秋の周回と木枯らし1号
10月23日 奈良県薊岳
近づくにつれて雲が多くなるのはいつものことと思いながら、駐車場に向かいます。
僕が精霊の森と呼ぶ明神平。凍てついた冬、ミルキーウェイに閉ざされている森は、人を寄せ付けない世界。この明神平へは四郷川に沿って向かうのが一般的なルート。この他に、バス停大又から縦走するルートがあり、そのルート上の最高峰が薊岳 1,406m。その頂は明神平のある台高山脈から、西に派生する支尾根が南へ折れ曲がったところ。明神平から見れば、お椀を伏せたような形の頂は、いつも目に留まっていました。とは言え、駐車場からバス停までは林道を1時間近く歩くため、計画することはありません。近年、その稜線上にある1334Pへダイレクトに登り、薊岳からの霧氷を楽しむレポを見て、冬の前には試登しなければと思っていました。このルートは林業用であり、地図上に示されておらず、急登が続きます。登山口は駐車場から林道歩きを始めてすぐに現れる鉄階段。ここから稜線までは、ほぼ直登で向かいます。随所にテープが巻かれており、目印がたくさんあるものの、900m付近のトラバース道へは入り込まないよう注意が必要です。「稜線まで上を目指すこと」が、このルートの原則。
1200m付近からの自然林に合わせて、傾斜が更に厳しくなる、このルートの核心部。歩いた感覚としては、滑落のリスクはあり、雪があれば尚更でしょう。そのため、私達の中では、このルートを利用する選択肢はなくなりました。
稜線に立てば、木々の向こうに薊岳。近くで見てもこんもりと盛り上がっています。色付き始めた葉やすでに赤い実のみを残す木。苔の緑が赤茶けた落ち葉道の縁を飾る縦走路を西へ向かいます。今日は木枯らし1号が吹く予報の関西。稜線を抜ける北西の風に、今シーズン一番の寒い山行となりました。
南に折れると、広かった尾根は急に細くなり、やせ尾根は頂まで続きます。特に北側は切れ落ちている箇所もあり、注意が必要でした。こんもりした姿から丸みのある頂を想像していましたが、地形図でも判るように、細長い山頂部。規模は全く異なりますが、ジャンダルムと同じ見え方であることが登ってわかりました。岩が点在し始め、切れ落ちた先に細い立ち枯れが1本。薊岳の山頂です。
コブのように稜線から飛び出た山頂は、大峯奥駈道や台高山脈の「台」である大台ヶ原から「高」の高見山へと続く稜線。また、奈良盆地や大阪方面の街並みに地元、おらが山まで見事な展望でした。そして、台高山脈の稜線上に見える開けた場所がこれから向かう「明神平」。まずは、来た道を戻ります。
登り詰めた1334Pで10名ほどのグループが休憩をしており、その後、10数名の方が薊岳方面に歩いて行かれました。その人数を許容できる山頂ではなかったため、事故がなければと思います。冬、霧氷のトンネルが続くだろう歩きやすい稜線をのんびり歩いて前山へ。山頂部にあった大きな倒木を風除けにし、昼食タイム。しばらくすると、青空が広がり始め、太陽の暖かみを全身に感じます。
最近は明神平までが多く、しかも冬のミルキーウェイ。この前山は県境を除く三重県の最高峰「桧塚奥峰」で幕営して以来の8年ぶりでした。明神平へ下る際、道の両側を埋めるシダは赤くなり始め、青空とともに新鮮な風景。関西の山でも稀有な世界の明神平。この緩やかで、おとぎの国を想像させる場所は貴重な存在です。
今年はこんな空の下、白く染まった精霊の森を訪ねることが出来るのだろうか。でも、晴れていれば、精霊を感じることは出来ないだろう…。期待と不安が交差しながら、シンボルツリーのもとへ。数張りのテントが点在する明神平からは、いつものように薊岳を眺めます。先ほどまで居た頂には、いつもと違う思いが繋がりました。
下山後は、自宅と反対方向に車を走らせたお店でいつもの…。
登れども 登れども…時間が経たねば稜線に着かず
落ち葉が美しい季節になりました
間近でも見ても いつもの雰囲気…薊岳
写真だけ見れば 暖かな稜線
赤い実りが 稜線を飾ります
大通りから路地裏に入った感じの尾根歩き
この岩を覆うには どれほどの時間が…
明神平の山荘が 遠くに見えました
山頂はこの道を過ぎてから 眺めましょう
青山高原と俱留尊山 そして おらが山(右から2番目の頂)
やっと立てた感じが強い 頂です
これから向かう明神平と前山への稜線
秋色が 台高山脈を縁取ります
関西の前穂高北尾根…大普賢岳ファミリー
霧氷も良いだろうけど 落ち葉道も素敵
足元の小さな森に 風が吹き抜けます
素晴らしい防風林でした
8年振りのとは思えなかった この展望
今は 森の精が 踊り始めそうに思えました
シダの一本道が 明神平へと導く
晴れ間の明神平は 遥か彼方の記憶
「孤高の貴婦人」は いつでも 素敵です
次は霧氷の世界に立ってみたい
では また…
頭上を飾る紅一点
扉を開ければイタリアの風で いつもの…