Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

新緑に向けて…なごり桜

4月16日 奈良県吉野山(青根ヶ峰)

時折、雨雲が通過する下、登山としては5年半ぶりの駐車場に向かいます。

吉野と言えば、桜。「一目千本」と言われる桜は、山麓の下千本から始まり、中千本、上千本へと続きます。そして、最後を飾るのが奥千本。14日に満開を迎えた週末、大勢の観光客で賑わうことは予想されますが、吉野山最高峰「青根ヶ峰」経由で向かうことにしました。
吉野山と言う名前の山はなく、大峰山脈へと続くこの山域の総称。前回、青根ヶ峰経由で奥千本エリアに向かったのは11月。楓の紅葉が見頃を迎え、深まる秋の佇まいを見せている時です。
登山口は奥千本の東に位置する「あきつの小野公園」。枝垂れ桜や八重桜に見送られての出発です。青根ヶ峰へは、地形図に示された「音無川沿いルート」と示されていない「尾根ルート」があります。共に、青根ヶ峰近くの舗装道路手前で合流し、前回同様、「尾根ルート」を利用しました。
登山口から数分で到着する「蜻蛉の滝」までは観光気分で散策できます。しかし、ここから上の尾根ルートは地図に示されていないことが納得する難路、悪路が続きます。特に、地面や岩が湿っている時には最大限の注意が必要です。その区間を過ぎれば、P668.5へ続く直登となり、1時間ほどで稜線に沿った歩きやすい道へとなります。しばらくは植樹帯の薄暗い道で、初めて視界が開けた場所からは、大滝ダムの堤体と木々を映したダム湖、前方には金剛・葛城のダイヤモンドトレール北部稜線と大阪市内の高層ビルが霞んで見えました。
地形図に示された川沿いルートでは展望のないまま青根ヶ峰へ続くため、少しのリスクを背負ってでも、尾根ルートを選択しました。ただし、今回の山行で少しのリスクが大きな事故へ続く予感がしたため、次に計画があるとすれば、川沿いルートになることでしょう。また、この山域には土壌の関係か時期的なものか花は少なく、ちらほらとスミレが顔を覗かせる程度です。その代わり、至るところでシダ植物が新芽を伸ばしていました。川沿いルートであれば、また異なる生態系が楽しめるかもしれません。
川沿いルートと合流すれば、山麓から続く車道となり、鉄階段が目の前に現れます。ここも地形図に示されていませんが、急坂を登り終えた先にある858.1m 青根ヶ峰に続く道です。
特に視界もなく、吉野山最高峰に登頂しただけの頂。そのまま通過し、奥千本エリアの金峯神社に向かって下れば、結界地蔵が見守る「従是女人結界」石碑の建つ大峯奥駈道になります。
この辺りまで来ると「奥千本」の桜を目当てにした観光客が散策の足を延ばしてきた姿を見るようになります。平成23年から奥千本再生事業として始まったとされる桜の植樹。今私達が見る「一目千本」の始まりを実感するとともに急斜面一杯に広がる若木1本1本を植樹するその労力に感服です。
金峯神社方面ではなく、西行庵へ。奥千本を楽しまれる観光客が一気に増えてきました。また、私達は観光客の経路とは逆回りをしているようで、斜面に作られた細い道では対抗待ちする時間が増えました。
昨日の天候で満開を迎えた桜の花は散り急ぎ、ピンク色に地面を染めていきます。山桜は少し離れて見る方が美しく思え、谷を境にした西行庵の桜色が印象的でした。
30年振り西行庵。まだ幼かった娘の手を引いて歩いた道が目の前に蘇ります。当時の桜はりっぱに成長し、植樹された桜もその後を継ぐことでしょう。
大峯奥駈道まで戻り、未来の奥千本と金剛・葛城山系を望みながらの昼食。桜の花びらが舞うランチタイムは、新緑の季節を迎える「なごり桜」。
下山後は、お気に入りのお店でいつもの…(笑)

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華やかな登山口…あきつの小野公園
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登山道から螺旋階段を降りて…蜻蛉の滝
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スリップ注意区間
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滑落注意区間
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連続階段注意区間
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スミレに目が届けば 安全区間
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構造物を見れば 現在位置が把握できます
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二上山の向こうには ビル群と六甲山系
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生命力溢れる 春の植物
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20cm 高くなり 現在の標高は 858.1m
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金剛・葛城~生駒…大阪と奈良の県境 
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山では 散った桜も 美しい
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新緑と花びらの共演が 吉野の桜
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空を覆う見事さも 吉野の桜
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曇天に ピンクの絨毯が 淡く光っていました
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桜の高低差を楽しむ 吉野の千本桜
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春が散り そしてまた 新しい春が来る
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30年後はどうなっているのでしょうか
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吉野には 桜とともに 杉もあります
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過去から未来へつなぐ 奥千本桜
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見頃になるときは 次の世代でしょう
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桜に続く 新緑の季節が やってきました
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今日も 尖っています 関西のマッターホルン…高見山
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今日で 桜も見納めか
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桜色よりも少しだけ濃い いつもの…(笑)

ホームに届く 春の足音

3月29日 三重県草木
今日を逃せば1年先になるため、普段であれば登らない空模様の下、駐車場に向かいます。

昨年末から2月中旬までは毎週登っていたものの、その後は、天気と休みが合わず、3月最終週を迎えました。「草木」とは、ホーム鈴鹿の北部「藤原岳」から南東に伸びる孫太尾根にある834mの頂。以前は破線ルートにもなっていなかった道は、竜ヶ岳の遠足尾根同様、今では一般ルートとして紹介されています。
その理由は花。藤原岳は花の山として有名で、特に、早春に咲く福寿草を求めて多く登山者が訪れます。また、福寿草以外にも、多くの早春花が咲き、週末にはとても訪ねる気持ちが起こりません。
稜線は雲に隠れ、午後には所により雨が降る予報の冷たい平日。7時過ぎの駐車地には、すでに数台の県外ナンバーが停まっていました。
藤原岳までのCTは4時間15分。往復だと7時間35分と、気安く歩けるわけではないこのルート。今回、私達は花が目的であり、その中間地点になる「草木」までとしました。レポを確認すれば、福寿草は山頂直下に咲いているようでしたが、今回の対象ではなく、草木までに咲いている一株と出逢えればと思います。
植林帯から始まった道はやがて常緑樹へと移り変わり、足元には春の使者「スミレ」が姿を現します。低山にありがちな「登り始め急登」を過ぎ、尾根にのれば、準備運動終了と言ったところでしょうか。樹々越しに覗く両側の景色。視界が開ければ、青川溪谷を境にし、竜ヶ岳遠足尾根が雲に溶け込んでいきます。足元には石灰岩が露出し始め、そこだけ切り取ればアルペンムードが高まります。そして、振り返れば、ホームの森から続く山麓の田園風景と伊勢湾。ホームらしい展望が待っています。
山麓から藤原岳山頂へと続く孫太尾根。近年、人気が高まっていることは知っていましたが、それは花だけでなく、この好展望もひとつなんだと判りました。一般的な大貝戸ルートは、ほぼ樹林帯の展望がない道を歩きます。アップダウンがあり、距離が長くなっても、このルートを利用されるのでしょう。
その人気の高さを支えるのが、よく整備された登山道。随所に設置された案内板に加え、自然石を巧みに配し、階段状になった登山道。どなたが整備に携わっているのか不明ですが、見事でした。ここを利用される方は、花や展望だけでなく、整備される方の気持ちも気付かれていることでしょう。
何度かの展望地と樹林帯を繰り返し、お目当ての花「セツブンソウ」が出てくると650m丸山に登頂です。
すでにセツブンソウのピークは過ぎたそうですが、それでもまだあちらこちらに、ちょっと下向きに咲く姿と出逢えます。この他にも、ミスミソウやヒロハノアマナとお目当て花が姿を見せてくれます。ただ予想通りに、曇り空の今日は花の開きが悪く、ヒロハノアマナは閉じたままでした。
花の群生地は丸山であったため、当初はここを折り返し地点とも思いましたが、時間的にはもう少し余裕があるため、先の草木へと向かいます。ここまでもそうでしたが、小ピークには巻き道があります。ただし、丸山から先は花を求めて尾根ルートを歩きました。目指す草木も巻き道があり、特に展望や花のない草木は巻き道で通過される方が多いことでしょう。下山時、巻き道を通りましたが、谷側は急斜面で山頂まで登った帰り道では、注意が必要だと感じました。
根っ子の陰に咲く福寿草とも出逢い、宝探しのような山行目的は達成。まだ出逢っていない花もありますが、それは来年、晴天の時まで楽しみにとっておきます。草木からの下山時、多くの登山者とすれ違い、やはり、平日に限られると確信しました。
下山後は、冷えた身体を暖めるいつもの…(笑)

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山麓から望む孫太尾根…ほぼ中央が「草木」
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大貝戸ルートとは異なる登山道「孫太尾根」
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遠足尾根の雪もまばらになりました
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今日は 空と海の境界がありません
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青川溪谷の向こうには県境尾根
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石灰岩に囲まれて 丸山を目指します
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山に春がやってきたと思う花…タチツボスミレ
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名前とは違い 豊かな芳香…コショウノキ
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登山道整備されている方に感謝です
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これも お馴染みの早春花…ネコノメソウ
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新緑のような花部…オニシバリ
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丸山山頂が近いことを告げる花…セツブンソウ
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見頃は過ぎても まだまだ存在感はありました
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ひっそりと 清楚に咲く花…ミスミソウ
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丸山を過ぎれば アセビの森
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小さな小さな春の物語…ミスミソウ
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足元に注意しながら…セリバオウレン
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唯一 出逢えた株でした…フクジュソウ
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苔と共に春を告げます
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今年の積雪量を物語っていました
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標高点834mが 草木山頂…左は巻き道
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採取場は孫太尾根にも 迫っています
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とりあえず撮影して調べました…カテンソウ
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今日一番の開き…ヒロハノアマナ
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汁・餅・小豆 それぞれが主張していた いつもの…

計画変更…ホーム 雪の峠まで

2月18日 三重県根の平峠
渋滞に巻き込まれ、急遽予定を変更し、先月と同じ駐車場に向かいます。

当初の予定はホームで残る冬期ルート「藤原岳天狗岩」。しかし、前日から続く寒波の影響で、国道は延々と続く大渋滞。出発時刻を過ぎても、まだ、40㎞ほど手前を亀の歩み。とても登頂できるとは思えず、計画変更。時刻は9時近くになり、今から上りに利用できるのは2時間程度。そして、現在地より南側の登山口に向かわねばなりませんが、そこはホームの強みを生かし、冬期利用はないものの、何度か歩いている根の平峠から県境尾根を利用した周回コースとしました。
起点はルートロスした釈迦ヶ岳と同じ朝明渓谷。凍結した道路を慎重に通過し、綺麗に除雪された駐車場に一番乗り。平日とは言え、天気も良いことから意外な感じです。ここから峠へは、奥座敷「イブネ」の滋賀県側起点へと続く千種街道で目指します。ルート全体として、さほど傾斜もないことから、チェーンスパイクを選択しましたが、すぐ先で除雪区間が終了し、その先はノートレースであったため、車に戻ってアイゼンに変更。
「滑り止め」をいつ付けるのか?は、人それぞれ判断基準が異なります。私たちは途中で付けるのが面倒なタイプです。
今は踝程度の積雪でも、この先、増えてくるのは明確で、県境尾根の周回が無理なことも自明の理。折り返しは20数年ぶりの水晶岳か、根の平峠。時間と相談することになります。
近年、このルートはホームの楽園と呼ぶ「ブナ清水」を訪ねる際に利用します。偶然にも、来週予定していた山友を案内する候補地のひとつでもあり、その下見になると考えていました。(結果的にその計画は中止)
雪が無ければ考える必要がない道も、一面が雪の世界になれば、見えてくる道がぼやけることもあり、テープや地図による現在地確認は怠れません。ルートロスした時と同じ起点であることから、より一層、慎重な行動となります。
溝道のように凹んだトレース跡。膝下から深いところでは膝上まで、変化します。1時間程歩いたところで、後続の方に追いつかれ、先頭交代。ここからはトレースを利用させていただきます。途中、ルート誤りされていましたが、すぐに気付かれたようで、しばらく進んだ先で私たちと合流です。私達がルートロスした際にもそうでしたが、間違えたトレースを追って後続の方が登られてきました。トレースを引くことの責任と追うことの責任。この2つを今回の山行で感じます。
核心部とも言える終盤の急登区間。事故が起こらないと言えないのが、雪山の低山。特に人があまり入っていない山域はどこにでも危険が潜んでいます。
陽射しが届く明るい林がブナ清水の分岐点。先行者は峠に向かっており、ブナ清水方面はノートレース。雪山訓練としては絶好のルートにも思え、次回、無雪期に歩くときは冬期をイメージしながら歩いてみようと思います。ここを過ぎれば、あとひと登りと思った矢先、右足が宙をけり、そのまま沈み込み。気付けば、太ももまですっぽりと埋もれていました。正規のルートに思えるトレースも、実は外れていることも多いのでしょう。
先行者はタケ谷を下って行かれ、貸し切りの「根の平峠」。お腹もすいてきたので、ここで昼食タイムにすると同時に、本日の折り返し地点としました。伊勢谷の向こうに広がる名古屋方面の展望。滋賀県側と違い青空が広がっています…鈴鹿アルアル。周囲はホームの冬林。陽射しを受けても今日は肌寒く感じます。
標高803mの根の平峠。峠から連想させるのは「茶屋」と「団子」(笑)。古の人がこの季節も往来していたかどうかは判りませんが、編み笠を被り、蓑を纏った旅人が近江と伊勢を行き来する光景が瞼に浮かびます。何気ない自然の美しさと厳しさが空想を膨らませます。
急遽訪ねた山域ですが、来シーズンは、ちゃんと計画をして訪ねる予感を残して、峠を後にしました。
下山後も当初の予定が変更され、結局、元に戻ってからのいつもの…(笑)


本当なら あの稜線の向こうへ…藤原岳

除雪された駐車場に感謝です

さて どこまで歩けるのか…

山腹は いい表情

ここから まさかの ノートレース

今日は のんびりと楽しみしょう

新芽の色は まだ 冬を感じさせます

前回 ここを渡ったのは 紅葉の季節

平衡感覚が求められる 橋上の歩行

通行ヒト型 w…その1 ww

雪があると 世界が変わります

一本橋は 雪庇に注意…^^;

トレースは なくとも 道は残っていました

赤テープは右 しかし 渡れるのは 左

膝上までの細いトレース跡

鹿は 広い場所を進んでいました

先頭交代…林へと続く 新しいトレース

雪面アートは この時期だけの 一期一会

忙しなく 飛び回っていました…ヤマガラ

来シーズンは トレースを引いてみようか…ブナ清水

右腿陥没…(笑)

「根の平ひろば」と呼ばせていただきます

「今日はここまでにしといたろ…」は バンビーズ

通行ヒト型 その2…www

計6名が歩いたトレースを 戻ります

お店の窓から見える 御在所岳~根の平峠方面

何やらホッとする空間で いつもの…(笑)

冬恒例 ホームのメインストリート「本谷」

2月12日 三重県御在所岳
好天の週末、満車を避けるため、日の出前の駐車場に向かいます。

ここ数年、毎年のように訪ねる御在所岳本谷ルート。今では地図にも紹介され、バリエーションルート入門編として訪ねる登山者も増えてきたように思えます。それでも、一般的な中道や裏道ルートと較べれば、登山者は少なく、御在所岳の懐に抱かれながら自分達の世界を描ける、そんなルートです。
ここの魅力は、登山口に流れる沢を詰めるため、その変化と数多く現れる大小様々な滝。山麓から眺めた鉄塔横に流れる1本の白い筋、名付けて「手振り街道」。そして、一般登山道では体験出来ない緊張感。
最近は積雪期に限られたルート本谷。雪の状態によって毎年変化し、訪れる度に違う表情を見せてくれます。
21-22シーズンは雪に恵まれたホーム。入道ヶ岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳から続く冬期ルート「御在所岳本谷」。満を持しての登場です。
いつもは堰堤広場の状況で判断するアイゼンも、駐車場から見る景色に積雪を確信し、装着してからの出発。広場から続くトレースは明確で、ルーファイが特に必要な序盤でさえ、全く問題なし。凹凸激しい岩場も、平地のように歩くことが出来ます。いつもは左岸を歩く箇所も今日は右岸ルートで通過。こうして新しいルートを記憶に刻みます。トレースが明確とは言え、沢沿いの狭いルートや岩場の通過には確実なアイゼン歩行が求められます。また、トレースを追って歩くことでルーファイの楽しみや無くなった時に一瞬判断が鈍る場合もありますが、全体の景色からルートと現在地を判断します。
ミスター本谷と呼ぶ「不動滝」。僕にとってその存在は「ダークヒーロー」。先週訪ねた大峰のシェイクスピア劇場とは対極。雪のお陰で最も近くに寄ることが出来、幾本もの氷柱で装飾された巨人を間近で見上げる迫力は荘厳でした。物言わぬその存在は、訪れる度にドスンとした大きな気を与えてくれます。
不動滝を巻けば、巨岩が現れる中盤へと差し掛かります。振り向けば、V字樹間の向こう、朝陽に照らされて黄金色に輝く伊勢湾。前方には二俣の案内である倒木が見えてきます。ここで初めてトレースも二股(どちらも先で合流します)。補助ロープが設置された大岩は、階段状になり、ロープは雪の下。積雪は60cmを超えていたでしょう。残置ハーケンの岩場は手前の大岩を右から巻くトレースが付いており、初めて通過しました。次のポイントは「大黒滝」。レポでは完全氷結しているように見えましたが、陽の当たる上部から迸る水飛沫がホーム厳冬期の終焉を暗示させます。積雪量が多いと、楽な場合もあれば、逆に困難な場合もあります。ジョーズ岩が前者で手前の巻き道が後者でした。それも含めてルート本谷。
さて後半。日本一の白鉄塔と共に、山麓から見れば崖のように見える一本の白い筋。本谷メインストリート。僕の場合は、ロープウエイの乗客に向かって挨拶する「手振り街道」。今日は一番乗りだったため、長い直線上に登山者の姿はありません。登っては振り返って見る山麓の景色…そして、時々手振り…。雪がなければ、ガレ場のような登りも、この時期は真っ白に輝く別世界。頭上の覆いは取れ、ゴンドラの向こうにそそり立つ岩壁は、多くのクライマー達が訪ねる主峰「御在所岳」本来の姿を私達に伝えています。
上部は新雪を楽しみながらの登りとなり、到達点を迎えれば、最後は大国岩への登り。トレースが消えているのは、風と新雪の影響かと思い、いつも利用しているルートに進めば、腰までの雪に阻まれ、ゴールとなる稜線が近付いてくれません。後に続いたバディは、更に悪戦苦闘を強いられることに。
何とかたどり着いたバディからは「前方にトレースがあったよ」。
釈迦ヶ岳でルートロスした山行が生かされず、未だ、常に周囲の状況を的確に判断することが出来ていない自分に気付かされます…ただし今回は、ロスではなくチャレンジと…。
私達にとって、御在所岳の山頂は展望レストラン。今日は期間限定メニューを素晴らしい展望と共にいただき、春の陽気を思わせる中、中道ルートで下山。ホーム冬期ルート、残すは藤原岳となりました。
下山後は、華やかなショーケースの中でも一段と輝いていた「いつもの」…。

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モルゲンロート…今日はいい天気になればいいけれど
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本谷劇場の入口に 当然 受付はありません
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しっかりとしたトレースと共に 「油断禁物」
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セントレア大橋の向こうには 遠く三河湾のゆらぎ
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いつまでも こうしていられそう…不動滝
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どんな物語が 演じられるのだろう
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不動滝を巻けば 中盤の巨岩ストリート
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二俣の分岐点から 振り返ります
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ハーケン岩は左上…今回は前方の大岩を右に巻きます
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庵座谷の登りと比較すれば 一般道…大岩の巻き道
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トレースのお陰で 写真も撮りやすい…大黒滝
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間違いやすい二股も トレースが道案内
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大黒滝を巻いた場所からの展望がお気に入り
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いつもと違う 岩の通過でした
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不動滝、大黒滝に続く「本谷 3名所」…ジョーズ岩
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ここが本谷の森林限界
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トレースを外れると 新雪が舞います
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本谷(御在所岳)のランドマーク…白鉄塔
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そろそろ到達点が近付いてきました
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デブリ…メインストリートでは初めて見ます
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大国岩へチャレンジタイム…後続はトレースで楽々 (笑)
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花崗岩の浸食…一段下がった所が「富士見岩展望台」
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雪遊びをする子供達の歓声が響きます…カモシカ広場
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展望レストラン 期間限定メニュー 「白い御在所カレーうどん」…美味しかったです
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大国岩と本谷を眼下に…「富士見岩展望台」
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釈迦ヶ岳・竜ヶ岳から続くホーム北部 そして 彼方には白山
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クライマーの方は 大国尾根が 本谷メインストリート
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「今日は今日の本谷」がありました
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本谷終了点に2名の登山者…そして 2股のトレース (笑)
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安定のハーモニーで いつもの…(笑)

バンビー3で アイスシアターへ…

2月4日 奈良県シェイクスピア氷柱群
昨秋以来のバンビー3で、規制道路へと向かいます。

5年前、山友から尋ねられたシェイクスピア氷柱群。山行レポ等でその場所は知っていましたが、紹介される写真や文字だけの知識。せめて雰囲気だけでも確かめようと、4年前の3月に現地へ向かったものの、林道から沢沿いに入ったところで、まさかのアクシデント。事なきを得ましたが、即刻撤退し、私達にとっては立ち入り禁止区域になりました。先月、山友から再度オファーがあり、計画するも流れ、八ヶ岳方面にテント泊する今月の予定を変更して、1週遅れで向かうことになりました。
シェイクスピア氷柱群とは、大峰山系大普賢岳東斜面に出来る氷瀑群のひとつで、標高1,300m付近にある氷柱の景観がシェイクスピアの劇場のようであることから、そう呼ばれています。
山行前にレポを確かめ、コース概要を調べます。現在も登山ルートは登録されておらず、レポからの知識になりますが、週末には大勢の方が入山され、激しい降雪もなかったため、トレースは問題なし。また、数ヶ所設置されたロープ場やトラバース道が核心部になりそうですが、これまでの経験で対応できるでしょう。
冬期通行止めとなった大台ヶ原ドライブウェイの入口が出発点。少し車道を歩き、山葵谷へと進みます。林道を進むと山側ルートの分岐。今回は沢沿いから山側ルートに合流するコースを選択しました。沢ルートはまだ続くものの、トレースに導かれ斜面を上り、合流した地点でアイゼンを装着しました。
しばらく樹林帯を進み、沢に出ると、そこは山葵谷から分岐した「地獄谷」。シェイクスピアの作品において、「美しい妻を持っていることは地獄だ。」(「ウィンザーの陽気な女房-二幕二場」)とありますが、妻の箇所を氷瀑群に代えることで、この谷の名前が生きてくるように思えました。
左斜面に氷瀑を確認。アイスガーデンと呼ばれている場所です。出発時には隠れていた稜線付近の氷瀑が樹間に見えると、高揚する気分を抑える努力が必要になります。ルートにはいつくかのポイントがあり、次は大岩。渡渉地点を過ぎれば、似つかわしくない巨岩が前方に現れ、直登、トラバース道を経由して第2の氷瀑「ブライダルベール」への分岐点。ここは帰りに寄るとし、先に進みます。次は最初の残置ロープ地点。ここは「試しの岩」と呼ばれ、ここで苦労する場合は、この先に進まないようにと読んだことがあります。今回は雪が付いておらず、岩肌にアイゼンを馴染ませながら登り切れば、更に気を引き締め直します。ここから傾斜は増し、氷の斜面となったロープ区間のうち、2つ目が今回の核心部。途中、絶妙に進路妨害をしている岩をかわして通過すれば、小さな氷瀑と3つ目のロープ区間が待っていました。
前方高く、稜線から流れ落ちる氷瀑とともに、シェイクスピア劇場の舞台が迫り上がってきました。レポで見てきた氷柱群は、一緒に映る人の姿からその大きさを想像していましたが、それを遥かに上回る規模と迫力。幾筋もの氷が織り成す自然の造形美。その姿は日々変化し、一期一会の世界。劇場の氷柱は大きく3つにわかれ、左から、ハムレット、リア王、マクベスと名付けられています。
予報に反して青空が広がり始め、ステージを照らすライトのように、陽射しが劇場に息吹を与えます。延期して良かった…バンビー3。
山友は右端の「マクベス」に登る準備を始めます。ビレイするのは5年振りで最初は緊張しましたが、頭上に落ちてくる氷片から自分の身を守ることで、緊張も吹き飛びました。
1番乗りだった劇場も段々と賑やかになり、ハムレットを登攀するグループも現れましたが、まだ平日のゆとりはありました。滞在中、マクベスにおいて大きな塊の崩落があり、幸い落下地点に人は居ませんでしたが、週末等、人が増えれば危険性も増すことでしょう。
核心部の下降も人が少なければ、落ち着いて通過出来ました。試しの岩を下降すれば、一安心。昼食後はブライダルベールへと向かいます。氷瀑の規模はリア王より劣りますが、氷筍がここの見所でしょう。大小様々な形状をした氷筍は、氷の世界から顔を覗かせた生き物にも見え、透き通ったその姿に、時間を忘れます。
林道でアイゼンを外せば、気持ちもリセット。振り返れば、青空を背景にした大普賢岳からの稜線と劇場の更に上を飾る氷瀑群。決して、簡単なルートではなかったけれど、先日ルートロスしたホームの苦い思いを払拭させてくれた山行でした。でもここは、今回が最初で最後の計画。山行履歴に良いページが残り、この機会をくれた山と谷と友に感謝です。
下山後は、紹介したかったお店でいつもの…(笑)

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ピークを目指さない山行が始まりました
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冬枯れの開けた谷は「地獄谷」
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トレースはありました…アイスガーデン
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樹間に 青空の兆し
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コースが変化し始める中間地点…大岩
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取り付きの第1歩がポイントでした…試しの岩
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残置ロープ3区間のトップバッター
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核心部の2区間は 身長差で難易度が変化
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ここを過ぎればと 最終区間
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いくつかの谷を渡れば…
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劇場が見えてきます
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劇場手前 アウトサイダーと呼ばれる氷瀑でしょうか?
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劇場到着
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ひと滴から生まれる 壮大なドラマ
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本日の舞台俳優…バンビー3
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勇猛果敢で小心者だから 氷塊が落ちるのか…マクベス
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圧巻の舞台でした… ハムレット(左)・ リア王(右)
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舞台裏を拝見…ハムレット
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リア王がマクベスを眺めます
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いつもと違う緊張感…
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マクベスの咆哮
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本日の主役 山友を照らします
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マクベスの上部には「グランドイリュージョン」と「閻魔大王
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路地裏劇場…ブライダルベール
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舞台裏は 賑やかでした
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良い景色と無事下山を感謝です
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三人三様で いつもの…
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(おまけ)翌朝は クールダウンで「おらが山」…バンビー2

ちょっと一息…伊賀の高尾山

1月29日 三重県霊山
走り慣れた道から山頂を望み、駐車場を目指します。

日本に限らず、世界一登山者が多いと言われている高尾山。規模は全く違いますが、伊賀の山域で最も登られている山が「霊山」…と言う僕のイメージ。
三重県中部を南北に連なる布引山地の北端に位置する標高765.8mの山。クリンソウが有名なのは知っていましたが、今回初めて登るにあたり、山麓にある霊山寺の桜や紅葉、そして、今日のような雪道など、四季を通じて楽しめる山であることを知りました。おらが山「尼ヶ岳」は布引山地の南部にあり、そこから連なった山稜が、峠を越え、ホーム鈴鹿へと続きます。山の名前の由来となった「霊山寺」は、りっぱな伽藍を山頂に有した巨大寺院で、今は、その遺構を偲ぶだけとなっています。
一般的な登山口は東西に分かれ、今回は、西側の霊山寺ルートから山頂を目指し、東側の田代湖ルートを利用した後、源流探索ルートから稜線を縦走する周回コースとしました。
登山口から山頂までは約1時間。標高差は400m。一旦、下った所にある田代湖畔で昼食する予定から逆算し、登山口10時出発で自宅は9時出発。のんびりとした計画を立てられるのは、地元の低山ならではのことでしょう。
霊山寺の駐車場を利用し、参拝後、裏手から続く登山道へ入ります。苔むした石仏が無造作に点在し、かつて、ここが参道であったことを私達に伝えています。駐車場から続く別ルートと合流すれば1合目。200m毎に整備されているようで、山頂までは残り1,800m。まずは階段からのスタートです。途中には桜地堂や六地堂、原地堂、たいこ岩など、目安となるポイントもあり、気付けば分岐点となる稜線に到着です。ただし、先日降った雪の影響で、所々に凍結箇所があり、特に合流直下の10数mは注意が必要でした。
稜線の交差点を左折し、山頂を目指します。穏やかな登りの先から聞こえる歓声がやがて大きくなり、急な石段を登れば山頂遺跡に到着です。まず目に付くのが、切通しのように、通路部分だけを切り取られた先にある五輪塔や宝篋印塔等の遺跡。山頂と言うよりも「史跡」。そして、対照的な光景として、歓声の発信源、地域の団体と思われる小学生が、雪合戦などをして楽しんでいました。
石室のある祠を囲うように土塁が築かれ、その上を歩けば、雪だるまが置かれた三角点、霊山登頂です。見慣れた景色を俯瞰できる眺望は「大人のジオラマ」。この景色を折り返し地点として、何度も通われる方の気持ちが判ります。しばらくして団体が下山すれば、ほぼ貸し切りの山頂。お腹も空いてきたため、私達も次の目的地へ移動します。
交差点まで戻り、田代湖に向かって200m程標高を下げます。アセビの群生地を抜け、現代の遺跡とも言える野外活動センター跡に人造湖の田代湖。その湖面を望める何かの跡地で昼食タイム。陽射しに煌めく水面が印象的でした。
車道から源流探索コースを進めば、いくつもの沢から本流へと入る小さな流れ。それらを越えた先に本流の源流地点と思しき場所があり、そこを過ぎれば稜線。次は、交差点まで戻る縦走が始まります。
いくつかのアップダウン…時にはジグザク歩行したくなる急登…を繰り返し、南峰手前でチェーンスパイクを装着。安定感が一気に割増です。南峰の外れから霊山山頂を望め、その右奥には、雪を纏った峰。伊賀地方らしい展望に思えました。交差点直下の核心部、凍結区間もチェーンスパイクのお陰で難なく通過し、あっという間の下山となりました。
800m弱の山とは言え、登り返しをすることで標高差を積み上げ、山頂展望に限らず、史跡や湖畔ハイクに源流探索。そして、プチ縦走。変化に富む登山路を楽しめる正しく「低山の王道」。おらが山とは一味違うルートとして今後も歩いてみたいと思いました。
下山後は、ポイント狙いのお店でいつもの…(笑)


歴史がこの山の登山口

伊賀地域らしき 案内板が 山頂まで続きます

境内を抜け 本来の参道へ…

参拝者を見守ってきたのでしょうか

しばらくは 呼吸合わせの 登りが続きます

六合目は…六地堂

何気ない道にも 油断禁物です

核心部でした…凍結階段

山頂は 円形テーブルに守られているようです

静けさを取りもどした 山頂です

今日はゆとりの バンビーズ

春霞には まだ早い

さて お昼ご飯に向けて 出発!

登山道から離れ 青山高原風車群を 望みます

こちらは アセビ群生地…

昭和の遺跡たち

趣が増した 冬の薄曇り…田代池

池畔には モンスターが 潜んでいました

冬枯れの森を照らす 地上の緑

常緑と落葉が交差する稜線歩き

雪嶺は綿向山か…

こちらは ホーム主峰「御在所岳

南峰を過ぎれば アセビのお出迎え

本日の稜線歩き…田代池は この向こう側

火照った身体を冷ます いつもの…

ルートミス…ノートレースのホーム

1月22日 三重県庵座谷
ホームの峰々が赤く染まる様子を見ながら、駐車場に向かいます。

庵座谷。鈴鹿7の1座「釈迦ヶ岳」の破線ルート。私達にとっては、ホーム鈴鹿の冬季5ルートのひとつ。今冬は降雪が多く、山レポを見ても、このルートを利用している方は見かけず、ノートレースになると覚悟した上で入山です。ノートレースは7年前にも経験済で、この時は「行けるところまで行こう」と言う気持ちでしたが、今回は出来れば登頂をしたいと強い気持ちを思って出発です。
意外にも駐車場から登山道へはトレースがありましたが、やはり一般的な尾根ルートへと続き、庵座谷へは真っ白な世界が待っています。渡渉地点から道は森の中へと入り、ここからルーファイの世界です。ただし、所々、ピンクテープがあり、これまでの経験上、ルートを誤ることはありません。丁度、ルート上には鹿と思われる足跡が続いており、動物も歩きやすいところを歩くようです。
予定通りの時間で「庵座の滝展望地」に到着。ここからしばらく続くトラバース道は、左側が急崖となっているため、注意が必要になります。トレースがなければ、どこを歩けば良いのか判断に迷うことでしょう。このトラバース道の最後は谷を下って、滝の巻き道へと続きます。ここもトレースがなければ、迷いやすい分岐点になります。無雪期は落石に注意が必要な巻き道も、今は、自分が落ちないよう注意が必要。3点支持と足元の確認を繰り返し、次から次へと現れる課題に対処します。
雪をかき分ける作業が続く今回の山行。ウール手袋では限界で、防水性の高い青いグローブがその威力を発揮しました。
滝を巻き終え、7年前に撤退した河原に到着。ここから三段の滝までは急坂がなく、沈み込みを安定させようとワカンを装着。歩き始めたところ、さほど効果を感じず、最後の登りがあるにも関わらず装着したことに疑問を持っていたバディの判断が正しかったようで、判断が鈍り始めたようです。この後、ルートが読めず、地図を確認。次第に時間も気になり始めます。
三段の滝を前にし、バディにも疲れが見え始め、山行の計画変更が迫られました。時刻は11時30分。このままでは登頂は14時近くになり、当初の県境尾根周回は無理。下山ルートを尾根に変更したとしても、トレースの状況が不明であり、これまで利用したこともないため、時間が読めません。結局、三段の滝を登った先にある分岐点から尾根を目指し、トレースの状況で判断すると言うことで出発。…ところが、ここで致命的なルートミス。別の谷に入り込んでしまいました。何か雰囲気が違うと感じながらも、これまで以上の傾斜が続く雪面を登り続けます。詰めた後、ルートが見当たらず、どこかで間違えたかとブッシュを越え、隣にあった谷を本ルートだと思い、更に登り始めます。(2回目の間違い点。ここで元に戻るべきでした。)気を抜けば滑落しかねない雪面を三点支持と草木に助けられながら、ひたすら上を目指す私達。結局、谷を詰めた先にあった風景から道誤りに気付き、地図で確認したところ、県境尾根の猫岳に向かっていることがわかりました。経験的に考えれば、ここがルートであるはずがなく、何故登ってしまったのか。帰る途中に考えたところ、その谷は広く、登った先には陽が当たっており、日陰になっていた正規ルートより目立っていたこと。まだ昼前にも関わらず、下山ルートの時間を気にしていたこと。そして、これが全ての根源なのでしょうが、疲れていたこと。
ここから先のルートについて相談。あの登りを下降することのリスクからこのまま前進しようとする自分と三段の滝まで戻ることを譲らないバディ。結局、最大限の注意をして下降。途中、人の声がし、私達のトレースを追いかけてきた2人組に状況を説明し、戻っていただきました。
何とか無事に戻り、あらためて正規ルートを確認すれば、「何故間違ったのか」しか思い浮かびません。この往復に費やした力があったのなら、登頂が出来たかも知れないと悔やまれますが、山が私達に示したのは「登頂よりもこの時間」だったということでしょう。
遭難のきっかけは「道迷い」だと聞きます。「道迷い→無理なルート→滑落」。今回のケースは、正しくパターンに陥りかけ、遭難と紙一重だったように思えます。
先ほどの2人組は下山したようで、ここから先にトレースはなく、私達もこれ以上進むことは出来ないため、昼食休憩後に下山開始。時刻は13時30分。空腹を忘れるほど集中したのは久し振りのことでした。
下山後は、全身疲労感と精神的疲労感を癒すため、複数形でいつもの…(笑)

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初登りした竜ヶ岳からの釈迦ヶ岳
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ここから先は 私達の世界
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先行者がルートを 切り開きます
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振り返れば 思いのほか トレースが出来ています
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まだ 余裕のある バンビーズ
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山と谷の境界線を引いていきます
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ここからが 正念場の「庵座の滝展望地」
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しばらくは 気の抜けない トラバース道
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直登区間に入りました…巻き道
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遠く ハライドが見守るなか 山行が続きます
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雪崩ないでねと 思いながら 速やかに通過
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7年前の撤退地点を 白銀の世界で通過
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次第に世界が 狭くなります
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今回のターニングポイント…三段の滝
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誘われて…間違い沢
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沢の終了点は アイスガーデン
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ルートだけでなく 精神がロスしていた時間帯…
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この沢を登りきることが 目的になっていました…
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本日の最高地点854m付近から 釈迦ヶ岳最高点
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踏み跡を利用し 安全に降りれました
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本来のルートは 滝のすぐ左側…何度も通っていたのに…
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1組往復分増量した 帰り道
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普通の世界まで あともう少し
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駐車場手前で 癒しの出迎え…ジョウビタキ(雌)
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「柔よく剛を制す」いつもの…ナンノコッチャ