Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

バンビー3で アイスシアターへ…

2月4日 奈良県シェイクスピア氷柱群
昨秋以来のバンビー3で、規制道路へと向かいます。

5年前、山友から尋ねられたシェイクスピア氷柱群。山行レポ等でその場所は知っていましたが、紹介される写真や文字だけの知識。せめて雰囲気だけでも確かめようと、4年前の3月に現地へ向かったものの、林道から沢沿いに入ったところで、まさかのアクシデント。事なきを得ましたが、即刻撤退し、私達にとっては立ち入り禁止区域になりました。先月、山友から再度オファーがあり、計画するも流れ、八ヶ岳方面にテント泊する今月の予定を変更して、1週遅れで向かうことになりました。
シェイクスピア氷柱群とは、大峰山系大普賢岳東斜面に出来る氷瀑群のひとつで、標高1,300m付近にある氷柱の景観がシェイクスピアの劇場のようであることから、そう呼ばれています。
山行前にレポを確かめ、コース概要を調べます。現在も登山ルートは登録されておらず、レポからの知識になりますが、週末には大勢の方が入山され、激しい降雪もなかったため、トレースは問題なし。また、数ヶ所設置されたロープ場やトラバース道が核心部になりそうですが、これまでの経験で対応できるでしょう。
冬期通行止めとなった大台ヶ原ドライブウェイの入口が出発点。少し車道を歩き、山葵谷へと進みます。林道を進むと山側ルートの分岐。今回は沢沿いから山側ルートに合流するコースを選択しました。沢ルートはまだ続くものの、トレースに導かれ斜面を上り、合流した地点でアイゼンを装着しました。
しばらく樹林帯を進み、沢に出ると、そこは山葵谷から分岐した「地獄谷」。シェイクスピアの作品において、「美しい妻を持っていることは地獄だ。」(「ウィンザーの陽気な女房-二幕二場」)とありますが、妻の箇所を氷瀑群に代えることで、この谷の名前が生きてくるように思えました。
左斜面に氷瀑を確認。アイスガーデンと呼ばれている場所です。出発時には隠れていた稜線付近の氷瀑が樹間に見えると、高揚する気分を抑える努力が必要になります。ルートにはいつくかのポイントがあり、次は大岩。渡渉地点を過ぎれば、似つかわしくない巨岩が前方に現れ、直登、トラバース道を経由して第2の氷瀑「ブライダルベール」への分岐点。ここは帰りに寄るとし、先に進みます。次は最初の残置ロープ地点。ここは「試しの岩」と呼ばれ、ここで苦労する場合は、この先に進まないようにと読んだことがあります。今回は雪が付いておらず、岩肌にアイゼンを馴染ませながら登り切れば、更に気を引き締め直します。ここから傾斜は増し、氷の斜面となったロープ区間のうち、2つ目が今回の核心部。途中、絶妙に進路妨害をしている岩をかわして通過すれば、小さな氷瀑と3つ目のロープ区間が待っていました。
前方高く、稜線から流れ落ちる氷瀑とともに、シェイクスピア劇場の舞台が迫り上がってきました。レポで見てきた氷柱群は、一緒に映る人の姿からその大きさを想像していましたが、それを遥かに上回る規模と迫力。幾筋もの氷が織り成す自然の造形美。その姿は日々変化し、一期一会の世界。劇場の氷柱は大きく3つにわかれ、左から、ハムレット、リア王、マクベスと名付けられています。
予報に反して青空が広がり始め、ステージを照らすライトのように、陽射しが劇場に息吹を与えます。延期して良かった…バンビー3。
山友は右端の「マクベス」に登る準備を始めます。ビレイするのは5年振りで最初は緊張しましたが、頭上に落ちてくる氷片から自分の身を守ることで、緊張も吹き飛びました。
1番乗りだった劇場も段々と賑やかになり、ハムレットを登攀するグループも現れましたが、まだ平日のゆとりはありました。滞在中、マクベスにおいて大きな塊の崩落があり、幸い落下地点に人は居ませんでしたが、週末等、人が増えれば危険性も増すことでしょう。
核心部の下降も人が少なければ、落ち着いて通過出来ました。試しの岩を下降すれば、一安心。昼食後はブライダルベールへと向かいます。氷瀑の規模はリア王より劣りますが、氷筍がここの見所でしょう。大小様々な形状をした氷筍は、氷の世界から顔を覗かせた生き物にも見え、透き通ったその姿に、時間を忘れます。
林道でアイゼンを外せば、気持ちもリセット。振り返れば、青空を背景にした大普賢岳からの稜線と劇場の更に上を飾る氷瀑群。決して、簡単なルートではなかったけれど、先日ルートロスしたホームの苦い思いを払拭させてくれた山行でした。でもここは、今回が最初で最後の計画。山行履歴に良いページが残り、この機会をくれた山と谷と友に感謝です。
下山後は、紹介したかったお店でいつもの…(笑)

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ピークを目指さない山行が始まりました
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冬枯れの開けた谷は「地獄谷」
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トレースはありました…アイスガーデン
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樹間に 青空の兆し
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コースが変化し始める中間地点…大岩
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取り付きの第1歩がポイントでした…試しの岩
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残置ロープ3区間のトップバッター
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核心部の2区間は 身長差で難易度が変化
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ここを過ぎればと 最終区間
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いくつかの谷を渡れば…
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劇場が見えてきます
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劇場手前 アウトサイダーと呼ばれる氷瀑でしょうか?
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劇場到着
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ひと滴から生まれる 壮大なドラマ
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本日の舞台俳優…バンビー3
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勇猛果敢で小心者だから 氷塊が落ちるのか…マクベス
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圧巻の舞台でした… ハムレット(左)・ リア王(右)
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舞台裏を拝見…ハムレット
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リア王がマクベスを眺めます
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いつもと違う緊張感…
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マクベスの咆哮
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本日の主役 山友を照らします
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マクベスの上部には「グランドイリュージョン」と「閻魔大王
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路地裏劇場…ブライダルベール
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舞台裏は 賑やかでした
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良い景色と無事下山を感謝です
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三人三様で いつもの…
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(おまけ)翌朝は クールダウンで「おらが山」…バンビー2