Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

晩秋から初冬へつづく合戦尾根…燕岳

11月5日 長野県燕岳
今年最後の北アルプステント山行と思っていましたが、4日は風雪を伴う荒れ予報のため、2年振りの女王様との謁見は日帰り山行となりました。

三大急登のひとつとされる合戦尾根。今は整備が行き届き、人気の山小屋と共にアルプス入門ルートとなっています。しかし、登山口から小屋まで続く登りルートは、前半を押さえ気味にするのが楽に登頂できるコツだと思います。
まだ薄暗い登山口の中房温泉。見頃を過ぎて色濃くしたカラマツの葉がぼんやりと浮かびます。沢の音が途切れだすと第一ベンチ。荷揚げ用ロープをくぐると第二ベンチ。雲海の中の第三ベンチ。
昨夜、第一駐車場に着いたのは午後8時頃。まだ空きがあったものの、出発時には満車。その割に登山者は少なく、自分のペースで歩けます。第三ベンチを過ぎたあたりから足下には雪が増え始め、所々、注意が必要です。
雲海を抜けて富士見ベンチ。遠く富士山を眺めながらの小休止は、身体を冷やさないことがポイント。樹間に大天井岳の山稜を望み、白銀の世界に目を楽しませていると合戦小屋に到着。小屋番さんは小屋仕舞いの準備に追われているようでした。
ここで合戦ノ頭に出た時のための身支度を整えます。予報では稜線は15mほどの西北の風が昼頃まで残る見込み。それを予測するように、ここ合戦小屋は富士見ベンチと較べて気温がワンランク下がったことを実感しました。
縦走路越しに槍ヶ岳が顔を覗かせると合戦ノ頭。南部の峰とは比較にならないほど白い鹿島槍が印象的です。時折、葉に積もった雪を巻き上げ頬を打つ風が吹き、いよいよ近付いてきたかと身構えます。燕山荘へ続く道は夏道でしたが、もう土は見えていません。今日、我々が用意したのはチェーンスパイク。ピッケルはなし。全体を通じて十分な装備でしたが、この季節、日々状況は変化しており、直前の情報入手は必須でしょうね。
山荘直下、稜線を吹く風に雪が舞いあがり、渦を巻きながら谷を下っていきます。案の定、烏帽子岳から続く裏銀座の縦走路と槍穂高連峰、そして女王「燕岳」を望む稜線に立つと、冬の冷たい風が出迎えてくれました。カメラを構え、風に向かって立つとあっという間に涙目になります(笑)
体感気温は-10度を下回り、風を避けてチェーンスパイクの装着等、登頂準備を始めます。常時10m前後の風が吹く中、頂を目指しました。すぐそこに見える白き山嶺はもう我々には手の届かない世界であり、あと数週間もすれば、この道も閉ざされたものとなるのでしょう。
今日はいつもの賑わいが嘘のように静かな山行が続きます。貸切の山頂からは今夏登った立山や針ノ木岳、蓮華岳の冬化粧にあらためて見惚れます。バラクラバを通して聞こえてくる雪を踏む音と冬の風。山の匂いも冬山です。
山荘に戻る頃には風も落ち着き、ベンチで昼食をとれるようになりました。不思議なもので、こうして燕岳と対峙していると風に温かみを感じます。
濃いオレンジの山麓から雪の稜線、そして高く澄み切った秋の青空。所謂、三段紅葉。その贅沢で幸せな時間を大切な記憶とし、雲海が取れて見渡せるようになった安曇野に戻るべく、山荘を後にしました。
下山後は、美味しい珈琲と共にいつもの…(笑)

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日本画の世界がありました
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期待が膨らむ モルゲンロート
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そろそろ雲海を抜けます
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合戦尾根に冬の始まりを告げます
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ここはもう本格的な冬山です
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本格的に冬を迎えると訪ねる 海の彼方の八ヶ岳
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眩しい世界が広がるのは雪山
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55回目の朝を迎えた稜線も 今は別世界
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対照的な稜線が美しいと思います
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振り返れば 安曇野の重鎮 有明山が浪間に浮かぶ
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冬の穂高…許された者だけの世界
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青空に映える 稜線の風…(笑)
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まずは目に飛び込んでくるこの景色
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続いて目に入るのは 女王「燕岳」
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白のグラデーションが 山稜を飾ります
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圧倒的な力強さ 冬の槍ヶ岳
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北鎌尾根を望める絶好の場所
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この雪が根雪になる日も近いことでしょう
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いつ訪ねても この道は楽しい
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青い山脈が雲海と空を繋ぎます
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歩いた稜線は景色が違います…立山
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お気に入りの場所で ハイポーズ(^^)
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雷鳥さんは 冬羽になったでしょうか
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秋の装いも そろそろ終わりを告げます
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カラマツが樹間を覆う中房温泉
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葡萄もそろそろ終わりです…

〈番外編〉
最近気になる作家さんの山バッチ。丁度、麓のカフェで展示会をしていたので購入。ご本人ともお会いできて益々ファンになりました✨
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