Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

冬恒例 ホームのメインストリート「本谷」

2月12日 三重県御在所岳
好天の週末、満車を避けるため、日の出前の駐車場に向かいます。

ここ数年、毎年のように訪ねる御在所岳本谷ルート。今では地図にも紹介され、バリエーションルート入門編として訪ねる登山者も増えてきたように思えます。それでも、一般的な中道や裏道ルートと較べれば、登山者は少なく、御在所岳の懐に抱かれながら自分達の世界を描ける、そんなルートです。
ここの魅力は、登山口に流れる沢を詰めるため、その変化と数多く現れる大小様々な滝。山麓から眺めた鉄塔横に流れる1本の白い筋、名付けて「手振り街道」。そして、一般登山道では体験出来ない緊張感。
最近は積雪期に限られたルート本谷。雪の状態によって毎年変化し、訪れる度に違う表情を見せてくれます。
21-22シーズンは雪に恵まれたホーム。入道ヶ岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳から続く冬期ルート「御在所岳本谷」。満を持しての登場です。
いつもは堰堤広場の状況で判断するアイゼンも、駐車場から見る景色に積雪を確信し、装着してからの出発。広場から続くトレースは明確で、ルーファイが特に必要な序盤でさえ、全く問題なし。凹凸激しい岩場も、平地のように歩くことが出来ます。いつもは左岸を歩く箇所も今日は右岸ルートで通過。こうして新しいルートを記憶に刻みます。トレースが明確とは言え、沢沿いの狭いルートや岩場の通過には確実なアイゼン歩行が求められます。また、トレースを追って歩くことでルーファイの楽しみや無くなった時に一瞬判断が鈍る場合もありますが、全体の景色からルートと現在地を判断します。
ミスター本谷と呼ぶ「不動滝」。僕にとってその存在は「ダークヒーロー」。先週訪ねた大峰のシェイクスピア劇場とは対極。雪のお陰で最も近くに寄ることが出来、幾本もの氷柱で装飾された巨人を間近で見上げる迫力は荘厳でした。物言わぬその存在は、訪れる度にドスンとした大きな気を与えてくれます。
不動滝を巻けば、巨岩が現れる中盤へと差し掛かります。振り向けば、V字樹間の向こう、朝陽に照らされて黄金色に輝く伊勢湾。前方には二俣の案内である倒木が見えてきます。ここで初めてトレースも二股(どちらも先で合流します)。補助ロープが設置された大岩は、階段状になり、ロープは雪の下。積雪は60cmを超えていたでしょう。残置ハーケンの岩場は手前の大岩を右から巻くトレースが付いており、初めて通過しました。次のポイントは「大黒滝」。レポでは完全氷結しているように見えましたが、陽の当たる上部から迸る水飛沫がホーム厳冬期の終焉を暗示させます。積雪量が多いと、楽な場合もあれば、逆に困難な場合もあります。ジョーズ岩が前者で手前の巻き道が後者でした。それも含めてルート本谷。
さて後半。日本一の白鉄塔と共に、山麓から見れば崖のように見える一本の白い筋。本谷メインストリート。僕の場合は、ロープウエイの乗客に向かって挨拶する「手振り街道」。今日は一番乗りだったため、長い直線上に登山者の姿はありません。登っては振り返って見る山麓の景色…そして、時々手振り…。雪がなければ、ガレ場のような登りも、この時期は真っ白に輝く別世界。頭上の覆いは取れ、ゴンドラの向こうにそそり立つ岩壁は、多くのクライマー達が訪ねる主峰「御在所岳」本来の姿を私達に伝えています。
上部は新雪を楽しみながらの登りとなり、到達点を迎えれば、最後は大国岩への登り。トレースが消えているのは、風と新雪の影響かと思い、いつも利用しているルートに進めば、腰までの雪に阻まれ、ゴールとなる稜線が近付いてくれません。後に続いたバディは、更に悪戦苦闘を強いられることに。
何とかたどり着いたバディからは「前方にトレースがあったよ」。
釈迦ヶ岳でルートロスした山行が生かされず、未だ、常に周囲の状況を的確に判断することが出来ていない自分に気付かされます…ただし今回は、ロスではなくチャレンジと…。
私達にとって、御在所岳の山頂は展望レストラン。今日は期間限定メニューを素晴らしい展望と共にいただき、春の陽気を思わせる中、中道ルートで下山。ホーム冬期ルート、残すは藤原岳となりました。
下山後は、華やかなショーケースの中でも一段と輝いていた「いつもの」…。

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モルゲンロート…今日はいい天気になればいいけれど
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本谷劇場の入口に 当然 受付はありません
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しっかりとしたトレースと共に 「油断禁物」
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セントレア大橋の向こうには 遠く三河湾のゆらぎ
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いつまでも こうしていられそう…不動滝
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どんな物語が 演じられるのだろう
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不動滝を巻けば 中盤の巨岩ストリート
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二俣の分岐点から 振り返ります
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ハーケン岩は左上…今回は前方の大岩を右に巻きます
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庵座谷の登りと比較すれば 一般道…大岩の巻き道
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トレースのお陰で 写真も撮りやすい…大黒滝
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間違いやすい二股も トレースが道案内
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大黒滝を巻いた場所からの展望がお気に入り
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いつもと違う 岩の通過でした
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不動滝、大黒滝に続く「本谷 3名所」…ジョーズ岩
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ここが本谷の森林限界
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トレースを外れると 新雪が舞います
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本谷(御在所岳)のランドマーク…白鉄塔
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そろそろ到達点が近付いてきました
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デブリ…メインストリートでは初めて見ます
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大国岩へチャレンジタイム…後続はトレースで楽々 (笑)
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花崗岩の浸食…一段下がった所が「富士見岩展望台」
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雪遊びをする子供達の歓声が響きます…カモシカ広場
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展望レストラン 期間限定メニュー 「白い御在所カレーうどん」…美味しかったです
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大国岩と本谷を眼下に…「富士見岩展望台」
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釈迦ヶ岳・竜ヶ岳から続くホーム北部 そして 彼方には白山
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クライマーの方は 大国尾根が 本谷メインストリート
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「今日は今日の本谷」がありました
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本谷終了点に2名の登山者…そして 2股のトレース (笑)
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安定のハーモニーで いつもの…(笑)