Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

関西の冬「霧氷のテントライフ」…弥山

11月23~24日 奈良県弥山
西高東低の冬型気圧配置により、関西の山は一気に冬山へ。当初予定していた山を変更し、翌日の快晴に期待して世界遺産の登山口に向かいました。

11月23日
登山口の行者還TN西口へ通じる国道309号線。冬季は通行止めとなり、報道資料では12月10日からとなっていましたが、169号線との分岐では、11月26日から通行止めになるお知らせが出ていました(走行中のため、不確かです)。通行止め以降この辺りは、深い雪に閉ざされ、春の芽吹きまで静かな眠りの世界に入ります。その限られた期間に訪れる快晴と霧氷。昨年に続き、そのワンチャンスを明日に控え、この冬一番の冷たい風が吹く中、いつもの道を歩くことから山行が始まります。
大峯奥駈道出合に続く急登の尾根道。いつもなら長袖シャツのみで十分なのに、今日はフリースを脱げません。初冬の八ヶ岳並の冷え込みです。前回登った竜ヶ岳から5日。山は完全に冬山になりました。
登山口から見えた霧氷稜線が次第に近付き始め、笹原が出てくると「出合」に到着。予報通り、風は一向に衰えることなく、倒木の大きな根を風除けにして小休止。本格的なテント泊山行はGW以来で、行く先は、奇しくも今日と同じ「弥山」。新緑のバイケイソウが眩しかった奥駈道も今日は水墨画の世界。頭上を一面に覆う霧氷は真っ白と言うより薄墨の印象です。
稜線歩きから直登へ切り替わる「聖宝宿跡」にて、バディはチェーンスパイクを装着。軽アイゼンと違い、さほど装着の違和感もなく、着脱も容易なチェーンスパイクはこの時季の雪山にピッタリなアイテムです。引き続き頭上を飾る霧氷や少し傾いた木製階段、そして、寒さに耐え忍んでるかのような苔たち。気が付けば、第1展望台と僕が呼ぶ視界の開けた場所に到着。とは言え、今日は何も見えません。霧氷が形を無くして、そのまま繋がっているかのような光景です。続いて道を折り返せば、第2展望台。大普賢岳へと続く稜線の展望は明日の楽しみとしましょう。小屋の三角屋根が見える最後の階段は、いつもほっとさせられる場所。そして、小屋へ続く小道で待っていたのは、ただ今、成長中のモンスター達でした。
そんな木々の間がワンダーランドへ通じる道。通り抜けると現れる「国見八方覗」のテント場。苔と針葉樹が織り成す緑の庭園は、風さえも凍るような寒々しく、そして、美しいものでした。
幕営後、荷物を整理すれば本日の予定は完了。「勤労感謝の日」と言うことで、FMから流れる音楽は「ワークソング特集」。昭和から平成の様々なジャンルの曲と上空を流れる風やフライシートを叩く雪の音。貸切のテントサイト(小屋前に2張、冬期小屋は不明)は、静かでまったりとした時間が流れる、霧氷のテントライフです。
日付が変わる頃、空を見上げれば、満月と激しく流れる薄雲。一瞬、躊躇した後、カメラを携えて氷点下の世界へ。月明かりに浮かび上がる水墨画の景色。昼間に見えた世界とは異なる幽玄の世界。今宵、神々の眠る峰は「宇宙」ではなく、「黄泉」の世界に入りました。

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今年も白きあの稜線へ
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稜線の景色は 出合へのタイムテーブル
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鈴の声音…カヤクグリ
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関西冬山の開幕
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モノトーンの世界に ザックが映えます
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描きたい…でも 描けない…(笑)
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明日はどうなる この霧氷たち
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登ることが楽しくなる 景色です
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まさに 満開の「霧桜」
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弥山と言えば この階段
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今日はこの天気を認める余裕があります
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いつも ワクワク ドキドキ の入り口
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色のある世界は 我々2人だけ…
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今日は このまま貸切でした
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冬のテント泊は これですね…〆はラーメンです
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薄曇りの 月明かり…
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快晴の 月明かり…
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月夜のモンスターは 静寂です
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月光の白波が 稜線に打ち寄せます
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ぼっちで 月夜のお散歩
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最近は眺めるだけの近畿最高峰…八経ヶ岳 1915m
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夜空に溶け込みそうな マイハウス
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オリオン座…冬の星座の代名詞
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このまま朝まで 迎えたい気分でした
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凍れる音楽が 山上に響きます

11月24日
朝5時。西に傾いた満月は長い影をテントサイトに映します。日の出は6時38分。まだまだ星が瞬いています。冬の星座「オリオン座」が月を追うように傾き始め、東には宵の明星の如く木星が瞬いていました。深夜、上空を覆っていた薄雲は取れ、ここは「宇宙」となりました。突端の岩場から、白く浮かび上がる大峯奥駈道の稜線と特徴ある大普賢岳の稜線。陰と陽。白と黒。古から修験者を初め大勢の人が行き交う大峯奥駈道は、幾歳月にも微動だにしない、真の力強さを発しているようです。
昨日、お詣りしなかった弥山神社(天河神社奥宮)に参詣し、安全登山を祈願します。秘密の場所(笑)を覗いてみると、奈良・大阪方面の夜景が望めました。夜景と言えば、東には線上に点滅する輝き。きっと、青山高原の風車群だと思います。するとその横の灯りは地元かな? 西にも少し夜景が望めます。和歌山方面の灯りでしょう。そうしている間に、東の空が明るくなってきました。春、大台ヶ原山の左側から上る太陽は、この時季、山を通り過ごし、随分と北側から上ってくる気配です。
紅く染まった峰々と空の狭間が広がり始める中、テントに一旦戻り、御来光を待ちます。その時、ちょっと気になる山を見つけましたが、まさかと言った感じです。そして、テントを出て最初に発したバディの言葉に、「まさか」が「やっぱり」に変わりました。
それは、左右対称の綺麗な裾野を持つ頂上が平らな山。「富士山」です。北アルプス等では、いつも見る方向のため、どこから見てもすぐに判別できます。しかしあまりにもはっきりと、また、近くに見えたため、確信は持てませんでした。その左側には、南アルプスや中央アルプスと思える稜線、そして先日見た御嶽山乗鞍岳。望遠レンズで覗くと吊尾根から槍ヶ岳まで確認することが出来ました。ホーム鈴鹿御在所岳には富士見岩があるように、早朝見える時があり、SNSで紹介されています。今回、空気の澄む冬の朝を迎え、北アルプスは見えると思っていましたが、まさかまさかの富士山でした。何とも言えない感動です。(帰宅後、直線距離を調べると、富士山・槍ヶ岳共に約290㎞。ちなみに、白馬岳から富士山は約200㎞)
陽が高くなるにつれ、早くもその姿は薄らとなってきますが、一度、確認できた方角は財産です。本当に貴重な時間を過ごさせてもらいました。
昨日と打って変わって真っ青な空。陽を浴びた霧氷は音を立てて落ちていきます。早くも日帰り登山者の声が聞こえ始め、道中素晴らしい霧氷と出逢えたことでしょう。我々も早く下山をすれば、いい環境で見ることはできますが、自然体で時間を過ごすのがここでのテントライフ。最後に一夜のお礼を告げ、小屋前を出発した時には、9時半を過ぎていました。
下りは僕もチェーンスパイクを付けました。「後悔先に立たず」。この楽しい思い出を辛いものにはしたくありません。
昨日、見ることの出来なかった展望。特に、朝陽を受けてオレンジ色に光る熊野灘が印象的で、この時季にテント泊をしたからこその景色でした。また、この時間帯になると頭上を飾る霧氷は、頭の上に落ちてきたり、首筋から背中に侵入したりと凶器です(笑)
稜線歩きも終盤に差し掛かった頃、「どうも どうも」と前方から話しかけられるような声。顔を上げて見ると、富士山に最も多く登っている関西人と言われる登山ガイドの方でした。この方とは初めてお会いした夕暮の撮影から、いつもここ「弥山」。今日もお仕事中のようで、お二方を連れて歩かれていましたが、5分ほど立ち話をさせていただきました。
いい山との出会い。そして、そこに繋がる人との出会い。あらためて感じる出来事です。
下山後は、「和心」でいつもの…(笑)

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長く伸びた月影は 夜明けを告げる影時計
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浮かぶ奥駈道
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大阪・奈良方面の灯り
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夜明け前に 秘密の場所へ…
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今日の富士山は いつもと違う…300㎜の望遠にて(トリミング無)
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神々の峰を 遠く霊峰が見守る
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夜明け前の 静かな時間
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熊野灘から御来光
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また新しい1日が始まりました
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菅原道長が「望月の月」を詠んでから 千年目の満月
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霧氷のモルゲンロート
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奥駈道にも 新しい1日が始まりました
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南に続く奥駈道は 熊野へと…
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少し早い ホワイトクリスマス
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今の気分を 影で表してみました
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気分上々 テントも上々 ^^;
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海があってこそ この山域があると思います
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歩くも好し 上から見るも好し
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再びこの地に立つまで しばしのお別れ
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奥駈道の本陣 山上ヶ岳へ続く峰
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昨日も良いが 今日も良い
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大峯北部のスター…稲村ヶ岳と大日山
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冬の熊野灘は オレンジ色が濃かったです
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この道は 始まりと終わりの接点です
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古の里で盛り合わせのいつもの…(笑)