Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

2019登り納め...今年も無事下山

12月28日 奈良県観音峯展望台
天候の回復と霧氷を期待して、4年数か月ぶりに国道309号線を南下し、登山口へと向かいました。

ここ数年はおらが山の尼ヶ岳で納めていましたが、登り初めの準備(笑)のため、昨日が山の最終日。
午後には用事があり、下山後に寄り易い山域と思い、大峯山系の観音峯山を登り納めの山に選びました。このブログを始めてから何度か訪ねている大峯山系ですが、この山は初めての投稿になります。雪深い山域であり、厳冬期は厳しい登山となりますが、この観音峯山は前衛峰で比較的安全に登れることで、霧氷を楽しみながら大峯山系の稜線を眺める山として人気があります。前回訪ねたのは2013年1月。その時は雪を踏めたものの展望は叶わずで、今回は霧氷と展望に期待です。
稜線の雲も次第に取れてくるとの予報を聞き、登山口は8時30分の遅めで出発。上空はまだ青空が見えておらず、気温は冬らしい寒さとなっています。
吊り橋を渡り、遊歩道コースと反対方向に進むとすぐに階段の登山道となり高度を上げます。登り納め恒例の「尼ヶ岳」は天にも続く階段ですが、ここは暖を取る程度。また、このルートは「南朝ロマンの小径」として「天川南朝物語」の銘板が要所に設置され、登山だけでなく歴史を楽しむことが出来ます。
「観音の水」と言う水場を過ぎるとテラスになった第1展望台。そして、針葉樹が広葉樹へ変化してくると「観音平」が近付いてきたことの印。鳥居を抜ければ、休憩所の建つ観音平に到着です。ここから冬枯れの道となり、この時期ならでは明るい登山道歩きが楽しめます。途中、青空が見え、木漏れ日が地面を明るくしてくれますが、思ったほど天候が回復してきません。霧氷も期待できないのでは思い、展望台をピークとするのも有りかと話しながら進みます。
黄金色したススキが前方に広がれば、観音峯展望台に到着。前方に見える観音峯山は意外にも霧氷で染まっていました。展望は…、重い雲が稜線を覆い、霧氷との境界線を我々に見せてくれています。
反対に目を向ければ、山麓天川村辺りには陽が当る「山あるある」です。
前方の観音峯山にも時折、陽が当ることから、天候の回復を期待して向かいます。あわよくば、戻って来る頃には稜線の雲も取れているのではないかと言う期待も含んでいました。
手前のブナ林が続く1,285ピークには霧氷が付かず、環境と標高のわずかな差が生み出すことなのでしょうか。結構な急登を終え、霧氷の林が近付いてきましたが、近くで見るとさほど育っていないことがわかり、また、青空は冬の雲に押されたようで陽が射すこともなくなってきました。更に、稜線の雲に変化はなく、これ以上の前進に期待が持てず、当初の予定通り(笑)、ここを2019年登り納めのピークとしました。
今年の幕開けは上高地。初登頂は滋賀県「寒風」。改元のGWテントライフや初の東北遠征等、山と関わってきました。以前に較べれば登山回数は減ったものの、30回近く山と触れ合えたことには感謝したいと思います。何より、事故なく無事に下山できたことは山に感謝です。来年の12月も登り納めが出来るよう、安全登山を心掛け、来る「2020年登り初め」に向かいます。
下山後は、奈良らしい葛を使ったいつもの…(笑)

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駐車場からすぐの吊り橋…ここを渡れば登山道
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授業で習い そして 現場に立つ大切さ
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ここだけ切り取れば 「おらが山」の登山道
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ここからは 冬枯れの道…観音平
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青空が出迎えてくれました…観音峯展望台
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久しぶりに…(笑)
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霧氷は風の流れと共に…観音峯山
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遠くに霞むは 「ダイヤモンドトレイル」
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麓は暖かそう…遠くは弘法大師の「高野山
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我々には 届かない世界
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いつか その姿を眺めてみたい
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冬のブナ林は 更に明るさが増します
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金色の野に建つ 観音峯展望台
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次回は 青空と稜線をお届けしたい
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これはこれで好きな景色ですが…
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今日は 5組9名様と出会いました
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辛うじて…バリゴヤの頭
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今日のブルーアイは 大きかった
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2019年 これにて稜線展望は終了
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この山域に登る もうひとつの楽しみ…「黒滝のこんにゃく」
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これは定番の楽しみのいつもの…(笑)

「冬の青空」と「試練と展望の山」

12月15日 岐阜県白草山
機会があればと思っていた「白草山」。ようやくその時が訪れ、今回の核心部「林道」を抜けて登山口の駐車地に向かいました。

岐阜県と長野県の境にある白草山は、御嶽山系に位置し、標高は1,641m。山頂付近の稜線は、笹が生い茂るなだらかな丘陵地となり、過去には放牧地として利用されていたそうです。
この山の特徴は山頂付近からの展望。東西南北に山が広がり、北アルプスに向かって押し寄せる山波の雰囲気が楽しめます。登山ルートは3つあるようですが、今回は一般的な乗政ルートを利用しました。
林道路肩に設けられた駐車地には、1台停まっており、準備をしている間に続けて2台(3人)来られました。出発してしばらくは、舗装されていない黒谷林道歩き。林道の谷側は深く切れ落ち、時折、ガードもありません。また、山側は露岩した個所もあり、何事もなきことを願うばかりです。
出発した際、冷え切っていた身体がようやく温まり始めた頃、先ほどまで眼下の谷底を流れていた乗政川支流に危なっかしい木橋が架けられた登山口に到着です。
昨日の午後、麓に降った雨は雪だったようで登山道はうっすらと白くなっています。ここから稜線までは展望のない、つづら折りの道。肩幅程度の道は急斜地を横切るトラバースで、見た目以上に危ない道が繰り返されます。林道歩きに続く、この連続トラバースが「展望」のための「試練」です。
高気圧の張り出しが予定より遅く、高曇りが解けません。ここは、ゆっくりと山頂に向かった方が得策だと判断しました。稜線に入るとようやく右側の視界が開け、何かほっとした感じになります。西の空に青空が見え始め、陽射しが道を照らす時間が増えてきた頃、左側の視界も開け、白く浮かび上がる加賀の島「白山」を望めました。しばらくして、白山に陽が当たり始めると、自らが光を放つかの如く、神々しい光景です。この辺りで、試練から展望の山へ変化し、右側には目的地の「白草山」が指呼の距離です。
白草山は御嶽山を望む山として人気があります。しかし、最後の最後までその展望はお預け。登山道を境にし、県境尾根の西側には箱岩山があり、空模様から先に登ろうと思っていたものの、分岐点を通り過ごし、「どっか~ん」と現れる御嶽山の眺望に引きずられ、そのまま白草山へ向かいました。
そこから山頂へは、わずかに高度を上げるだけですが、御嶽山の左側に乗鞍岳笠ヶ岳に続き、黒部五郎岳薬師岳北ノ俣岳が真っ白な山嶺を輝かせていました。
そして、登頂後に落ち着いて眺めていると、小さな黒い三角形。槍ヶ岳を確認。周囲を見渡せば、もうひとつの御嶽山展望の山「小秀山」から恵那山。雲の地平線にかろうじて伊吹山の山体と雲に浮かぶ白山。また、山座同定アプリの力を借りて、ホーム鈴鹿の稜線や奥美濃「大日ケ岳」、福井の荒島岳を確認。それらに向かって幾重に続く山並みは、名も知らぬ山々が重なることで映し出すグラデーション。日本らしい美しい山の光景です。
高曇りの空は刻一刻と青くなり、高気圧が上空を覆う様子が感じられます。アルプス等で、目の前を覆うガスが晴れて忽然と現れる景色と同じぐらいの感動を与えてくれます。
箱岩山に立ち寄り、12月とは思えない陽射しを受けながら昼食を済ませると「試練と展望」は終了。と言いたいところですが、駐車地までの下山が残っており、雪で滑らないよう登り以上の注意が必要です。
下山後は、温泉に浸かって、さらにほっこりとするいつもの…(笑)

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ゲート手前の案内板…CTはちょっと速足系
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レポでよく紹介されます…モヒカン尾根
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晩秋から初冬へ
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尾根道は笹を切り開いた一本道
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山並みの彼方に浮かぶ 伊吹山
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雲上に横たわる 加賀の名峰
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笹波に揺れる 白草山
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ファーストコンタクト 展望ルートのはじまり
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笹原の稜線は この辺りの特徴でしょうか
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雪を纏えば さらに神々しい飛騨の名峰
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振り返れば 箱岩山
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孤高の輝きがひときわ…白山
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北ノ俣、薬師、黒部五郎…逢えて良かった
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笠ヶ岳から続く稜線には かすかに劔岳立山
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黒い岩峰は北アのランドマーク「槍ヶ岳
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近くて遠い頂…御嶽山剣ヶ峰
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まだまだ黒いところが目立つ 今年の北ア南部
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雪がなくても輝いて見えました...恵那山
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高気圧 到着(笑)
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御嶽山とともに 箱岩山へ移動
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笹道から振り返れば 白草山と恵那山
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やがてこの木も 真っ白に染まることでしょう
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これにて「御嶽さん」とお別れです
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林道でご挨拶…コガラ (トリミング処理)
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餅の代わりに浸かってみたい いつもの…(笑)

関西の冬…精霊の森 再び

12月4日 奈良県明神平
関西の峰々も初雪や霧氷の便りが届き始め、素敵な貴方と再会すべく、晩秋の林道を走ります。

今年2月、暖冬の影響で林道が凍結せず、初めて訪ねた冬の明神平。結界を思わす霧と時間さえ止めてしまいそうな霧氷の木々。精霊に見守られながらの山行は、厳冬期ならではの出逢いがありました。
2019-20の冬を迎えるにあたり、天気予報の晴れマークに少し期待しつつ、その反面、前回の雰囲気と再会してみたい複雑な気持ちで出発です。
駐車地へ向かう大又林道は、台風の影響か枝葉に覆われた個所も多く、道路状況から慎重な運転が求められます。いつものようにすれ違う車はなく、駐車地に着くと、先行車は他府県ナンバー(自分も他府県ですが…)の2台でした。
落ち葉で染まった林道歩きがしばらく続き、秋から冬への移り変わりが終焉したことを感じます。陥没した林道を過ぎたところで1組の先行者を抜き、やがて道は本格的な登山道となります。
明神平へは大きく3つの区間にわかれます。まずは、駐車地から登山道までの林道歩き。そして、四郷川沿いの明神谷歩き。続いて、山の懐深くに入っていく精霊の道。
登山道に入るとすぐに現れる第1徒渉地点。駐車地に向かう林道から見える景勝地「七壷八滝」の水量がいつもより多く感じたので、少し心配をしていましたが、普段通りの水量で難なく渡れることが出来、まずは一安心。
核心部としては、やはり徒渉の続く大又川沿いの谷歩きでしょう。ロープの張られた徒渉は3ヶ所ですが、それよりも、ゴロゴロとした岩が露出しており、名も無き大小の滝に目を奪われていると転倒につながりかねません。
途中、テント泊装備の方が「上は吹雪でした」と言われ、思わず笑みを浮かべるバンビーズ…(笑)そして、駐車地の車は3台。引き算でここから先は私達の世界になります。
冬枯れの明るい森は視界が広がります。グリーンシーズンではお目にかかれない、何層にも分かれて落ちる明神滝の全景が木々の間からはっきりと見えます。
「キケン」と書かれた桟道を過ぎ、つづら折りにかかると、精霊の世界が近付いてきたことを感じます。前回も書きましたが、ここから「山が変わります」。霧に包まれた森に響く風の音。それはまるで息吹に聞こえます。
郷川源流域からショートカットで植林地を登れば水場。ここから明神平に向かう森は、ホーム鈴鹿では感じることの出来ない、正しく「精霊の森」。
今回の目的は前回同様「桧塚奥峰」でしたが、今日も明神平を折り返し地点とします。下界は晴れても山深い台高の空は、なかなか青くなりません。頂の展望を楽しむ訳ではない明神平では、この白く視界の利かない世界も白銀煌めく晴天下の霧氷に匹敵するぐらいの感動があります。
その明神平を前に服装を整えます。アウター、手袋、バラクラバ…。風への対策は怠れません。
境界線とも言える木々を抜けると僕にとってのシンボルツリーに出迎えられ、その再会を喜びます。意外にも風は更に上空を流れており、少し拍子抜けした感はありますが助かりました。
1,323m。町はようやく冬らしくなってきたと言うのに、ここは別世界。ひとつ間違えれば、簡単に精霊は魂を吸い取っていく世界です。そんな世界と久しぶりに聞く「冬の風音」。今シーズンも始まった冬山山行に気持ちを入れ替えるバンビーズです。
目には見えない世界が感じられる場所。それが今日みたいな日。でも、晴天の時に訪ねたいと思う邪心も捨てきれません。いつか精霊が許せば、そんな世界を紹介してみたいと思います。
下山後は、タルトのカフェでいつもの…(笑)

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落ち葉道は 冬への道先案内人
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明神谷への関所…第1徒渉点
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クロスロープを頼りに…第2徒渉点
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自力で渡れる…第4徒渉点
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苔と冬枯れの共演…明神谷
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小梢を洗う 明神滝
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この世と異なる世界が ここにあります
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折り返す度に近付く 精霊の森
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郷川は歩幅程度になりました…源流域
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驕りや欲とは 無縁の世界観
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やがてこの道は ミルキーウェイとなります
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頭上を覆う 白き精霊
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誰かが見つめています
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静かに見守る 黒き精霊
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いつも心がざわめく 境界線
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出迎えてもらっている…そんな瞬間です
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ランドマーク的な存在…「あしび山荘(非公開)」
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今日もここまでが許された世界
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貴方と再会できて 良かったです
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ミルキーウェイは 天にも続きます
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色を失くした明神平は 美しい
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また 会える日まで…
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精霊たちに見守られながら 下山します
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色を取り戻して 人間界へ
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こんな日の精神を暖める いつもの…(笑)

秋の円遊…静かなる比良

11月17日 滋賀県堂満岳
稜線から中腹へ移り変わる関西の紅葉。静かに秋を感じようと、以前から気になっていた山の麓を目指します。

かつて、近江国と呼ばれていたこの地域の優れた風景を描いた「近江八景」。そのひとつ、冬の比良山地を題材にした「比良暮雪」。そこに描かれている山が、比良山地の中央に位置し、三角形の頂を持つ山容が対岸からもひと際目立つ「堂満岳」、別名「暮雪山」。南北の急斜面は「南壁」「北壁」と呼ばれ、特に北壁は「堂満ルンゼ」、冬のエキスパートルートとして紹介されています。
頂を目指すルートは、山麓のイン谷口(通称、イン谷)から入る「堂満東稜道」と金糞峠を経由して入るシャクナゲ尾根の「東レ新道」。今回は東稜から山頂を目指し、東レ新道から北比良峠を経由してイン谷へ戻る、周回コースとしました。イン谷周辺にも駐車地はありますが、下山ルートの短縮を優先し、更に奥にある駐車地を利用します。ここは比良山地の主峰「武奈ヶ岳」方面へ行く方がよく利用されるものの、道幅が狭いことと、駐車地が舗装されていないのが欠点でしょう。
車道を5分ほど戻ってイン谷。ここから堂満岳の登山口へは林を抜け、小川を渡渉し、別荘地として利用しているかのような民家を過ぎれば到着です。まずは「ノタノホリ」と言う、モリアオガエルが生息する池を目指します。山に入って感じる匂いは秋から冬のもの。しかし、木漏れ日はすぐさまに身体を暖め、袖を捲って体温調節を図ります。所々に色付き始めた広葉樹を眺めながら、小1時間でノタノホリに到着。途中、比良らしい溝道や小川の畔を歩きます。ただ、雨上がりはちょっと避けたい道かもしれません。
ノタノホリを過ぎ、やがて道はトラバースに変わり、正面谷を境にして山腹を染め上げた「釈迦ヶ岳」が貫録のある姿を見せています。イン谷を出てすぐに渡渉した古崎川の源流域を過ぎると、いよいよ紅葉ゾーンに入り、そこからしばらくは足を止めては見上げる回数が増えてきました。赤や黄色に橙色。そして、夏から秋へのグラデーション。「日本の秋」が次々と現れては通り過ぎて行きます。東稜を境にして風の当たりが変化し、次第に指先が冷たく感じるようになるのは、さすがに11月。後方に広がる琵琶湖が木々越しに見えるようになってくると、このルートの核心部、急登の始まりです。前方には冬枯れの木々の間から見える三角形の影。実はこれは偽ピーク。手を使った登りは更に続き、このルートは下りに利用できないと感じました。この山域の特徴のひとつとして、琵琶湖を俯瞰しながらの山行でしょうが、最近訪ねる比良山地は西側の坊村から入る武奈ヶ岳が多く、湖岸から少し離れてしまいます。堂満岳は琵琶湖に向かって東稜が伸びるため、この山域ならでは景色を楽しめることが出来、そして、冬枯れの今だからこそ楽しめる展望もあります。遠く列車の走る音が聞こえれば、JR湖西線の高架橋に目を凝らし、過ぎ去る車両を探します。正に、巨大なジオラマ劇場です。
直登を終え、冬の比良の厳しさを物語る背の低いシャクナゲを抜ければ、1,057 m 堂満岳に登頂。さほど広くない山頂ですが、琵琶湖側に展望が開け、美しい湖岸を描く琵琶湖の向こうにはホーム鈴鹿の峰々が伊吹山へと続いています。錦秋の森と眼下に広がる琵琶湖。そして、彼方にはホーム鈴鹿青い山脈。ここまで出会った方はなく、この山を貸し切りで楽しむ贅沢な時間。
「主峰・武奈ヶ岳」の陰でひっそりと佇む「堂満岳」は秀峰で、変化に富んだルートを持ちながらも静かに山行を楽しめました。
金糞峠を経由してこの山域の人気スポット「北比良峠」に到着。ここから神爾谷の向こうに広がる琵琶湖と内湖。その展望を楽しみながら大勢の登山者が昼休憩を楽しんで居られますが、かつて、この谷にロープウェイが運行されていたことを何人の方がご存知でしょうか。ちなみに、僕は乗車したことがあります…(^^) 
下山に利用した「ダケ道」は、比較的歩きやすい道で、常緑樹の間から「堂満東稜」が垣間見え、午前中の山行を振り返ります。最後に川を渡って、正面谷ルートと合流すれば、駐車地まであと一息。車を利用した場合はピストン山行が多く、今回のような完全周回ルートは貴重であり、何より、素晴らしい自然の彩を大好きな琵琶湖と共に過ごせたことに感謝です。
冬枯れが山麓に広がり、稜線には霧氷や雪が付き始める。そんな景観を予感することの出来る今日の山行でした。
下山後はこれも気になっていた工場直売所でいつもの…(笑)

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早くも駐車地から 秋のお出迎え
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頭上から降り注ぐような 秋の香り
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何とも言えぬ雰囲気でした…ノタノホリ
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秋の玉手箱…古崎川源流付近
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足元にも秋は広がります
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東稜に向かう山腹が 紅葉祭りの入り口
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ひときわ高い木々が競う 紅葉広場
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静かな時間が流れる 錦秋の世界
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若さを感じる紅葉もあります
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東稜では 名残紅葉が出迎えてくれました
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琵琶湖の波光が 紅葉を陰らせます
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手元で感じる 稜線の紅葉
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冬枯れの散歩道は 青空が似合います
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琵琶湖を背に 核心の直登
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琵琶湖最大の島「沖島」を眺めます
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石楠花の先には…頂上の標識
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地図通り(笑)の湖岸線…小さく琵琶湖大橋
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主峰 武奈ヶ岳と西南稜…そして 霧氷の山 コヤマノ岳
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山肌の彩りを眺めながら 北比良峠へ
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前山から北比良峠と釈迦ヶ岳
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琵琶湖はやはり素敵な場所だ
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見た目以上の急登でした…堂満東稜道
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午後の陽射しは 紅葉に磨きがかかります
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湖岸の国道から 堂満岳と東稜
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暖かいお茶でほっとしたくなる いつもの…(笑)

ホーム解禁…女王と紅の羊たち

10月30日 三重県竜ヶ岳
蛭休みだったホーム鈴鹿。晴れ予報に期待しながら、今週末は混雑が予測される駐車場に向かいました。

ホームが再開されると季節は秋本番。ところが、今年はようやく朝晩が秋らしくなってきた程度で、紅葉も遅れ気味。天候と所用でひと月以上も山行から離れており、慣らし程度の山と思っていましたが、平日の晴れと言うことで、週末には登れない人気の竜ヶ岳に決めました。
ここは開放的な稜線「遠足尾根」を楽しめることから、近年は季節を問わず人気が高く、特に、シロヤシオの咲く頃や紅葉が始まると大勢の登山者で賑わいます。また、冬になれば関西屈指のスノーシュールートは、時には登頂を拒む難コースにもなります。この時期、牧歌的な景色を楽しめる山頂直下は、白い羊と称されるシロヤシオが紅の羊となり、谷を駆け抜けます。四季折々、訪ねる人に違う表情を魅せる竜ヶ岳は、ホームの中でも変化に富んだ山です。
台風の影響を心配しましたが、林道や登山道に倒木はなく、青空を背にした女王を目指し、植林帯の急登と向き合います。支尾根にのると、頭上を覆っていた針葉樹は広葉樹となり、稜線と斜面は昼と夜の境界線に見えます。昨年の11月中旬、このあたりの紅葉は見頃を迎えていました。今は少し色づき始めた程度ですが、台風の影響か、葉を落とした木々も多くあります。
アップダウンやトラバースを経て、ロープの張った痩せ尾根区間を過ぎると、尾根の名前に相応しい「大人の遠足気分」が味わえるルートの始まりです。
前回ここを訪ねたのは2月。山仲間、バンビー4の冬遠足。今年は雪不足で真っ白な女王とは成りませんでした。今は、ちょっと秋色になった女王の頂が稜線の向こうに見えています。
ここから女王の下へは、アセビの庭園やシロヤシオの林、天に続く笹原の一本道など、移り行く季節を楽しむかの如く、素敵なプロムナードを進みます。昨日の雨の影響か、朝、自宅周辺は濃い霧に包まれていました。今も山麓の町並みは霞んで見え、伊勢湾の海岸線も光の中に浮かんでいます。
気の早いシロヤシロが「紅一点」と言わんばかりに仲間の林で色付き、際立っていました。斜面一帯が染まる紅葉は見事ですが、オンリーワンの紅葉も目を引きます。そんな秋色とは対照的に、濃い緑色の葉を陽光に照らすアセビの若木。誰かが手入れをしているわけでもないのに、その配置は日本庭園を思わせます。年々、泥濘度合が進み、歩きにくくなる直登を終えると、金山尾根分岐。周回する場合に利用するルートのひとつです。ただ個人的には、登りと下りで表情が異なる遠足尾根のピストンをお勧めします。
近付きそうで近付かない女王。それでも、頂部分が覗いていた最初とは違い、その姿を現す毎に奥深さを増していきます。蛇谷に向かって流れるように折り重なった斜面はしなやかで、見る者の心に安心感を呼び起こします。気品に溢れたその表情は、いつ見ても「鈴鹿の女王」。
山頂上空だけ雲が沸き、この一帯だけが陰となるのは「竜ヶ岳あるある(笑)」。時々、雲間から現れる陽射しが斜面を照らすと、まるで命を吹き込まれたかのように紅の羊が駈け抜けます。次々と谷を駈け上っては、遠足尾根を越えていく羊たち。そして、雲に覆われて陰になれば、動きがピタッと止まります。そんな寓話の世界がここに広がります。
山頂は思った以上の賑わい。風も穏やかでそれぞれが昼食を楽しんでいる様子でした。我々はいつもの場所へと移動し、女王と向き合いながらのランチタイム。展望よりも…「We LOVE 女王」です。
ホームを初め、関西周辺の秋はこれから。そんな思いを抱きながら、いつもの場所に向かいます。
下山後は、ハロウィン仕様に一瞬心が動いたものの、定番でいつもの…(笑)

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いつ見てもワクワクする稜線…車中からの遠足尾根
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第1ポイント…岩山の展望台
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木洩れ日が優しい 冬枯れ風な「秋の稜線」
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下部は枯れていました…トリカブト
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さて 遠足気分の始まりです
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ここで お月見をしたい気持ちになります
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緑のグラデーション…もうひとつの秋景色
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紅葉を先取り…シロヤシオ
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あの登りが遠足尾根の核心部
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核心部から振り返れば ちょうど良い 休憩ポイント
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秋の雲とは思えない…10月30日の空
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羊を見守る貴方は…竜の羊飼いか…
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蛇谷へ下りて行く 紅の羊たち
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派手さはないが 心を打つ 関西の秋
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小高い丘を乗り越えて…
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羊が一匹、羊が二匹…zzz
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陽射しとともに振り返る…登頂がまた遠くなる…(笑)
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今日の出逢いは…一期一会
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さて 昼食場所に向かいましょう…
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この辺りから望む姿が 一番美しいと思う
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次は 雪の頂を 魅せてください
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日本の秋は 素敵ですね
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結構 気に入っています…アセビ庭園
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ようやく 秋らしい空に なってきました
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秋の大人をイメージしたいつもの…(笑)

秋と夏が交差する…奥秩父テントライフ

9月14~15日 山梨県金峰山瑞牆山
16日の天気に確証が持てず、今回も出発当日に山行計画を変更。各地の登山口では早々と満車になった情報が届き、若干の不安を抱きながら駐車場に向かいました。

9月14日
急きょ予定を変更したとは言え、富士見平で幕営し、金峰山瑞牆山を訪ねる計画を立てたのは3年以上前。登山口から小屋まで約1時間で着くこと。南アルプスの大展望が楽しめること。そして、初めての山域だということが魅力でした。
前夜、心配していた駐車場は、出発時(6時)でも半分に満たない状況。秋を思わす、ひんやりと透き通った空気。気温は13℃。それでも登り始めれば、じんわりと汗ばむのは夏の終わり…。
樹林帯の緩やかな登りが変化を見せ始め、林道を横切った後も、しばらくは登りが続きます。踏み跡がいくつも分かれ、目印となるテープも少ないことから最初は戸惑いましたが、結局、道は繋がっており、歩きやすい道を進むのが正解のようです。頭上を覆う広葉樹は夏から秋へと衣替えの途中で、まるで新緑を思わす瑞々しい色を発し、やがて本格的な秋を迎えたこの森の光景に思いを馳せます。
前方に尾根らしいシルエットが見え、そして、忽然と現れる「瑞牆山」の岩峰群。イタリア南部チロル地方のドロミテ山塊を彷彿させる一瞬です。
茶色くなった葉にも関わらず、まだ大きな黄色い花を付けているマルバダケブキが見えると「富士見平」。その開けた地に建つ「富士見平小屋」からは樹間に富士山が顔を覗かせていました。
鳥のさえずりが響く朝の森。その緑濃い中に、人工色のテントがポツンポツンと点在しています。人通りの少ない奥か、小屋に近い手前かは迷うところですが、奥に行くほど下り坂になっていることから、小屋近くに張りました。
ここから金峰山までのCTは往復6時間20分。荷物を詰め替えて出発です。
最初のポイント「大日小屋」までは、苔の森を横目に緩やかな登り下りを繰り返す「横八丁」と呼ばれる道。次のポイント「大日岩」へは「縦八丁」と呼ばれる直登。その後は、再び、苔の森歩きとなり、3連休の初日とは思えない静かな山行が続きます。地図から想像できるように、前半は樹林帯と長いお付き合い。最終ポイント「砂払ノ頭」で森林限界を迎え、景色は一変します。まだ見えぬ山頂へと続く稜線に富士山、南アルプス、中央アルプス、八ヶ岳へ続く大展望。今日は湿った空気の影響か、見事な雲海が眼下に広がり、大海原に浮かぶ島々のごとく、峰々の稜線が続きます。ただし、その影響は蒸し暑さも呼び起こし、夏に戻った感じです。
岩峰を通り過ぎる度に全身運動を求められ、照り付ける太陽は容易に体力と気力を奪います。遠くからも目立つ金峰山のシンボル「五丈岩」。歩いた分だけ近付いているはずですが、なかなか距離が縮まらない感じです。それを癒してくれるのが、雲海に浮かぶ「南アルプス」。甲斐駒ヶ岳から聖岳まで一望です。丁度、荒川三山を周る番組を観たところで、自分達が行った山行と今見る三山がオーバーラップします。
山頂へ続く最後の登りの手前に広がる平坦地を境にして鎮座する「五丈岩」。ここから見ると、背が低くなった印象です。まずは、そのまま山頂に向かい、その途中で振り返れば、よく見かける光景。
金峰山に来たんだ」と実感しました。
五丈岩前広場には大勢の登山者が休憩されていました。富士見平小屋からのルートでは、これほどの人は登っていなかったため、別ルートの方が人気なのでしょう。しかし、そんな賑やかな雰囲気にも窮屈さを感じない広々とした世界でした。
下山を始める頃には山頂部分は姿を隠し、樹林帯に入ってからは雲海ゾーンに入った感じです。大日岩辺りで雲を抜け、若干、オレンジ色を帯びた午後の森。ほぼ最終組となった私達ですが、森と同化し、その静けさを楽しみます。そして、山頂以上に賑わいを見せているテントサイトに戻り、まずは心と身体をリフレッシュ。
夕暮れを迎え、次第に濃くなる樹間を眺めながら、夕食の支度に取り掛かります。昼間の暑さは暗闇に溶け、羽織るものが必要なテントサイト。久しぶりに歩いた疲れと共にテントライフを楽しみます。

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次の世界に続く 扉が待っています
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明日はあの頂から どんな景色が待っているのだろう
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森に溶け込むような建物…幟が目印(笑)
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名前のとおりです…富士見平小屋
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小屋番さんはお留守…その代わりに ゴジュウカラ
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視界が通れば 南アルプス…稜線歩きが待ち遠しい
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苔に寄り添う 秋の印
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誰もが足を止めて 眺めてしまいます…縦八丁
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どう表現すればよいのでしょう…大日岩
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道は再び 苔の森
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あの稜線を歩くことは あるのだろうか…間ノ岳~北岳
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あの稜線は歩きました…赤岳~天狗岳
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打ち寄せる大波 そして 彼方へ続く南ア諸島
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今日の雲海は 泳げそうな勢い(笑)
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思い出の頂「荒川三山」そして 未踏の頂「聖岳
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大海原に浮かぶ 火山島のようです
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緑と岩の稜線…五丈岩は遠い…
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振り返れば 鋭角な稜線が続いていました
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五丈岩はこの角度が好きかなぁ…
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本当に今日の雲海は 美しかった
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そろそろ展望とも お別れです
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五丈岩だけが金峰山ではないと 語りかけられました
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雲に向かって 下ります
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ようやく 花と出会えました…アキノキリンソウ
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初めての奥秩父 森の中のテントライフ…

9月15日
昨夜から未明にかけて予想外の雨。今も時折、フライシートを叩く滴の音。午前中の予報は晴れマークだったため、心配はしていませんが、テントの片付けまでには乾いていることを願います。森の中にあるテントサイトの朝は遅く、5時近くになっても灯りが必要です。出発時には何とか自然光で歩けましたが、この暗さにも秋の訪れを感じます。
瑞牆山へは小屋の左側に登山道が続いています。雨で滑りやすくなった道は、やがて、天鳥川に向かって下り始め、同時に考えることは「帰りは登り返しか… (;’∀’) 」
飛び石で渡渉すると、目の前には真っ二つに割れたように見える「桃太郎岩」がその巨体を視界一杯に立ち塞がります。
瑞牆山」と言えば、天を突くような花崗岩の岩峰が稜線付近に連なるイメージ。13年前の夏、自然公園キャンプ場から初めて眺めた時は「歩けるの?」と思いました。昨日、その頂きへのルートはどうなっているのか調べてみると「歩きやすい整備された道」とのレポ。であれば、一般道でもあり、これまでの経験上、対処できるだろう思っていました。確かに、人が多く通るのか荒れた道ではありません。それでも、ホーム鈴鹿の本谷を歩く感じの箇所もあり、ここを一般道と紹介して良いのかと感じます。小屋には、子供用ヘルメット無料貸出と案内していましたが、「ヘルメットで頭を守れてもなぁ…」は個人の意見。
滑りやすい丸太橋、前に誰も居ないと必要なルーファイ技術。一部とは言え、北穂南稜より困難な鎖場。登山道はその標高と合わせるかのように技術が求められます。
天を貫く岩峰に陽が当たり、一段と白く輝いているのが梢越しに見えました。後で知りましたが、大ヤスリ岩と言うそうで、クライマー達の垂直登山道です。
この辺りから登山道は核心部を迎え、金峰山以上に全身運動が求められます。右に左に大岩を巻きながら稜線まで登りつめると、山頂まで10分の標識。ようやく手を使わないで済むと思いきや、そんなに甘くはありません。最後に木のトンネルをくぐり抜けると、世界が開放されて、断崖絶壁、瑞牆山に登頂です。
横に長い山頂部は一歩間違えれば重力の法則にしたがって、身体は下へ、心は上へ… (-_-;)
そんな事態にならぬよう慎重に行動します。幸い、先行者1名であったため、自分の思うように行動ができましたが、混雑し始めると、長居は禁物です。
山頂からは昨日と同じような景色が広がります。違いは、その高度感。比べものにはなりません。
約束があったため、早めの出発したことが正解で、ゆっくりと山頂からの展望を楽しめました。
次第に人の声が増え始めた山頂を後にし、更に、慎重な足運びで下山の途につきます。
帰り道、大勢の登山者とすれ違いました。人為的落石、転倒、滑落…山に危険は付き物。大きな事故が起きていないのが日常的な光景かもしれませんが、決して、瑞牆山はハイキングコースではないことを記したいと思います。
テントサイトに戻り、約束の時を待ちます。昨日、偶然にも群馬の山友が瑞牆山を訪ねることを知り、小屋到着時刻を見込んで下山してきました。待つこと10分。3月以来の「こんにちわ」。そして、「また、会いましょう」。
山友を見送りテントの撤収にかかります。今夜、いつもの山友と会う約束をしていたため、気分は下山後の楽しみに変わってきています。それでも、登山口への下りでは、広葉樹の明るい森と岩が織り成す立体日本庭園を楽しみながら、1泊2日のテントライフを振り返ります。決して、ゆっくりと過ごしたテントライフではありませんが、それぞれ特徴が異なる山を楽しめた2日間でした。
下山後は前回気になっていたカフェコーナーでいつもの…(笑)

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樹間に岩峰…どんな出会いが待っているのだろう
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ここから 第2ステージの始まりです…桃太郎岩
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何か所かある鎖場…高度とともに角度もつきます
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山頂からの展望を期待させる 今日の富士
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花を見ると 落ち着きます…アキノキリンソウ
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この岩峰を過ぎてからが 核心部
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巨岩区間…下りは ルーファイが必要
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明暗が分かれる 谷合の道
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稜線に乗っても 油断はできません
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光の国が 今日の折り返し地点
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広いように見えて 安心できる場所は限られる頂
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山深い景色が広がる 奥秩父
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同じ景色でも 世界が変わる 山の展望
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太古の八ケ岳の稜線が 見えてきそう…
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先月 辿りつけなかった頂…御嶽山
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第2幕はあるのだろうか…杣添物語
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あの稜線から北岳を見ている予定でした
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山頂より高く見えますね…五丈岩
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夏の終わりに大輪の花火…ミヤマダイモンジソウ
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今日も茸は 豊作でした
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「行ってらっしゃい」…また逢う日まで
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即席パスタで テントライフは終了
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山と人に出逢えた2日間…ここでも また逢う日まで
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夏と秋が交差する和のテイストでいつもの…(笑)
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山行日数は減ったのに 増えたいつもの…(笑)

2019夏山…小屋とテントの2本立て

8月5~6日 福島県会津駒ケ岳
8月7~8日 福島県燧ケ岳(俎嵓)

台風の進路と影響が読めず、出発前夜に山行計画の大幅な変更。準備不足が否めない中、まずは観光食べ歩きから始め(笑)、異様な隧道と真っ暗な酷道を抜けて登山口に向かいました。

8月5日
以前、名前にまつわる情報番組で紹介された桧枝岐(ひのえまた)村。山深いその土地をまさか訪ねるとは思ってもおらず、また、後で知ることになる村人と尾瀬との関わりや、村民だったバディのフォロワーさんとの出会いなど、今旅の「巡り合わせ」を感じました。
今日目指す「会津駒ケ岳」、通称「会津駒」。初めての山域だけでなく、福島県を訪ねるのも初めてです。会津駒周辺は草原のような稜線になっており、特に、中門岳に続く稜線は池塘が多く、天空の楽園とも言えます。そして、その山頂手前にある避難小屋を管理するご夫婦の人柄で人気のある「駒ノ小屋」。今回のツートップです。
会津駒の登山ルートは3つ。バスを利用する周回ルートもありますが、情報不足の私達は一般的な滝沢ルートの往復を計画しました。出発は夏山としては遅い6時。「東北の山」と言う勝手な印象で、1100m付近からの登り始めでも涼しいのではと思っていましたが、これは大誤算。後で管理人さんに尋ねると、今日の暑さは今夏一番で、風もなく、小屋周辺でも7時には暑かったそうです。
最初の急登で滝の大汗。そして、虻との戦い。登山道が整備されていたのは救いです。階段が現れ、広葉樹の日傘が途切れ始めると、右側に広がる草原の向こうに「会津駒」のシルエット。ベンチを過ぎると池塘が現れ始め、草原を2分する木道の先に三角屋根が覗いています。木道の脇にはイワイチョウやワタスゲにキンコウカ。湿原を代表する花が飾ります。最後に今年も当たり年だと言われるコバイケイソウの群落を抜けると空と会津駒を映す「駒ノ池」。小屋に到着です。
当初、中門岳は翌朝の涼しい時に向かうつもりでした。しかし、この暑さの中、小屋前で過ごすのは却って身体に悪そうで、まずは、会津駒を目指します。全国各地にある「○○駒ヶ岳」。ここは、残雪期に駒(馬)の形に見える雪形の現れることが山名の由来とされています。
出発してまもなく「ハクサンコザクラ」の群落。先月までは雪の下に埋もれていた大地から細い一本の茎を伸ばし、ピンクのハートを振りまいています。巻道との分岐点から一息で登頂。正直「えっ!ここ?」と思う、印象としては縦走途中にあるひとつのピーク的な山頂でした…あくまでも個人の意見。ところが、中門岳に向かって下り始めると、稜線の草原と大展望。やっぱり会津駒に登らねばなりません(笑)。
この後、中門岳まで続く池塘の見本市。周囲の山はアルプスにはない嫋やかな山容が続きます。山頂標識が立つ「中門池」に到着。そして再び「えっ!ここ?」。標識を見ると「この一帯を云う」と括弧書きされていました。木道は更に先へ続いており、小屋前で話を伺ったワタスゲへの道かと、まずはそこへ向かいます。途中、燧ケ岳を望む大小の浮島のある池塘があり、本日のベスト池塘に認定(笑)。
突き出た半島に弧を描くような木道が終着点。会津駒を望むベンチに腰を掛け、稜線を吹く風を受ければ、不思議と暑さは感じません。丁度、誰も居ない私達だけの世界。会津の山は微笑んでくれました。
ゆっくりと景色を眺めながら歩いていると、気付かぬ内に通り過ぎていく世界がここにありました。「楽園」。そんな言葉が本当に似合う素敵な場所です。
夕方、小屋前のベンチは自炊する人で賑わっています。普段、テント泊をする私達にとっては当たり前ですが、小屋前で全員が自炊する光景は新鮮でした。夕食後、赤く染まった雲は色を失くし、消灯後の空には星が瞬き始めます。涼を求めて外に出ると夏の大三角形に天の川。ひと際輝く木星は水面に輝きを映します。モリアオガエルのBGMが響く中、いつまでも見上げていたい時間でした。

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どんな世界が待っているのか…ワクワク、ドキドキ
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樹林帯の終盤で登場…ツマトリソウとアカモノ
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草原を抜ける風に 匂いを感じます…会津駒ヶ岳
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池塘の妖精 ワタスゲ 見ているだけで涼を感じます
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空に続く木道は 楽園へのプロムナード
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揺れる草原の波 あの小屋は灯台か…
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美しすぎる2000m…
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2019夏山 最初の到着点は「駒ノ池」
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池には 妖精が飛び回っていました
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ハートの五弁は もうひとつの妖精…ハクサンコザクラ
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夏の湿原を代表する白…イワイチョウ
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天国に一番近い花だと思う…
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至るところで 草原を飾っていました…コバイケイソウ
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高山植物の代表格…チングルマ
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ある意味 載せたくなる…会津駒の山頂標識
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中門岳はどれだろう…素晴らしき稜線
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遠望も楽しめます…至仏山から日光白根山
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これまで訪ねた山で 最高の池塘でした
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空が大地に降りてきます
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2019 盛夏 暑中お見舞い申し上げます…中門池
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虻退治の神(笑)…アキアカネ
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天国の一歩手前…それが楽園
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山バッチにも書いてありました…「だいたいこのあたり」
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様々な顔を魅せてくれます…駒ノ池
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会津の星空も 素敵でした

8月6日
東の空に赤く引かれた一文字。昨夜、天空に散りばめられた小さな瞬きは、新しい一日を前に、その灯を消そうとしています。この時間、東の空に現れる紅と藍をつなぐ青白い空間。やがてその世界は広がりを見せ、折り重なった雲の陰から生きる塊のような太陽がぼんやりと浮かび上がり、少しずつ丸味を帯びてきます。日中の暑さが嘘のようなひんやりとした風が頬を掠める夏の朝。特に山で迎える朝は、身体が軽くなったような気分になります。
昨夜の雨と夜露で濡れた草原は、黄金色に染まり始め、コバイケイソウの花穂に朝陽が照らします。山で迎える朝は正しく「一期一会」。派手さはないけど、心の奥深くに届く光でした。この出会いに感謝したい。
中門岳往復のCTは約3時間。下山時の気温上昇を考慮すれば、昨日に登っていて良かったと思いますし、推奨します。
部屋に戻って荷物の整理をしていると、一晩共に過ごした方の半分はすでに出発されていました。
「夏の早立ち」の原則。いや、鉄則ですね。
朝食の準備をしていると、夜明け前、中門岳に向かっていった方が戻ってこられました。その中のおひとりは、夕食前に山話をしていた方です。その方から、他の2人は本来私達が行く予定だった小屋に先週泊まったとお聞きしていましたので、次回に向けて、小屋の混雑状況などの情報収集。そのグループは「キリンテ」に下山するらしく、「周回されては?」と声を掛けていただきましたが、そこは笑顔で誤魔化しました(笑)
管理人さん作のアートが取り巻く三角屋根の小さな山小屋。定員28名、完全予約制で布団1人1枚確保は、私達にとって安心して泊まれるシステム。下山した後、地元の方に伺うと今の管理人さんになってから予約も取りにくい、人気の小屋になったとのこと。その話が納得できるほど、飾り気のない素敵なご夫婦でした。そして、この山は地元の方をはじめ、大勢の方が見守っていることをすごく感じました。
「山文化」
これまで登ってきたアルプスや八ヶ岳とは、一線を画すような世界。
登山口に戻り、小屋泊からテント泊へと再パッキング。気持ちも新たにしたいところですが、もう少し、余韻を楽しみます。
下山後、小屋のTシャツを着ていると「駒ノ小屋に行ってきたの」と何人もの方から声を掛けられました。「山」に行ってきたのではなく、「小屋」に行ってきたのと尋ねる村の人々。ここでも管理人さんの人柄が窺えます。
そして、昔は特別な日にしか食べてはいけない(御法度)と言い渡しがあったことから名前がついた「はっとう」でいつもの…(笑)

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夏の夜明け前を飾る…紅一文字
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賑やかだったベンチは 束の間の休息…
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妖精の語りが 聞こえてきそうな 朝のひと時
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山陰にならず良かった…
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日光方面の峰々
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桧枝岐村の人々に 陽が届くのは あともう少し
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小さな太陽に飾られて…コバイケイソウ
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この道は いつか来た道♪…そんな道
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管理人さんアート…その1
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管理人さんアート…その2
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私達がお世話になったベニサラドウダンの間…駒ノ池側
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部屋の窓から 会津駒ヶ岳と駒ノ池
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明日は あの頂を超えていこう…燧ケ岳
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花が咲いていると ほっとします…イワオトギリ
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明日は あの峰から こちらを眺めるのか…
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振り返って…小屋と会津
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光の道筋に誘われて あの樹林帯へ…
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この道を 再び歩くことは あるのだろうか…
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そろそろ池塘とも お別れです
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アザミを見ると 8月の山って言う感じです
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昨日よりはマシ でも 陽射しは厳しい
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木陰の駐車場…再パッキングには 助かりました
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こんなポスターを見ると…尾瀬桧枝岐温泉観光協会
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桧枝岐村と言えば「裁ちそば」…岩魚の天ぷら付
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ちょっと癖になりそうな特産品で いつもの…(笑)

8月7日
私達の世代は尾瀬と言えば「夏が来れば思い出す…♪」の歌詞で有名な「夏の思い出」。しかし、関西方面から容易に行ける場所ではなく、知っている情報は限られています。
登山口は「御池」。そこから燧ケ岳を登って、尾瀬沼畔(沼尻平)に下り、尾瀬沼キャンプ場を目指します。
駐車場から木道の敷かれた登山道に入ると、水芭蕉の葉が生い茂る湿地が現れ、尾瀬らしい雰囲気から始まりますが、すぐに急登となります。
最初のポイントは「広沢田代」。「田代」で検索すると「田」「水田」となっています。池塘が広がる様子を水田に見立てているのか、本当に田んぼとして利用していたのか、尾瀬には「○○田代」と呼ばれる場所が沢山あります。
2つ目のポイントは「熊沢田代」。ここは前日に、紹介パンフで掲載されているのを見て、「何と素敵な木道だろう」と思った場所です。すり鉢状となった湿原に2つの大池。その真ん中に敷かれた木道は「山を歩く」と言うイメージから遠い世界だと思いました。訪ねてみれば、木道が自然に溶け込んで一体となった景観。童話や絵本に出てくるような夢を感じさせる景色でした。
下った分だけ登り返して樹林帯。何度か小さな沢を渡り、ぽっかりと口を開けたような涸沢を過ぎると8合目。急登とトラバースを繰り返し、あっという間の9合目。そして、視界を遮る広葉樹が忽然と消えると、三角点と石の祠が建つ「俎嵓」(2,346m)です。燧ケ岳は双耳峰。すぐ隣には山頂標識の立つ東北地方の最高峰「柴安嵓」(2,356m)。往復のCTは40分。私達の燧ケ岳は「俎嵓」です(笑)。
眼下には森に浮かぶ「尾瀬沼」。そして、柴安嵓の肩越しには「至仏山」と山麓へ続く広大な尾瀬ケ原。こうして俯瞰すれば、尾瀬全体の位置関係が立体的にわかります。
あまりの気持ち良さについ長居をしてしまい、その間に雲の様子が変わってきました。ここから沼尻平までゴロゴロ岩の急坂「ナデッ窪」ルートと緩やかな「長英新道」がありました。尾瀬沼畔を歩きたく、また、新道は時間がかかると思ってこちらを選択しましたが、大半の方が新道を進んでおり、その理由は後程判明します。
尾瀬沼を眺めながら大きな岩が点在する道を下ります。スキーで言う直滑降の道。先ほどまで居た俎嵓が梢に隠れると、尾瀬沼も同様に見えなくなり、続いて、登りでは感じなかった「暑さ」が纏わりついてきました。加えて、近付いてくる雷雨の気配。雨が降る前に沼尻平へと思いますが、テント装備で転倒すれば、取返しのつかない事態が予測され、暑さでぼうっとする中、「ここは集中」と言い聞かせます。
長かった樹林帯を抜けた先には、山頂から眺めていた湿原の木道。世界が変わった瞬間です。上空は黒っぽい雲に覆われ始め、畔の木道に入ってしばらくすると、ついに雨が降り始めました。この後、キャンプ場へは木道が続くであろうと、合羽ではなく傘対応と判断。やがて、雷が鳴り始め、雨粒の大きさも変わってきました。それでも大きな木が傘となり、さほど雨の影響は感じません。しばらく上空で響いていた雷にも慣れ始め、雨の勢いが弱くなり始めた時、視線の片隅に閃光。続いて、全身を震わせる雷鳴。対岸に落雷です。
「自分達には落ちない」。ただ、それを信じて歩き続けます。何人かの観光客の方が大きな木の下で雨宿りをしていましたが、足早に通り過ぎると、私達に付いて行動される方も居ました。その後も雷鳴は続きますが雨脚が強くなってきたため、落雷は大丈夫だろうと根拠のない自信を持ちましたが、バディは生きた心地がしなかったそうです。そして、キャンプ場直前の湿地帯。身を隠すものがない木道が200m程続きます。さすがに一瞬躊躇しましたが、いつ止むかもしれないこの雨をここで待つ方が危険と思い、振り返るバディには前進を伝えます。相変わらず、上空に響く雷鳴。しかも半ばまで来た時、猛烈な風が吹き始め、横殴りの雨が全身を打ち付けた時は言葉になりません。時間にして2分ほどですが、今までにない恐怖を感じました。
建物群に入り、最初にあったのが屋内にベンチのある公衆トイレ。ようやく、恐怖からの脱出です。下っていた時の暑さが嘘のように濡れた身体は冷えを呼びます。私達は対策を講じていますが、「夏の低体温症」と言う最悪のシナリオが頭を過ります。小降りになり、ビジターセンターへ移動し、展示物を見ながら雨が止むのを待ちます。そして、ここで「尾瀬」と「桧枝岐村」の関わりを知り、バラバラだったピースがひとつの絵になりました。
尾瀬沼キャンプ場は完全予約制の28サイト。適当な間隔で区画されたデッキスペースが、森の奥へと続いています。再び、降り始めた雨も、テント内で一息つく頃には上がり、お決まりの虹の出現。快適だった燧ケ岳までの道のりから、ナデッ窪のような急転直下の出来事。ゆっくりと過ごすはずだったテントライフは、次回に持ち越しされました。
今日は旧暦の七夕。雲間に彦星と織姫星が現れ、今年の2回目の再会を楽しんだことでしょう。

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久しぶりのテント泊山行…気を引き締めます
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緑のトンネル 一歩一歩 確実に…
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道端を 飾ります…キンコウカ
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尾瀬の世界に 一歩近付いた感じです
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広沢田代越しに 会津駒ヶ岳
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木道が現れると 次の田代は近い…正面は 燧ケ岳
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こんな木道の世界は 見たことがない
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山行中の池塘は 心と身体のオアシス
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8合目から…熊沢田代
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池塘の母…尾瀬沼
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いつの日か 訪ねてみたい…尾瀬ヶ原至仏山
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会津駒ヶ岳に向かって…駒ノ小屋限定Tシャツ
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山頂は 自分で決めればよいと思う
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ナデッ窪ルート から ミノブチ岳を見上げます
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朝日岳以来の再会…ヒオウギアヤメ
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尾瀬沼に向かって 直滑降…
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この開放感は 視界だけでなく 精神的にも…
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夢の中へ バディが消えていく…
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対岸は青空…こちらは 雨
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夏の夕方の風物詩に 花を添えて
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今日の青空は 身に沁みます
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畔のテラスから…燧ケ岳
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尾瀬沼って いいなぁ…と思った時間
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こんな構図の日本画を 見たことがあったような…
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尾瀬沼の夜も 蛙のBGMが響いていました

8月8日
夜明け前、霧が漂う尾瀬沼。柔らかに波打つ霧は、刻一刻と夜明けに向かってその姿を変えていきます。尾瀬沼越しに見える燧ケ岳。昨日、その頂きに居たことが遠い記憶のように思えるほど、崇高でこの尾瀬沼一帯と隔絶された世界に思えます。標高以上に高く思えるその姿。
東の空が赤く染まり始め、尾瀬沼に朝の気配が訪れました。やがて、うっすらと山頂部がオレンジ色に染まり、裾野へと広がりを見せます。中腹に漂う雲は赤く染まり、命の炎を灯したようです。また、新しい一日の始まりです。
昨日、ナデッ窪ではなく長英新道で下りていればどうなったのか。雷雨の中、歩くことはなかったのか。しかし、テントで雷雨を過ごすのか…、それとも結局、トイレに避難するのか…。「たられば」を語っても意味はなく、山行中に起きる数々の分岐をどう選択するかで、いとも簡単に惨事に見舞われることを、昨日の出来事は示しています。ただ、結果的に大事に至らなかったのは、選択は間違っていなかった訳ですが、一歩間違えれば生死に関わる事態になった訳で「運があった」と、この言葉でしか片付けられません。ただ、昨日の受付時に尾瀬沼ヒュッテの方が、「長英新道は展望がなく、ナデッ窪は景色が良かったでしょう」。単純明快な答えに救われています。
今日も厳しい陽射しが照り付け、濡れたザックは湯気が出ているのではないかと思える勢いで乾いていきます。コオニユリ等の花がいっぱい咲いていると思いながらも足早に通り過ぎた木道。強烈な風を見舞った分岐点。
「夏が来れば 思い出す ♪」…ほんと、一生忘れられない…「はるかな尾瀬 とおい空 ♪」
帰り道は大江湿原を抜けて、沼山峠に向かい、シャトルバスで御池に戻ります。CTは65分。その半分は湿原ハイクとなります。コバキボウシ、オゼミズギク、ツリガネニンジン。イメージとして尾瀬らしい景色が続く中、今回の山行を惜しむように、ゆっくりとした歩調で進みます。
ビジターセンターで紹介されていましたが、新政府軍と会津藩との戦い(戊辰戦争)の中、この大江湿原には5つの防塁を築いたそうです。(戦闘には利用されず)今や誰もがハイキングとして歩いているこの木道は、「会津沼田街道」として多くの歴史が踏み固められた道です。近年では、尾瀬沼畔に車道を通す計画が自然保護運動の高まりで中止されるなど、美しい自然の背景には、学ばなければならない歴史があります。
前方からすれ違う多くの方は、ヒュッテ周辺で作業されている工事関係者の方々。所謂、通勤途中の方です。観光客の姿も見受けられ、中には革靴の方も居られます。今日も天候は不安定。雷雨の時間は昨日より早まりそうな予報。初めて訪ねた尾瀬は、観光地でありながら「山」である要素が強く残っていると感じました。同じく大勢の観光客が訪れる上高地と比べものにならないほど「山」です。特に、印象付けたのが、ほぼ全域が「圏外」であること。緊急時は小屋に頼ることになりますが、小屋まで辿り着かねばなりません。圏外の是非を問うのではなく、圏外の事実を知って尾瀬には入らなければならないと思います。
湿原から樹林帯に入り展望地を過ぎると、後は下り坂。キャンプ場から続いていた木道は、沼山峠直前で途切れ、最後は石の階段となります。1泊2日の2本立て。久しぶりに「山行」を感じた4日間でした。
下山後は、600km以上運転しなければならず、シャトルバスの出発までの時間を有効活用していつもの…(笑)

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深夜 とりあえず 空を見上げてみます
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人っ気のない尾瀬…贅沢な時間です
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尾瀬沼のシンボルツリ-…三本カラマツ
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雲が無ければ 空は焼けない
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空気と風が見える 尾瀬沼の朝
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今日も出逢えて幸せです…燧ケ岳
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僕は尾瀬ヶ原より尾瀬沼の方が 合っているかも…
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雲上の頂に 最大限の敬意を表します
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白駒池との違いは 奥行でしょうか…
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夜も良いけど 朝も素敵な 尾瀬沼でした
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尾瀬沼ヒュッテ前から…
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初めてのデッキ…ここも完全予約制…1人800円
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今回 この奥は未知の世界
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何とか 逆さ燧ケ岳を 頂きました
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しっかりと 記憶のページに残します
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さて 大江湿原を通って 帰りましょう
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尾瀬の冠 初対面の「オゼミズギク」
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お世話になりました アキアカネ…と ワレモコウ
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今年は当たり年だそうでう…コバギボウシ
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恐怖の2分帯…尾瀬沼を振り返ります
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華やかな彩りと緑のグラデーション…大江湿原
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防塁のあった時代は どんな景色だったのだろう…
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尾瀬一帯で何km整備されているのでしょう…最後の木道歩き
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森を貫くハイウェイ…会津・沼田街道
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下界へ戻るために いつもの…(笑)