Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

名峰's とともに…GWテントライフ

5月3日~5日 長野県遠見尾根
前夜の予期せぬ事態に多少の不安を残しつつ、まだ桜の咲く道を駐車場に向かいます。

5月3日
以前から温めていた計画。雪の遠見尾根テントライフ。山行的には1泊2日で充分なところ、せっかくの白馬エリアで過ごすからには2泊はしたく、また、稜線上にある適地は風の影響を受けやすいため、天候の安定を条件と考えていました。そんなことで、機会に恵まれないまま数年を過ごし、ようやく訪れた2022GW。主稜線では風の影響を受けるものの、好天に恵まれる3日間。ついに、計画実行。
7時前、出発の起点となる「白馬五竜テレキャビン」登山者用Pに到着。乗車口には早くも数名のスキーヤー達が並んでいました。運行開始は8時15分。その頃には道路近くまで列が続く盛況振りです。今日は幕営地へ行くのみで、午前中に到着すれば良い私達は、並ぶことなく乗れるまで時間を過ごします。
標高差699mを約2kmで結ぶテレキャビンは、8分ほどで1,515m「アルプス平」へ連れていってくれます。建物のすぐ前はゲレンデ。BGMとともに歓声が響く白銀の世界。ここで初めて、五竜岳から白馬三山へと続く稜線がリフト越しに飛び込んできます。但し、高まる気分とは裏腹に大きなザックを担ぐ私達は完全にビジター状態でした。ここから少し下った先にある第1ペアリフトを利用すればゲレンデトップまで行けますが、ザックを背負った乗車に不安を覚えたため、ゲレンデ脇を歩くことから2022GW山行の始まり。
五竜岳に向かう主稜線は「遠見尾根」。白岳に向かって小、中、大、西の遠見山が連なり、小遠見と西遠見の標高差は261mですが、アップダウンを繰り返すことから累積標高は上がります。
展望を楽しむテントライフの私達は、中遠見で幕営。山頂を目指す方は、大遠見か西遠見まで行かれるため、GWとは言え、静かに過ごせると思っています。
再び、スキーヤー達に注意を払いながら、ゲレンデトップから林道に進めば、注意書きのあるゲート。ここから先は私達のホームゲレンデ。まずは樹林帯越しに見える雪の壁に臨みます。傾斜は発汗作用を促し、袖を捲ってみますが、次は日焼けの心配をしなければなりません。登り切ったところが遠見尾根。「見返り坂」の案内板に従って振り返れば、アルプス平と北信五岳から続く頚城山塊。そこから小遠見に向かっては短い急登の繰り返し。雪が揺るんでいることや両側が切れ落ちたやせ尾根に亀裂の入った雪庇。夏道区間では雪とともに地面の崩落や浮いている箇所もありました。周囲の景色に目を奪われて、ただトレースを追いかけるだけでは危ない世界です。
二ノ背 髪を過ぎれば鹿島槍が顔を覗かせ、小遠見山頂で展望の完成。最近降った雪のお陰で、五竜岳の雪形「武田菱」、長野県初の氷河「カクネ里雪渓」や稜線が化粧直しをしたかのようです。更に登り返しを繰り返し、2,037mの中遠見山に登頂。そして、通り過ぎた木立の中に「五竜鹿島槍展望荘」のオープンです。
設営後、最初の作業は水作り。雪を集め、溶かしてはろ過すること30分。これもGWテントライフ。昼食後の予定はなく、出入口を塞ぐような五竜岳の岩稜を寝転びながら眺め、ラジオから流れるFM局の音楽を聞き流します。ふらりとテント周辺を歩けば、北ア北部の名峰が屏風のように連なる光景に出逢えます。また、急峻な谷は一気に白馬の町へと駈け下り、標高差1,300mの俯瞰は生活を感じながらも別世界を体感できる場所。
夕方、五竜岳に陽が沈めば、目に見えるように気温が下降。定番の鍋料理で暖を取ります。期待していたマジックアワーは淡々と過ぎ、三日月の傾きと町の灯りがリンクします。時折、鹿島槍を抜けてくる風が大きくテントを揺らす中、GWテントライフ1日目は幕を閉じました。


さて どんなテントライフが 待っているのでしょうか

五竜岳 ファーストショット…左端に小さく「地蔵の頭」

武田菱を見れて良かった…ゲレンデトップ

遠見尾根へは 空に登っていく気持ちで

言葉通りにしました…見返り坂

遠見尾根の始まり

次のポイントはここ「一ノ背 髪」

次のポイント「二ノ背 髪」は 写真ほど遠くありません

小遠見山までで 一番の急登区間

ようやく 小遠見山が 近付いてきました

小遠見山から少し下がって…

五竜岳」名前の由来…武田菱(ショセツアリマス)

初めてのテント泊は 鹿島槍ヶ岳南峰…(写真は北峰)

ここから先は 正しく 五竜岳に続く道

残雪期の展望を楽しむ 「ルート遠見尾根」

注意一秒 怪我一生

倒れるのなら 絶対に左側

中遠見山の一等地を頂きました

大遠見山へ向かうトレースと今回のツートップ

数年待ってた このテントライフ…五竜岳唐松岳

白岳に 五竜岳の影を落とす

山荘のスケールをあらためて 感じました

定番中の定番…極め鍋 (笑)

夜の帳が 白馬三山に向かいます

あの町を初めて訪ねたのは 高校1年の夏

5月4日
深夜1時過ぎ。まだ風の音が聞こえてきます。フライシートのファスナーを上げれば満天の星々。ただし、稜線上とは言え、町が近いために天の川の流れは薄墨色。月はすでに沈み、山を照らすものはないはずですが、星の灯りか町の明かりか、はっきりと浮かび上がる雪稜。
目が覚めて時計を見れば日の出時刻間近。慌てて外に出ると、半分ほど顔を覗かせた太陽。これまでにも数多く御来光を拝してきましたが、今日は濃い黄身がとろりとこぼれそうになる艶っぽい系。
北側180度は遮るものがない中遠見山。朝のグラデーションは一期一会です。日没と違いゆっくりとした時間が流れる日の出。次第に力強さを増すものの、山肌を染めることはありませんでした。
すでに白岳に向かう登山者の姿が確認できました。今朝は風が強く、武田菱上部では雪煙が巻きあがっている様子を見て取れ、皆さんの無事下山を願います。予想通り、昨夜の幕営は私達の他に、ソロの方1名。その方は「遠いよねぇ~」と話し、ピークを目指して出発されました。
小遠見から先、西遠見までは、近付いてくる五竜岳鹿島槍の南峰が見える程度で、展望に大きな変化はありません。全周囲の展望を楽しめる遠見尾根ならではことでしょう。私達のように展望を楽しむ者にとっては、どれだけ五竜岳に近付くのかと言うことになると思います。
とりあえず、西遠見山を目的とし歩き始めますが、状況に応じて、引き返し地点を決めるつもりです。8時20分、快晴の下、まだ風の勢力が続く中、出発。まずは、鞍部まで70mの下降。五竜岳に向かって続く遠見尾根に飛び込んでいくような気持ちです。テントサイトから大遠見山へのトレースを確認しており、雪庇の状況も頭に入れておきます。時折襲う15m前後の風は、長い息遣いであり、バディは身体を支えなければならない状況が続きます。万が一、倒された状況が悪ければ、滑落の危険性を含んでいます。2日に起きた身体の不調を完全に拭えていないバディ。お互いに何も話しませんが、今日のピークは大遠見山であると思いながら、山行を続けます。
途中、ピークを目指して発たれたソロの方とすれ違います。登頂経験はお持ちのようですが、無理なき山行には賛成です。
鹿島槍の南峰が見え始め、やがて、吊り尾根が双耳峰であることを示し、五竜岳の山容がぐんぐんとせり上がってきた雪原が大遠見山。山頂標識があろうと思われる場所にトレースは立ち寄らず、西遠見山方面へと続いています。その雪原で五竜岳を背にした写真を撮ってから帰ろうと、準備を始めた矢先、突風と共に言いようもない音がし、振り返れば、床面を私達に向けたテント2張が、今にも飛んでいきそうな勢いで風を受けていました。
真っ二つに折れて舞う竹ペグのロープを掴み、ちょうど手の届くところにあったストックをペグ代わりに埋め、もう1張へ。こちらは融雪によりペグが抜けたようで、1本を掴んで設置。ひとまず対応を終えた時、持ち主の方が引き返して来られ、状況を説明。大事に至らず良かったです。
武田菱と双耳峰の鹿島槍ヶ岳。これを眺めることが、今回の目的であったため、西遠見山でなく、ここ大遠見山でも大満足。そして、この2峰に限らず、爺ヶ岳唐松岳、白馬三山から続く雲の上の坂道「小蓮華山」。振り返れば、頚城山塊に北信五岳。浅間山八ヶ岳方面は春霞でしたが、この素晴らしい展望を昨日から満喫していること自体に感謝です。長年待っていた機会を上手く利用出来たと思います。
10時過ぎ、テントに戻り、2日目のテントライフが始まりました。常に五竜岳を眺め、立ち上がっては鹿島槍ヶ岳を望む。そして、山の原点「白馬三山」とともに過ごすテントライフは何よりも感慨深いものでした。
すでにソロの方は下山され、日帰り登山やテント装備の方は昨日より多かったものの、午後からは再び静寂の世界。やがて風も収まり、昨日と同じような時間が繰り返されます。
いくつかの峰を季節ごとに感じ、こうして何もしない贅沢さを味わえる今。いつまでこのザックを担いで歩けるのかは、もうしばらく考えないでおこうと思います。
今日も町の明かりが揺れ、人々の息遣いが聞こえる中、2日目の夜は過ぎていきました。


時間の流れが 目に見える 山の夜明け

今朝の鹿島槍は 灰桜

柔らかな 朝の時間を感じる 幸せ

無事の下山をお祈り申し上げます

遠見尾根とは対照的な 八方尾根

両手を広げて 待ってくれているように見えました

大遠見山に向かう ストレート区間

風の影響を受けながら 登り続けます

振り返って 中遠見山

山頂直下に4名2組の姿が 確認できます

私達のトレースは ここで充分

寄せ付けない力が ここまで届きます

ザックにも 武田菱?

大遠見山直下の雪原

この展望に満足の バンビーズ

鹿島槍の代名詞でしょう…双耳峰

3年振りの残雪期北アルプス…痺れました

さぁ 帰って テントライフを楽しみましょう

何故か ここは 夏道になっていました

初めての白馬三山とバディは 同じ夏

中遠見山から見た「五竜鹿島槍展望荘」

今回 2度目の 水作り

早くも 2日目の 陽が沈みます

マジックアワーは 浅緋色で 幕を閉じました

午後8時 西遠見山付近に 2名の登山者

5月5日
今日も1時過ぎに星空撮影。昨日は風の影響があったものの、今は無風。昨日の反省点を踏まえて、撮影を行います。何枚かの撮影を終え、再び ケルン越しに天の川を狙った時、シャッター音とともに真横一文字に走る光芒。流星だと解っていても、横に流れるのを初めて見たため、一瞬の間がありました。その間、わずか2秒。消える直前、輝きを増した流星は、その残像と驚きを与えてくれました。下山後、写真を娘に送ると「みずがめ座η(エータ)流星群」だろうとの返事でした。
風のない星降る夜。いつまでもこうして居たいと思う時間。あと数時間もすれば陽がまた昇り、GWテントライフも終わりを告げます。
今日は夜明け前のグラデーションに間に合いました。「曙」と呼び「ほのぼのと夜が明ける時間帯」を見るのが好き。町は早くも目覚め始め、水の張られた田んぼは鏡のように白く照り返しています。
残雪期、白馬エリアで過ごすテントライフは7年振り。前回は栂池高原から入り、白馬大池で3泊。白馬岳の登頂と雪倉岳から朝日岳、栂海新道へと続くなだらかな稜線、オレンジ色に染まった夕暮れが印象に残っています。
そして2022年。荒々しい岩稜が醸し出す近くて遠い世界。良く無事にここまで登山を続けてこられたものだと振り返ります。
今日の朝陽も山肌を染めることがないまま、青空を染め上げていきます。引き続き、風は穏やかで、山行日和とも言えそうですが、雪の緩みが心配され、時折、「どーん」と言った崩落の音が聞こえてきます。
下山後に安曇野の山友と昼食する予定を交わしていることから、8時30分には出発したく、いつもより短い最終日のテントライフ。
片付けをしていると早くも下山者が横を通り過ぎていきます。五竜岳を目指した西遠見山組でしょう。登頂されたかどうかは知る由もありませんが、きっと、素敵なGWだったことに違いありません。
テントを撤収すれば、まるで台座のようにその部分が盛り上がっています。3日間でおおよそ10cmは融雪が進んだと思われます。予定通りの時間に出発。下界の最高気温は27℃と初夏の陽気で、すでにここまで届いています。
何度目の登頂か判らない中遠見で、過ごした時間を振り返ります。北アルプス北部の名峰を十二分目に焼き付けたと思っていても、名残は尽きません。幸いにも小遠見までは続くこの展望。まるで出発した列車の窓から見送る人に別れを告げるかのように、少しずつ離れていく遠見尾根の帰り道。
小遠見まですれ違う人は居らず、各地で賑わいを見せているのが嘘のような静けさ。本日の核心部「二ノ背 髪」を過ぎたところの下り坂は慎重に通過しました。緩んだ雪は思わぬところで足を取られ、転倒→滑落→遭難→救助とならないよう集中を切らさずに歩きます。「一ノ背 髪」を過ぎれば広い尾根を下るようになり、遭難リスクは緩みます。そして、最後の見返り坂を一気に下れば、ゲレンデトップへと続く林道歩き。流れるBGMは山行の終わりを告げるラストソング。
初日より随分と減った感じのするゲレンデですが、それでも衝突されないよう滑走者の間隙を縫って通過し、アルプス平駅に到着。アイゼンを外したところで9割方山行は終了。初日、リフト越しに眺めた五竜岳にさえ高まった気持ちは、今では平常心を保っており、どちらかと言えば「小さくなったなぁ」と言う感想。
多少、風の影響を受けたものの、青空に恵まれた2022GWテントライフ。階段を上った先にあるテレキャビン乗車口では立ち止まることなく入っていきました。
最後に「素晴らしい3日間に感謝」。
下山後は、満腹になりすぎ、地区公園ベンチで山友と過ごす3時間。そして帰宅後に、久しぶりに寄ったお店で買った季節ものでいつもの…(笑)。


大町方面とミルキーウェイ

ケルンを貫く 流星

午前2時15分 ここは 小さな宇宙になりました

夜明けまで あと30分…静かな世界でした

曙が 白馬三山を 浮かび上がらせます

全ての音が止まったように感じました

この時間を過ごせる テントライフの幸せ

2022GW 最後の朝を迎えました

残雪期の朝は いつまでも 共に過ごせる

昨日よりは染まって見えました

しっかりと 目に焼き付けました

テントライフ 最後の食事も 五竜岳とともに

感謝を込めて 乾杯

今日 5月5日は「こどもの日」

白馬岳の雪形「代掻き馬」は 初めて見たかも知れない

展望荘は閉店 跡に残るは 台座とベンチ

何10回となく見た展望でした

下山とは 少しずつ 展望から お別れすること

ゲレンデトップは まだ向こう側

町に向かって降りる 遠見尾根

五竜岳の展望としては ここで お別れです

2日前を思い出しながら 遠見尾根を下ります

再び ビジターの世界へ

安曇野から眺めた 2022GW

残雪期の山に見えなくもない いつもの…(笑)