Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

テントを担いで 北ア回帰

9月12~13日 長野県蝶ヶ岳
人気の高い山に伴う駐車場問題にドキドキしながら、真っ暗な林道を登山口に向かいます。

9月12日
すっかり回数を減らしたテント泊山行。気付けば2月の編笠山以来。テント泊した夏山はベース方式、無雪期の日帰りはトレランシューズの山行になり、今年初めて履く登山靴の 手入れを慌ててします。
そんなことで、蓮華温泉から白馬大池。そして、小蓮華山往復を考えていましたが、3日前に満杯となり、計画変更。種池、常念、黒百合…限られた候補地から決めたのは、予約不要の「蝶ヶ岳」。ルートは安曇野側から登る三股ルート。ただ、候補地の中で最もCTが長く、また、階段の多いこのルートで、久しぶりのテント装備を担ぎ上げられるのか不安は拭えません。
蝶ヶ岳は言わずと知れた槍・穂高展望の地。自分にとって山の原点は「白馬・八方池」。そして、ここは「槍・穂高の原点」。42年前、初めて登った蝶ヶ岳から見たその稜線は、厚い雲に覆われ「また、来るかい?」と問いかけているようでした。それから3年後、再び訪ねた稜線からは、山岳雑誌で見たままの景色が広がっていました。この時はまだ、目の前に連なる岩稜を眺めるだけで、登ろうとは思っていません。それから時が経ち、今では殆どの頂に立ち、そこに至る稜線や尾根、沢も歩きました。それは共に眺めたバディも同じこと。一冊の雑誌とこの山が与えた影響は計り知れません。
蝶ヶ岳は今回で7回目。8月に1回、5、7、9月に各2回。ルートは長塀尾根4回、三股3回。北アの中で最も登った頂です。
前日遅くには第1駐車場は満車となり、約800m手前の第2駐車場へと多くの車が戻っていき、それは出発前の今も続いています。朝陽が射し始めた 5時30分、日帰り山行の登山者で賑わう駐車場を出発し、まずは800m先にある登山口に向かいます。前方高くに連なる稜線。その標高差は約1400m。自宅周辺にない高さは、やはりアルプス。蝶沢と常念沢が合流した本沢は激しい音を立て、滝の如く流れています。そこに架かる吊り橋を渡れば、いよいよ登山が始まったと感じます。
力水で水補給。今回は夕食を簡単なものにしたとは言え、カメラ込みで24㎏。しかも、歩き始めから両足に違和感。5年前に、雪山トレーニングとして担いだ27㎏の山行が蘇ります。力水からひと登りで有名な「ゴジラみたいな木」。そして「まめうち平」まで続く第1急登区間。しばらく緩やかに森の中を進み、蝶沢を過ぎたあたりから始まる第2急登区間。長いトラバースを折り返せば大滝山との分岐点になり、頂上はハイマツの向こう側。
階段が整備された道は、足上げ運動が繰り返され、トレーニング不足の身体には疲労として蓄積されます。第2急登の半ばで休んでいると、山頂で会う予定だった安曇野の山友が登って来る姿が見え、1年振りの再会を喜ぶ間もなく、自分の23㎏ザックを担いで山頂に駆け出していきました。残された我々は、遭難救助された気分です(笑) その後も幾度となく現れる階段を何とかやり過ごし、ハイマツ帯の先に槍の穂先が見える最後の直線を迎えました。高曇りとは言え、槍・穂高の稜線に出迎えられ、まずは一安心。
前回も常念岳経由で登って来る山友と待ち合わせ、今日も同じ場所で待っていてくれました。一緒にテントを設営し、積もった話が始まれば、13ヶ月の空白があっという間に埋まり、時が再生します。ただ、陽射しのない稜線は肌寒く、時間とともに重ね着をするバンビー3。
「寒いから帰る」と山友が下山した14時半の気温は11℃。体感温度は6℃以下でしょう。
目まぐるしく変わった出発前の天気予報。結果は槍穂を始め、左に焼岳、乗鞍、御嶽。右に野口五郎、大天井と表裏銀座の稜線。後ろには、頸城山塊、浅間山八ヶ岳、富士山、南ア北部と、正しく展望の山です。
日没前から始まるマジックアワー。遠く東の空から太陽を追いかけるように紅や紫が移り、やがて穂高の稜線から発せられた金色に輝く光の咆哮は、静かに消えていきました。その後もしばらく続くマジックアワー。その変化する世界に稜線を立ち去る機会が見つかりません。
静けさを取り戻した薄曇りの空に星空を期待出来ず、小屋の灯りが今宵の一番星。そして、眼下に広がる安曇野の夜景が、地上の銀河。
次第に西風が勢いを増し、テントを揺らします。数年前では考えられませんが、それを子守唄にします。夜も更け、諦めの悪い自分は、2度、顔を覗かせては空を眺めますが、暗闇の中に絹のカーテンを引いた世界が見えるだけでした。

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登山口よりも登山口らしい 本沢の吊り橋
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名前の如く 勢いのある流れでした…本沢
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この流れが 本沢へ…蝶沢
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樹林帯と階段が 三股ルートの特徴
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荷物をシャッフル…前方は 23㎏ザックの山友
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稜線が近付くと 秋の気配を感じます
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山友と槍の穂先は ダブルケルン
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今回も ここまで長い道のりでした
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再会の喜びは この景色とともに…
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ハイマツを眺めるホシガラスに 哀愁を感じました
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この5年間だけでも いろいろあった バンビー3
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足取り軽やかに 裏山を下りる 山友
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横尾尾根・槍沢の槍ヶ岳周回から9年
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2010年9月 初めて登った穂高奥穂高岳
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岩稜と北穂沢でそれぞれ登頂…北穂高岳
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西穂高登頂から6日後に登頂…前穂高岳
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氷壁の地を訪ねたく 中畠新道で「奥又白池」は2014年
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蝶ヶ岳は 登った回数以上に 思いが深い
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山に包まれていく…安曇野
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高曇りならではの一期一会
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焼山・火打・妙高…頚城山塊が黄昏る
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この角度なら「天使のスロープ」だな…(笑)
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時の流れを感じる 山の夕暮れ
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槍と常念をつなぐ 紅の架け橋
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やはり 槍ヶ岳は 「北アのランドマーク」
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ここで味わうマジックアワーは 贅沢でした
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夕食の準備をしながら…テントにて
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1番星・2番星・3番星…
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地上の銀河とともに 素敵な夢を…

9月13日
遠くで聞こえてくるアラーム音に気付くには、いつもより少しだけ時間がかかりました。風の音は大丈夫でしたが、はためくテントが頭に当たっては起こされる一夜でした。
昨夜から槍穂が染まるモルゲンロートの朝は期待していませんでした。まず、その稜線が見えていてくれたら感謝です。山天予報どおりに安曇野側は見事な雲海。稜線で幕営すれば雲海は付き物だと、職場で話していたとおりの朝になりました。昨日と同じような高曇り。それでも、雲海が景色に変化をもたらし、その光と影が織り成す世界は一期一会。
「雲と雲のサンドイッチ。具材は浅間山に八ケ岳」
蝶ヶ岳ヒュッテのテントサイトは、HPでは30張可。今回の40張弱でも余裕はありましたが、傾斜地になります。行楽シーズン前とも言える日曜日で、これほどの張数と言うことは、週末、まして行楽シーズンと重なれば、結果は想像できます。テント事情の他にも、この5年間で様々な山行スタイルが確立され、狭い範囲ですが、北アの現状を垣間見た気分です。
久し振りのテント泊山行とは言え、昨日の疲れが残っている現実。以前から感じていますが、もう経験だけで補えない年齢です。「山は逃げない」と言いますが、「気力と体力」は逃げます。今後の自分を守る術は「現状認識」と「山の選択」。ただ、今回の山行でもう少しだけ頑張ってみようと思いました。行きたい山に向かって、努力をしてみようと思いました。
9時出発の13時30分下山が今日の予定。都合が合えば、再び山友と会う予定です。
荷物整理を行い、瞑想の丘の向こうにある草紅葉まで散策。前回と較べて今年は1週間程度遅いように思えました。普段の生活で樹々の紅葉は身近ですが、草紅葉を感じることはありません。山ならではの景色です。まして、それが槍穂高と共演している「蝶ヶ岳劇場」。観覧料は1人2000円のテント代と標高差1400m歩き。席は自由です。
時折、雲間から陽が射し、稜線に影を落とします。見飽きることのない展望。その背景には、歩いてきた道のりがあります。深田久弥さんの有名な言葉「百の頂に百の喜び」。自分は「頂」よりも「道」に思いを感じます。そして、その思いは山だけでなく、人生に返ってきます。蝶ヶ岳から見る景色には、「山・人生の縮図」と言っても過言ではないぐらい、時が交差しています。
テントを撤収し、次はいつ来れるだろうかと思いながら飲む「最後の一杯」。ハイマツ越しに連なる峰々は、力強く、荒々しく、しかし感じようによっては、静かにじっとしている風です。
「10回は登頂したいなぁ…」は僕の思い。「テントが駄目なら小屋泊へ」はバディの意見。
ハイマツの小道を抜けて振り返れば、昨日、避雷針の台座で手を振っていた山友の残像が浮かびます。そしてその横には、ケルンのような槍の穂先が次の道しるべとなり、見送ってくれています。
山の事故は下山時。昨日も痛ましい事故がすぐ近くで起きていました。階段が続くこのルートは登りの辛さよりも下りの転落が核心部。下り終えた先にあるほっとする一歩目にも注意を払います。
ベンチ、蝶沢、まめうち平、ゴジラみたいな、力水。本沢にかかる吊り橋を渡れば、何となくゴール。
今回も色々考えさせられることになったテント泊山行。とにかく、無事下山に感謝。
山友とは都合がつかなくなり、また次の機会になりましたが、今度は1年先にはならないことを願います。
下山後は、この時世でテイクアウトのみになったお気に入りのお店でいつもの…。

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紅の帯が 日本海上を横切ります
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雲海の上空に もうひとつの雲海
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今でこそ判る大人の雰囲気…大天井岳
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朝が近付いてきました
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今日のご来光は 「朧太陽」
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青い山脈は 今夏登った仙丈ヶ岳(右端)
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雲海にも表情があり 今日は 綺麗でした
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山のグラデーションを楽しめる 朝のひと時
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穂高の展望だけではない 蝶ヶ岳
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ヒュッテに向かう途中からの「槍・穂高連峰
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下山前に 少しだけ 稜線散歩
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小さな秋を 少しだけ感じます
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幾度となく沿って歩いた 梓川
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少し歩くだけで表情が変わりました
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この道は 蝶槍・常念・燕岳へと続きます
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見事な草紅葉…横尾本谷右俣
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そろそろ ゆったりテントライフを 大切にしていきたい
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八ヶ岳を眺めながら 下山開始
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振り返って 最後のお別れ
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ハイマツ広がる稜線は 北アルプスらしい景色
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雲海に向かって 下ります
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足元の 紅を楽しむ 帰り道
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そろそろ常念岳とも お別れです
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降りてしまえば あっと言う間の 2日間
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数年振りに訪ねたお店で いつもの…

2021夏山…女王の向こうには

8月5~7日 長野県大仙丈ヶ岳
2年振りの夏山稜線歩きを目指し、早朝出発で山麓の駐車場に向かいます。

8月5日
南アルプスの女王と呼ばれる「仙丈ヶ岳」。北アルプスや八ヶ岳を登っていた山行人生第3期で、初めて訪ねた南アルプスがここでした。そのきっかけは、管理人として登山道の整備や環境保全等をされている高校の先輩と会うことです。その後、塩見岳甲斐駒ヶ岳赤石岳、荒川三山を回り、雪の黒戸尾根(七丈小屋)、GWの仙丈ヶ岳と続き、それ以来、5年振りの南アルプス。
近年、テント泊も含めて思うように山行が出来ず、夏山山行計画もそれを踏まえたものになります。仙丈ヶ岳へは、北沢峠にある長衛小屋で幕営。北沢峠へは山麓の仙流荘から南アルプス林道バスを利用することになります。7月下旬までは災害復旧工事の影響により、GW同様「歌宿」までの運行でしたが、現在は「鹿の沢」まで延長され、工事区間を10分弱歩いた後、北沢峠までのシャトルバスに乗車できます。(運賃は、仙流荘~歌宿間分)
初日は移動日であることから、10時5分発に乗車し、昼前に到着です。乗車人数は峠付近散策の団体10名を含め、16人。「鹿の沢」まではゆったりと乗車出来ました。途中の乗り換え区間では、アサギマダラが道端に咲くヒヨドリソウに群れ、透き通った青に清涼感をもらいます。青空と白い雲。そして、東駒ヶ岳。(伊那では甲斐駒ヶ岳のことを東駒、中央アルプスの木曽駒ヶ岳を西駒と呼びます)照り付ける陽射しは厳しくとも、吹く風は爽やかな高原の風。夏の匂いが満ちあふれていました。
北沢峠から長衛小屋へは林道を山梨県側に5分程下ります。右側の沢にかかる小さな橋が明日の登山口。その左側に小屋への案内表示があります。
テントサイトは沢沿いに細長く、陽射しを避けて木陰に張る方が多いようです。テント申込は事前予約制で、直接小屋に電話をします。キャンセルは前日の午後6時まででした。総数で20数張。私達は水場に近い小屋寄りの箇所に張ります。小屋の向こうには東駒ヶ岳の摩利支天、反対側には小仙丈ヶ岳の稜線が見える場所です。
午後から鳥見を兼ねて、北沢峠周辺を散策。ただし、バスの運転手さんが話されていた熊情報に深追いはせず、適当な時間でテントに戻ります。陽も随分と傾き、夕食の準備を始めようとした時、森から聞こえるコマドリの鳴き声。でも、次第に遠ざかっていき、姿を見ることは出来ませんでした。
やがて赤く染まっていた摩利支天の白き岩峰が空に溶け込み、辺りは漆黒の世界へと移ります。聞こえてくるのは、沢と水場の音だけのテントサイト。明日の山行に期待を膨らませ、2021夏山1日目の夜は過ぎていきました。


遥か彼方に思える仙丈ヶ岳…明日の今頃はあの稜線に立っている 

5日前にシャトルバスが運行開始…バス会社のご努力に感謝 !!

随分と近くになりました…仙丈ヶ岳

本当なら徒歩で見ている景色…東駒ヶ岳~駒津峰~双児山

山梨県と長野県をつなぐ 鋸岳「鹿の窓」

工事区間は歩行者専用の仮設通路で通過します(通過時間は2分程度)

藪沢から北沢峠までは 無料シャトルバスで10分程度

ここからテントサイトまで 林道を下ります

5年振りの 小仙丈ヶ岳稜線…前回は雪でした

12時15分幕営完了 そして 本日の予定も完了(笑)

寝転んで見上げる 夏の空

隠れては 現れる 摩利支天(東駒ヶ岳

ここでも慌ただしく動いていました…コガラ(トリミング処理)

オダマキを初めて見た時の感動は今でも…キバナヤマオダマキ

目元が若々しい…シジュウカラ

第一種特別地域の北沢峠周辺は 舗装も禁止されています

プクっとした姿に いつも癒されます…ヤマホタルブクロ

北沢峠から望む岩峰は 双児岳の不動岩でしょうか

仙水峠への登山口で咲いていました…シナノオトギリ

奥に 一段下がったテントサイトがあります

両側出入り口のテントは 風が気持ち良いです

南アルプスのテントサイトは 水が豊富で助かります

湿度が低いため 気温以上に涼しく感じます

酢飯は 夏テント泊の常連食

明日も期待できる 夕暮れのひと時

8月6日
時刻は2時40分。起床時間まで30分ほどありましたが、空模様が気になり、フライシートのファスナーを上げます。テント泊で最も期待する瞬間。結果は、満天の星空でした。
今日は、小仙丈ヶ岳から仙丈ヶ岳に向かい、その時の状況で大仙丈ヶ岳に行くかどうかを判断し、仙丈小屋からは馬の背ヒュッテを経由せず、小仙丈ヶ岳経由で下山する計画。
熊対策も兼ねて、ヘッデンの必要がなくなった頃、テントサイトを出発。登山道の状況は判っていることから、靴は負担の軽いトレランシューズを選択しました。
橋を渡ってすぐにある北岳見晴台。朝陽を浴びて赤く染まり始めている北岳とご対面。しばらくは急登が続き、北沢峠からの道と2合目で合流します。その後は、明るい樹林帯の道。やがて、樹間に槍・穂高連峰を望めば4合目。馬の背ヒュッテ分岐点の大滝頭で圏内となり、先輩の友人でもある兄からLINEが入り、今日、先輩が入山するので下山時に寄ってとの伝言。そのため、仙丈小屋からは馬の背ヒュッテ経由に変更することにしました。大滝頭を過ぎれば、鳳凰三山南八ヶ岳を望み、東駒ヶ岳が背後に聳えます。山頂部から摩利支天にかけての花崗岩は冠雪を思わせる白さで、その特徴的な山容は「登るより見る山」。
大きな石が続く直登の道端がハイマツに変わると、森林限界まで残り僅か。超えれば6合目で、大パノラマの序章が始まります。小仙丈ヶ岳に続く道は一面ハイマツの海。ほぼ同じ標高である北アルプスの常念岳と全く異なる植生は、南アルプスの特徴と言えます。良く整備されたハイマツの道を登れば、その時間と共に変化する周囲の景色。お馴染みの富士山、北岳間ノ岳123ショットやオベリスクの地蔵岳で有名な鳳凰三山。東駒ヶ岳の向こうには八ヶ岳が連なり、馬ノ背越しには空木岳から妙高連山までの峰々。2,864m小仙丈ヶ岳に登頂すれば、正面に聳える仙丈ヶ岳。ホーム鈴鹿の竜ヶ岳を「鈴鹿の女王」と呼んでいますが、さすがにスケールは敵いません。先輩に連れられて登頂した際は、南部の峰々を山座同定していただきましが、今では歩いた稜線も数多くあり、思い出が蘇ります。
仙丈ヶ岳までCT 1時間。その時間以上に懐の深さを感じさせるのは、小仙丈沢カールを従えているからでしょう。ここから始まる展望稜線は、本州を代表する南、中央、北アルプスの峰々や富士山、八ヶ岳秩父、頚城が夏空の下、変わらぬ姿を見せてくれています。これまで歩んだ山の軌跡があの峰々にあることを思うだけで、今は幸せな気持ちになれます。そして、こうして未だ見ることの出来る自分に感謝です。
GWの時は雪壁となって立ちはだかった箇所もつづら折りで難なく通過し、仙丈小屋の分岐を過ぎれば、藪沢カールに小屋を望み、3,033mの頂を正面に捉えます。足元に咲く高山植物に祝福された5年振りの登頂は、前回同様、私達だけの時間を女王が与えて下さりました。
時刻は9時前。天候、体調共に問題はなく、予定通りに大仙丈ヶ岳へと向かいます。ここは、先輩が勧めていた場所。仙丈ヶ岳から塩見岳へと続く仙塩尾根。その最初のピークが大仙丈ヶ岳2,975mです。
途中にあるお花畑と岩場が続く非対称稜線。そして、仙丈ヶ岳が擁する3つ目の大仙丈沢カール。
チシマギキョウ、タカネコウリンカ、ミネウスユキソウ、イブキジャコウソウ、タカネツメクサ…。この楽園を過ぎれば、両側に切れ落ちた岩尾根に向かいます。伊那側へ落ちれば助からない高さであり、歩く人が少なければ浮石も多く、また、ザレた箇所も多いことから、久しぶりに緊張する場面が続きました。40分程で大仙丈ヶ岳に登頂。振り返った仙丈ヶ岳は、違う山に見間違えるほど、荒々しい姿に感じました。
往路とは別の視点で楽しめる復路。お花畑まで戻ってホッとする感覚はここ数年味わっていないものでした。仙丈ヶ岳の山頂は結構な人で賑わっており、そのまま小屋に向かって下山。小屋で小休止のあと、先輩の待つ小屋に向かいます。
7年振りの再会はその時間的空白を感じさせることなく、作業中の先輩が発した最初の言葉が「泊まっていきなよ」。ここで再び、山行計画が変更となりました。
ただこの変更が、結果として、娘に心配を掛けることになり、電波状況が悪い場所での課題となりました。


木星が照らす 小仙丈ヶ岳

ここから見る北岳は美しい…見晴台

まだ陽の射さぬテントサイトと東駒ヶ岳

稜線は緑一面の大海原

馬ノ背の向こうに広がる 中央から北アルプスの稜線

定番ですが…小仙丈ヶ岳

これも定番の1・2・3

仙丈ヶ岳と対照的な山容…鋸岳~東駒ヶ岳

稜線の思い出は 南アルプスの歴史…悪沢岳塩見岳・荒川中岳・前岳赤石岳

この稜線歩きは 時間を感じさせない

残雪期の直登を思い出しながらの「つづら折り」

世界が変わる 藪沢カール巡り

仙丈ヶ岳で最も美しい道だと思う

今回も貸切の 3,033m…女王に感謝

地上の青空か宝石か…チシマギキョウ

仙塩尾根で隣の頂へ…大仙丈ヶ岳

唯一咲いていた 南アを代表する花 …タカネビランジ

お花畑を過ぎれば そこは 岩の世界

右側は 伊那谷への直滑降

仙丈ヶ岳は 女王を守る近衛兵

大仙丈沢カールは 新たな景色を生みました

遠く塩見岳へ…南ア北部の背骨「仙塩尾根」

来た道もまた新しい「世界観」

足元で輝く「地上の宝石」…イブキジャコウソウとヒメレンゲ

藪沢カールを 仙丈小屋へ…

馬ノ背から振り返る 仙丈ヶ岳と仙丈小屋

ハイマツの海に浮かぶ 「東駒ヶ岳」島

小屋の息吹が 森を照らす

囀りの鳥を探して 囀らない鳥を見つける…サメビタキ?(トリミング処理)

藪沢新道を横切る 名もなき滝

先輩曰く 「空は秋」

7年振りの夕暮れ…

8月7日
予定していない2,550mで3日目の朝を迎えることになりました。
「藪沢小屋」。幕営している長衛小屋を開き、「南アルプス開拓の父」とも評される「竹澤長衛」さん。昭和16年に藪沢新道を開き、昭和26年、その中間に位置する場所に建てました。それから70年が経ち、建て替えられているとは言え、その半分以上の歴史を知る先輩は、昭和から平成、令和へと続く時代の「生き字引」でしょう。
台風の影響か少し雲が多い朝は、かえって朝焼けの東駒ヶ岳を見せてくれました。
昨日来の先輩の話で、今回も心に留め置かねばならない事がたくさんありました。
「ポール問題」「登山道整備の意味」「環境保全
40年以上、ここ南アルプスで過ごしてきた先輩が話す環境の変化を初め、多くの事実は、偶にしか訪ねない私達にとって、気付ない事柄がたくさんあります。その言葉から、私達が歩いている道は当たり前ではなく、見ず知らずの方による努力によって存在するものであり、その道を破壊するような行為は慎まなければならないことを、あらためて、思い起してくれます。
本人が気付かないまま道を破壊している。整備しているつもりが破壊している。道の破壊は高山植物や生態系の破壊へと繋がる。
先輩の話を聞くことで、気付かないことや忘れていることが思い返されます。
「秋になれば、関西の山を一緒に登ろう」と約束をし、今日も登山道整備に向かう先輩に見送られて、小屋を後にしました。
朝、真っ赤に染まる雲を纏っていた東駒ヶ岳は、まだ朝陽を受けておらず、黒々とした山塊を私達に見せています。鋸岳左側にある山間では雲が谷を埋め、稜線から流れ落ちる「滝雲」風の景色。また、遠くに望む白馬三山から鹿島槍ヶ岳の稜線。昨日より幾分雲が多いのは、台風の影響でしょうか。
大滝頭に合流するまでにいくつかの沢を渡りますが、身体が温まっていないため、慎重に通過します。
当初の予定は、北沢峠を12時30分発に乗車する予定でしたが、天候や混み具合を考慮し、1本早めの9時30分としました。8時前にはテントサイトに戻れる計算であり、あとは下山スタートによる転倒など怪我をしないよう注意を払います。
駒ヶ岳が樹間から姿を隠し、あとは北岳が残るだけです。その北岳とも見晴台を最後に別れを告げ、林道へと戻ってきました。
昨日、先輩の同行者が下山される際、長衛小屋に計画変更を連絡していただきましたが、帰り際には声をかけておくよう言われていたため、小屋番さんにお礼と共に伝えると、玄関までお見送りをいただき、あらためて、先輩の大きさを感じました
帰りのバスは14人。東駒ヶ岳の頂は雲に覆われて見えません。「昨日は麓から仙丈ヶ岳が1日中見えていたが、こんな日は夏だと数日しかない」と、運転手さんの話す声が聞こえてきました。
その貴重日に女王が招いてくれたことに、あらためて感謝の気持ちを寄せ、次はいつ訪ねようかと思いながら、アルプス林道を麓に向かって揺られました。
下山後は、伊那の名産でいつもの…。


今日最初の モルゲンロート

想像を搔き立てる シルエットの東駒ヶ岳

最終日…朝焼けは「雨」

藪沢新道の朝…雲が黄金色に輝く

駒ヶ岳が 「雲ルゲンロート」^^;

小屋も目覚めます

落雷被害で立ち枯れたそうです

刻一刻と変化する 山の朝

今年 先輩達が整備した 藪沢新道

大滝頭まで いくつもの沢を越えます

雲が舞う 朝は 一期一会

山の原点「八方尾根」と初めて幕営した「鹿島槍ヶ岳

北岳は 南アルプスのランドマーク

ナナカマドの巨木は 南アルプスの森

ここでお別れ…北岳見晴台

あの稜線から「お帰り」 そしてマイハウスに「ただいま」

昨日の山行を思い出しながら バスを待ちます

道端の夏提灯…北沢峠バス停にて

駒ヶ岳は夏雲へ…手前は「双児山」

ヒヨドリソウに舞う 渡り蝶 「アサギマダラ」

やはり 看板表示は 「東駒ヶ岳

さて 「鹿の窓」は どこでしょうか…

GWのバスはここまで…歌宿

戸台川への標高差は 400m

伊那の栗で山旅を終える いつもの… 



 



 



 

夏山に向けて…山散歩

7月24日 奈良県大台ヶ原
夏山の暑さ対策のため、少しでも身体を慣らそうと、昼下がりの駐車場に向かいました。

昨年も伊吹山の後に行った大台ヶ原。今年もその順番となりました。
梅雨明けの4連休。各地の山は大勢の登山者で賑わっているようです。関西の山もご多分に漏れませんが、私達の計画には、この暑さの中、登ることはありません。とは言え、夏山を控えて暑さに慣れることも必要なことから、夕立情報を確認した上で、午後からの山散歩としました。
ドライブウェイを利用し、起点となる1,580mの駐車場。車の気温計は22℃と下界より10℃以上低く、湿度も低いことから、体感温度は更に下がります。また、薄雲が陽射しを遮り、暑さ対策になるのかどうかと思いつつ、最近は歩いていない東大台地区の西側周回ルートを歩き始めました。
大台ヶ原は今年のGW以来。最近、ここを訪ねる目的は、山散歩の他に「鳥見」。ミソサザイ、ヒガラ、ゴジュウカラ。そして、オオルリ、ウグイスに続く、日本三鳴鳥の「コマドリ」。この森を貫く天からの声の主を求めて、何度か訪ねていますが、未だ、姿を現してはもらえません。
元々、鳥見の情報は少なく、自分達で見つけるしかありません。今回、西側周回を選んだ理由も、状況確認が理由のひとつです。
駐車場から向かう最初の目的地「シオカラ谷吊橋」。150mほどを一気に下ります。小石が点在するため注意は必要ですが、登山道はよく整備されています。時間は14時を過ぎているため、最高峰「日出ヶ岳」から周回してきた登山者の方が最後の登り返しに踏ん張っている姿を見かけます。大台ヶ原は何度も訪ねていますが、この登り返しを避けるため、初めて訪ねて以来12年振りの訪問となりました。但し、今回は下り利用ですが…。
シオカラ谷を流れるのは東ノ川上流。この川は北山川、熊野川へと流れ、最後は太平洋へと続いています。止まることなく、大海原へ続く流れは、自然の連続性を感じます。
次のポイントは、大台ヶ原を紹介するポスター等で必ず登場する「大蛇嵓(だいじゃぐら)」。シオカラ谷との標高差は180m。シャクナゲトンネルを抜け、ゆっくりと高度を上げていきます。笹原になると三叉路。右に進めば「大蛇嵓」。下り坂の岩場先端にある鎖の先は800mの断崖絶壁。大台ヶ原No.1の人気スポットです。すぐ右側にある蒸籠嵓(せいろぐら)を眺めれば、今、自分が立っている状況が想像できると思います。そして、その蒸籠嵓に向かって声を張れば、「山彦」が谷を返します。樹木の霊が応えた声と考え「木霊(こだま)」と呼ぶこともあります。古の人は今のように「ヤッホー」と楽しむのではなく、もっと神聖視されたものでしょう。
最後のポイントは「牛石ヶ原」。次の分岐点「尾鷲辻」まではなだらかな道が続き、その途中にある笹原の開けた場所。東大台周回コースの場合はちょうど昼休憩の場所となります。魔物を封じ込めた伝説も残っている巨大な牛石や神武天皇像など、写真スポットも盛り沢山。特に、トウヒの立ち枯れは大台ヶ原の代名詞とも言える風景でしょう。緑の笹原に立つ、あるいは横たわるトウヒの白き幹。かつて、苔が覆う見事な森だったことは、この幹から想像するしかありません。
最近利用する中道との合流点「尾鷲辻」。ここから周回コースは高度を上げ、正木峠から日出ヶ岳へと向かいます。今日は中道で駐車場に戻ります。等高線と沿うようにして続く中道ですが、時折吹く、ひんやりとした風がとても心地よく、木漏れ日も暑さを感じません。
結局、暑さ対策にはならなかったかも知れない今日の山散歩。でも、「コマドリ」の姿を初めて見ることが出来、大きな収穫があった山散歩でありました。
時間的なことから下山後ではなく、山行中にいつもの…(笑)

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今日のルート…シオカラ谷~大蛇嵓~牛石ヶ原~中道
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森を繋ぐ シオカラ谷吊橋
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この先は 太平洋に続く道
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本日の最高地点を過ぎれば 「大蛇嵓」分岐点
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同じ県でも 公園の鹿と同じ ではありません
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遠く大峯を望む 岩の一本道
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関西人なら ポスターで見たことがあるのでは…大蛇嵓
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今は あの突端の丸い岩に 立っている状況でしょう…蒸籠嵓
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人が居ないと 安全だと思います
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日本の滝 100選 「中ノ滝」を遠望…大蛇嵓
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岩場に咲く 白い花火
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こちらも 岩場の畔でひっそりと…コヨメナ?
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大蛇嵓からの展望は 落差だけでは ありません
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木々の間から ギィギィと … カケス (トリミング処理)
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午後遅くの光は 深い緑になりました…牛石ヶ原
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かつてここが森であった 証たち
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光は苔を奪い 笹を増やし 鹿を呼びますが…これも自然
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午後スタートは 静かな山行を楽しめました
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木漏れ日の中道は 夏と思えぬ 爽やかな道
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何を思うか しばし 佇んでいました…アカゲラ
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西陽で 白が際立っていました…駐車場から正木峠方面
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幽玄の峰 大峯山脈…ドライブウェイから
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ようやく お逢いできました…コマドリ
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時間が止まった 15分間でした …(トリミング処理)
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地元の銘菓で 山行中にいつもの…(笑)

夏山の前に…山散歩

7月17日 滋賀県伊吹山
僅かな期待を胸に、年に一度の機会を求めて駐車場に向かいました。

昨年の6月にドライブ山行した伊吹山。その時に初めて知ったのが、山頂付近で見られる「ヒメボタル」。例年7月の1週から3週にかけて22時から明け方4時頃に見頃を迎えます。山麓から山頂付近(1,260m)までは伊吹山ドライブウェイが結び、通常午後8時までの通行時間は夜間特別営業を行い、山頂駐車場で車中泊が出来ます。とは言え、ホタルの見頃は3週間。特別営業は週末の6回。そして、伊吹山は独立峰であるが故、風の影響を受けやすく、しかも、季節は梅雨末期。と、ホタル鑑賞の条件は厳しいものです。今回、土曜日の晴れ予報を受け、バディの靴慣らしを兼ねて向かいましたが、料金所の方から聞いた「山頂付近は風が強い」の一言で、早速の諦めモード。駐車場に近付くにつれ、道路は濃い霧に覆われ、最後はホワイトアウトに近い状態…(汗) それでも諦めきれない気持ちで深夜に外を眺めれば、相変わらずの風と濃霧。ホタル鑑賞は来年以降に持ち越しです。(翌日、ドライブウェイのブログでは、深夜に数匹観測されたようです…)
明けて翌朝。周囲はまだ霧に包まれ、山麓からのライブカメラ映像でも山頂付近に濃い雲が纏わりついていることが判ります。また、3合目から見た山麓の映像では、陽射しが見られ、予報通りに晴れてくることでしょう。伊吹山は何度も登っており、琵琶湖に浮かぶ竹生島を見ることが出来れば、展望は満足。それよりも、雲と風の動きを楽しむ事がこんな日の過ごし方。また、今回は先日購入した靴を夏山前に履いておくことも大切な目的であり、この他にも花と鳥を楽しめればと思っています。
時折、薄日が射し、琵琶湖方面の展望も開けてきました。山頂付近にかかる雲も取れる時間が長くなり、駐車場も少し賑やかになってきた9時に出発。
気温は100m上がれば、0.6度下がると言われていますので、下界より7~8℃低いことになります。例え気温が低くとも、陽が射せば、そこは関西。十分な暑さ対策が必要です。それを思えば、今日のような天候は登山日和とも言えます。
駐車場から伊吹山頂へは、西・中央・東(下り専用:1,500m)登山道があり、急勾配でありながら最短(500m)となる中央を下りとし、西登山道(1,000m)から山頂を目指します。ゲートを抜け、まずは、お花畑を斜めに横切ります。ここはクサタチバナの群生地ですが、すでに花期は終え、昨年同様、ホオジロとウグイスが出迎えてくれました。
イブキトラノオ、ヤマホタルブクロ、ミヤマコアザミ…。「新・花の百名山」に選ばれ、多くの高山植物にその冠を持つ「伊吹山」。麓から歩いて登る正面ルートも人気ですが、こうしてドライブウェイを利用して気軽に山と花に接することが伊吹山の良さでしょう。
小学生時代の夏休み、帰省先に向かう途中、車窓から眺めた「伊吹山」。山を始める前から知っていた貴重な山の一つであり、こんなにも身近な山になるとは思いもしませんでした。
雲が大きく動き、眼下や目前に広がります。2021年 夏山シーズン幕開けを予感させる光景です。
正面登山道と合流すれば、山頂付近で賑わう声が聞こえてきます。この登山道を利用するのは冬に限られていますが、ここ数年は雪不足ですっかりご無沙汰となりました。ヒメホタル同様、冬の伊吹山も積雪状態と天候と休みの一致が最大の課題です。
山頂付近は起伏のある平原となり、東登山道では頂上台地を感じることが出来ます。今日は散歩程度の気分であり、長居はせずに下山開始。途中、振り返った先に広がる真っ青な空と緑の草原がとても印象的で、少し忘れていた山の世界を思い出しました。
下山後は、夏らしい柑橘系でいつもの…(笑)

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駐車場から眺めるこの景色で満足
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風に揺れる姿が涼し気…イブキトラノオ
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初めて覚えた花のひとつ…シモツケソウ
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西登山道の門番ですか…ホオジロ
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山間に続く 山麓の景色も美しい
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この花を見れば 夏を感じます…薊(ミヤマコアザミ)
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背景と同化していた ホオジロの番い
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南側の展望は 時々 現れました
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ここは 鈴鹿北部に繋がっていると思う…カレンフェルト
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頂上台地西端 微かに見える「琵琶湖と竹生島
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足元を飾るは ウツボグサ
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夏の便りが 空から降りてきたように思います
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夏色のパッチワークが 琵琶湖へと続きます
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花弁の切れ込みが特徴です…イブキフウロ
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我が家では5月に咲きます…イブキジャコウソウ
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小屋前で保護されていました…タマガワホトトギス
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夏山には 黄色系の花が似合います…キンバイソウ
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今日は 雲上の頂上台地
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この道は 東登山道に続きます
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数々の物語に登場します…竹生島
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小さく 山に起こる波…ヤマタツナミソウ
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まだ爽やかさを感じる 午前の青空
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やはり 中央登山道は 下りでしょう
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すっかり雲が取れました…ドライブウェイ 上平寺越駐車場より
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下山後も 夏らしい 天上花を…
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酸味が 夏を連れてきた いつもの…(笑)

梅雨の晴れ間に「おらが山」

5月23日 三重県尼ヶ岳
自宅から20km 30分。約1年振りの駐車場に向かいます。

おらが山と呼ぶ「尼ヶ岳」は室生・赤目・青山国定公園にある室生火山群東端の山。トロイデ状の原形を保ち、その姿から「伊賀富士」と呼ばれています。駅に向かう坂道からその頂き部分を眺めることが出来、正に日常生活と切っても切れないこの山は、僕にとっての「おらが山」。そして見るだけなく、駐車場までの便利さと2時間あれば登って降りてこられる手軽な周回コース。何より、1000数百段にも及ぶ階段は良いトレーニングになります。また、山頂から眺める自分が住む町の他に、東は伊勢湾、西は台高山脈や室生火山群の峰々。春の新緑、夏の朝トレ、秋の紅葉、冬の霧氷…。四季折々に楽しめる万能山です。
今日は貴重な梅雨の晴れ間と空いた午前中を利用し、いつもより少し余裕を持って歩いてみようと思っていました。駐車場に着くと、すでに3台。週末とは言え、大抵は誰も会わない山。人混みを避けてこの山へ登りに来られるのか、それとも、知名度が上がってきたのかは不明です。
林道歩きから始まるこのルート。準備運動の代わりに息を整えながら、歩き始めます。木津川水系前深瀬川に架かる橋を渡ると登山道らしくなりますが、ここで、聞き覚えのある鳥の声。通称「ミソッチ」のミソサザイです。その姿からは想像もできない響き渡る声。その姿を探し求めると、忙しなく動き回っては鳴く姿を発見しましたが、カメラに納めることは出来ませんでした。
気を取り直して山行再開。ゆっくりと人工林の一本道を進むと、いよいよ階段のお出ましです。
何度かここでレポしていますが、1300段ほどの階段は、5つの区間に分かれており、それぞれが意味を持つように、段階的に山頂へと続きます。登りの核心部となる第4階段は左側に広葉樹、右側に針葉樹で始まり、ゲートと称する2本の木を過ぎれば、広葉樹林帯へと入ります。今回はまだ新緑が美しく、いつもより時間を掛けて登るのは、一気に登るのが辛いことへの言い訳かもしれない…(-_-;)
とは言え、ゲートを過ぎた後の130数段は、自分との闘い。第4階段終了まで休まずに歩くことが、この山を登る自分の意義。そして、天使が見える第5階段 (笑)。新緑のトンネルが美しい「天にも昇る階段」の途中、開けたところで振り返れば、ほんの一息つけます。風を少し感じ始めれば、芝生広場となった山頂が開けます。駐車場に停まっていたのは3台。下山で1人、階段の手前で1組を過ごしたので、残りは1組のはず。すでに下山したのか、大洞山へと縦走したのか、山頂はいつものように貸し切り状態でした。
遠くに見える住む町は、陽射しで光って見えるもの、山頂付近は薄日が射す程度。これは、おらが山あるある。展望は全体的に霞んだ感じでしたが、伊勢湾の海岸線は辛うじて見え、地元の町も見えたので、良しとしましょう。いつものように、一通りの写真を撮った後、富士見峠を目指して、別の下り階段に向かいます。この階段を下ったところにあるベンチでおやつタイムにしようと思っていましたが、計算上残りの1組4人が早めのランチをされているようで、そのまま通過し、次のポイントで下山はしていないけども、いつもの…(笑)
再び、前深瀬川沿いの道となり、ミソサザイの声に足を止めてみますが、相変わらずの忙しなさで、今度は姿さえも確認することは出来ませんでした。それでも、美しい鳥達の声と山頂からの展望。そして何より、階段を全う出来たこと。他の山行とは一味違う親近感。それが「おらが山」たる所以なのでしょう。
月に一度はおらが山へ登ってみようかな…(笑)


林道歩きから始まるのも 悪くないと思える「おらが山」

ミソッチが戯れる いつもの結界橋…

今回も始まったと思える 第1階段

段差もレベルアップする 第2階段

階段を見守るかのごとく マムシグサ

空気まで苔色に染まって見えました

綺麗な曲線を描く 第3階段

核心部の第4階段は 最も情緒的

道端の広葉樹に 問いかけたくなります

これほど新緑を感じたのは 初めてかもしれない…

振り返れば 緑に消えていく第4階段

あのベンチに座る日が来るのだろうか…

朧げに見える(笑) は 第5階段

天にも昇る階段とは 良いネーミング

ここで振り返る景色と気持ちも 一期一会

天使が見える 最終章

「やっぱり 山頂は丸かった…」

今日も雲が多い おらが山…アルアル w

遠くに光るは 我が町

「さて 帰りましょう」

罰ゲーム状態の富士見峠ルート…(笑)

ようやく見えた青空は 山からのご褒美

新緑のトンネルは 秋には落葉道へと変わります

核心部は 年々 変化します

ここでは 山と一緒に いつもの…

ホームの楽園…風は新緑 陽射しは初夏

5月14日 三重県青岳
直前まで花便りを確認しながら、2年振りの駐車場に向かいます。

桜の開花から梅雨入り予報まで、今年は色々なことが早く訪れ、今日の最高気温は27度の夏日予報。まだ暑さに身体が慣れておらず、また、山行回数も少ないため、熱中症に注意を払いながらの出発です。出発点となる朝明駐車場は平日とは言え、思った以上の駐車台数で、週末は駐車場に収まりきれないと係員の方が話していた3年前が思い出されます。ここを起点に向かう山は、釈迦ヶ岳、国見岳、ハライド。これらを中尾根、根の平峠や羽鳥峰峠等を経由し、それぞれが描く山行計画を立てます。
私達はシロヤシオとシャクナゲを求め、3年前の4月に訪ねたブナ清水を経由して国見岳を目指すことにしました。
ブナ清水とは朝明川の源流で、平成初期の地図には載っていないものの、現在は地形図にも掲載され、分岐点には案内表示もある一般ルートです。私達は根の平峠の直下からきのこ岩に向かう登りルートでしか歩いたことはありませんが、確かな踏み跡が続いています。
まずは林道歩きから始まる今日のルート。バディはこの時点で汗が流れ落ちます。朝明川にかかる橋を渡って森に入ると、幾分、涼しくなりますが、まだ身体が暑さに慣れてきません。渡渉を繰り返しつつ、根の平峠に向かうと、お目当ての花達が出迎えてくれます。濃淡様々なイワカガミにシロヤシオ、ミツバツツジにレンゲツツジ。このほか、オオルリを始めとした野鳥の囀りや蛙の合唱が身体に染み渡ります。
分岐点までは、かつて伊勢国近江国と結んだ道「千草街道」。その視点で歩けば、先日訪ねた熊野古道伊勢路の石畳とは異なる趣を感じます。分岐点で一休みをしていると、陽が陰り始め、暑さも幾分慣れてきました。ここからは街道を離れ、朝明川に沿ってブナ清水を目指します。ここで様相は一変し、緩やかにせり上がった円形大劇場の花道を歩くような感覚になります。足元には朝明川の清流、頭上には幾重にも重なる新緑の樹々。
「楽園」という言葉がぴったりの場所。
イワカガミの群落、孤高のシャクナゲ、迸る水飛沫。静と動が調和する世界に響く特徴ある囀りの主は「ミソサザイ」。通称「ミソッチ」(笑)。短い尾羽をピンと立てた姿勢は、見る者全てを癒してくれます。
再び円形劇場の様相になると苔と葉に覆われた2枚の巨岩、朝明川の源流「ブナ清水」に到着です。しかしここは、単にルート上の通過点。案内表示の名前はこの場所ですが、このルートの良さはここだけにあらず、まだまだ続きます。
新緑の向こうに空が見え始めると尾根が近付いてきたことになります。楽しかった伊勢谷を離れ、県境尾根から延びる支尾根「青岳・ハライド登山道」に入り、次のポイント「きのこ岩」に向かいます。その手前、少し入ったところにある展望岩。僕がホーム随一の展望地と思う場所。眼下に広がる伊勢谷の向こうには、釈迦ヶ岳へと延びる県境尾根越しのホーム北部山稜。そして、視線を移せば奥座敷「イブネ」や雨乞岳の中部山稜。3年前に訪ねた時はまだ芽吹いていなかった伊勢谷の樹々は、今回、視界に収まらない新緑のグラデーションを僕に見せてくれました。正に楽園を望む展望地です。
お目当ての花に大好きなミソッチとの遭遇。何よりこの楽園を楽しめたことで今日の山行は終わったも同然。後は、どこで引き返すのかとなります。当初から「国見岳」の手前にある「青岳」が引き返しポイントであり、ある意味予定通りとなりました。そこからは山麓や伊勢湾、遠くは知多半島志摩半島が望め、また、通過山頂であることから訪ねる人も少なく、ゆっくりと展望を楽しみながら昼食を取ることが出来ました。…但し、お箸を忘れましたが…(笑) そろそろホームは蛭休み。暑さ対策をして登れる山を探さねば…。
下山後は、チェックをしていた初見のお店でいつもの…。

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今日はこの川の源流を再訪
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新緑のサンシェードが 街道を覆う
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好みの色が分かれます…イワカガミ
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古の商人が行き交い 賑やかだったのでしょうか
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新緑の陰に隠れて咲いています…シロヤシオ
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さて 楽園へと参りましょう
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清流の音を止める 紅一点 …シャクナゲ
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山の滴が 清流となり 川になります
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ブナ林を映すかのごとく 苔の巨岩
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美しい囀りは 楽園のBGM…ミソサザイ(トリミング処理)
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ブナ清水の手前 あちらこちらで群落…イワカガミ
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ブナ清水を過ぎれば こちらが登場…フデリンドウ
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いつも微笑んでいるように見える…シロヤシオ
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伊勢谷から県境尾根 そして ホーム滋賀県側の峰々
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きのこ岩の向こうには ホームの重鎮「雨乞岳」…僕はトラバースせずに岩の上へ…
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県境尾根と釈迦ヶ岳 そしてホーム北部の峰々…きのこ岩にて
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伊勢湾へ下るホーム三重県側…青岳にて
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ここから あの頂まで15分 でも 頂に興味はない…国見岳
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国見尾根の2大看板…ゆるぎ岩(左)と天狗岩
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現地調達のお箸で「いただきます」
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今年は これ(5月限定カラー w)を被って歩けました
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雨乞岳の右 あの杉峠へと千草街道は続きます
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根の平峠が近付くと 美しい林の一本道でした
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最後まで 楽しませくれます…根の平峠にて
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山笑う 季節は あっという間に 初夏へと…
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左から 御在所岳・国見岳・青岳
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暑さを忘れさせる 濃厚ないつもの…(笑)

古道再び…トレイルの進路は東へ

5月3日 三重県天狗倉山(てんぐらさん)
新緑と常緑が混在する山間を透明度の高い清流沿いに駐車場へ向かいます。

前回ここを訪ねたのは3月中旬。早咲きの新種「クマノザクラ」が見頃を迎えていた頃でした。その桜には若葉が萌え、ウグイスの声が林の中から響き渡ります。前回は、ここ熊野古道伊勢路の中でも美しい石畳が続く馬越峠紀北町から登り始め、峠からは尾鷲トレイルを西進し、便石山への周回ルートをとりました。その時に天狗倉山からおちょぼ岩にも立ち寄る予定でしたが、クマノザクラ見物で予定を変更したため、今回はその残りを埋めることになります。尾鷲トレイルを利用すれば、周回も可能でしたが、国道歩きを避けるため、おちょぼ岩までのピストンとしました。
天狗倉山は紀伊山地台高山脈南部に位置し、尾鷲市紀北町にまたがる標高522mの山。便石山に登った際に訪ねた突端「象の背」と同様に、花崗斑岩が随所で露出し、眼下には尾鷲市街や熊野灘の絶景が広がり、背後に近畿の屋根とも言われる「大台ケ原山」からの台高山脈が連なります。
昨日は尾鷲市にある「県立熊野古道センター」を訪ね、伊勢路のことを更に深く知り、馬越峠に続く石畳はより一層興味深く歩くことが出来ます。先人が歩いた伊勢神宮から熊野三山への道。「伊勢に七度、熊野に三度」という言葉もあったほど、誰もが訪れたいと願う憧れの地であったそうです。今はこうして観光や登山で歩くこととは、当時の人には想像だにしなかったことでしょう。
馬越峠へは石畳だけでなく、尾鷲ヒノキやシダも美しい景観です。特に朝陽に照らされて白く光る幹が印象的で、是非ともここは午前中に訪ねてほしいと思います。
林道に合流し、巨木を過ぎれば、切り通しの向こうにぽっかりとした空間の馬越峠。当時は茶屋が建ち、峠を行き交う旅人のほっとする顔が目に浮かびます。
ここから尾鷲トレイルを東進し天狗倉山、そして、その先にある「おちょぼ岩」を目指します。
馬越峠は332m(案内板表示)、天狗倉山へは約200mの登りです。昨日、古道センターにて峠からおちょぼ岩へと続く稜線を眺めており、凡そのイメージは出来ていました。また、西側に続く便石山への階段道を経験していることも大きく、峠までの道とは打って変わった階段の急坂も呼吸と合わせて登ります。
直下で、北と南コースの分岐点。何も考えず、本能的に南コースを取りましたが、これが正解。山頂までに展望の広がる岩場が2ヶ所あり、尾鷲市街に尾鷲港、稜線を眺めた古道センター等、春の陽気に照らされた景色が広がっていました。そこから更に全身運動でひと登りすると、渕を岩に囲まれて中央に今日一番の巨岩。そこに掛けられた鉄製梯子を登れば、天狗倉山に登頂です。
象の背からも尾鷲の街並みや熊野灘を見ることが出来ましたが、東に位置する天狗倉山は更に近く、正に眼下に広がる景色です。尾鷲港から熊野灘、そして太平洋へ。広がりは世界へと通じていきます。
ここから折り返し地点「おちょぼ岩」へは約1.4km。途中、中継局の設備が建つ所が522m、天狗倉山の最高地点でした。その後、小さなアップダウンを繰り返し、494ピークを過ぎた先に「おちょぼ岩」が現れました。ここは天狗倉山より更に熊野灘寄りで、伊勢路の起点「志摩半島」を霞かに望みます。そこから出発した旅人は馬越峠を越え、西国一の難所と言われた「八鬼山越え」に挑みます。今となっては想像を絶する行程にただただ感嘆するばかりです。
展望だけでなく、その歴史を想像しながら歩くことで更に深みが増した今回の山行。名前や高さではないこうした名峰を探すのも、新しい山行のひとつかもしれない…。
下山後は、昭和と平成の香りが漂う喫茶店でいつもの…。

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便石山から天狗倉山、おちょぼ岩への尾鷲トレイル
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伊勢路のスケールが一目瞭然でした…県立熊野古道センターにて
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木漏れ日の石畳 空気も澄んでいます
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一枚一枚に 人の汗が染み込んでいるのでしょう
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旅人の行き交う姿が 目に浮かびます
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尾鷲ヒノキとシダを望むは 馬越坂の一里塚
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馬越峠は 新旧道の交差点
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まずは 尾鷲の町並を一望…南コース
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昨日はあの芝生から…県立熊野古道センター
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山頂には 岩の花が咲き 中央に標識のある巨岩
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いつもは あの大台ケ原から眺めています
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「象の背」と違い 落ち着いて楽しめました
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紀伊半島の屋根…台高山脈の連なり
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尾鷲港から熊野灘 そして 太平洋へ
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東天狗倉山とあった 520ピーク
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意外にも苦戦した 落葉広葉樹の急坂
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尾鷲トレイルは よく整備されていました
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あの霞んだ志摩半島から伊勢路が続く…おちょぼ岩
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稜線から水平線を望むのは 熊野らしい景色
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旅人もお茶をしたであろう「馬越峠」にて…よもぎのパウンドケーキ
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新たな景色を楽しめる 初めての下り道
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暑くなると 恋しくなる 冷たいいつもの…
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(おまけ)翌朝は 鳥見散歩…お目当ての ミソサザイ
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ふらっと目の前に来てくれました…ヒガラ(トリミング処理)
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美しきかな 春のグラデーション…大台ケ原ドライブウェイより