Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

熊野路を 新旧の道で周回…

3月14日 三重県便石山(びんしやま)
旅と山をセットにした週末。泊地であり、出発点でもある道の駅に向かいます。

北陸、山陰、八ヶ岳…。各方面を視野に入れながら山行計画を立てます。土曜日は荒天予報のため、日帰り山行とし、雪を踏みに日本海側を予定していましたが、日曜は太平洋側が晴れると言う予報になり、地元は南部の低山縦走周回に落ち着きました。
当初、熊野古道伊勢路で馬越(まごせ)峠に向かい、そこから天狗倉山、おちょぼ岩を往復して、便石山への周回ルートでした。しかし、ちょうどクマノザクラが見頃を迎えていることを知り、午後から桜探訪に変更。峠からは便石山へ向かうことにしました。
クマノザクラとは2018年に自生種として100年振りに発見された新種の桜。紀伊半島南部、三重県奈良県和歌山県に分布する野生種で、山桜より早く咲く花は香り豊かでソメイヨシノよりひと回り小さく思えました。
さて、時を戻して便石山。標高599mの展望なき山に向かう理由は2つ。
登山口から分岐の馬越峠まで続く熊野古道伊勢路の石畳。日本有数の降水量を誇る尾鷲地域ならではの、大小様々な自然石を巧みに組み合わせ、尾鷲ヒノキの林を進む道は、当時の面影を濃く残しています。この日も昨日までの雨が沢から勢いよく流れ出て、一部登山道を冠水する箇所もありましたが、石畳のお陰で靴を濡らすことなく通り過ごせました。重機はもちろん、満足のいく道具も揃わなかっただろう時代に、これほどまでの土木工事を行い、後世に残る美しい道を作った「人の力」に良くも悪くも驚かされます。そして、これらの道が積み重なり「世界遺産」に登録されたことは納得が出来ます。
所々、解説板が立ち、また、22分割された案内杭を目安に登っていると、その約半分の13で馬越峠に到着。あとの数字は、尾鷲市側の登山口を目指しているのでしょうか。
ここは新旧の道が交差する四辻。古道の伊勢路尾鷲市内へと下り、熊野本宮へと続きます。私達が進む新道「尾鷲トレイル」は全長37.7㎞。その一部を利用する便石山へはCT 2時間となっていました。
325mの峠を一旦下り、緩やかなアップダウンを繰り返せば、お椀を被せたような便石山が目前に迫り、約300mの急な登りとなります。そのほとんどは整備された階段とは言え、ペース配分が大切な箇所です。時折、樹間から熊野灘尾鷲市内を眺めることは出来ますが、基本的には展望のない急登が続きます。巨岩が点在し、反射板を過ぎると道はなだらかになり、下山ルートになるキャンプ場からの道と合流すれば山頂に到着。樹林に囲まれ、標識だけが頂を示す場所です。
そして、この山を目指すもうひとつの理由は、山頂から少し下った所にある「象の背」と呼ばれる絶景ポイント。その形状から名前が付いた巨岩は、飛び込み台の如く空中に突き出し、熊野灘を始め市街地を眼下に見渡せます。ただ、数10cmの幅しか歩けない背中は両側が切れ落ち、転倒は即命取り。事故報告は検索出来なかったため、大きな事故は確認出来ませんが、一歩間違えれば取返しが付かなくなることは必須です。とは言え、バディの制止を聞かず先端まで行き、恐る恐るターンをして戻ってきました。
下山路はキャンプイン海山を目指すルート。登りと同様に展望のない急な階段の下りに加え、不安定な道が混在していました。林道と交差し、沢沿いに歩き始めれば、キャンプ場まで残り僅かとなります。しかし、低山周回アルアルで、ここから出発地点の道の駅まで3.2㎞の舗装道を戻らねばなりません 。
春の陽気を思わす中、銚子川の向こうに見える今日歩いた稜線と便石山。モズが鳴き、河津桜は葉桜となり、満開を迎えるはクマノザクラ…。足元をトレランシューズに履き替え、季節は春を迎えようとしています。
下山後は、クマノザクラとともに郷土の和菓子でいつもの…。

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朝陽を背に 悠久の道へ
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緩やかな曲線が 更に石畳を美しくさせます
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最も美しい箇所だと 感じました
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尾鷲ヒノキの幹が 映えました
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石畳同様 歴史を感じさせる巨木たち
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本日の周回ルート…馬越峠
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シダの林床が美しい 尾鷲トレイル
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視界が開けると 低山ならではの展望でした
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遥か遠くに思える 便石山
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ダイヤモンドトレイルを彷彿させる 階段道
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いつ見ても ホッとする シダの芽生え
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朝の歌声が 林に響いていました…メジロ
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あの岩場に立つのが 今日の目標…「象の背」
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目標達成(笑と汗)
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スタート地点側…紀北町を流れる銚子川
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往きはよいよい 帰りは怖い
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古道は 尾鷲市街を越え 熊野本宮へ
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道幅が広いか 狭いかは 個人差があります
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林道から 最後に渡る橋が 見えています
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黄色い花を見ると「春だなぁ」と思います…レンギョウ
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いつもクールな表情…モズ
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林道から見た橋にて 今日の山行を振り返ります
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橋を渡った先で待ってくれていました…クマノザクラ
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水が入り始めています…丸山千枚田
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花より団子…いえ 花とオサスリ