Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

池と苔と紅葉のテントライフ…白駒池

10月6~8日 長野県白駒池
先月予定していた「白駒の池キャンプ場」。台風情報とこれまでの経験から大丈夫と判断し木曜に出発準備。そして金曜の夜、紅葉のオマケが付いた北八へと向かいました。

10月6日
紅葉シーズンとは言え、深夜に台風が通過することと日中も曇り空予報であることから、駐車場は余裕があるのではと9時前に到着。結果、第一はすでに満車、第二も係の方は「時間の問題だな」と白駒池紅葉シーズンの人気の高さをあらためて知りました。
久しぶりに担ぐ20kg超え。しかし、お気楽なテントライフが待っていると思えば、その重さは気になりません。苔の遊歩道を歩くこと15分。身体が温まる間もなく、白駒の池キャンプ場を管理する「青苔荘」に到着です。
てっきり真っ白なミルキーウェイの世界が待っていると思っていましたが、水面を照らす陽光と真っ赤に色付いた葉が樹間に覗かせ、テントサイトにも木漏れ日が揺れています。遊歩道沿いに広がるキャンプ場には、何ヶ所か板敷きのサイトがあり(OP価格)、我々はまだ自由に選べる状況で、ぴったりな大きさで平らなスペースをお借りすることが出来ました。
荷物を片付けるともう何も予定なし。テントから顔を覗かせて、樹間の白駒池を見るも好し、上空の色付く葉を見るも好し、森の香りを身体一杯に感じるも好しと言った、質素だけど贅沢な時間と空間がここにありました。
昼食後、ボートが繋がれた桟橋へ。テレビやポスターなどで良く見かける白駒池の紅葉風景が待っていました。そこから遊歩道を利用して白駒荘へ。昨年末、火災で焼失した山荘は今月3日から宿泊を再開しています。池の畔に作られた遊歩道は、紅葉越しに池を眺めたり、森の香りを感じたりしている間に駐車場からの道と合流。ここで一気に観光客の姿が目に入ってくる感じです。新築の匂いがここまで漂ってきそうな白駒荘前のベンチはランチを楽しむ人の他、池と紅葉のコラボにそこかしこから歓喜の声が聞こえてきます。
山肌を黄色く染めるカラマツの葉はこれからが本番でしょうか。きっとこの辺りは、日々、色合いを変化させていくことでしょう。天気に関係なく、その移ろいを楽しむことが出来るのは幸せなことです。
夕方、仕事帰り(笑)の山友が訪ねて来てくれました。まずは、お土産のケーキの品評会。急な来訪者にも何故か普通に夕食が提供できるのを知ってか知らずか、仲良く3人で夕食会。あっという間に3時間が過ぎ、午後7時30分、駐車場までお見送りをした帰り道、ヘッドライトが照らす世界は足音だけが響く苔の森。僕の好きな静かな世界「山の夜」です。
キャンプ場に戻ると小雨が降り出し、やがて雨音がフライシートを叩きます。予報より少し遅れた雨でした。雨はすぐに止みましたが、台風通過に伴う風が9時前から吹き始め、最初は「ゴゥ-」と言う音と共に木々の枝を揺らす程度でした。以前、烏帽子小屋やしらびそ小屋で張った際にも上空を吹く強い風が木々を揺らすものの、防風林となった木々がテントを守ってくれました。今回も想定通り大丈夫だったと思いしや、次第に威力を増した風はまるで5.1chサラウンドのごとく上空を吹き荒れると、行き場所を失った風がテントサイトを襲います。横からではなく、上からの風が、ドーンっとテントを揺らします。そんな出来事が忘れた頃にやってきて、それは深夜まで続きました…^^; また、2000m超えでの台風通過はやはり凄い音で、まったりとしたテントライフを楽しんだ初日の夜は、安眠できないまま過ぎていきました。


期待が膨らむ 秋のテントライフ

遊歩道から少し離れた「別荘地」

秋の白駒池…定番の景色

曇り空の紅葉は 落ち着いて見えます

池畔の遊歩道から白駒荘

紅葉が映えるのは 針葉樹との共演

最終日はあの頂へ…ニュウ

近くて遠い…白駒の秋

紅葉以外にも楽しめる 遊歩道

グラデーションが 日本の秋

晴れ間もいいが 曇り空もいい

オマケにしては 見事な紅葉と出逢えました

白駒荘前 桟橋にて…

切り取れば そこは 2段紅葉の世界

刻一刻と 表情を変える 白駒の秋

遠景 近景…好みが分かれる 白駒の秋

主人公は 紅葉か 白駒池か

苔の森にも 紅がさします

日溜まりに 日本の秋

この標高だけが青空だと 後で山友から聞きました

ボートを楽しむ人が 増えてきました

こちらの桟橋は 空いていますよ~

予想以上に白駒の秋を楽しめた初日です

アルコール度数 0~3 の逸品

ささやかな 秋の宴の始まりです

10月7日
昨夜来の風は夜が明けても収まらず、結局、10時近くまで強風が吹いていました。この調子では稜線を吹く風はとんでもないことになっているのではと思いますが、遊歩道には山へ向かう姿のグループが数組…。事故が起きないことを願う限りです。
午後から天気が回復する予報通り、真っ白なベールに包まれていた白駒池も昨日の姿を取り戻し、大勢のカメラマンが自分の世界を切り取っていることでしょう。
早めの昼食を青苔荘特製「きのこ汁」と共にいただき、高見石から白駒池周回へと出発です。近年、高見石を訪ねるのは雪の季節に限られており、グリーンシーズンは21年振りです。
慌てる必要もないため、苔や紅葉を楽しみながら緩やかな道を登っていきます。麦草ヒュッテからの道に合流すると小屋まであと僅か。丁度、お昼時でもあり、小屋周辺は大賑わいでした。早速、高見石へと思いましたが、テラス席を見ると空きがあり、まずは名物「揚げパン」をいただくことに…。ここの揚げパンを知ったのは、はてなスペース時代のことで、あれから何年経ったことでしょうか?パンの種類は4種類。一皿で2種類チョイスが出来ます。軽い食感で油っぽさを感じさせない逸品でした。
高見石に登るのは約2年振り。前回は薄氷が付いた不安定な時で、岩の間に落ちそうになりました^^; 今日は登りやすい状況。それでも油断大敵、新聞沙汰にならぬよう注意しながら登ります。何となくどこからでも登れそうなんですが、やはり、印に沿って登っていくのが、良いみたいですね。
眼下に広がる白駒池を中心とした北八の森。遠くには先月、天狗岳から眺めた雨池も見えます。また、視線を上げれば佐久平越しに頂を雲で隠した浅間山。陽に照らされた町を眺めるのが八ヶ岳東面らしい景色と感じる私です。
ボートが浮かぶ白駒池。「あの桟橋の向こうに我々のテントがあるのか…」どちらでも良いことを考えることが出来る、安らかな一時を過ごしていました。
初めてここを訪ねてから21年。当時はこんな未来が待っていることなど想像すらしていません。今ある自分と変わらぬ景色に感謝です。
別ルートで白駒池畔に戻ります。登りのルートと較べて、急坂で石や木の根が多く、濡れていることもあって注意が必要でした。時間的なことを考えれば、登った道を下った方が白駒荘に早く着くかもしれません。
何度か訪ねている白駒池。しかし、ゆっくりと時間を過ごすのは初めてで、当然、周回もしたことはありません。綺麗に整備された遊歩道はとても歩きやすくなっています。でも、景色に目を奪われて落っこちないようにしなければなりません。結構、段差があるので、大怪我に繋がる可能性大です(^^)
池を背景にして広がる紅葉に一喜一憂しながら、遊歩道を進みます。終盤、池から離れた遊歩道は、苔の森へと入ります。大きな岩が起伏を作り、その岩に根を巻きつけて土台とする針葉樹。そして、それらを染める苔、苔、苔…。色鮮やかな紅葉の世界からコケトーンの世界へ…美しい森でした。
夜、上空を流れる天の川。ニュウから中山峠へ続く稜線の上には赤く輝く火星が瞬いています。そして、黒く沈んだ水面に目を凝らせば、星の映り込みが見えそうでした。
テントサイトに戻ると地上の星が白樺を照らします。テントは所狭しに張られているものの、立地条件の関係か余裕があるように思えます。少し前まで賑やかだったテントサイトも、8時過ぎには静まり返り、今日は静かな夜を過ごせそうだと思いながら夢の世界へ旅立ちました。


これも 白駒の秋ですね

テントから 空を見上げれば…

テントから 池を眺めれば…

木洩れ日のテント村

21年振りの道は 暖かでした

足下にも 小さな秋があります

狭い空にも 秋の佇まい

この辺りは「カモシカの森」と呼ばれています

チーズと抹茶…残りは次回へ…

高見石から佐久方面の空を眺めます

畔ではわからない 白駒の秋

全山真っ赤もいいけれど…

あの紅葉の下に 我が家の別荘地

2週間振りの 雨池です

ここから見る白駒池が 一番のお気に入り

明暗が揺れる 山の秋

風はまだ残っているようです

初めての周回…初めての景色

対岸から青苔荘桟橋を眺めます

さっきまであの岩の上に…高見石

太陽とコラボレーション

もののけの森」…素晴らしきコケトーンの世界

秋の空とは思えない 夕刻のひと時

天の川…昨年は白馬大池畔から小蓮華山

白駒池とニュウ…星バージョン

10月8日
3連休最終日。予報は一番の快晴…のはずが、空模様は何かすっきりしない感じ。まったりテントライフも終盤を迎え、今回唯一の山歩きに出発です。目指す山は「にゅう」「にう」「ニュー」…呼び方は色々あるようですが、地形図では「ニュウ」となっています。
この山、実は19年前の8月、バディと訪ねたことがあります。その日、麦草峠から歩き始め、高見石から西天狗岳へ。山頂で激しい雨に遭い、落雷の恐怖から中山峠に向けて駆けるようにして下りました。そして、中山への登り返しを嫌った我々は、十分な情報を持たないままニュウへ向かいます。稜線は白く霞み、雨具のフードで視界が遮られる中、道を迷わぬようテープを探しての山行が続きます。行き交う人もなくようやく着いたニュウ。真っ白な視界が空と森と頂を隠し、ピークに立ち寄ることなく、白駒池に下りました。稲子湯の分岐点まで下ると、何故か食事中の家族連れが休憩していましたが、声は掛けれませんでした。ここから水没の道。わずかに覗く道に敷かれた幹を足場に、遅々として進まない2人。歩いても歩いても同じような景色が続く中、昔見た映画「ネバーエンディング・ストーリー」で主人公が沼地を歩くシーンとオーバーラップします。やっとの思いで着いた白駒荘。その時を境にして、我々の地図上から「ニュウ」は消えました。
そのニュウの道を切り開いていただいたのは、はてなスペースで知り合った方。そして、その方にもうひとつ教えていただいた「稲子岳」と共に、禁断のニュウの頂を目指します。
遊歩道から離れて、稲子湯・ニュウ方面へ。少し登ると、白駒湿原へと入ります。傾いた遊歩道の板、無造作に置かれた朽ちた木…。「雨が降ると一変するんだよね」「ネバーエンディングストーリー~♪」等、当時を振り返りながら苔の森を進みます。分岐点から道は登りとなり、一旦トラバース気味に進んだ後、最後のひと登り。稜線が近付き、木々の間に白く見えるのはあまり良い兆候ではありません。やはり、稜線に立つと東麓から沸き起こる霧が視界を閉ざし、あの日と同じような光景が広がっていました。ただ、ニュウの岩峰はしっかりと捉えることができたので一歩前進です。そして、まだ人が疎らなニュウに登頂。
「果てしない道」が「普通の道」になった瞬間です。
最初は雲に見え隠れしていた白駒池もやがてはっきりと見え始め、雲間から射す光が森を照らします。反対側は相変わらずのミルキーウェイ。戻って来る頃には晴れているかもと微かな期待を胸に、次の目的地「稲子岳」に向かいます。
火山活動で山体が崩壊し、東側にずれた稲子岳へのルートは地図上に載っていません。ニュウから中山峠に向かう道沿いにある下降点が別世界への入り口です。下ってしまえばテープのある細い道が原生林を分け隔てます。しかし、視界不良の際には道迷い=滑落=遭難。と言う最悪のシナリオになることでしょう。
一歩この森に入ると、昨日、遊歩道で見た苔の森がまるで作り物のように思えるほど、ここには人間の世界を感じません。確かにテープは沢山ありますが、いつの時代から時間が止まったのか、一瞬にしてタイムスリップした感覚です。いつもなら立ち止まって覗くファインダーの小窓も、今日は自分の目で見続けていたいと思いました。
「この世界の瞬間は切り取っても、時間の流れは切り取れない」
誰が、いつ、切り開いたのか、絶妙な道が続きます。プチブッシュ的な個所に倒木や折れた幹が道を塞ぐこともありますが、概ね、道の状態は良好でした。形だけのピーク(山頂標識)を通り過ごし、少し開けた場所を今日のピークとしました。
期待していた視界は、一向に晴れる様子を見せません。さては、今日はこの雰囲気を楽しめと言うことで、次回が展望付きなんだと山の教えに従って下山を始めます。
テントはすでに数えるほどしかなく、少し寂しい感じです。丁度、暖かな日射しがテントサイトを照らし、もう少しテントライフを楽しもうと思いました。
観光者や登山者が交じり合う白駒池周辺。しかし、意外なほどこのキャンプ場は静かで落ち着いた時間が流れていました。この世界がしばらくは続くことを願って、何故か来た時より膨らんだザックを背負う2人です…。
下山後は、新規開拓をして大満足したいつもの…(笑)


さて 禁断のニュウへ出発

朝陽に頬を染める 白駒の秋

苔の森も 見慣れてきました

前回は見えなかった…白駒湿原の木々

北八の懐も 深いです

初めましての ごあいさつ

いろんな姿を楽しませてくれます

果てしない白駒池への道は 過去の道

東面は見事な ミルキーウェイ

ニュウの最高峰 次回は天狗岳とともに…

山体崩壊の裂け目…歴史の段差です

原始の森を身近に感じられます

この先には 別の世界があるのでしょう

初めての道は 期待と不安の交差点

白さを際立たせる 苔もあります

一応 ここが ピークです

シャクナゲの頃も 素敵でしょう

森の息遣いを感じます

ひときわ映える 秋色でした

ビロードのような苔が あちらこちらに…

ワンダーランドの出口が近付いてきました

次回は青空を背景に…ニュウ

秋の遊歩道を満喫できました

まったりテントライフの3日間…いつの日か再び

ハイクオリティーだった いつもの…(笑)