2月20日 三重県御在所岳
昨年6月に交わした約束通り、ホーム鈴鹿をご案内するため、雲に隠れた山頂を眺めながら、待ち合わせの駐車場に向かいます。
今回同行した京都在住の山友ご夫婦。これまでに3度御在所岳を計画されたそうですが、全てが順延。今回は天候に加え、体調も思わしくなく、今週初めまでは来冬へ順延のつもりでいたところ、体調が快復し、雨も明け方には上がる予報。となれば、登るしかありません(^^)
ご夫婦と歩くのは初めてでしたが、これまでの山歴から我々の定番冬ルート「本谷↗・中道↘」は大丈夫だと判断。とは言え、今年の雪の状態に加え、前日の雨により、ルートの難易度が数段上がっていることは否めません。
登山口から山頂直下までひたすら谷を歩く「ルート本谷」。沢登り風に沢沿いを歩く経験が初めてのご夫婦、ましてやバリエーションルートとなれば、自然と緊張を強いられます。そんな中、ルートの説明やルートファインディング、岩の歩き方等次回に繋がる話をしながら、少しでも緊張を緩めます。
川幅の広い下流はルート取りも多く、その日の水量を見ながら歩きやすいルートを進みます。やがて、名も無き滝が続くようになり、巻道や直登など、全身を使った登りが増えてきます。
我々が初めて本谷を訪ねたのは2012年の秋。1枚のルート詳細図を手に、ルーファイに集中し、慎重に歩いたことを覚えています。13年の冬、ガイドツアーで本谷を訪ね、アイゼン歩行やピッケルワーク等、ルートと合わせて、冬山山行に必要な技術を学びました。その後、年に一度は本谷を訪ね、特に冬は、毎年変わる様子を楽しんでいます。そんな本谷も初めは誰もが緊張するもの。ご夫婦の緊張感を肌で感じながら「慣れに対する危機管理」をあらためて思い起こします
大きな岩が両側に続くと、最初の二股に到着。ルート本谷の原則「二股は右」をルーファイと共に説明します。しかし、次の二股だけは左のため、目印になるハーケンから延びた鎖を指差確認。そして、ここが最初の核心部。今回はそこに至る雪も注意が必要でした。小さな岩の窪みにつま先を掛け、岩登りの要領で数m登ります。岩が乾いておれば難なく通過できますが、濡れていると足下がおぼつきません。
この辺りから道に雪が出始め、緩んだ雪は突然太腿まで沈み込みます。一歩一歩足元を固めながら進むため時間はかかりますが、安全第一です。
普段とは違う緊張とともに、メインストリートの門番「ジョーズ岩」へ。ここでも豊富な水量は岩を打ち、水飛沫が全身を濡らします。直登からのルート取りは危険なため、鎖に頼った登りとしました。数年前にはなかったこの鎖、もし付いていなければ、用意したロープの出番になるところです。
ここから上部は情報通りの雪道。ここの雪も緩んでいるため、踏み抜き注意です。雪の下にある岩を想像しながら登りますが、踏み抜きは突然やって来ます(^^; 雪質から判断し、アイゼンは付けずにピッケルだけで登り始めました。少しすると、谷を覆っていた雲が晴れ、伊勢湾に続く山麓の景色がV字の向こうに広がります。そして、頭上を行き交い山麓へと続くゴンドラ。ここまで要した時間は3時間半。いつもより、余計にかかっていますが、この景色は、緊張から来る疲れを一瞬で開放し、その勢いのまま本谷終了地点に到着。一般道に合流すると、ルート本谷を登り終えた達成感と安堵感から自然に笑みがこぼれていました。山上レストランで昼食をとり、気持ちをリセットした後に下山開始。まだまだ油断出来ない中道ルートを下り、本谷を望む岩に立った時の感動。
「その気持ち、良く判ります」
初めてのバリエーションルートで緊張の続く山行をされたご夫婦ですが、「本谷史上最難関」だったルートを無事に下山できて、ほっとした案内人でもあります。
登山口が見えた時、山友の呟いた「あぁ、終ってしまうのか…」がとても印象的でした。
下山後は、疲れた身体を癒してくれるいつもの…(笑)
本谷ワールド が 始まりました
何段の滝だろう…でも 名前は知らない
横移動から 縦移動へ…
イラストにも負けない 皆いい笑顔なんです(笑)…不動滝
一般ルートとは 一味違う 本谷の序盤
最初は 力技で登ってしまいます
中盤を迎えると ルートも限られます
今年の大黒滝は 見事な水量でした
大黒滝上部は 岩よりも雪が 目立ち始めます
ガイドロープのお陰で 通過しやすくなりました
視線の先には…
門番 ジョーズ岩…(右側の岩を登ります)
ジョーズ岩の目線で…
ここで踏み抜きを繰り返すのは 初めてでした
トレースは無いに等しかった メインストリート
ここからの景色は 是非 見て欲しかった
メインストリート 登っている時は 意外と平常心
アイスガーデンを過ぎると 後半戦に入ります
大黒岩直下 谷が狭くなってきました
上部は ミルキーウェイの世界
油断禁物 でも ほっとする標識です
山頂は踏んでませんが 記念の1枚
名古屋方面…来月開通する新名神も見えています
顧客に喜んでもらうのは ガイドの仕事(笑)
メインストリートと再会 ここで本谷のファンになります
次は どんな顔で待ってくれるのでしょうか
今日の本谷を表わす2色で いつもの…(笑)