Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

2020年夏…新しいテントライフ

8月6~8日 しらびそ小屋
「夏が来れば思い出す♪ 雷雨の尾瀬 遠い檜枝岐村…ジアマリ w」。
昨年、ゆっくりと出来なかった尾瀬のテントライフ。今年こそはと思っていましたが、天気が読めず、最初の予定地に戻し、鹿が群れる暗闇のメルヘン街道を駐車場に向かいます。

8月6日
8月に入って明けた梅雨。しかしその後も、不安定な天候が続き、「梅雨明け十日」の言葉は過去のものになりつつあると感じる近年。今年の夏山は万一の怪我のことを考えれば、登る気にはならず、されどテントライフは過ごしてみたい。そんなことから、尾瀬沼キャンプ場を予約しましたが、3日前にキャンセルをし、テント場の混雑を避け、山に登らずとも過ごせるキャンプ場として、当初から候補にしていた「しらびそ小屋」へ予約の電話を入れました。
前回、ここを訪ねたのは、2014年11月。落葉したカラマツで赤茶けた道と夜半上空を流れる風で揺れる樹々の音。翌朝は霧氷で白くなった天狗岳と硫黄岳。そして、私達1張だけだったことが印象に残っています。
今回の山行計画は、初日、昼前にしらびそ小屋到着。午後はテントライフ。2日目は午前中に本沢温泉往復。午後はテントライフ。3日目は昼前に下山。と、まさにしらびそ小屋(ミドリ池畔)を中心に過ごす計画。そこに春先から始めた鳥撮影を重ね、新しいテントライフとします。
登山口は、稲子湯唐沢橋。「長野県内入山注意報発表中」の下に書かれた「登山者への5つのお願い」。言葉では上手く表現出来ませんが、とにかく遵守し、気を付けなければなりません。
6月に3回ほど山に入っているとは言え、車を利用した軽い行程等、片道2時間に満たない山行ばかりです。ましてテント装備を担いで登るのは、昨年9月の富士見平以来の約1年振り。2泊3日7食分の総量は22㎏。油断することなく、慎重に歩き始めます。
前回、晩秋に染まったカラマツ林は青々とし、足元の草も膝下まで延び、夏真っ盛り。林道から外れても幅の広い道が続き、横に並んで歩くことが出来ます。やがて、傾斜のきつい登り坂となり、頬に汗が流れ始め、いくつかの短い登りを経て沢音が近付き、道が細くなり始めると、樹間を貫く電子音のような響きが耳に届きます。沢の名前にもなっている「コマドリ」の鳴き声。この鳥を写真に収めることが最近の目標であり、今回の目的のひとつでもあります。ザックを下ろして、林に向き合いますが、やがて声が聞こえなくなり、我々を警戒しているかのようでした。
ここからは本格的な山道になり、今まで以上に注意が必要となります。周囲は八ヶ岳らしい苔とシラビソの森へ変貌し、掛け合いをする鳥の声に力をもらいます。一息付きたくなる頃に標識が見え、そこから小屋へは平坦な1本道。所謂、「着いたも同然」(笑) 。そして9時30分、しらびそ小屋に到着。
検温、手指消毒、マスク着用で受付手続きを終えると、早速、栗鼠達と名前のごとく緑色した水面に映る天狗岳が出迎えてくれました。今日は小屋が定休日のため、小屋番さんは下山するそうです。午後からはもう1人張られて、今宵、この界隈の人間は3人だけ。そんな八ヶ岳で過ごすテントライフは狙い通りでした。
着いた時からテントサイトに響く虫のような声。何度も何度も目を凝らし、それでも姿は見えず「蝉か?」とさえ思った頃、ようやく、1羽を写真に収めることが出来、検索してみると「ヤブサメ」。初見です。
周囲が暗くなり、月の出を前に空を見上げると、星が出ています。しかし所々に雲が沸き、天の川は狙えず、深夜、月明かりを利用した写真になりました。また、前回と同様、夜が更けるほど、上空の風が強く吹き始め、根石岳の強風を思い出しながら、初日の眠りにつきました。

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朝陽に包まれたメルヘン街道は 清々しかった
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この程度の距離が 今は ちょうど良い
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黄色く染まった頃を思い出しながら…
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沢の音とコマドリの声…こまどり沢
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今は昔…この森には 車輪が軋む音が響いていたのでしょう
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ここから八ヶ岳らしい森となります
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ほっとする森の一本道
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月と木は定休日です…しらびそ小屋
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この景色が今日のピークです
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そっぽを向いたお出迎え…
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八ヶ岳の森に守られたテントサイト
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標高2,097m 忘れ去られたような 空間です
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見ている側も 緑色に染まりそう…
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増水のため 中山峠へは迂回路で
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餌をねだる仕草が見て取れました…ホシガラス 通称 ホッシー
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仕方がないから 水でも飲んで帰ろう (笑)
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栗鼠は お構いなく森を駆けています
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雲が沸き立つ昼下がり 池の畔で ティータイム
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小屋前に一株…キバナオダマキ
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やっと現れてくれましたね…ヤブサメ (トリミング処理)
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捕食するシーンのオマケ付き…この後は動画で記録
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夕刻 硫黄岳の爆裂火口が 輝きます
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その一挙手一投足に 和みます
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今宵 この森を過ごす人間の営み
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天の川には雲が 木星には枝が…(笑)

8月7日
加藤文太郎さんをモデルにした小説「孤高の人」。その好きな一節が、初めての冬山を夏沢鉱泉で過ごし、その孤独感に苛まれながらも単独行への道を進むきっかけになったのが、本沢温泉から登り返した時に見た硫黄岳から天狗岳の稜線のモルゲンロート。いつの日か、加藤さんが眺めた光景に触れ合うことが出来ればと思い続け、ようやくその思いを叶えることが出来ました。時期も場所も異なりますが、天狗岳を染める朝の光は、いつの日も同じであると信じたい。
本沢温泉に向かう頃には曇よりとした空模様になり、雨を心配するところですが、前日に見た天気予報が晴れ模様であったため、何の心配もせずに出発となりました。こまどり沢付近で見た森林軌道のレール跡に沿って本沢温泉の分岐点に向かいます。前回は、中山峠から天狗岳、夏沢峠、本沢温泉と周回した後に通ったため、終わりが見えないと感じた道は、木道の敷かれた湿原から咲き終わったクリンソウ群生地に続きます。今回は気持ちに余裕があり、ゆっくりと森に向き合うことが出来ました。
沢が近付き、コマドリの鳴き声にカメラを持つ手に力が入りますが、そう簡単に現れてはもらえず、次の機会を待ちます。片側が急斜面になったトラバースの段差を越えた時、道を塞ぐ黒毛の動物に遭遇。すぐさま、顔を確認して、熊ではなくカモシカであることに一安心。これまでの最短距離で遭遇したカモシカは微動だにせず、しばし睨めっこ。先に動いたのはカモシカで、こちらに近付いてきそうな素振りに一瞬、焦りましたが、方向転換すると急斜面を下っていきました。続いて、現れたのが美しい鳴き声の持ち主
「ルリビタキ」。枝から枝へと飛び回る姿を追いかける楽しい時間でした。
しばらくは北八らしい森歩きが続き、下り坂がだだっ広い平坦になると松原湖と本沢温泉の分岐点となり、林道のような道になります。小屋の手前にあるテントサイトでは、片付けをしている数組の登山者。景色の良いしらびそ小屋より人気があるのは、やはり温泉効果でしょうか。
本沢温泉と言えば、「日本最高所の野天風呂」。しかし、私達はそこに興味はなく、温かい飲み物で休憩した後は、再び、今来た道を戻り始めます。そして、カモシカ トラバースでまたしても枝から枝へと渡るルリビタキに加え、雌も確認することが出来ました。
空模様は一向に回復する兆しがなく、雨を感じる気配。まだ予報を信じていましたが、小屋に近付くにつれ、何となく滴を感じるようになり、それを確証したのが、中山峠との分岐点。そして、ほぼテントに戻ると同時に、雨音がフライシートを叩き始めました。
雨はそう長く続きませんでしたが、その影響か、鳥の鳴き声は聞こえず、稜線もまた雲に隠れたままです。
前回、小屋閉めが近かった事から食べることが出来なかった「チーズケーキセット」。今回は少し過ぎたカフェタイムを小屋番さんの配慮で頂くことが出来ました。
雨なのか木の滴なのか、時々、フライシートを叩く音が聞こえます。空模様が怪しいとテントサイトは薄暗く感じます。ヤブサメの鳴き声が昨日よりはか細く響き、姿を追ってみるものの、逆光で影となった樹間では、探し当てるのは至難の業です。
夕食後、上空を吹く風が木立を揺らし始めますが、昨日ほど酷くはならないようです。寝る前に空を見上げると、予想に反して、星が瞬いているのが見え、風が雲を追い払ったのかもしれません。お陰で昨日撮影出来なかった天の川を収めることが出来、モルゲンロートとあわせて今回の目標達成。
何もないような場所ですが、ここで過ごす時間は遅いようで早い。そんなことに気付かされた2日目でした。

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深夜1時 暗闇の恐怖と戦いながらの1枚
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月明かりに浮かぶは 稲子岳
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徐々に染まる姿に 時が見えた気がします
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周りに誰も居ないのは 加藤さんと同じ
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八ヶ岳の森にも 朝がやってきました
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増水は 随分と引いたようですが まだ迂回路で…
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この道幅は森林軌道があった証
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前回 疲れた身体を目覚ました 湿原地帯
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尾瀬の木道とは 趣が異なる 八ヶ岳の森
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満開の頃 訪れるのも ありか…クリンソウ群生地
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苔に白が映えます…ギンリョウソウ
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そんなに見つめられても 困ります…
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幸せを呼んでください (笑)…ルリビタキ
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ここでもヤブサメの声が 響いていました
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北八の森を楽しむには ゆっくりとした時間が必要です
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カメラ目線で頂きました(笑) (トリミング処理)
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瑠璃三鳥の中で 最も愛らしいと思う (トリミング処理)
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控え目な登場で すぐに飛んでいきました…ルリビタキ(雌)(トリミング処理)
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濃苔…そんな森に数多くの生命
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疲れていなくても ここは素晴らしい世界
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動きに見上げれば ルリビタキ・・・テント内より
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栗鼠達のショー付き…チーズケーキセット
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栗鼠の目に映る小屋の灯り
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今宵は4張 8人と2匹…
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今年も夏の夜空を残せました

8月8日
今朝の空も曇よりとし、気温上昇を抑えています。空模様がはっきりしないとどこか不安を感じますが、今回のようなテント山行であれば、雨さえ降らなければ全てOK的になり、気持ちがとても楽になります。
テントの中で、起きようか、それとももう少し横になったままで居ようか…と正にグダグダしていると、登山者の声が何組も聞こえてきます。今日は土曜日、そして盆休みが始まったことも関係があるでしょう。
このテントサイト、今年は10張程度まで可能で、原則、予約が必要です。細長い敷地は小屋の名前にもなっているシラビソに守られ、また、登山道から一段上がった奥にあるため、通行人の視線を気にすることもありません。トイレは小屋横にあるバイオ式。水場は煮沸が必要ですが、トイレ横にあり、テントサイトから1、2分の距離です。
ここを起点に中山峠経由の天狗岳や前回、私達が行った夏沢峠周回ルート、また、黒百合ヒュッテや本沢温泉等の小屋巡りも楽しめるでしょう。この他にも、私達のようにみどり池や北八の森、そして小屋を訪ねる森の小動物たちを楽しむのも良しです。
小屋番さんによると、今年は天候が安定せず、下界は晴れでも、稜線に雲がかかりやすく、夜になると雨が降る日が多いようです。また、テントの予約は今日が6張。初日が2張、次が4張と日々2張ずつ増えています。環境もアクセスも異なりますが、熊が出没したテントサイトの当日は300張だったそうですね。昨年、そのサイトで一夜を過ごし、とても良い時間を過ごせたのも、日~月の日程だからかも知れません。今回も木~土の平日利用であり、私達の新しいテントライフには、この環境が向いています。
下山後のいつものTimeを逆算し、撤収時刻を決めます(笑) それまでは、これまで同様、珈琲を飲んだり、みどり池畔で過ごします。
初日、暗くなるまで聞こえていたヤブサメの鳴き声は、今日もなりを潜め、届いてきても風の音にかき消されそうな小さい声です。たとえ、姿を確認出来ても、陽射しの届かない樹間では、そのシルエットのみです。この点だけは、陽射しが欲しいなぁと思いました。
今回、小屋周辺で見かけた鳥は、ウソ、カケス、キセキレイ、ヒガラ、ホシガラス、ヤブサメ、ルリビタキ。(五十音順) この他にも、鳴き声だけが聞こえていた鳥が居るかもしれません。鳥図鑑は10代後半に買った年代物で、姿から鳥の名前は判別できても、鳴き声での判別には至っていません。今回、鳴き声と姿が一致した鳥もあり、今後の楽しみがまた増えました。また、今回のテントライフでわかったことは、鳥は探すのではなく、寄ってくるのを待つことです。そのためにどうすれば良いのか、今後のテントライフにおけるテーマになりそうです。
下山時、再び、こまどり沢で声の主を探してみますが、登山者の往来が多い週末では難しいようです。場所は何処になるかわかりませんが、いつの日か出逢いたいものです。
駐車場が近付くにつれ、気温は上昇し、下界の暑さが想像できます。そんな下界とかけ離れた場所で過ごした2泊3日の夏山行テントライフ。満たされた時間は、北ア縦走と遜色ありませんでした。
下山後は、オーストリアの風を山麓で感じたいつもの…(笑)

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朝ごはんは 食べやすい リゾットで…
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空が降りてきたようです
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とても恥ずかしがり屋さんでした…カケス (トリミング処理)
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やっと来てくれました…ウソ
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同じ餌なのに 大きく見えますね…コガラ (トリミング処理)
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ホッシーは 一口で パクっと
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食後のストレッチ中ですか…(笑)
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番いで仲良く
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栗鼠が居ぬ間に ゆっくりと食事タイム
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時間が止まったような みどり池でした
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親方の登場です
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池畔を走り回っては 餌場にやって来ます
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自分で餌を取ることも出来ます…コガラ (トリミング処理)
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看板通りの小屋番さんでした
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段々と賑やかになっていきます
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苔 ギンリョウソウ キノコ…夏から秋へのグラデーション
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さぁ 注意して帰ろう
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やがて 全てを覆い隠してしまうのでしょう
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その文字に ホッとする看板
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秋が綺麗けど 夏も良いなぁ…
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週末を前に 小屋番さんが戻って行きました
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往きは蕾でした…コバギボウシ
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ここまで来ると 駐車場は近い…
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バスの時刻は お間違えなく…
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また訪ねてみたいお店で いつもの…