あの日から7年…そして 8年振りの登頂
9月24日 長野県御嶽山(剣ヶ峰)
「大人の肝試し」的な道を抜け、2年振りの登山口に向かいます。
私達にとって御嶽山は日帰りで3,000mに登れることや危険な岩稜がないことから家族登山、夏山登山の高地トレーニングに暑熱順化として唯一無二の山でした。また、雪山を始めてからは、残雪期の北穂高に向けてや3月に3,000mを踏める山として、その存在は常にありました。ルートは最短「田の原登山口」。ここは登山のみならず、散策や星空観望でも思い出深い場所です。
田の原ルートはハイマツに荒涼とした風景が印象深く、雑誌やテレビで御嶽山の美しい紅葉を知った時は意外に感じ、その時初めて、黒沢口ルートを意識しました。それが、2014年9月初旬。
そして、2014年9月27日。その日は、山友8名と常念岳でオフ会をしており、夕食時に知ることとなります。ほぼ同時に、自分の知人から安否を確認する電話が2件。翌日、横通岳から見た槍穂のモルゲンロートと東の空へ真っすぐにたなびく噴煙を見た時の得も言われぬ恐怖心は、生涯忘れることができないでしょう。
当事者でない自分にとって、いつの日か登頂することが亡くなった方の慰霊になると思い続け、2016年4月 濁河温泉から飛騨頂上。2017年7月 同じく濁河から継子岳周回。2017年10月 今回と同様、中ノ湯から開田頂上。少しずつ剣ヶ峰に近付きます。
2018年9月に数日間、規制が緩和され、剣ヶ峰まで登れるようになりました。初年度は自分のような者が登る資格はないと思っていたのと、前年、開田頂上から賽の河原を抜けた時に眺めた剣ヶ峰や稜線から見た田の原登山口、また、二ノ池の変わりようを目の当たりにし、自分の想像を超える思いに引っ張られそうで、しばらくは登頂できないと感じました。
ようやく登頂への気持ちを強く持ち、天候が許せば、それは山が迎えていることと思い、まだ薄暗い中ノ湯登山口を出発しました。
中ノ湯登山口の標高は1,820m。田の原より360m低く、剣ヶ峰3,067mとの差は1,247m。CTも1時間程長くなっています。また、御岳ロープウェイを利用して、7合目の飯森高原から登ることも可能ですが、運行時間の都合上、出発時刻が遅くなります。
このルート、そのロープウェイからの合流点「行場山荘」までの階段コース。8合目「女人堂」までの広葉樹コース。9合目「石室山荘」までの展望コースと分かれ、最後に剣ヶ峰に続く規制緩和トラバース。
山天予報では昼前には雲が上がってくるとのことで、予定より出発を早め、結果的に功を奏しました。金剛堂へ続く直線では、秋への衣替えが始まり、樹林帯を抜けたと同時に眼前一杯に広がる御嶽山の岩稜は、このルートのハイライト。小屋前の広場からは、笠ヶ岳、乗鞍岳、槍穂高に、先日、登った蝶ヶ岳の北アルプス。続いて、八ヶ岳から中央アルプス越しの南アルプス。(なお、もう少し先にある場所からの方が遮られることなく一望できます)
御嶽山の岩稜から下る紅葉の滝は、まだ色付き始めた頃ですが、それは4年前に対面済。今回は登頂が目的です。とは言え、「山は頂にあらず、道にあり」。その道程を味わいながら、ともすれば、あの日の状況に引っ張られそうになる思いを押し留めます。
背の高いハイマツ帯を抜ければ、遮るものがない世界。近くて遠い小屋は見えますが、女人堂から見えていた剣ヶ峰は岩稜の向こう側。振り返れば、木曽谷から遥か彼方に思えるアルプスの峰々。高度を上げることで槍穂高は継子岳の裾野に隠れ、中央アルプスに隠れていた富士山が姿を現します。その展望と共に覚明堂で呼吸を整え、前回、二ノ池から来た際にはロープが張られていた規制区域に入ります。変わり果てた二ノ池を見ながら前方には剣ヶ峰に続く最後の階段。聞こえてくるのは時折吹く風と石を踏む足音。田の原ルートの最終関門「王滝山頂」から八丁ダルミ。前回より冷静な自分が景色を追いかけます。
写真で見てきたシェルターと慰霊碑。正直な気持ちで合掌。
7年の歳月を経て、8年振りに登頂した剣ヶ峰。景色や時代が変わっても、山は変わらず。あの日の出来事には、登頂者それぞれが思いをお持ちでしょう。自分は安全登山を続けることが、山で亡くなった方への慰霊。そして、安全登山とは山の選択であり、今の自分を知ること。登山口では山頂の滞在時間を短くするようアナウンスされていました。幾分危険が和らいだとは言え、忘れてはならないことだと思います。
登頂出来た思いと共に下山を始め、中ノ湯ルートはこれにて完結。これで御嶽山への一区切りになりました。ただ、本当に帰ってきたことになるのは、田の原ルートからの登頂だと思い、静かにその日を待ちます。
下山後は、定番のものでいつもの…。
4年振りのご対面…女人堂
秋の空に羽ばたく雲
左端に剣ヶ峰…今日は登頂させていただきます
落葉も進んでいました
女人堂から5分…俗世と御神域の境界
至るところで感じます…御嶽信仰
ハイマツの一本道は 結構 長く感じます
「自らの魂のふるさと」
紅葉の滝が見頃を迎えるまで もう少し
独立峰「御嶽山」らしい展望
あの尾根の向こうに田の原ルート そして 三笠山直下の登山口
登ることで 季節が 変わります
剣ヶ峰に向けて 最後の一息…覚明堂霊神場
剣ヶ峰へ続く道は感無量…規制区域内
荒涼とした景色と信仰は 以前と変わらず
様々な思いがよぎる 10数分間
災害だけでなく 安全登山の礎になります
この階段は 小6の娘と登った思い出とあり
最後に登ったのは 2014年7月17日
現場に立つ大切さを 感じます
田の原登山口と八丁ダルミ…いつの日か
6年前 継子岳で誓った 登頂を達成 … 二の池
いつの日か 高山植物も帰ってくることでしょう…一の池
一の池お鉢回りからの二の池…2013年7月24日
今日は 文太郎さんと 同行二人
無事下山が 私達の努め
俗世まで戻ってきました…金剛童子
今年も 賑やかなひと時を迎えることでしょう
感謝の気持ちで 下山再開
秋風で 撮影後は車内で食べた いつもの…