれる直登。その後は、再び、苔の森歩きとなり、3連休の初日とは思えない静かな山行が続きます。地図から想像できるように、前半は樹林帯と長いお付き合い。最終ポイント「砂払ノ頭」で森林限界を迎え、景色は一変します。まだ見えぬ山頂へと続く稜線に富士山、南アルプス、中央アルプス、八ヶ岳へ続く大展望。今日は湿った空気の影響か、見事な雲海が眼下に広がり、大海原に浮かぶ島々のごとく、峰々の稜線が続きます。ただし、その影響は蒸し暑さも呼び起こし、夏に戻った感じです。
岩峰を通り過ぎる度に全身運動を求められ、照り付ける太陽は容易に体力と気力を奪います。遠くからも目立つ金峰山のシンボル「五丈岩」。歩いた分だけ近付いているはずですが、なかなか距離が縮まらない感じです。それを癒してくれるのが、雲海に浮かぶ「南アルプス」。甲斐駒ヶ岳から聖岳まで一望です。丁度、荒川三山を周る番組を観たところで、自分達が行った山行と今見る三山がオーバーラップします。
山頂へ続く最後の登りの手前に広がる平坦地を境にして鎮座する「五丈岩」。ここから見ると、背が低くなった印象です。まずは、そのまま山頂に向かい、その途中で振り返れば、よく見かける光景。
「金峰山に来たんだ」と実感しました。
五丈岩前広場には大勢の登山者が休憩されていました。富士見平小屋からのルートでは、これほどの人は登っていなかったため、別ルートの方が人気なのでしょう。しかし、そんな賑やかな雰囲気にも窮屈さを感じない広々とした世界でした。
下山を始める頃には山頂部分は姿を隠し、樹林帯に入ってからは雲海ゾーンに入った感じです。大日岩辺りで雲を抜け、若干、オレンジ色を帯びた午後の森。ほぼ最終組となった私達ですが、森と同化し、その静けさを楽しみます。そして、山頂以上に賑わいを見せているテントサイトに戻り、まずは心と身体をリフレッシュ。
夕暮れを迎え、次第に濃くなる樹間を眺めながら、夕食の支度に取り掛かります。昼間の暑さは暗闇に溶け、羽織るものが必要なテントサイト。久しぶりに歩いた疲れと共にテントライフを楽しみます。
次の世界に続く 扉が待っています
明日はあの頂から どんな景色が待っているのだろう
森に溶け込むような建物…幟が目印(笑)
名前のとおりです…富士見平小屋
小屋番さんはお留守…その代わりに ゴジュウカラ
視界が通れば 南アルプス…稜線歩きが待ち遠しい
苔に寄り添う 秋の印
誰もが足を止めて 眺めてしまいます…縦八丁
どう表現すればよいのでしょう…大日岩
道は再び 苔の森
あの稜線を歩くことは あるのだろうか…間ノ岳~北岳
あの稜線は歩きました…赤岳~天狗岳
打ち寄せる大波 そして 彼方へ続く南ア諸島
今日の雲海は 泳げそうな勢い(笑)
思い出の頂「荒川三山」そして 未踏の頂「聖岳」
大海原に浮かぶ 火山島のようです
緑と岩の稜線…五丈岩は遠い…
振り返れば 鋭角な稜線が続いていました
五丈岩はこの角度が好きかなぁ…
本当に今日の雲海は 美しかった
そろそろ展望とも お別れです
五丈岩だけが金峰山ではないと 語りかけられました
雲に向かって 下ります
ようやく 花と出会えました…アキノキリンソウ
初めての奥秩父 森の中のテントライフ…
9月15日
昨夜から未明にかけて予想外の雨。今も時折、フライシートを叩く滴の音。午前中の予報は晴れマークだったため、心配はしていませんが、テントの片付けまでには乾いていることを願います。森の中にあるテントサイトの朝は遅く、5時近くになっても灯りが必要です。出発時には何とか自然光で歩けましたが、この暗さにも秋の訪れを感じます。
瑞牆山へは小屋の左側に登山道が続いています。雨で滑りやすくなった道は、やがて、天鳥川に向かって下り始め、同時に考えることは「帰りは登り返しか… (;’∀’) 」
飛び石で渡渉すると、目の前には真っ二つに割れたように見える「桃太郎岩」がその巨体を視界一杯に立ち塞がります。
「瑞牆山」と言えば、天を突くような花崗岩の岩峰が稜線付近に連なるイメージ。13年前の夏、自然公園キャンプ場から初めて眺めた時は「歩けるの?」と思いました。昨日、その頂きへのルートはどうなっているのか調べてみると「歩きやすい整備された道」とのレポ。であれば、一般道でもあり、これまでの経験上、対処できるだろう思っていました。確かに、人が多く通るのか荒れた道ではありません。それでも、ホーム鈴鹿の本谷を歩く感じの箇所もあり、ここを一般道と紹介して良いのかと感じます。小屋には、子供用ヘルメット無料貸出と案内していましたが、「ヘルメットで頭を守れてもなぁ…」は個人の意見。
滑りやすい丸太橋、前に誰も居ないと必要なルーファイ技術。一部とは言え、北穂南稜より困難な鎖場。登山道はその標高と合わせるかのように技術が求められます。
天を貫く岩峰に陽が当たり、一段と白く輝いているのが梢越しに見えました。後で知りましたが、大ヤスリ岩と言うそうで、クライマー達の垂直登山道です。
この辺りから登山道は核心部を迎え、金峰山以上に全身運動が求められます。右に左に大岩を巻きながら稜線まで登りつめると、山頂まで10分の標識。ようやく手を使わないで済むと思いきや、そんなに甘くはありません。最後に木のトンネルをくぐり抜けると、世界が開放されて、断崖絶壁、瑞牆山に登頂です。
横に長い山頂部は一歩間違えれば重力の法則にしたがって、身体は下へ、心は上へ… (-_-;)
そんな事態にならぬよう慎重に行動します。幸い、先行者1名であったため、自分の思うように行動ができましたが、混雑し始めると、長居は禁物です。
山頂からは昨日と同じような景色が広がります。違いは、その高度感。比べものにはなりません。
約束があったため、早めの出発したことが正解で、ゆっくりと山頂からの展望を楽しめました。
次第に人の声が増え始めた山頂を後にし、更に、慎重な足運びで下山の途につきます。
帰り道、大勢の登山者とすれ違いました。人為的落石、転倒、滑落…山に危険は付き物。大きな事故が起きていないのが日常的な光景かもしれませんが、決して、瑞牆山はハイキングコースではないことを記したいと思います。
テントサイトに戻り、約束の時を待ちます。昨日、偶然にも群馬の山友が瑞牆山を訪ねることを知り、小屋到着時刻を見込んで下山してきました。待つこと10分。3月以来の「こんにちわ」。そして、「また、会いましょう」。
山友を見送りテントの撤収にかかります。今夜、いつもの山友と会う約束をしていたため、気分は下山後の楽しみに変わってきています。それでも、登山口への下りでは、広葉樹の明るい森と岩が織り成す立体日本庭園を楽しみながら、1泊2日のテントライフを振り返ります。決して、ゆっくりと過ごしたテントライフではありませんが、それぞれ特徴が異なる山を楽しめた2日間でした。
下山後は前回気になっていたカフェコーナーでいつもの…(笑)
樹間に岩峰…どんな出会いが待っているのだろう
ここから 第2ステージの始まりです…桃太郎岩
何か所かある鎖場…高度とともに角度もつきます
山頂からの展望を期待させる 今日の富士
花を見ると 落ち着きます…アキノキリンソウ
この岩峰を過ぎてからが 核心部
巨岩区間…下りは ルーファイが必要
明暗が分かれる 谷合の道
稜線に乗っても 油断はできません
光の国が 今日の折り返し地点
広いように見えて 安心できる場所は限られる頂
山深い景色が広がる 奥秩父
同じ景色でも 世界が変わる 山の展望
太古の八ケ岳の稜線が 見えてきそう…
先月 辿りつけなかった頂…御嶽山
第2幕はあるのだろうか…杣添物語
あの稜線から北岳を見ている予定でした
山頂より高く見えますね…五丈岩
夏の終わりに大輪の花火…ミヤマダイモンジソウ
今日も茸は 豊作でした
「行ってらっしゃい」…また逢う日まで
即席パスタで テントライフは終了
山と人に出逢えた2日間…ここでも また逢う日まで
夏と秋が交差する和のテイストでいつもの…(笑)
山行日数は減ったのに 増えたいつもの…(笑)
2019夏山…小屋とテントの2本立て
8月5~6日 福島県会津駒ケ岳
8月7~8日 福島県燧ケ岳(俎嵓)
台風の進路と影響が読めず、出発前夜に山行計画の大幅な変更。準備不足が否めない中、まずは観光食べ歩きから始め(笑)、異様な隧道と真っ暗な酷道を抜けて登山口に向かいました。
8月5日
以前、名前にまつわる情報番組で紹介された桧枝岐(ひのえまた)村。山深いその土地をまさか訪ねるとは思ってもおらず、また、後で知ることになる村人と尾瀬との関わりや、村民だったバディのフォロワーさんとの出会いなど、今旅の「巡り合わせ」を感じました。
今日目指す「会津駒ケ岳」、通称「会津駒」。初めての山域だけでなく、福島県を訪ねるのも初めてです。会津駒周辺は草原のような稜線になっており、特に、中門岳に続く稜線は池塘が多く、天空の楽園とも言えます。そして、その山頂手前にある避難小屋を管理するご夫婦の人柄で人気のある「駒ノ小屋」。今回のツートップです。
会津駒の登山ルートは3つ。バスを利用する周回ルートもありますが、情報不足の私達は一般的な滝沢ルートの往復を計画しました。出発は夏山としては遅い6時。「東北の山」と言う勝手な印象で、1100m付近からの登り始めでも涼しいのではと思っていましたが、これは大誤算。後で管理人さんに尋ねると、今日の暑さは今夏一番で、風もなく、小屋周辺でも7時には暑かったそうです。
最初の急登で滝の大汗。そして、虻との戦い。登山道が整備されていたのは救いです。階段が現れ、広葉樹の日傘が途切れ始めると、右側に広がる草原の向こうに「会津駒」のシルエット。ベンチを過ぎると池塘が現れ始め、草原を2分する木道の先に三角屋根が覗いています。木道の脇にはイワイチョウやワタスゲにキンコウカ。湿原を代表する花が飾ります。最後に今年も当たり年だと言われるコバイケイソウの群落を抜けると空と会津駒を映す「駒ノ池」。小屋に到着です。
当初、中門岳は翌朝の涼しい時に向かうつもりでした。しかし、この暑さの中、小屋前で過ごすのは却って身体に悪そうで、まずは、会津駒を目指します。全国各地にある「○○駒ヶ岳」。ここは、残雪期に駒(馬)の形に見える雪形の現れることが山名の由来とされています。
出発してまもなく「ハクサンコザクラ」の群落。先月までは雪の下に埋もれていた大地から細い一本の茎を伸ばし、ピンクのハートを振りまいています。巻道との分岐点から一息で登頂。正直「えっ!ここ?」と思う、印象としては縦走途中にあるひとつのピーク的な山頂でした…あくまでも個人の意見。ところが、中門岳に向かって下り始めると、稜線の草原と大展望。やっぱり会津駒に登らねばなりません(笑)。
この後、中門岳まで続く池塘の見本市。周囲の山はアルプスにはない嫋やかな山容が続きます。山頂標識が立つ「中門池」に到着。そして再び「えっ!ここ?」。標識を見ると「この一帯を云う」と括弧書きされていました。木道は更に先へ続いており、小屋前で話を伺ったワタスゲへの道かと、まずはそこへ向かいます。途中、燧ケ岳を望む大小の浮島のある池塘があり、本日のベスト池塘に認定(笑)。
突き出た半島に弧を描くような木道が終着点。会津駒を望むベンチに腰を掛け、稜線を吹く風を受ければ、不思議と暑さは感じません。丁度、誰も居ない私達だけの世界。会津の山は微笑んでくれました。
ゆっくりと景色を眺めながら歩いていると、気付かぬ内に通り過ぎていく世界がここにありました。「楽園」。そんな言葉が本当に似合う素敵な場所です。
夕方、小屋前のベンチは自炊する人で賑わっています。普段、テント泊をする私達にとっては当たり前ですが、小屋前で全員が自炊する光景は新鮮でした。夕食後、赤く染まった雲は色を失くし、消灯後の空には星が瞬き始めます。涼を求めて外に出ると夏の大三角形に天の川。ひと際輝く木星は水面に輝きを映します。モリアオガエルのBGMが響く中、いつまでも見上げていたい時間でした。
どんな世界が待っているのか…ワクワク、ドキドキ
樹林帯の終盤で登場…ツマトリソウとアカモノ
草原を抜ける風に 匂いを感じます…会津駒ヶ岳
池塘の妖精 ワタスゲ 見ているだけで涼を感じます
空に続く木道は 楽園へのプロムナード
揺れる草原の波 あの小屋は灯台か…
美しすぎる2000m…
2019夏山 最初の到着点は「駒ノ池」
池には 妖精が飛び回っていました
ハートの五弁は もうひとつの妖精…ハクサンコザクラ
夏の湿原を代表する白…イワイチョウ
天国に一番近い花だと思う…
至るところで 草原を飾っていました…コバイケイソウ
高山植物の代表格…チングルマ
ある意味 載せたくなる…会津駒の山頂標識
中門岳はどれだろう…素晴らしき稜線
遠望も楽しめます…至仏山から日光白根山
これまで訪ねた山で 最高の池塘でした
空が大地に降りてきます
2019 盛夏 暑中お見舞い申し上げます…中門池
虻退治の神(笑)…アキアカネ
天国の一歩手前…それが楽園
山バッチにも書いてありました…「だいたいこのあたり」
様々な顔を魅せてくれます…駒ノ池
会津の星空も 素敵でした
8月6日
東の空に赤く引かれた一文字。昨夜、天空に散りばめられた小さな瞬きは、新しい一日を前に、その灯を消そうとしています。この時間、東の空に現れる紅と藍をつなぐ青白い空間。やがてその世界は広がりを見せ、折り重なった雲の陰から生きる塊のような太陽がぼんやりと浮かび上がり、少しずつ丸味を帯びてきます。日中の暑さが嘘のようなひんやりとした風が頬を掠める夏の朝。特に山で迎える朝は、身体が軽くなったような気分になります。
昨夜の雨と夜露で濡れた草原は、黄金色に染まり始め、コバイケイソウの花穂に朝陽が照らします。山で迎える朝は正しく「一期一会」。派手さはないけど、心の奥深くに届く光でした。この出会いに感謝したい。
中門岳往復のCTは約3時間。下山時の気温上昇を考慮すれば、昨日に登っていて良かったと思いますし、推奨します。
部屋に戻って荷物の整理をしていると、一晩共に過ごした方の半分はすでに出発されていました。
「夏の早立ち」の原則。いや、鉄則ですね。
朝食の準備をしていると、夜明け前、中門岳に向かっていった方が戻ってこられました。その中のおひとりは、夕食前に山話をしていた方です。その方から、他の2人は本来私達が行く予定だった小屋に先週泊まったとお聞きしていましたので、次回に向けて、小屋の混雑状況などの情報収集。そのグループは「キリンテ」に下山するらしく、「周回されては?」と声を掛けていただきましたが、そこは笑顔で誤魔化しました(笑)
管理人さん作のアートが取り巻く三角屋根の小さな山小屋。定員28名、完全予約制で布団1人1枚確保は、私達にとって安心して泊まれるシステム。下山した後、地元の方に伺うと今の管理人さんになってから予約も取りにくい、人気の小屋になったとのこと。その話が納得できるほど、飾り気のない素敵なご夫婦でした。そして、この山は地元の方をはじめ、大勢の方が見守っていることをすごく感じました。
「山文化」
これまで登ってきたアルプスや八ヶ岳とは、一線を画すような世界。
登山口に戻り、小屋泊からテント泊へと再パッキング。気持ちも新たにしたいところですが、もう少し、余韻を楽しみます。
下山後、小屋のTシャツを着ていると「駒ノ小屋に行ってきたの」と何人もの方から声を掛けられました。「山」に行ってきたのではなく、「小屋」に行ってきたのと尋ねる村の人々。ここでも管理人さんの人柄が窺えます。
そして、昔は特別な日にしか食べてはいけない(御法度)と言い渡しがあったことから名前がついた「はっとう」でいつもの…(笑)
夏の夜明け前を飾る…紅一文字
賑やかだったベンチは 束の間の休息…
妖精の語りが 聞こえてきそうな 朝のひと時
山陰にならず良かった…
日光方面の峰々
桧枝岐村の人々に 陽が届くのは あともう少し
小さな太陽に飾られて…コバイケイソウ
この道は いつか来た道♪…そんな道
管理人さんアート…その1
管理人さんアート…その2
私達がお世話になったベニサラドウダンの間…駒ノ池側
部屋の窓から 会津駒ヶ岳と駒ノ池
明日は あの頂を超えていこう…燧ケ岳
花が咲いていると ほっとします…イワオトギリ
明日は あの峰から こちらを眺めるのか…
振り返って…小屋と会津駒
光の道筋に誘われて あの樹林帯へ…
この道を 再び歩くことは あるのだろうか…
そろそろ池塘とも お別れです
アザミを見ると 8月の山って言う感じです
昨日よりはマシ でも 陽射しは厳しい
木陰の駐車場…再パッキングには 助かりました
こんなポスターを見ると…尾瀬桧枝岐温泉観光協会
桧枝岐村と言えば「裁ちそば」…岩魚の天ぷら付
ちょっと癖になりそうな特産品で いつもの…(笑)
8月7日
私達の世代は尾瀬と言えば「夏が来れば思い出す…♪」の歌詞で有名な「夏の思い出」。しかし、関西方面から容易に行ける場所ではなく、知っている情報は限られています。
登山口は「御池」。そこから燧ケ岳を登って、尾瀬沼畔(沼尻平)に下り、尾瀬沼キャンプ場を目指します。
駐車場から木道の敷かれた登山道に入ると、水芭蕉の葉が生い茂る湿地が現れ、尾瀬らしい雰囲気から始まりますが、すぐに急登となります。
最初のポイントは「広沢田代」。「田代」で検索すると「田」「水田」となっています。池塘が広がる様子を水田に見立てているのか、本当に田んぼとして利用していたのか、尾瀬には「○○田代」と呼ばれる場所が沢山あります。
2つ目のポイントは「熊沢田代」。ここは前日に、紹介パンフで掲載されているのを見て、「何と素敵な木道だろう」と思った場所です。すり鉢状となった湿原に2つの大池。その真ん中に敷かれた木道は「山を歩く」と言うイメージから遠い世界だと思いました。訪ねてみれば、木道が自然に溶け込んで一体となった景観。童話や絵本に出てくるような夢を感じさせる景色でした。
下った分だけ登り返して樹林帯。何度か小さな沢を渡り、ぽっかりと口を開けたような涸沢を過ぎると8合目。急登とトラバースを繰り返し、あっという間の9合目。そして、視界を遮る広葉樹が忽然と消えると、三角点と石の祠が建つ「俎嵓」(2,346m)です。燧ケ岳は双耳峰。すぐ隣には山頂標識の立つ東北地方の最高峰「柴安嵓」(2,356m)。往復のCTは40分。私達の燧ケ岳は「俎嵓」です(笑)。
眼下には森に浮かぶ「尾瀬沼」。そして、柴安嵓の肩越しには「至仏山」と山麓へ続く広大な尾瀬ケ原。こうして俯瞰すれば、尾瀬全体の位置関係が立体的にわかります。
あまりの気持ち良さについ長居をしてしまい、その間に雲の様子が変わってきました。ここから沼尻平までゴロゴロ岩の急坂「ナデッ窪」ルートと緩やかな「長英新道」がありました。尾瀬沼畔を歩きたく、また、新道は時間がかかると思ってこちらを選択しましたが、大半の方が新道を進んでおり、その理由は後程判明します。
尾瀬沼を眺めながら大きな岩が点在する道を下ります。スキーで言う直滑降の道。先ほどまで居た俎嵓が梢に隠れると、尾瀬沼も同様に見えなくなり、続いて、登りでは感じなかった「暑さ」が纏わりついてきました。加えて、近付いてくる雷雨の気配。雨が降る前に沼尻平へと思いますが、テント装備で転倒すれば、取返しのつかない事態が予測され、暑さでぼうっとする中、「ここは集中」と言い聞かせます。
長かった樹林帯を抜けた先には、山頂から眺めていた湿原の木道。世界が変わった瞬間です。上空は黒っぽい雲に覆われ始め、畔の木道に入ってしばらくすると、ついに雨が降り始めました。この後、キャンプ場へは木道が続くであろうと、合羽ではなく傘対応と判断。やがて、雷が鳴り始め、雨粒の大きさも変わってきました。それでも大きな木が傘となり、さほど雨の影響は感じません。しばらく上空で響いていた雷にも慣れ始め、雨の勢いが弱くなり始めた時、視線の片隅に閃光。続いて、全身を震わせる雷鳴。対岸に落雷です。
「自分達には落ちない」。ただ、それを信じて歩き続けます。何人かの観光客の方が大きな木の下で雨宿りをしていましたが、足早に通り過ぎると、私達に付いて行動される方も居ました。その後も雷鳴は続きますが雨脚が強くなってきたため、落雷は大丈夫だろうと根拠のない自信を持ちましたが、バディは生きた心地がしなかったそうです。そして、キャンプ場直前の湿地帯。身を隠すものがない木道が200m程続きます。さすがに一瞬躊躇しましたが、いつ止むかもしれないこの雨をここで待つ方が危険と思い、振り返るバディには前進を伝えます。相変わらず、上空に響く雷鳴。しかも半ばまで来た時、猛烈な風が吹き始め、横殴りの雨が全身を打ち付けた時は言葉になりません。時間にして2分ほどですが、今までにない恐怖を感じました。
建物群に入り、最初にあったのが屋内にベンチのある公衆トイレ。ようやく、恐怖からの脱出です。下っていた時の暑さが嘘のように濡れた身体は冷えを呼びます。私達は対策を講じていますが、「夏の低体温症」と言う最悪のシナリオが頭を過ります。小降りになり、ビジターセンターへ移動し、展示物を見ながら雨が止むのを待ちます。そして、ここで「尾瀬」と「桧枝岐村」の関わりを知り、バラバラだったピースがひとつの絵になりました。
尾瀬沼キャンプ場は完全予約制の28サイト。適当な間隔で区画されたデッキスペースが、森の奥へと続いています。再び、降り始めた雨も、テント内で一息つく頃には上がり、お決まりの虹の出現。快適だった燧ケ岳までの道のりから、ナデッ窪のような急転直下の出来事。ゆっくりと過ごすはずだったテントライフは、次回に持ち越しされました。
今日は旧暦の七夕。雲間に彦星と織姫星が現れ、今年の2回目の再会を楽しんだことでしょう。
久しぶりのテント泊山行…気を引き締めます
緑のトンネル 一歩一歩 確実に…
道端を 飾ります…キンコウカ
尾瀬の世界に 一歩近付いた感じです
広沢田代越しに 会津駒ヶ岳
木道が現れると 次の田代は近い…正面は 燧ケ岳
こんな木道の世界は 見たことがない
山行中の池塘は 心と身体のオアシス
8合目から…熊沢田代
池塘の母…尾瀬沼
いつの日か 訪ねてみたい…尾瀬ヶ原と至仏山
会津駒ヶ岳に向かって…駒ノ小屋限定Tシャツ
山頂は 自分で決めればよいと思う
ナデッ窪ルート から ミノブチ岳を見上げます
朝日岳以来の再会…ヒオウギアヤメ
尾瀬沼に向かって 直滑降…
この開放感は 視界だけでなく 精神的にも…
夢の中へ バディが消えていく…
対岸は青空…こちらは 雨
夏の夕方の風物詩に 花を添えて
今日の青空は 身に沁みます
畔のテラスから…燧ケ岳
尾瀬沼って いいなぁ…と思った時間
こんな構図の日本画を 見たことがあったような…
尾瀬沼の夜も 蛙のBGMが響いていました
8月8日
夜明け前、霧が漂う尾瀬沼。柔らかに波打つ霧は、刻一刻と夜明けに向かってその姿を変えていきます。尾瀬沼越しに見える燧ケ岳。昨日、その頂きに居たことが遠い記憶のように思えるほど、崇高でこの尾瀬沼一帯と隔絶された世界に思えます。標高以上に高く思えるその姿。
東の空が赤く染まり始め、尾瀬沼に朝の気配が訪れました。やがて、うっすらと山頂部がオレンジ色に染まり、裾野へと広がりを見せます。中腹に漂う雲は赤く染まり、命の炎を灯したようです。また、新しい一日の始まりです。
昨日、ナデッ窪ではなく長英新道で下りていればどうなったのか。雷雨の中、歩くことはなかったのか。しかし、テントで雷雨を過ごすのか…、それとも結局、トイレに避難するのか…。「たられば」を語っても意味はなく、山行中に起きる数々の分岐をどう選択するかで、いとも簡単に惨事に見舞われることを、昨日の出来事は示しています。ただ、結果的に大事に至らなかったのは、選択は間違っていなかった訳ですが、一歩間違えれば生死に関わる事態になった訳で「運があった」と、この言葉でしか片付けられません。ただ、昨日の受付時に尾瀬沼ヒュッテの方が、「長英新道は展望がなく、ナデッ窪は景色が良かったでしょう」。単純明快な答えに救われています。
今日も厳しい陽射しが照り付け、濡れたザックは湯気が出ているのではないかと思える勢いで乾いていきます。コオニユリ等の花がいっぱい咲いていると思いながらも足早に通り過ぎた木道。強烈な風を見舞った分岐点。
「夏が来れば 思い出す ♪」…ほんと、一生忘れられない…「はるかな尾瀬 とおい空 ♪」
帰り道は大江湿原を抜けて、沼山峠に向かい、シャトルバスで御池に戻ります。CTは65分。その半分は湿原ハイクとなります。コバキボウシ、オゼミズギク、ツリガネニンジン。イメージとして尾瀬らしい景色が続く中、今回の山行を惜しむように、ゆっくりとした歩調で進みます。
ビジターセンターで紹介されていましたが、新政府軍と会津藩との戦い(戊辰戦争)の中、この大江湿原には5つの防塁を築いたそうです。(戦闘には利用されず)今や誰もがハイキングとして歩いているこの木道は、「会津沼田街道」として多くの歴史が踏み固められた道です。近年では、尾瀬沼畔に車道を通す計画が自然保護運動の高まりで中止されるなど、美しい自然の背景には、学ばなければならない歴史があります。
前方からすれ違う多くの方は、ヒュッテ周辺で作業されている工事関係者の方々。所謂、通勤途中の方です。観光客の姿も見受けられ、中には革靴の方も居られます。今日も天候は不安定。雷雨の時間は昨日より早まりそうな予報。初めて訪ねた尾瀬は、観光地でありながら「山」である要素が強く残っていると感じました。同じく大勢の観光客が訪れる上高地と比べものにならないほど「山」です。特に、印象付けたのが、ほぼ全域が「圏外」であること。緊急時は小屋に頼ることになりますが、小屋まで辿り着かねばなりません。圏外の是非を問うのではなく、圏外の事実を知って尾瀬には入らなければならないと思います。
湿原から樹林帯に入り展望地を過ぎると、後は下り坂。キャンプ場から続いていた木道は、沼山峠直前で途切れ、最後は石の階段となります。1泊2日の2本立て。久しぶりに「山行」を感じた4日間でした。
下山後は、600km以上運転しなければならず、シャトルバスの出発までの時間を有効活用していつもの…(笑)
深夜 とりあえず 空を見上げてみます
人っ気のない尾瀬…贅沢な時間です
尾瀬沼のシンボルツリ-…三本カラマツ
雲が無ければ 空は焼けない
空気と風が見える 尾瀬沼の朝
今日も出逢えて幸せです…燧ケ岳
僕は尾瀬ヶ原より尾瀬沼の方が 合っているかも…
雲上の頂に 最大限の敬意を表します
白駒池との違いは 奥行でしょうか…
夜も良いけど 朝も素敵な 尾瀬沼でした
尾瀬沼ヒュッテ前から…
初めてのデッキ…ここも完全予約制…1人800円
今回 この奥は未知の世界
何とか 逆さ燧ケ岳を 頂きました
しっかりと 記憶のページに残します
さて 大江湿原を通って 帰りましょう
尾瀬の冠 初対面の「オゼミズギク」
お世話になりました アキアカネ…と ワレモコウ
今年は当たり年だそうでう…コバギボウシ
恐怖の2分帯…尾瀬沼を振り返ります
華やかな彩りと緑のグラデーション…大江湿原
防塁のあった時代は どんな景色だったのだろう…
尾瀬一帯で何km整備されているのでしょう…最後の木道歩き
森を貫くハイウェイ…会津・沼田街道
下界へ戻るために いつもの…(笑)
観光登山家…アルプス一万尺と花の3日間
7月13~15日 長野県乗鞍岳他
梅雨後半の3連休。空模様を追いかけての1000㎞周回は山行と観光。まずは、21年振りの登頂を目指してシャトルバス停のある駐車場に向かいました。
7月13日
初めて乗鞍岳に登ったのは、高2の夏。山行よりも霧に包まれた真っ黒な車窓を眺めながら御来光の時間を待っていたことが思い出されます。そして、初めての3000mで夢中になって高山植物を撮っていた時に感じた息苦しさ。今では懐かしい10代の思い出…。あれから40年近くが経ち、起点となる畳平へは山麓からのシャトルバスとなり、登山道から車道まで続いていた雪も、随分と減ってしまいました。
午前中は時折陽が射すも、全体的に高曇りの予報。雲海上の槍穂に期待して、始発便(6時10分)で乗鞍高原観光センターを出発しました。
カーブが多いのは記憶に残っていましたが、時々現れる対向困難な道幅は意外でした。この時間帯では下りの通行車はありませんが、繁忙帯ではなかなかの迫力でしょう。やがて、森林限界を超えると同時に雲も抜け、期待通り雲海に浮かぶ槍穂高。2019年北アルプスの開山です。
終点「畳平」の標高は2702m。50分で標高差約1200mを登ったことになります。まずは、15分ほど休憩所で過ごし、身体を高山に慣らします。
出発してすぐに目に留まったのはハクサンイチゲ。バスで登ったとは言え、高山特有の風を感じながらこうして高山植物を眺めると、山に入った感が急速に上昇します。富士見岳の分岐を過ぎたところで、高山植物の女王「コマクサ」の群生地と遭遇。こんなところで自生していたのかなぁと記憶を辿ります。
前回、乗鞍岳を訪ねたのは家族登山を始めた頃で、魔王岳からの御来光と固形燃料では中々お湯が沸かなかったこと等、やはり、山行以外の思い出。また、17年前、今では他界した2人の親と共に訪ねた畳平のお花畑。「行ってて良かったね」そんな思い出話をバディと交わしながら、気付けば、肩の小屋に到着。ここから道は岩が露出する本格的な山道となり、稜線までは約1時間。相変わらず、雲海に浮かぶ槍穂から、今にも沈みそうな八ヶ岳に甲斐駒ケ岳。中でも、本当に蓑笠のような山頂部分のみを覗かせた飛騨の名峰「笠ヶ岳」が印象的でした。
稜線に上がると飛騨側からの風が体温を奪います。それでも3000m付近を体感していると思えば、寒さではなく、設定温度を低くしたクーラーの風のよう…と思うのは個人的感想(笑)
頂上小屋の分岐を過ぎ、最後の登りを終えた先にある鳥居をくぐると、3026m 乗鞍本宮神社奥宮が建つ乗鞍岳に登頂です。そして、雲に隠れながらも、御嶽山を眺めることが出来たのは感無量の出来事。ところで、高2の夏、山頂付近で高山植物を撮ったはずなのに、今は何も咲いていません。当たり前の景色が時の流れと共に変わっていきます。これも、当たり前…。
近年、興味がありながらも一歩を踏み出せない「岩」。下山時の稜線で黒い岩や赤い岩等点在し、中でも、明らかに異なる黒い岩は乗鞍岳が火山であった証し。触ってみると、両手でかかえる大きさの岩が軽々と片手で摘み上げることが出来ました…ちょっと、感動(笑)
最後にお花畑を散策し、6時間の北アルプスは終了。
下山後は、乗鞍高原で待ち合わせをした山友が事故の影響で通行止めとなった困難を乗り越え、運んでくれた逸品でいつもの…(笑)
さて、あの頂へ…
車窓から眺める雲海 こんな日の特典です
White inside white…ハクサンイチゲ
鶴ケ池へと続く お花畑
お久しぶりの…イワヒバリ
群落があちこちに…イワツメクサ
色の対比が素晴らしかった
バスで楽しむ山行も そろそろ有りです
瑞々しいお姿の 女王「コマクサ」
このバスを見ると テンションが上がります
バス停から約半時間でこの景色…鶴ヶ池
不動岳を背後に 不消ヶ池
打ち寄せる雲海が静止する…
肩の小屋までは 林道のような道…剣ヶ峰・蚕玉岳・朝日岳
摩利支天岳越しに 北アのランドマーク「槍ヶ岳」
旧乗鞍岳コロナ観測所…背後は「笠ヶ岳」
この景色が 乗鞍岳だと思う
この池を見れば 山頂まであと少し…権現池
近年は あの山から乗鞍岳を見ることが多かった…御嶽山
21年前 この場所で 娘の写真を撮りました
ここは まさしく空中庭園…肩の小屋前より
お花畑へは ショートカットで向かいます
一面の白…お花畑のハクサンイチゲ
両親が歩いた年齢まで 山を歩いていたい
2時間30分の遅れは 東屋で いつもの…(笑)
7月14日
2日目の予報は雨のち曇り。天候に合わせて湿原トレッキングは午後に回し、午前中はドライブ観光。
今回訪ねる湿原と原生林の森は、以前から気になっていた場所。生憎の空模様ですが、却って、山行日和でないことで訪ねることが出来ました。
お目当ての花は「ニッコウキスゲ」と「ササユリ」。そして、カツラの大木。また、入山口では「ショウキラン」が見頃だと教えられ、更に、楽しみが増えました。高低差を繰り返す山道を1㎞ほど進むと、突如現れる緑とオレンジの空間。湿原への玄関口です。
入山早々、ここは熊の生息域と言うことで、ブリキ缶に棒を付けた熊除けが設置されて、その後、数100mおきにぶら下がって通る度に打ち据えていました。また、普段はザックのポケットに入れた熊除けスプレーも、今日は安全装置を外した状態でパンツのサイドポケットに入れ、いつでも噴射できるようにしています。しかし今、目の前にある景色は、そんな緊張感を一気に解放させてくれました。
靄のかかった湿原には、幾重にもニッコウキスゲの波が漂い、その畔の道には、ピンク色したササユリが、まるで燈籠のように続いています。陽の光を浴びた眩しい世界も素敵だと思いますが、最近は曇よりして、視界が限られる幽玄の世界が性に合う感じで、正しく、今日の景色。
湿原を抜けると次は原生林の森へと入ります。ここからルートは3本に分かれますが、急登と表示された尾根道から上の湿原を抜け、沢筋の巨木ルートで再び湿原に戻ってきます。
と、ここでポツリポツリと雨。一時的なものかとザックカバーのみで歩き出すと、次第に雨足が勢いを増してきました。いくら森の中とは言え、限界点を超え、2年振りに合羽の出番です。
蒸し暑さと急登で一気に汗が噴き出す中、太古から続く木々の息吹を感じるかのごとく、ゆっくりと歩みを繰り返します。時間的なことや天候的なことから、一組の登山者とすれ違って以来、人の気配は感じません。人間界から少し離れた世界へ足を踏み入れてしまった。そんな時間が続きます。
そして、再び小さな空間が…上の湿原です。先ほどより随分と小さいものですが、水面の畔に広がる浮島に真っ赤な模様が浮かび上がっています。近付いてみると、食虫植物のモウセンゴケ。これほどまでの群生は初めてです。ますますこの地に興味がわきました。
入山時に教えていただいた「ショウキラン」。どんな姿がわからず、足下を注視しながら歩いていましたが、そんな心配は余所に、特徴ある姿はすぐに見つけることができました。
自宅でショウキランについて調べてみると、通年は地下茎の形で成長し、花期(1週間程度)のみ花茎を地上に伸ばし、私たちにその姿を魅せます。光合成を行わず、菌類から有機物を得る腐生植物は古典的な呼び方で、ユウレイソウと呼ばれるギンリョウソウもこの仲間だそうです。
森に平地が広がり始めると、カツラの巨木に出迎えられ、そこからブナを交えて巨木の森となり、まるでこの素晴らしい世界の門番のようです。そして、再びニッコウキスゲの咲く湿原へ。湿原は一方通行で周回するようになっています。こちら側にもササユリの燈籠が続き、また、中央には湿原の妖精「ワタスゲ」が霞と同化するように小穂を揺らしていました。
もし、三途の川があり、その手前に綺麗なお花畑があるとしたら、それはここのような景色かもしれない。
入山口に戻ると、先ほどとは別の方が私たちの帰りを待っていて下さり(と言うか、帰れなかったんだと思います…)、お詫びとお礼を伝えました。
下山後は、お店が開いていないため、とりあえずでいつもの…(笑)
悪路の終着点に 待っていた景色
この天候であるが故 たどり着いた景色
まずは ギンリョウソウが 出迎えてくれました
ササユリの 薄桃色は 曇り空に映えます
この景色が いつまでも続くように…
ミズバショウ(手前)が 咲く頃も 訪れてみたい
湿原から原生林への森へ…巨木ゾーン
初めてみる花…名前は後で知ります
上の湿原…何だろう この解放感
群落が 浮島を染めます
小さな世界の 弱肉強食
この花がそうだったのか…ショウキラン
よく見れば 蘭の仲間であることが わかります
森を守るかのごとく…カツラの門番
素晴らしい森も 出口が近付いてきました
帰りの景色も 楽しみです
蘭の一種…ヤマサギソウだと思う
帰り道の方が最盛期…ササユリの灯篭
本日のお目当てが共演
この景色を守るのは 訪ねる我々の意識だけ…
あの向こうに 黄泉の世界が あるのだろうか…?
この花も初めて…シラヒゲソウ
梅雨がお似合い…オオバギボウシ
熊予防 最後の缶…
とりあえず車中にて いつもの…(笑)
7月15日
最終日は福井県との県境に位置し、加賀の名峰「白山」を望む斜面に、約20年前から高山植物を主とした白山の自生植物の保護を目的に整備された「白山高山植物園」を訪ねました。
国道から脇道に入り、しばらく進むと、幟が並ぶ駐車場に到着。まずは、午前中に仕入れた「いつもの Part2」で糖分補給。植物園までは直登とブナ林の2ルートがありました。今日は最短の直登を選びましたが、草木を刈り取って真っ直ぐに整備された階段状の道は、3日間随一の核心部かも…(笑)
開園期間は6月1日から7月15日。そう、今日が最終日です。
ここにもニッコウキスゲが咲くようですが、開花時期はもっと早く、今日は「オオバキボウシ」や「マツムシソウ」の青色系やホソバコオニユリ、シナノナデシコ、ハクサンフウロ等のオレンシ、ピング系等、見頃は過ぎたとは言え、十分に花を楽しむことが出来ます。また、名札も付いているため、名前と花も一致できます。
生憎の天候にも関わらず、思った以上に来園される方が居り、自分たちを基準していた考えを改め直さなければならないと思いました。
この植物園をHPから抜粋して紹介すると、「白山山系は他山系から隔離された独立山系であり、そのため白山には他の山岳からとび離れて分布しているいくつもの豊かな植物群があります。 白山以西に白山以上の標高を持つ山はなく、日本高山の西の果てに位置することから、ハイマツをはじめ、白山の名を冠するハクサンコザクラやハクサンチドリ、クロユリなど白山を分布の西限とする植物は100種類を超えます。また、白山は多様な遺伝子資源を蔵するところとして国際的にも認知されています。つまり、白山は日本を代表する“自然の宝庫”ともいえる場所なのです。…<中略>…地球温暖化の原因は人間活動であることはもはや疑いようがありません。私たちの負うべき責任は重大であり、と同時に、私たちのくらしの基盤が種と種の複雑で微妙なバランスの上に成り立っている以上、人類の生存を危うくする生態系の崩壊は食い止めねばなりません。だからこそ、いま植物種の保存の方策を考える必要があるのです。このような考えのもと、白山高山植物研究会では、1998(H10)年より、石川県白山市の委託を受け、石川県自然保護課、ほか関係各機関と連携し、 高山植物を主とした白山の自生植物の保護に取り組んできました。」と言うことです。
白山で採取した種子から育てた高山植物は、今では約五十種類十万株にも及び、日々、訪ねてくる人々に安息を与えています。西山山頂直下、標高約800mの斜面に広がる高山植物園。いくつものルートがありますが、考えて歩けば、一筆書きのように全てを回ることが出来ます。
マツムシソウを見ると荒川三山の周回を思い出し、ハクサンフウロを見れば、正しく白山の記憶が蘇ります。花と山が繋がる山人は、高山植物園に咲く花でさえ山に浸れます。山が持つ懐の深さを改めて感じる出来事です。
晴れていれば白山(剣ヶ峰から別山)を眺めることは出来ますが、梅雨真っ只中では、それは無理な注文と言えるでしょう。
退園後は近くにある「白山砂防科学館」で断層や岩の説明を受け、乗鞍岳で感じた「岩」に対する一歩を踏み出せたように思います。
…花と触れ合った3日間。それぞれの環境は異なりますが、花を愛でる気持ちはいつも同じでした。
帰り時間の関係から 最初にいつもの…(笑)
何となく いい雰囲気…
ノリウツギに見送られ 核心部を登ります
色濃く 梅雨の紫…オオバギボウシ
白山の冠…ハクサンシャジン
花の名札は 助かりますね…キリンソウ
高山でこの花を見ると 8月だと思う…タカネマツムシソウ
秋のイメージもある…タカネネデシコ
名札のない花もありました…^^;
実をつけて 早いものは紅葉していました…ハクサンタイゲキ
白山の冠 代表作…ハクサンフウロ
どこでも このオレンジは目立ちます…ホソバコオニユキ
高1の夏からのファン…シモツケソウ
忙しくなく蜜を吸っていました…
地味(笑)だけど 存在感があります…ヤマハハコ
本日のピーク
ピークからの 展望
これは 初めてでした…シナノナデシコ
山で 白色は少ないですね...ヤマホタルブクロ
この花を初めて見た時は感動しました…キバナノヤマオダマキ
蜂たちに人気がありますね…タカネマツムシソウ
関西の山を冠に…イブキジャコウソウ
ここから 白山を一望できます…駐車場より
是非 訪ねて欲しい そして 説明を聞いて欲しい…白山砂防科学館
白山山行の帰りには…白峰温泉
新緑のテントライフ…聖地‘上高地’
6月2日~3日 長野県上高地
「次は、ニリンソウが咲く頃にカフェを訪ねます」
その約束を守るため、5ヶ月振りの駐車場に向かいます。
6月2日
上高地。今は信州を代表するリゾート地。初めて訪ねたのは高校時代。その頃は、槍穂高を目指すアルピニストを見ているだけの地。そして、河童橋から眺める景色は山への憧れを抱かせる、僕にとっては‘聖地’。
冬、真っ赤な新芽を付けていたケショウヤナギは青々とした新緑に身を包み、遊歩道沿いには、初夏の上高地を代表する花「コナシ」が咲き始めています。梨のような小さな実を付けることから「コナシ」と呼ばれていますが、図鑑では「ズミ」。そして、その名前が付けられた「小梨平キャンプ場」が今回の目的地のひとつです。
そのコナシより一足早く咲くもうひとつの代表的な花と言えば「ニリンソウ」。特に、奥上高地「徳沢」周辺の林床は一面、白い妖精たちで溢れています。ここ数年、上高地で幕営する場合は「徳沢天国」と我々が呼ぶ「徳沢キャンプ場」。今回はもうひとつの目的「約束の地」が徳沢の手前、明神にあるため、グリーンシーズンでは初めて小梨平で張ることにしました。初めてとは言っても、槍・穂高・蝶ヶ岳…それらを目指す度にキャンプ場は通っており、冬には張ったこともあります。以前から「山を目指せなくなったらここだね」と言っていたキャンプ場は、思いのほか早く訪ねることになりました。
キャンプ場は森林ゾーンと梓川ゾーンのふたつに分かれ、今日は梓川越しに穂高連峰を望む「梓川ゾーン」を選択。
日曜の朝、週末を上高地で過ごした方で賑わっていました。お目当ての場所も埋まっていましたが、近くで仮設営を行い、まずは明神を目指すことにします。
今日の天気は薄曇り。花を愛でるにはちょうど良い空模様です。早速、まだ寝ぼけ眼のニリンソウが道端で揺れています。そして、徐々にその群落が点在し始める他、エンレイソウの仲間、サンカヨウ、ツバメオモト、コイワカガミ、ラショウモンカズラなどが足を止め、また、ウグイス、コマドリ、ミソサザイを初め、聞いたことのない鳥たちの囀りが頭上を覆います。
これまでこの辺りを歩く時は、テント装備であり、所謂、「通過区間」。また、観光で訪ねた時は8月の夏真っ盛りで、新緑が眩しい森をゆっくりと歩いたことがありません。この道を初めて通ってから今年でちょうど40年。上高地の過ごし方を通して、時代の流れを感じます(笑)
明神を過ぎて目的地のカフェへ到着。「あれっ?ロープが…休み?!」。電話をしてみると急用のため、臨時休業のこと。明日は営業をしているので、事無きを得ましたが、一瞬ヒヤリとしました。
帰りは10数年振りに「梓川右岸コース」を利用。木道が続く湿原ルートの印象が残っていましたが、意外と森の散歩道も多く、見る景色一つ一つに懐かしさと新鮮さが交差するコースでした。
キャンプ場に戻り、テントを設営し直して、本日の予定は完了。穂高を眺めながら午後の過ごし方を考えます。河童橋から歩いて5分程。観光客に混じってビジターセンターなど周辺をサンダル履きで散策する不思議な感覚。そして、再び、穂高と対峙する。こんな贅沢な時間はありません。
夕刻、ベンチをテーブル代わりにしての夕食。梓川の川音、ウグイスの谷渡り、暮れゆく吊尾根。徳沢にはない開放的な景色が小梨平の心象を良くします。
「小梨平キャンプ場」は今日から「極楽」と呼ぶことになりました。
いつも この景色から始まりを感じます
バスを降りると 出迎えてくれました…コナシ
何度訪ねてもワクワクさせる 朝の河童橋
ここからの焼岳を結構 気に入っています
小梨平キャンプ場へは 梓川ルートで…
ラショウモンカズラ…至るところで咲いていました
翼の青・白が森の中でも目立ちます…カケス
朝の散歩タイムに 出逢いました
上高地 白花シリーズ その1…ツバメオモト
その2は 名前通りの姿…ニリンソウ
その3は 名前も3番目…サンカヨウ
赤系は この花だけでした…コイワカガミ
どれにしようか迷ってしまいます
40年前と変わらぬ崇高…明神岳
雰囲気が変わる…梓川右岸ルート
上高地のもうひとつの顔…焼岳
新緑のグラデーションに 初夏の香り
いつか鳥たちを目的に訪ねてみよう…ヒガラ?
初めての近さに感動…ウグイス
河原には河原の来訪者…カワガラス(トリミング処理)
雲が切れて 光が届きます
追いかけて イカルチドリ (トリミング処理)
小梨平ならではの 景色が楽しめました
夕刻の散歩 高らかに ウグイスの谷渡り (トリミング処理)
至福のひととき 上高地に乾杯
6月3日
当初は曇り空となっていた空模様も、前線が北上せず、深夜2時頃には晴れる予報。深夜1時、23時には少し星が見えていたので期待を込めて顔を覗かせると、漆黒のカーテン。そして、2時過ぎ。期待通りに大小の光を散りばめた夜空の大キャンパス。
支度を整え、河童橋を目指します。徳沢でもそうですが、暗闇は平気でも「熊」が怖い。日中の目撃情報はあっても、この時間の情報はありません。南アの小屋でテン場から離れた谷間の水場にはラジオを流していたことを思い出し、スマホの音楽を鳴らし、手には安全装置を外した熊撃退スプレーを持って出発です。無事、河童橋に着いて渡ろうとすると、ヘッデンの灯りが橋上の大きな影を浮かび上がらせます。僕と同じように星空撮影に来ていた方でした…^^;
撮影を続けていると、空の明けていく様子が肉眼でも見て取れます。それは、撮影すると一目瞭然。これ以上の撮影は困難となり、帰りも熊に注意をしながら歩いていると、人の名前を呼ぶような声が未だ暗闇の森から響いてきます。昨年、大峯で見かけた「ジューイチ」でした。
シュラフにもぐって日の出時刻を確認すれば「もう寝てられないか…」。この日の長野県の日の出時刻は4時33分。早くなったものです。ベンチに座りながらその時を待ちますが、予定時刻を過ぎても一向に穂高の稜線は目覚めません。しばらくして木々の間からは、朝陽に輝く焼岳がストライプ状に見えています。
「そう言えば、前穂に登っていた時、乗鞍岳、焼岳、西穂高と順々に陽が当たっていったなぁ」と記憶が蘇りました。
朝食の準備をしていると明神岳の肩当たりから陽が射し始め、ケショウヤナギの陰影を際立たせています。そこからしばらく繰り広げられる光のショータイム。朝の一期一会。
山の頂も、麓も、里も関係なく、刻一刻と変化する様は時の流れを見ているかのごとく、心に刻み込まれます。そして、正しくここは「極楽」(笑)
気が付けば、穂高の峰々が目覚め、上高地の森も活気を取り戻します。昨日と打って変わって青空が広がり、梓川の川面はエメラルド色のグラデーション。ウグイスは高らかに鳴き、キビタキやイカルチドリが現れては去って行きます。朝の梓川畔は人間だけでなく賑かです。
昨日、果たせなかった約束。再び、明神を目指します。林床に届く光は力強く、照り返しは花の存在を消し去ります。ただ、鳥たちの囀りに変わりはなく、不意に舞い降りた「ミソサザイ」に続くことを期待しましたが、それは叶いませんでした。
誰も居ない明神橋。1月はここでモルゲンロートに輝く頂を見上げました。今日はブルーバックの明神岳。その頂が見守る明神池の畔に約束の地はあります。
平日の9時。お客は我々2人だけ。宿泊客を見送った女将さんと談話。すぐに思い出していただき、そこからあっという間の1時間。混雑している日曜より、かえって良かったかも知れません。
「また、来ます」新たな約束を交わし、上高地で大切にしたい地を後にしました。
この時間帯になると、登山者より観光客が目につく帰り道。少し早いけれど今回のテントライフを振り返ります。雨の心配はありますが、5月より人が落ち着く6月は、テントライフに適しているのかも知れません。霧氷が支配するモノトーンの世界も「上高地」であり、あらゆる生命体が手を伸ばし、太陽の恩恵を受ける世界もまた「上高地」。
「こんなことを続けていると山へは行けなくなるなぁ…」と思わないでもありませんが、安全登山を考えた場合、ひとつの選択であることは間違いありません。まだ本当の「極楽」へは行きたくないので、しばらくはここで過ごしてみようかと…。
下山後は、里の山友と合流してからのいつもの…(笑)
天と神降地をつなぐ 天の川
焼岳と天の川…河童橋より
レンズを通して 一足早く 夜明けを感じます
早起き「焼岳」…いつでも 男前
もうあの稜線を歩くことはないだろう…西穂高岳
光のシャワーが降り注ぐ…朝の上高地
ようやくお目覚め…奥穂高岳
小梨平の朝は 一期一会
穂高とともに 朝食を…極楽だ(笑)
藪の中から おはようございます…ウグイス
とりあえず 撮ってみれば キビタキでした(トリミング処理)
訪ねる度に違う表情…明神
ドラミングではなく 飛び回っていました…コゲラ
穂高神社奥宮の参道でもある 明神橋
5ヶ月振りの 灯りです
地元三重県産セミノールのコンフィチュール添え
逢えなかったコマドリを 1羽連れて帰りました
上高地~明神でも 堪能できました…ニリンソウ
林床に届く スポットライト
上高地は 花に鳥に動物に魚…カワマス
ようやく気付けました…コチャルメラソウ
河原の門番…ミソサザイ(トリミング処理)
上高地でも出逢えます…コミヤマカタバミ
「穂高よさらば また来る日まで…♪」
杏村から便りが届いた里でいつもの…(笑)
遅く起きた朝は…ドライブ山散歩
5月26日 奈良県日出ヶ岳
5月最後の週末。ゆっくりと朝を過ごしたい気分と下界の暑さを凌ぎたい気分。向かうは100名山の駐車場でした。
三角点の基準名は「大台ヶ原山」となっていますが、地形図は「日出ヶ岳」。そして、関西で大台ヶ原と聞けば、山の名前と言うより、この山域一帯東西5㎞に及ぶ台地を指すことが多いと思います。日出ケ岳は奈良と三重の県境に位置し、三重県の最高峰1,695mになっています。(県境でなければ、大好きな桧塚奥峰1,420m)また、南東の急斜面は太平洋からの潮風を受け、屋久島に匹敵すると言われるほどの多雨地帯です。
ここを初めて訪ねたのは家族山行を始めたばかりで、雨の中、合羽を着ての出発でした…今では考えられませんね…(笑) 山頂から次の目的地へ向かう途中で激しくなった雨は、やがて、道を流れ始め、気が付けば川の中を歩いているような状態。さすがに続行は無理と判断し、エスケープルートで駐車場へ戻りましたが、登山道の至るところで湧き水のように雨水が噴き出ていたのが印象的でした。
大台ヶ原はこの日出ヶ岳のほか、無数の立ち枯れが広がる正木ヶ原と標高差1,000mの大展望「大蛇嵓」が2大看板。行楽シーズンになると沿線の電車には吊広告で紹介されます。
その駐車場までは国道から20㎞弱の大台ヶ原ドライブウェイが結んでいます。前半は道幅の狭い箇所が続きますが、トンネルを抜けてからは対向2車線となり、車窓からは大峰山脈等が楽しめるパノラマ道路となります。(ドライバーは脇見運転注意です)
日曜の昼下がり、早くも下山される車に混じって、バイクでツーリングを楽しまれる方も多く見られました。駐車場手前には路上駐車があることから、午前中は満車であったことを想像できますが、今は8割程度の混雑ぶりです。
持参したお弁当を食べてからの出発。下界は30℃を超す真夏日ですが、今は22℃と快適気温。普段では考えられない14時出発も、駐車場から山頂まで良く整備された片道2kmだからこそ許されるものでしょう。
大台ヶ原は東西2つのエリアに分かれ、一般的なのはここ東大台エリエ。周回するルートと1本のエスケープルートを組み合わせて、自分なりの計画を立てます。また、自然保護が厳しい西大台エリアは、事前に有料の講習を受講した方のみが入れる原始の森。関西に残された貴重なエリアです。
鳥たちの合唱が響き渡る森を、囁くようにハルゼミが謳います。ほとんど上りがないまま木陰の平坦道を進むと、道沿いの沢が涸れ、石畳調の階段になります。初めて上りらしい急道を過ぎれば、前方には空の灯りが見え始め、熊野灘を中心とした太平洋を見渡せる展望台に到着です。今日は熱気で霞がちですが、入り組んだ海岸線と尾鷲の町並が小さく見えました。案内板には富士山の絵が描かれ、昨年11月に弥山から眺めた光景が思い返されます。ここから山頂までは木製の階段が続く、このルートの核心部(笑)。上るにつれ、正木ヶ原へと続く木道が見え始め、また、大峯奥駈道の峰々も屏風にように広がっています。駐車場からゆっくり歩いて40分。それでも、ホーム鈴鹿より500m髙い大台ヶ原は、トウヒの森が眼前に広がり、関西ではこの一帯でしか味わえない山の雰囲気を楽しませくれます。
帰り際、駐車場に建つビジターセンターに寄りましたが、歩く前に訪ねたほうが良いと思います ^^;
下山後は、自宅の近所で買ったものでいつもの…(笑)
右側が 1周9kmの東大台ルートです
ハートがいっぱい…コミヤマカタバミ
まだ 新緑の散歩道が 残っていました
楓は秋も良いけど この時期の方が 目に眩しい
苔と共生…森の精
笹原を貫く 石畳
展望台を過ぎれば 頂が 現れます
核心部の陰から 星が瞬く…ワチガイソウ
立ち止まって…正木峠
枯れ木は 大台ヶ原の代名詞
展望台に立てば 1700mからの景色
三角点には 寄付金が…
ホンシャクナゲのピンクが 目に留まりました
自然を守る 人工建造物群
大普賢岳(右)から行者還岳(左の三角)…大峯奥駈道
展望台からの…正木峠
展望台からの…大峯奥駈道
山深い 奈良の峰々
ティータイムの展望台は 静かでした
展望台から…ここは大台ヶ原の北東端
小さな小さな花でした…イワセントウソウ
関西最後の新緑でしょう
今日は ドラミングより鳴き声で…コゲラ(トリミング処理)
また 来年まで…
これは 2人分のいつもの…(笑)
ホームの谷と尾根…そして 花
5月12日 三重県鎌ヶ岳
早くも夏日を迎えた5月の週末。ホーム鈴鹿らしい谷と尾根歩きを楽しもうと主峰の駐車場に向かいました。
鈴鹿山脈の三重県側は断層帯となり険しく、伊勢平野に向かって急傾斜となっています。その地形的な特徴から幾筋もの美しい谷と尾根を縫う登山道と山麓には渓谷を楽しむ遊歩道。また、急崖は斜面を崩壊させ、それぞれが個性的な山容をみせています。その中で、ひときわ鋭角的な山容を魅せるランドマーク、それが「鎌ヶ岳」。鈴鹿の槍です。
鎌ヶ岳の登山口は大きく3つ。一般的なカズラ谷と縦走を楽しめる鎌尾根の「宮妻峡」。鈴鹿スカイラインを利用し最短ルートとなる「武平峠」。そして、谷と尾根を楽しむ今回利用した「旧料金所前」。
鎌ヶ岳は3年振りで、前回はイワザクラを目的に、長石谷~長石尾根を周回しました。その時に見たアカヤシオの谷が印象的で、その下を歩いてみたいと思い、三ツ口谷~長石尾根の周回ルートを計画。しかし、三ツ口谷を詰めた稜線直下は落石の危険性が高いことを知り、途中から長石尾根に合流するルートに変更しました。
トラバースや巻き道が続き、ルーファイも必要なためか、一般ルートでありながらも訪れる人は少ないようで、渓流の音や野鳥の囀り、そして今ならではの新緑を楽しみながら、ホームの谷と向き合えそうです。
人気ルートの御在所岳中道の登山口になっているため、駐車場を始め周辺のスペースは車で埋まっていました。駐車場で準備をする全ての方が御在所岳を目指す中、我々は来た道を戻り始め、三ツ口谷ルートに入ります。三滝川に沿って雑木林を進んでいると、時々、並走するスカイラインを走るエンジン音が静寂を破りますが、通り過ぎると「沢と風のシンフォニー」が再開されます。30分程歩いて分岐点となり、白い河原の向こうにぽっかりと口を開いたようにして待つ空間、いよいよ三ッ口谷の始まりです。
支流はすぐに渓流となり、岩肌は激しく流れる勢いで削られ、厳しさを兼ね合わせた渓谷美。崖にへばりつくように続く道は、所々崩壊し、片足が置ける程度の細さ。踏み外すと結構な高さで渓流に落ちるため、緊張が続きます。これが「鈴鹿の谷」と言ってしまえばそれまでですが、アルプスなどと比較してもその危険性は変わりなく、むしろ高いと言っても過言ではないでしょう。
傾斜が緩くなると現れる「名も無き滝」。一条、二条、滑滝…。新緑が水面に映るかのごとく、清らかな世界です。事前に調べていた難所「大滝」。その分岐点(迂回路)に気付かぬまま大滝へ到着。しかし、この時期は水量が少ないのか大滝と気付かぬまま(笑)通過し、崖の巻道に取り付き、迂回路と合流したところで「さっきのが、大滝か… ^^; 」。そこからしばらく歩くと長石尾根との分岐点となり、三ッ口谷を離れます。尾根に入ると夏を思わせる陽射しに晒されます。前方には露出して白く光る稜線と鋭角的な岩峰。谷筋を進むことで、知らず知らずこの高さまで登ってきたことに正直、驚きました。前回、ここを歩いた時は視界が良くなかったため、今日はどんと腰を下ろした「御在所岳」を見ることが出来、「さすが主峰だなぁ」と感じました。
ザレた斜面では自らを起因とする落石に気を配り、谷筋とは異なる注意力が必要です。少し平坦な場所で周囲に目を配れば、南部鈴鹿の名峰と少し霞んだ伊勢平野。束の間の休息です。そして、薮中の急登を過ぎれば、忽然と現れる山頂標識。1,161m 鎌ヶ岳登頂。
下りは長石尾根を利用しますが、全体的にザレており足元は安定せず、何度か繰り返される登り返し。また、両側が切れ落ちた箇所もある地味に厳しいルートです。そんな状況をアカ・シロヤシオやイワカガミなどの花たちに支えられ、長石谷と合流した後に待ち構える最後の渡渉と駐車場までの登り返しを務め上げ、無事下山。
下山後は、暑さに負けたいつもの…(笑)
どこからでもすぐに判るのは 本家の槍と同じ
今年は初めてですね…イワカガミ
岩陰にひっそりと?…キランソウ
玄関口は優しい表情の三ツ口谷
この道を超えなければ 次の道はありません
見事でしたが イメージと異なりました…大滝
御在所岳本谷とは 様子も雰囲気も異なります
鈴鹿の谷っぽい 素敵な場所でした
大滝よりも この滝が印象的でしたね
頭上が開けると 分岐点も近い…
長石尾根から 山頂を見上げます
ホームでは 一番急登が続く 鎌ケ岳
御在所岳…ピークは 真ん中左の小さな三角形
アカヤシオの谷は 新緑の谷となっていました
根元の葉が細いので…ハルリンドウかな?
5月と言えば この花ですね…シャクナゲ
山頂直下…伊勢平野までは指呼の間
見た目より厳しい…水沢岳へと続く「鎌尾根」
雨乞岳をバックに…アカヤシオ
新緑の長石尾根で帰ります
咲き始めのホワイトベル…シロヤシオ
下山までお付き合いいただきました
三ツ口谷越しに 鎌ヶ岳
最後の難所は 水量が少なくて 助かりました
冷たい いつものの季節になりました…(笑)