静かな秋の訪れ…屏風ノ耳
9月24~25日
錦秋を彩ることで有名な涸沢圏谷。しかし、そこに僕の居場所はありません。見頃には少し早いですが、7年振りに僕の居場所を訪ねました。
9月24日
秋晴れを予感させる朝。まだ暗い沢渡BTの始発便はほぼ満席。紅葉シーズンの人気の高さが窺い知れます。大正池越しに暁の穂高連峰が見えると上高地に帰ってきたと思えます。そして思うのは、「若かりし頃」。40年近く前に初めて訪れてから、上高地=穂高、そして「憧れ」…と思っている間に上高地BTに到着。今回は徳沢で幕営し、屏風ノ耳までパノラマコースを往復する行程。
まずは徳沢まで通い慣れた道を歩き出します。日曜の今日、向かう人より戻ってくる人の方が多い中、寛いだ空間が広がる徳沢に到着しました。
パノラマコースは涸沢と新村橋を結ぶルートですが、屏風のコルから涸沢側は木の根道に鎖、ザレ場のトラバース等、名前から受ける印象よりも危険を伴うルートです。また、今回初めて通った新村橋側は、奥又白池分岐から始まる急登に足の置き場に困る露出岩など、アスレチックなルートでした。
前穂高北尾根を仰ぎ見ながら標高を上げ、梓川沿いに小さく見える徳沢園の赤い屋根を見下ろします。草紅葉の中、ジグザグに登ればコルに到着。木々の合間に北穂高岳が見え隠れしています。
ここから屏風ノ耳までが核心部でしょう。疲れた身体を奮い立たせ一気に登り詰めると、背後に槍穂高連峰の大パノラマが屏風のように聳え立っています。涸沢圏谷を彩る草紅葉。ナナカマドやダケカンバの紅葉はまだまだですが、秋色を従えた岩稜は冠雪を間近に控えた寂寥感があります。賽の河原と呼ばれる大きな岩の平坦地の分岐まで登ると、思いも寄らぬ紅葉が出迎えてくれました。赤や黄色やオレンジの葉がハイマツの緑と秋空に映えます。
涸沢から眺めて右耳に三角点があり、数人が休憩できる空間もあります。そこから真正面に眺める涸沢に穂高岳。そして、槍ヶ岳へと続く天空の街道。背後には梓川を境にして、常念山脈の峰々。
一気に涸沢へと高度を下げる屏風ノ耳からの展望は広がりと奥行きに加え、高度感を楽しめる特等席。
夏の終わりを思わせる陽射しに秋風を感じながら、いつまでも眺めていたいと思える場所でした。
夕方、徳沢に戻り、秋の帳を感じながらのテントライフ。日中、汗ばむ陽気は日暮れとともにフリースを羽織らなければならないほどに冷え込んできます。そして、満天の星が煌めく徳沢天国の夜は、静かに更けていきました。
空は秋 気温は初夏…^^;
新村橋を渡る人は まだ少ない
「氷壁」の舞台 奥又白池分岐
稜線には 北尾根を登るクライマーの姿
春 白い花を咲かせたユキザサも…
サラシナショウマが涼しげに揺れています
ようやくコルから耳への稜線が見えました
前穂高東壁のスカイライン
強い陽射しが森を白く染めます
森林限界を越えれば そこは「パノラマルート」
手が届きそうな 槍ヶ岳 (^^)
僕の居場所は ここにある
思いも寄らぬ 紅葉ロードの始まり
ハイマツが無ければ 山の紅葉は味気ないと思う
涸沢紅葉シリーズその1…北穂高岳
涸沢紅葉シリーズその2…涸沢岳
涸沢紅葉シリーズその3…奥穂高岳
最後にみんな揃って…ハイ チーズ
常念岳の紅葉を見たのは 今から3年前のあの日
屏風ノ(右)耳へ 最後の登り
涸沢のテントサイトも色鮮やかですね
歩いていると普通の登山道…ザイテングラートへのトラバース
南岳 獅子鼻岩は大キレットの門番
貸切の涸沢展望地
微妙に秋の装いをした「槍ヶ岳」(^^)
少し触ればこの通り…(補正値+0.7)
徳沢と言えば このツーショットでしょう(笑)
つくね鍋で 身体も心もほっかほか
梓川畔から「天の川」
静かに時間が流れる 平日の徳沢
9月25日
朝、浅黒い岩峰の前穂高岳がゆっくりとオレンジ色に染まりだします。やがて輝きは最高潮を迎え、そのオレンジの帯は前穂高北尾根から昨日登った屏風岩へと下り始めます。時間とともに岩稜はそのものが光を放つような輝きになり、空は透き通った青空へと落ち着き始めます。徳沢天国で迎える朝の定期演奏会。今回も見事なハーモニーを聴かせてもらえました。
朝ご飯の支度を始めると、徐々に朝陽が木々を照らし始め、緑の草原に木洩れ日が揺れます。いつもの景色をいつもの気持ちで楽しめる。徳沢テントライフは僕にとって、とても大事にしたい時間と空間。涸沢や蝶ヶ岳のような派手さはないけれど、これから山に向かう人を見送りながら、慌てることのない時間を過ごす「徳沢天国」。
足取り軽く徳沢を後にし、鏡のように穂高連峰を映し出す大正池を車窓から眺めれば、上高地ともしばしのお別れ。次回は歩いてここまでやってくるのかと思いながら、バスは釜トンネルに入りました。
下山後は、名物「山賊焼き」にいつもの山友といつもの…(笑)
静かなテントサイトの頭上ではモルゲンロート
オレンジ色に染まる岩峰は 前穂高岳
やがて 屏風岩にも オレンジの帯が当たる
時間と共に変化する様は グラデーション
この時間が 徳沢天国の朝
陽が届き始める 時間帯が一番好き
徳沢園から望めば 六百山が見守ります
帰り仕度も 慌てずに…
いつもの場所で お別れを告げます
GW ネコヤナギが迎えてくれる 梓川畔
屏風のコル…一度歩くと景色が浮かびます
これから更に染まる 屏風岩の紅葉
上高地への道は 楽しい思い出を語る時間
秋の飾りつけ…明神岳
岳沢の紅葉も 進んできているようです
右岸から眺めれば 半端ない明神岳の迫力
季節を問わず やっぱり焼岳は男前
次回は 雪化粧を纏っているのでしょうか?
大好物「山賊焼き」…一人前です(笑)
いつものも 秋の便り…
最後に今年も9月27日を迎えました。今日は山で犠牲になった全ての方々のご冥福をお祈りしたいと思います