時代を巡る 登城ハイキング
10月9日 奈良県高取山
山麓の和菓子店に寄り、出発点の観光駐車場を目指します。
標高583.6mの高取山に建てられた高取城。奈良と吉野を結ぶこの地にその抑えとした役割を持ち、南北朝時代に造られています。幾多の変遷を経て、大小の天守閣を持つまでになりましたが、明治初期に廃城が決定し、今では石垣が残るのみとなっています。
元々城に興味があり、現存12天守を見てきましたが、城跡に興味を持ち始めたのは40代後半になってから。今では遺された石垣から当時を想像することが楽しみになっています。
この高取城跡の存在は随分と前から知っていたものの、山麓の街道までしか訪ねておらず、城跡には縁がありませんでした。今回、登るにあたって調べたところ、「日本三大山城」のひとつと呼ばれており、他の二城はすでに登城していた「美濃岩村城」「備中松山城」。自宅から最も近い城が最後とは、物事アルアルです。また、行くことを決めた後、読んでいる短編集に高取城が舞台となっている話が出てきて、今回の山行に縁を感じます。
高取城大手筋に続く旧城下町の通りは「土佐街道」と呼ばれ、松ノ門や長屋門などの遺構を通り過ごし、人工林の急坂に迎えられてから、大手筋の入口にあたる第一の城門「黒門跡」となります (以下、跡は省略)。この辺りは「別所廓」と呼ばれ、最初の要であったと思います。そこを過ぎれば「七曲り」。各地の登山道でも〇〇曲りはありますが、ここでは防御と攻撃の意味合いが含まれています。次のポイントは「一升坂」。緩やかに真っすぐの道が林の中へと消えていきます。
踊り場のように少し広くなったところにあるのが「猿石」。アニメ映画に出てくる結界石のように思えました。そして、すぐに二ノ門となり、ここから時間が一気に遡ります。
三ノ門手前にある国見櫓への分岐点。石垣に気を取られていると通り過ぎてしまうことでしょう。この場所からは大和三山や河内へ続く街道など大和を一望出来る、正に「国見の地」。天守閣よりも展望が良い場所でした。
元来た道に戻り、この後も続く門跡の石垣。折れ曲がりながら続く道を歩く気分は、天守へ登城する武士か商人か敵方か…。
そして全ての道がここに続く「大手門」。その石垣だけで当時の迫力が伝わってきます。
広くなった二ノ丸から見える太鼓櫓と新櫓の石垣。やっと大手門を抜けたと思った矢先の石垣に戦意喪失の私です。ところが、次に現れる本丸の高石垣に比べれば半分程度のもので、正に本丸の石垣が「最後の砦」と言ったところでしょう。天守閣に三等三角点が設置され、登城とあわてせて高取山に登頂。
この頃、奈良の娘と呼ぶ山友が山麓の土佐街道を訪ねており、約1年振りの再会には至りませんでしたが、ここでも高取城との縁を感じました。
重機のない時代にこれらの石垣に加え、天守、櫓、門などの建築を行い、加えて、急峻な山の上に建てる。当時の人々の暮らしを思わずにはおれません。栄華な部分とその影。シダや苔等の草に覆われ、崩落している箇所も多くみられた石垣は「つわものどもがゆめのあと」の世界です。
数多く登ってきた山城の中で、この高取城の防御力は素人の自分から見ても強固に感じ、道中の幟に書かれた「日本最強の城」を強く思いました。下城は壺阪口から五百羅漢を経て、西国三十三所第6番札所の南法華寺(壺阪寺)から土佐街道へ。壺阪寺を結ぶ帰り道は、格子窓の旧家が続き、土佐街道とは違う雰囲気でした。
山行と城跡巡りを同時に楽しめた今回の高取山。観光パンフを読み返せば、訪ねていない場所もあり、次回は高取城だけを訪ねることになるでしょう。ただ、今日のような10月とは思えない陽射しの日ではなく、冬から新緑の季節に時代を遡ってみたいと思います。
下山後は、イタリア地方菓子の専門店でいつもの…。
本日の周回ルート…「健康のまち」らしく15時には ラジオ体操が流れてきました
長屋門…旧藩主の住居になっています
番組で選ばれた冠…日本最強の城
何気に急坂だった 序盤の林道
曲がった先には また 曲り道…七曲り
所々に設置された案内図に 一息つきます
おらが山の階段とは 背景が異なります…一升坂
当初は石垣となる運命…猿石
今も樹々の緑を映す 水堀跡
彼方の敵をここから見張っていたのでしょうか…国見櫓
城奥深く 入ってきた感じがします…宇陀門
行軍する武士のように…トリカブト
歴史に「もしも」はありませんが…
見上げる石垣は 城代屋敷のもの
ここで天守を仰ぎ見たことでしょう…二ノ丸
右から訪ねた順になっています
天守の高石垣は12m…一番槍はこれを登る
高石垣の縁に立ち 当時を振り返る
今日のピークは 天守の石垣を越えたところ
地元のお菓子を 本丸でいただく
城主も 遠く大峯の峰々を 眺めたことでしょう
時が流れても 天守から二ノ丸を見下ろことは同じ
10月の空とは思えないことが 印象的でした
大手門を抜け 壺阪口へ向かいます
石岩に彫り込めた五百羅漢は 壷阪寺の奥の院
低山の宿命は 照り付ける陽射し
約30年振りの壷阪寺は 通り過ぎるだけ
漆喰と格子の旧家が続きます
新しい世界を望めた いつもの…