9月14~15日 山梨県金峰山、瑞牆山
16日の天気に確証が持てず、今回も出発当日に山行計画を変更。各地の登山口では早々と満車になった情報が届き、若干の不安を抱きながら駐車場に向かいました。
9月14日
急きょ予定を変更したとは言え、富士見平で幕営し、金峰山と瑞牆山を訪ねる計画を立てたのは3年以上前。登山口から小屋まで約1時間で着くこと。南アルプスの大展望が楽しめること。そして、初めての山域だということが魅力でした。
前夜、心配していた駐車場は、出発時(6時)でも半分に満たない状況。秋を思わす、ひんやりと透き通った空気。気温は13℃。それでも登り始めれば、じんわりと汗ばむのは夏の終わり…。
樹林帯の緩やかな登りが変化を見せ始め、林道を横切った後も、しばらくは登りが続きます。踏み跡がいくつも分かれ、目印となるテープも少ないことから最初は戸惑いましたが、結局、道は繋がっており、歩きやすい道を進むのが正解のようです。頭上を覆う広葉樹は夏から秋へと衣替えの途中で、まるで新緑を思わす瑞々しい色を発し、やがて本格的な秋を迎えたこの森の光景に思いを馳せます。
前方に尾根らしいシルエットが見え、そして、忽然と現れる「瑞牆山」の岩峰群。イタリア南部チロル地方のドロミテ山塊を彷彿させる一瞬です。
茶色くなった葉にも関わらず、まだ大きな黄色い花を付けているマルバダケブキが見えると「富士見平」。その開けた地に建つ「富士見平小屋」からは樹間に富士山が顔を覗かせていました。
鳥のさえずりが響く朝の森。その緑濃い中に、人工色のテントがポツンポツンと点在しています。人通りの少ない奥か、小屋に近い手前かは迷うところですが、奥に行くほど下り坂になっていることから、小屋近くに張りました。
ここから金峰山までのCTは往復6時間20分。荷物を詰め替えて出発です。
最初のポイント「大日小屋」までは、苔の森を横目に緩やかな登り下りを繰り返す「横八丁」と呼ばれる道。次のポイント「大日岩」へは「縦八丁」と呼ばれる直登。その後は、再び、苔の森歩きとなり、3連休の初日とは思えない静かな山行が続きます。地図から想像できるように、前半は樹林帯と長いお付き合い。最終ポイント「砂払ノ頭」で森林限界を迎え、景色は一変します。まだ見えぬ山頂へと続く稜線に富士山、南アルプス、中央アルプス、八ヶ岳へ続く大展望。今日は湿った空気の影響か、見事な雲海が眼下に広がり、大海原に浮かぶ島々のごとく、峰々の稜線が続きます。ただし、その影響は蒸し暑さも呼び起こし、夏に戻った感じです。
岩峰を通り過ぎる度に全身運動を求められ、照り付ける太陽は容易に体力と気力を奪います。遠くからも目立つ金峰山のシンボル「五丈岩」。歩いた分だけ近付いているはずですが、なかなか距離が縮まらない感じです。それを癒してくれるのが、雲海に浮かぶ「南アルプス」。甲斐駒ヶ岳から聖岳まで一望です。丁度、荒川三山を周る番組を観たところで、自分達が行った山行と今見る三山がオーバーラップします。
山頂へ続く最後の登りの手前に広がる平坦地を境にして鎮座する「五丈岩」。ここから見ると、背が低くなった印象です。まずは、そのまま山頂に向かい、その途中で振り返れば、よく見かける光景。
「金峰山に来たんだ」と実感しました。
五丈岩前広場には大勢の登山者が休憩されていました。富士見平小屋からのルートでは、これほどの人は登っていなかったため、別ルートの方が人気なのでしょう。しかし、そんな賑やかな雰囲気にも窮屈さを感じない広々とした世界でした。
下山を始める頃には山頂部分は姿を隠し、樹林帯に入ってからは雲海ゾーンに入った感じです。大日岩辺りで雲を抜け、若干、オレンジ色を帯びた午後の森。ほぼ最終組となった私達ですが、森と同化し、その静けさを楽しみます。そして、山頂以上に賑わいを見せているテントサイトに戻り、まずは心と身体をリフレッシュ。
夕暮れを迎え、次第に濃くなる樹間を眺めながら、夕食の支度に取り掛かります。昼間の暑さは暗闇に溶け、羽織るものが必要なテントサイト。久しぶりに歩いた疲れと共にテントライフを楽しみます。
次の世界に続く 扉が待っています
明日はあの頂から どんな景色が待っているのだろう
森に溶け込むような建物…幟が目印(笑)
名前のとおりです…富士見平小屋
小屋番さんはお留守…その代わりに ゴジュウカラ
視界が通れば 南アルプス…稜線歩きが待ち遠しい
苔に寄り添う 秋の印
誰もが足を止めて 眺めてしまいます…縦八丁
どう表現すればよいのでしょう…大日岩
道は再び 苔の森
あの稜線を歩くことは あるのだろうか…間ノ岳~北岳
あの稜線は歩きました…赤岳~天狗岳
打ち寄せる大波 そして 彼方へ続く南ア諸島
今日の雲海は 泳げそうな勢い(笑)
思い出の頂「荒川三山」そして 未踏の頂「聖岳」
大海原に浮かぶ 火山島のようです
緑と岩の稜線…五丈岩は遠い…
振り返れば 鋭角な稜線が続いていました
五丈岩はこの角度が好きかなぁ…
本当に今日の雲海は 美しかった
そろそろ展望とも お別れです
五丈岩だけが金峰山ではないと 語りかけられました
雲に向かって 下ります
ようやく 花と出会えました…アキノキリンソウ
初めての奥秩父 森の中のテントライフ…
9月15日
昨夜から未明にかけて予想外の雨。今も時折、フライシートを叩く滴の音。午前中の予報は晴れマークだったため、心配はしていませんが、テントの片付けまでには乾いていることを願います。森の中にあるテントサイトの朝は遅く、5時近くになっても灯りが必要です。出発時には何とか自然光で歩けましたが、この暗さにも秋の訪れを感じます。
瑞牆山へは小屋の左側に登山道が続いています。雨で滑りやすくなった道は、やがて、天鳥川に向かって下り始め、同時に考えることは「帰りは登り返しか… (;’∀’) 」
飛び石で渡渉すると、目の前には真っ二つに割れたように見える「桃太郎岩」がその巨体を視界一杯に立ち塞がります。
「瑞牆山」と言えば、天を突くような花崗岩の岩峰が稜線付近に連なるイメージ。13年前の夏、自然公園キャンプ場から初めて眺めた時は「歩けるの?」と思いました。昨日、その頂きへのルートはどうなっているのか調べてみると「歩きやすい整備された道」とのレポ。であれば、一般道でもあり、これまでの経験上、対処できるだろう思っていました。確かに、人が多く通るのか荒れた道ではありません。それでも、ホーム鈴鹿の本谷を歩く感じの箇所もあり、ここを一般道と紹介して良いのかと感じます。小屋には、子供用ヘルメット無料貸出と案内していましたが、「ヘルメットで頭を守れてもなぁ…」は個人の意見。
滑りやすい丸太橋、前に誰も居ないと必要なルーファイ技術。一部とは言え、北穂南稜より困難な鎖場。登山道はその標高と合わせるかのように技術が求められます。
天を貫く岩峰に陽が当たり、一段と白く輝いているのが梢越しに見えました。後で知りましたが、大ヤスリ岩と言うそうで、クライマー達の垂直登山道です。
この辺りから登山道は核心部を迎え、金峰山以上に全身運動が求められます。右に左に大岩を巻きながら稜線まで登りつめると、山頂まで10分の標識。ようやく手を使わないで済むと思いきや、そんなに甘くはありません。最後に木のトンネルをくぐり抜けると、世界が開放されて、断崖絶壁、瑞牆山に登頂です。
横に長い山頂部は一歩間違えれば重力の法則にしたがって、身体は下へ、心は上へ… (-_-;)
そんな事態にならぬよう慎重に行動します。幸い、先行者1名であったため、自分の思うように行動ができましたが、混雑し始めると、長居は禁物です。
山頂からは昨日と同じような景色が広がります。違いは、その高度感。比べものにはなりません。
約束があったため、早めの出発したことが正解で、ゆっくりと山頂からの展望を楽しめました。
次第に人の声が増え始めた山頂を後にし、更に、慎重な足運びで下山の途につきます。
帰り道、大勢の登山者とすれ違いました。人為的落石、転倒、滑落…山に危険は付き物。大きな事故が起きていないのが日常的な光景かもしれませんが、決して、瑞牆山はハイキングコースではないことを記したいと思います。
テントサイトに戻り、約束の時を待ちます。昨日、偶然にも群馬の山友が瑞牆山を訪ねることを知り、小屋到着時刻を見込んで下山してきました。待つこと10分。3月以来の「こんにちわ」。そして、「また、会いましょう」。
山友を見送りテントの撤収にかかります。今夜、いつもの山友と会う約束をしていたため、気分は下山後の楽しみに変わってきています。それでも、登山口への下りでは、広葉樹の明るい森と岩が織り成す立体日本庭園を楽しみながら、1泊2日のテントライフを振り返ります。決して、ゆっくりと過ごしたテントライフではありませんが、それぞれ特徴が異なる山を楽しめた2日間でした。
下山後は前回気になっていたカフェコーナーでいつもの…(笑)
樹間に岩峰…どんな出会いが待っているのだろう
ここから 第2ステージの始まりです…桃太郎岩
何か所かある鎖場…高度とともに角度もつきます
山頂からの展望を期待させる 今日の富士
花を見ると 落ち着きます…アキノキリンソウ
この岩峰を過ぎてからが 核心部
巨岩区間…下りは ルーファイが必要
明暗が分かれる 谷合の道
稜線に乗っても 油断はできません
光の国が 今日の折り返し地点
広いように見えて 安心できる場所は限られる頂
山深い景色が広がる 奥秩父
同じ景色でも 世界が変わる 山の展望
太古の八ケ岳の稜線が 見えてきそう…
先月 辿りつけなかった頂…御嶽山
第2幕はあるのだろうか…杣添物語
あの稜線から北岳を見ている予定でした
山頂より高く見えますね…五丈岩
夏の終わりに大輪の花火…ミヤマダイモンジソウ
今日も茸は 豊作でした
「行ってらっしゃい」…また逢う日まで
即席パスタで テントライフは終了
山と人に出逢えた2日間…ここでも また逢う日まで
夏と秋が交差する和のテイストでいつもの…(笑)
山行日数は減ったのに 増えたいつもの…(笑)