Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

雪の湖北…スノーシューとバンビーズ

12月24日 滋賀県マキノ高原 P562

寒波の恩恵を楽しもうと雪景色に染まる湖北エリアの駐車場に向かいました。

 

関西の山に雪をもたらした先週の寒波。その雪を踏もうとホーム北部か湖北エリアを候補地にしました。前日の予報では降雨の心配があり、雨雲レーダーで降水確率の低かった湖北エリアとし、何度も登っているマキノ高原から寒風を目指すことにしました。

福井県に近い滋賀県湖北エリアは、日本海側気候で降雪量も多く、2017年2月に訪ねた際は、一晩に1mを超える降雪で、山行はラッセル祭りになりました。マキノ高原を起点として登ることが多い赤坂山の最新レポを見ると、70~80㎝の積雪量。私達が目指す寒風は赤坂山と同じく、総延長80kmに及ぶ高島トレイル上にある858mのピーク。雪の状況はそのレポから予想できます。ただ、寒風へのルートは赤坂山から周回する際の下山路として利用することが多く、この状況では周回する登山者を望めません。以前にも、寒風までトレースを引いたことはありますが、雪の状態で大きく変わってきます。例えピークを踏めずとも、その行程を楽しむのも雪山の魅力。そんな思いを持ちながら、駐車場で準備を始めます。

出発点「マキノ高原キャンプ場」から一面の雪景色。圧雪された道をしばらく歩いた後、早速、スノーシューを装着します。雪はまだ身体を支えてくれるほど締まっておらず、ゲレンデ跡に取り掛かると、スノーシューでも10cm程、時には膝下まで沈み込みます。トレースは深さ50㎝ほどの壷足とスキーの2本ライン。その上を歩けば、凸凹と歩きづらく、新たなトレースを引きます。今週、緩んだ寒気は湿気を含んだ重い雪に変化させ、踏み込むには力が要ります。気温4℃、曇り、無風。ルート序盤の関門、ゲレンデ跡の直登にかかれば、袖を捲った半袖状態でも汗が止まりません。

前回は、2018年1月にバンビー4で訪ねました。今日よりも大雪で視界も限られた降雪の中、スノーギアの訓練をゲレンデ跡トップまでしたことが思い出されます。

ゲレンデ跡トップで振り返って見るキャンプ場や集落の田畑は、一息つかせる景色です。先週訪ねた精霊の森とは違い、人里の温かみがここまで届きます。更に進むと、本来のルートとは違う冬道。所謂、ショートカットの直登トレース。そこを過ぎてようやく樹林帯に入れば核心部。まず、トラバース道で分岐を目指すものの、途中で行く手を阻まれて迂回の直登。滑る雪の急斜面を滑落しないようにスノーシューを蹴り込みます。

分岐点合流からは、つづら折りで高度を上げるルート。雪の重みで道を塞ぐ枝に迂回の直登が何度も続きます。湿気を帯びた雪は時には崩れ、急登にかかる力と共に流していき、下りの大変さが頭を過ります。

出発時間が予定より遅くなり、また、湖南エリアに雨雲が近付いた知らせを受け、当初予定していた寒風は無理と判断。562ピーク直下にあるメタセコイア並木等の好展望地を本日のピークとしました。バディもそう思っていたようで、その場に応じた対応は特に雪山では重要になってきます。私達にとってこれは「撤退」ではなく「変更」です。

2㎞以上も続くメタセコイア並木や2つの谷に広がる山麓の集落、そして、白く染まった田畑に山々。低山故の展望と曇り空であるが故の美しさ。この景色を見ることが出来ただけで、感謝です。

久しぶりの全身運動で疲れた筋肉は、滑落したくないと言う精神力で補い、特に最後のトラバース道は慎重に足を運びました。そして樹林帯から抜けたところで広がるキャンプ場越しの里。ここから見る風景にはいつも自然に足が止まり、緊張が一気に緩みます。

再び下りにかかると、ポツリポツリと雨。多くはありませんが、止みそうにもありません。予報より早まった感じで、その後の雨足の変化を考えれば、変更は功を奏しました。

下山後はクリスマスイブっぽい、いつもの…(笑)

 

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道の駅「琵琶湖大橋 米プラザ」から望む比良山地「打見山」

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延長約2.4km 約500本の「マキノ高原 メタセコイア並木」は 早朝がお薦め

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稜線は見えていました…マキノ高原キャンプ場

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まずは ゲレンデ跡を目指します

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振り返ってみる 里の景色がお気に入り

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ショートカットの圧雪直登は スノーシューが得意とするもの…(^^♪

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迂回の湿雪直登は スノーシューが不得意とするもの…(^^;

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樹間に見える 展望にほっと一息

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琵琶湖畔が見えれば 良しとしましょう

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全身運動の直登は このルートの面白さ

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ルーファイは 自分の責任で行います

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針葉樹林帯が 寒風への入口になりますが 今日は挨拶だけで帰ります

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クリスマスイブに相応しい 「ホワイト メタセコイア並木」

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これより先は危険な「好展望地」

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スノーシューがなければ 辿り着けない 山行でした

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ホワイトロードを飾った「栗のデニッシュ」で エネルギー補給

f:id:Regulus0821:20201226081347j:plain湖北エリアの冬景色は どこから見ても美しい

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2020年も無事下山を目指して バンビーズ

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こんなルートが続けば 楽なんですが…

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でも 直登ルートの下りは 必ず 現れます…

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この展望で 今日もほっとする時間です

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帰り道 トレースを引けば この通り

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好展望地までは しっかりトレースが 引けたと思います

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本日のピーク(手前の白い広場)の奥に寒風の稜線

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ホワイトクリスマス…サンタさんが微笑む いつもの…(笑)

関西冬山始動…精霊の森へ

12月16日 奈良県 明神平
初めて雪の核心部を通り抜けて精霊の森へ続く駐車地に向かいました。

今冬一番の寒波に見舞われた関西。平地でも初雪の便りが届きました。山間部では雪が積もり、霧氷も咲き誇ります。比良、鈴鹿、大峰。我が家から2時間圏内全てで冬山を楽しめそうです。しかし、冬型気圧配置が続き、風と雪の舞う厳しい予報。青空が見込めず展望も楽しめないとすれば、目指すは、精霊の森「台高山脈のオアシス・明神平」に決定です。
ここは駐車地へ続く林道が凍結すると進めなくなる車が続出するため、積雪のない時に訪ねていました。
今回は雪になると予想し、先週冬用タイヤに交換。それでも予想より早く集落を過ぎた辺りから白くなり始めると、4WDとは言え、落枝とあわせて注意が必要でした。
駐車地には先行車2台、バイク1台の計3組。雪が降ってきたため、ザックカバーとアウター。また、しばらく続く林道が凍結している可能性もあることから、チェーンスパイクを装着しての出発。気温は-1℃。
歩き始めてすぐにテント装備の方とすれ違い、残り2組。普段なら登らない天候ですが、ここはこの空模様だからこそ楽しめる世界があるため、久しぶりに履く冬靴の重さも期待と雪景色で苦になりません。
林道から登山道に入り、すぐに現れる第1、第2徒渉点。この時期は水量が少なくチェーンスパイクを付けていても難なく通過。それよりも、うっすらと積もった雪が岩や木の根を覆い隠し、序盤はそちらに注意が必要でした。
第3、第4徒渉点を通過し、明神滝が望める明神谷の入り口に到着。少し道から逸れてみれば、円形ステージを思わす明神谷は、滝から流れ落ちる水音と足元を流れる川音が重なりあい、霧氷と氷の芸術が見事な演出をしていました。やがて巨大な氷柱となるツララを右手に、ここからは巻くようにして高度を上げ、木橋を渡ればいよいよ精霊の森に入ります。
上空を流れる風の音は森の声。いつもは明神平で感じる風が、時折、谷を吹き上がり、北の国へと世界を変えます。しかし、それは一時のことで、その殆どは「動」を感じない森を歩きます。四郷川源流域を前に1名の方とすれ違い、もう1名は別ルートで下山したとお聞きしました。これでここから先は我々2人の世界になります。
水場の手前、植林帯で防風対策。関西圏では最高レベルの防寒対策を講じ、明神平の風に向けてミルキーウェイを進みます。取り替えたばかりの手袋は、ザックの中で冷えきっており、指先がジンジンするため、手袋の中で握りしめ、体温で指先を解します。冬山感覚に気分は高揚します。
精霊の声は一段と近付き、谷からの吹上も直に感じるようになれば、いよいよ、明神平への二股に到着。森を抜ける前、ミルキーウェイに浮かぶ シンボルツリー「孤高の貴婦人」とご対面。その美しく、凛とした姿に畏敬の念を抱き、しばし佇みます。そして、ミルキーな世界に包まれた「風の明神平」。粉砂糖をまぶしたような凍てつく小屋は見る者に冷気を送り、閉ざされた展望はこの世の果てを思わせ、これより先は立ち入ってはならない。そんなメッセージを感じます。風は10mを超え、体感温度は推定-15℃。ここは関西・奈良の1,323m。寒さからではなく、久しぶりの冬山に痺れました(笑)
長居は無用であるため、風を楽しんだ後は、再び、精霊の森へと戻り、帰途につきます。
一瞬、視界が開け水墨画の屏風絵が目の前に広がる展望は、精霊からの贈り物。そして、駐車場手前の林道で現れたブルーアイは、今日も見守られていたことを感じた出来事です。ただ、別ルートで下山した方の車が停まっていたことは唯一の気掛かりでした。
下山後は、町家を利用した盆栽カフェが、冷えた身体を温めるいつもの…(笑)

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いよいよ森への旅が始まります
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しばらくは四郷川沿いの道…第2渡渉地点
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油断禁物の 薄っすらと積もった「石の道」
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明神谷は 高低差十分の巨大劇場
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やがて 巨大な氷柱へと 成長することでしょう
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時折見せる 色を失せた世界は 美しい
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この橋を渡れば 山が変わり 世界も変わる
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今 このベンチは 座れない…
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こんな日は 何か楽しい 気分になります
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つづら折りを重ね 精霊の森に近付きます
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ミルキーウェイでも 微妙に光の変化があります
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冬の小川は 静かに流れる 黒い帯
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空が広がれば 明神平まで あとわずか…
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ミルキーウェイの谷は 精霊の森
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ここは 精霊の森 真っ只中…
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明神平への入口…まっすぐも 明神平(笑)
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ランドマークの小屋とともに…「孤高の貴婦人」
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今日も美しいミルキーウェイ…
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風の方向と強さを 体現してみました(笑)
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また 次の機会まで…
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いきなり全開でした…関西の冬山
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心地良い風の叫びは 冬山日和
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どこまでも続く精霊の森は 光があれば 現れない
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とは言え 次は 光溢れる 森をお届けしたい…(笑)
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晴れた日は あの稜線から 明神平を目指します
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林道を前に いつもほっとする瞬間
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ブルーアイ…冬山の守り主
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季節は秋へと戻って いつもの…(笑)

2020 ラスト テント ライフ

11月23~24日 奈良県弥山

11月23日
3連休の最終日。夜半の天気回復を狙って10kmにも及ぶ山道国道を駐車場に向かいます。

いろんな出来事があった2020年も残り1月余り。今年は山行の回数もぐっと減り、来月もテント泊の予定はなく、これが今年最後のテント泊山行。パッキングをしながら振り返ってみれば、8月に続く今年2回目のテント泊です。
行先は2年前に訪ねた大峰山系弥山。ここは国道の冬期規制直前・解除直後に行くことが多く、私達にとってはホーム的テント場。営業小屋もありますが、休業時に行くため、水、食料などを担ぎ上げねばならず、それ故、静かなテントライフを過ごせます。
前回はミルキーウェイの初日と青空に輝く霧氷の2日目。そして、決して忘れることの出来ない富士山の遠望。今回も予報は全く同じで、奇しくも同じ日程。違うのは、霧氷ではなく冬枯れの森。冷たい風が吹く駐車場も前回同様で、時計の針が巻き戻されたかのように、ラストテントは始まりました。
近年はライトなテント泊や山行が増えていますが、私達は昔ながらの重装備派。夕食の鍋料理に翌朝のマフィンセット、数多くのインスタント飲料とおやつ(笑)。そして、それに要する水。総重量は30㎏+カメラ一式となります。
2年前も担ぎ上げていますが、今年は山行値が低く、年齢も2つ重ねています。全く不安がない訳ではありません。ただ、熟知したルートを含め、経験で補えると思っていました。
このルートは大きく3区間に分けられます。駐車場から大峯奥駈道出合までの「尾根直登」区間。出合から聖宝ノ宿までの「稜線なだらか」区間。聖宝ノ宿跡から弥山小屋までの「つづら折り」区間。直登の疲れを稜線で癒し、最後の登りに向かう。時間的にもほぼ等分でその区切りが休憩ポイントになります。
いつもよりゆっくり登ってみても、段差の多いこの区間では息が早くなり、身体はすぐに暖まります。腿を上げた時、カタッという何かが落ちる音と共に足元を見れば、鞄から落ちたカメラが登山道を転がり始めています。慌てて後を追いかけたものの、間に合わず、谷を10数m転げ落ちてしまいました。何とか止まり、逸る気持ちで戻ろうとするところ、バディに注意を受け、慎重に下ります。奇跡的にも異常はなく、モニター部分の保護カバーが少し傷付いた程度で済みました。これまでも鞄から落ちたことはあり、今回の件で万全の対策を講じねばと肝に銘じました。
やっとの思いで出合に到着。風当りが強いここは、倒木の陰に座って風を除けます。霧氷の季節になれば、ここから目を楽しませてくれます。今日は落葉の茶色と苔の緑が美しい冬枯れの一本道。時折、稜線を雲が流れるのか、ミルキーな世界に包まれる森は、修験者が歩いた奥駈道らしく、神々に試されているように感じます。聖宝ノ宿跡で十分な休息を取り、「聖宝八丁」最後の登りにかかります。駐車場の方が話していた「霧氷があるかも」については正解だったかも知れません。ただ今は、跡形もなく消え、その滴が頭上に襲います。登る度に激しさを増し、遂には雨具を羽織らねばやり過ごせなくなりました。濡れて傾いた階段に、冷たい風が吹く展望台。正しく試練の登りが続きます。ただ小さな一歩でも続ければ目的に近付き、今年もミルキーウェイに包まれた三角屋根に出迎えられ、苔のテントサイトにザックの花を2輪咲かせました。
設営を終え、一息ついてから小屋周辺を散策。小屋前にテントはなく、冬季小屋も無人。時間的にも今夜は私達だけのようです。上空を過ぎる風の音は空気を揺らしますが、テント周辺はトウヒやシラビソに守られて無風。夕食の鍋が完成した午後6時、気温は3.8℃で思ったほど寒さは感じません。逆に、温かい鍋料理で上着を脱いだほどです。
寝る準備を整えた午後8時。空の様子を見上げてみれば、朧月と激しく流れる雲。一瞬の雲間に見える上弦の月が美しい明かりを放ち、次の出番を待っていると、まるで刷毛で掃いたかのように雲が追い払われ「東の星空」を与えてくれました。山をやっていてこの瞬間だけは、何度遭遇しても感動します。感謝です。
さて「ぼっち散歩」の始まり。上弦とは言え、月明かりに照らされた夜道に文明の灯りは不要です。風に注意をしながら国見八方覗に立ち、眼下を流れる雲と上空で輝く星を眺めれば、今自分が立つ世界は現世なのかと感じます。現実の香りが全くありません。そして、遠く山並みの向こうで生活する明かりが灯台のように自分を照らしてくれます。そんな世界を1時間ほど楽しんだ後、明日への期待を膨らませ、風の音をBGMとして眠りにつきました。


全ては この道から始まります

出合まで4合目の札…有名処「ブランコの木」

この谷をシャクナゲの向こうまで滑落

美しくもあり 厳しい 出合への道

冬枯れの道は ミルキーウェイがよく似合う

ここも 精霊の森…聖宝ノ宿跡

弥山名物 「試練の木階段」

現世と黄泉の境界線…第1展望台

最後の階段は いつも活力が湧いてきます

ミルキーウェイに 苔が光って見えます

長い道も 必ず 終わりを迎えます

前回は雪に覆われたテントサイトでした

ザックカバーが 苔と同期しています

2020 ラストテントライフの始まり…

まずは 心と身体をほっこりさせましょう (笑)

ここは 悠久の時を感じる道

足元では 花が咲いたように思えました

ミルキーな世界を楽しめるのも テントライフの良さ

この木の成長を見守りたいと思います

冬のテントライフは やっぱこれでしょう…〆はうどんでした

オリオン座が東の空に…冬の到来です

月明かり 肉眼でも この程度の視界です

テントの灯りは 我が家の温かみ

町の灯りが 星空を襲います

月夜のぼっち散歩は 時間が早回し

11月24日
目が覚めると風の音は聞こえず、時計を見れば、日が変わろうとしています。フライシートから顔を覗かせば、予想通りに満天の星空。まだ月は沈んでおらず、もうひと眠りするか思案するも、身支度を整え、地上の宇宙に躍り出ます。オリオン座は高く上がり、冬の大三角形はもちろん、遮るものがないここでは、冬のダイヤモンドも軌跡を記せます。揺らぎが少ない今夜は星の輝きが一段と美しく、アンドロメダ銀河の渦もより楕円に近く写ります。寝る前には姿を隠していたお隣の八経ヶ岳も月明かりに浮かび、右肩越しに見える小さな灯りは太平洋沿岸の町でしょう。反対側、大普賢岳ファミリーも特徴的な稜線を浮かび上がらせ、こちらも遠く町の灯りが続いているのは、伊勢湾沿岸になります。
昨夜と違い風のない静かな夜。「自分の鼓動が聞こえる」とはこのこと。暗闇、恐怖、静寂、孤立、聖地…。今のこの状況を言葉で表せば、人それぞれでしょうが、僕にとってこの場所、この時間は「ワンダーランド」。
遠く大台ヶ原ドライブウェイを走っている車のヘッドライトとブレーキランプの灯りがはっきりと見え、そんな灯りが自分と現実を繋ぎとめる証になります。
いつしか時が経ち、小屋前の鳥居をくぐる頃には、濃いオレンジ色をした上弦の月が沈もうとしていました。夕焼けは好天の兆し。今、目には映らないけど、写真では月焼けになっています。そのわずかに思える月明かりが消えるだけで、西の星空は輝きを取り戻し、天の川の畔が浮かび上がりました。そして、一筋の流星…。
「テントに戻るのが惜しい」
前回と違ってさほど寒くはないため、その思いは強くなりますが、夜明けに向けてしばしの休息をとります。
再び、フライシートから顔を覗かせば、またしてもオリオン座。太陽が昇る熊野灘を中心にオレンジの帯が地上と空を分け隔てます。その光が届かぬ天上へと続く色の階調。この景色を見ることが許されたことに感謝です。東の境界には、前回は「偶然」、今回は「必然」と思っている富士山が約290 km先に浮かんでいました。その左には、南アルプス、中央アルプス、御嶽山から始まる北アルプス。日本の屋根が一望です。刻一刻と変化する空は星の瞬きも数えるほどになり、熊野灘に浮かぶ雲の上から御来光。加速度的にその勢いは周囲の山々を照らし、新しい一日の始まりを世に知らします。陽が高くなるにつれ、影となっていた峰々は青い山脈となり、その重なりはこの地の神々を感じさせるものです。
朝食を終え、撤収準備をしていると小屋の方から人の声。本日一番乗りの登山者です。我々も人間界に戻る時間となりました。晴天の下、気持ちも軽やかに歩けるのは素敵なことです。しかし自分は、今回や前回の大山のように劇的な変化の瞬間を垣間見ることが一番。それと出逢えた今回の山行は、オーバーウェイトで苦しい初日も含めて、充実したものになります。あとは、転倒することがないよう確実な歩行を心掛けるのみです。
第2展望台で出会った方に富士山が見えることを伝えると、えらく感激されていました。やはり、どこから見ても富士山は日本を代表する山です。その後も、10数組の方とすれ違いました。テント泊らしい方も居られます。皆さん、素晴らしい一日になったことでしょう。
出合への稜線で牡鹿にコゲラ、ヤマガラなどの野鳥、そして珍しく狐を見かけました。葉を落とした冬枯れの道は動物の営みに触れる機会も増え、また、展望も良くなります。
出合からの下りは、カメラが滑落した急坂。今度は自分が落ちないよう疲れた足腰を奮い立たせ、最後の一本道まで戻りました。そこから見上げる稜線は、1時間ほど前に歩いた道なのに、遠い記憶の中にあるかのような世界。ただ、充実した気持ちとヘトヘトになった筋肉は確かに自分が歩いたことを感じさせます。国道に出る橋を渡って山行は終了。2020年テント泊は数より質の1年だったと思いたい。
下山後は地元にてほっと一息のいつもの…(笑)


大台ケ原越し 熊野灘に船の灯り

上弦の月が 静かな夜を 照らします

今回2回目のぼっち散歩…随分 暗くなりました

松阪方面の灯りでしょうか…国見八方覗

町の灯りに浮かぶ 大普賢岳

弥山小屋の右斜めには アンドロメダ銀河(トリミング処理)

魂が消えいるような 月入りでした

今宵も 満天の星が見守ります

東雲…テントライフに許された時間

今回も 290km先の霊峰に遥拝

曙に浮かぶ 中央・南アルプスと大普賢岳ファミリー

世界が戻る 御来光

新しい1日のはじまり

御嶽山 乗鞍岳に続き 槍穂高連峰 そして左端には 笠ヶ岳

谷を埋める雲海も この季節ならではの景色

少しだけ 霜に染まりました

今朝は 空と同期した マイハウス

「お腹が空いたぁ~」

至福のひと時に 乾杯

熊野灘の揺らぎが ここまで届きます

大峯奥駈道山上ヶ岳・大普賢岳・行者還岳

昨日 歩いた尾根と稜線 その奥に 大台ケ原

さぁ 下界に戻る時間です

第2展望台にて 定番の写真

忙しなく愛嬌を振りまく…ヤマガラ (トリミング処理)

国見八方覗から落ちる 「冬枯れの滝」

「また 次の機会に 会いましょう」

影が美しい 冬の稜線歩き

威風堂々 ここでは 我々がビジターです

幹を打つ音が 森に響きます…コゲラ (トリミング処理)

奥駈道から離れ 駐車場へと向かいます

同じ道だけど 目指す方向が違えば 気分も変わります

甘さが筋肉を和らげる いつもの…(笑)

アートと共に 秋ハイク

11月4日 奈良県曽爾村
ホームを予定していた平日は、予定を変更して紅葉の渓を抜けた先にある村役場の駐車場に向かいました。

地元のテレビ局が夕方のニュースで特集を組んだ「MIND TRAIL 心のなかの美術館」。コロナ禍の現代において、自分の足で歩き、アートを通して身体と自然を感じて欲しい。その思いをコンセプトに自分が居る場所=心の中に美術館が作れるのではないかと、アーティストが自然や大地と共に展示する芸術祭(HPより抜粋)。
会場は奈良県の吉野・天川・曽爾、3ヶ所の広大な大地。
ホーム鈴鹿のルート本谷を延期した空白の平日、自宅に近い曽爾会場を訪ねてみることにしました。
会場までのアクセスは、紅葉の名所「香落渓」を抜けていきます。室生火山群の柱状節理と青蓮寺川が作るV字谷。車窓には朝陽を受けて色鮮やかに染まった樹々が次々と広がります。週末は渋滞する道路も、今日は路肩に停車し、地元の秋を堪能できます。「自然と生活」が調和する地元に感動です。
と、本題のハイキングを前に、思わぬ秋のプレゼントをもらい、予定は大幅に遅れることになりました(笑)。
スタート地点は曽爾村役場。しかし、大々的にPRをしている訳ではなく、TVで紹介された作品が目印程度になっています。まずはガードレールに並んだ作品が青空に映えます。風に揺れる様が気持ちをふんわりとさせます。その道の反対側には、玄関を意味するような作品。そこをくぐり抜けていくのでしょうか。
と言うのも、今日はルートから少し離れたジビエ料理を出すお店でお昼を考えていたため、紹介された順路とは反対周りで歩きます。
田畑が広がる長閑な田園風景。普段は車で通り抜ける道を歩けば、新たな発見もあります。この辺りは、ススキで有名な曽爾高原を初め、室生火山群が生んだ鎧岳・兜岳・屏風岩の見事な柱状節理が見られ、今日はその淵を紅葉で着飾っています。それらの山々を背景に突如として現れる作品。モニュメント的な作品もあれば、メッセージ性の強いものもあり、また、マップに紹介されていない作品が展示されていることから、オリエンテーリングのポイントを探すような楽しみも加わります。
インタビューでプロデューサーの方が「周っていく内に、自然にあるものが作品に見えてくる」と話されていました。これまでも数々の現代アートの作品を鑑賞してきましたが、今回のような自然の中に配置され、ハイキングと調和する作品は初めてです。六甲山でこうした企画をされていることはこのブログで知っていました。しかし、実際に自分で歩いて作品と向き合えば、建物内や狭い空間に集められた物とは違い、大きな自然の中で一体感を保とうとするも不協和音を奏でる立体的なメッセージ。風、匂い、気温、道の高低差、山々のグラデーション。自然の中の不自然さ…。そして、作品の持つ力。これがこれまでになく、一番感じたことでした。率直に「来て良かった」です。
ただ、予定していたお店は営業しておらず、行動食も持参していなかったため、途中から空腹感との闘いにもなり、スタート地点に戻る分岐で撤退 (笑)。全体の1/3を周りましたが、8㎞ほどのハイキングでした。
役場が近付くにつれて女性ボーカリストの歌声が聞こえてきます。今回の芸術祭に合わせ村独自の企画で開催された「奥大和 ユニークベニューコンサート」でした。今日だけ役場前の「そにのわの台所」で開かれ、最後の曲「WHAT A WONDERFUL WORLD」は今日のハイキングを締めくくるぴったりの曲でとても感動しました。もし、来年もこの企画があれば、全ての会場を巡ってみたい、そんな思いを残し、以前から気になっていた蕎麦屋さんに向かうところは現実的…(^^; 昼食後は元々予定していた地元のカフェを目指すものの、祝日営業の振替休日のため、途中にあった青蓮寺湖を見下ろす高台に建つカフェでいつもの…(笑)


岩と緑と紅葉 そして 秋の青空…香落渓

ハイタカ VS カケス 貴重な瞬間でした

天を指す 全山柱状節理「鎧岳」…山頂に立てます

作品でありながら 来場者と他の作品を巡ります

木々の合間に鎧岳…迫力がありました

コース終盤の作品からスタート…屏風岩とリンクしているよう

収穫の終わった田園…中央には兜岳

作品名「道標.8」…夕陽か朝陽か

空腹感を癒してくれる景色に感謝(笑)

阿吽の呼吸が空に揺れます

ハイキングコースと言うよりも 地元を歩くルートです

この作者の作品は どれも景色に溶け込んでいました

曽爾高原に俱留尊山…曽爾村を代表する山

桜の季節も素晴らしい屏風岩…稜線を歩けます

何故でしょう ここにあることで 意味があるように思えます

作品は 景色ではなく 訪れる人に向き合います

本日 一番の気になる作品…

反対周りなので 指す方から 歩いてきました

振り返れば 紅葉の屏風岩…

何かを支え合う「道標」

本日 一番のお気に入り

ススキの影響か 兎が餅つきをしている気がしました

本日 最後の作品…結構なインパクト です

帰り道 朝とは違う 光の香落渓

春には野鳥観察の地 青蓮寺湖

ちょっと固めのプリンで いつもの…(笑)

関西バンビー3…晩秋の山さんぽ

11月8日 長野県高見石
カラマツの黄葉が山肌から道路脇へと移り変わるメルヘン街道を、本来なら昨日来るはずだった駐車場に向かいます。

山仲間「バンビー4」のソーシャルディスタンス テント泊を白駒池畔で計画しましたが、7日は雨予報のために中止。高見石までの日帰りハイクとしました。行程は「麦草峠~丸山~高見石~白駒池~白駒の奥庭」の周回ルート。安曇野の山友は雨の影響で8日の参加が出来なくなったため、バンビー3で出発です。標高1500m前後でカラマツの黄葉はピークを迎え、黄金色に輝く山肌は、関西一円で見ることの出来ない光景です。
8時前の公共駐車場は8割程度の利用状況。ひと月前の紅葉シーズンと比べれば、八ヶ岳は眠りに近付いてきた感じがします。臨時休業の札がかかった麦草ヒュッテ周辺は、晩秋の朝にひっそりと溶け込んでいました。まず歩く丸山ルートは21年振り。ブログなどを拝見し、美しい苔の森を歩ける知識と高見石小屋へ向かう下り坂が記憶にあるだけです。
昨日の曇天とは対照的な秋晴れの今日。昨夜の雨は森を潤し、森に射し込む朝陽を我々に見せてくれます。幾多の苔が地表を覆い、そのグラデーションはまもなく真っ白な雪に隠されていくのでしょう。
針葉樹と倒木と苔。周りを見渡せば同じように見えて、決して同じ景色はなく、どこまでも続く世界が樹林の間にあるように思えます。
直登とつづら折りを抜け、空が近付いてくれば、ポケットパーク「2,329m丸山」に到着。
特に展望がある訳ではありません。ここは「登頂」という一区切り。そこから真っすぐに下り、白駒池からの道に続いて渋の湯からの道と合流すれば、タールの匂いがする高見石小屋に4年振りの到着。
偶然にも昨夜、山友「奈良の娘」が泊まっており、今日はニュウを目指していることをSNSで知りました。白駒池か駐車場で逢えることに期待です。娘によると、昨夜の泊り客は9名。娘達も含め、その方々は出発をされており、小屋番さんが朝の清掃か消毒作業をされている静かな小屋周辺でした。
高見石まで登ると、入れ違いに先客が下り、我々3名の貸し切り。そこからの景色は、紅葉の喧騒を終えた緑豊かな北八の森に佇む紺碧の泉「白駒池」が我々を見つめているように感じます。岩陰で風を除ければ、暖かな陽射しが身体を包みますが、触れる岩の冷たさには冬の足音が聞こえてきそうです。
森の向こうに見える稜線上の小さなピークはニュウ。今日はそこからの展望も素晴らしいことでしょう。そこに娘が居るのか、向かっているのか、それとも森を下っているのか。そんな思いが過ります。
ニュウから駐車場へ戻るには、白駒池畔を周るルートになり、我々は北側ルートを予測し、途中の東屋でティータイムを兼ねて娘を待ちます。圏外のため、情報が入らぬまま、駐車場へ戻る時間になり、その途中でまだ我々の後方に居ることを知り、安心して駐車場で待てます。
数名の観光客とすれ違いながら白駒池駐車場へ下り、分岐を左へと進むと、苔の森とは対照的な明るい「白駒の奥庭」に出ます。初めてここを訪ねた時の感動は今も覚えているほど、大好きな場所。続く、「黒曜の森」は名前の由来であろう黒曜石を、まるで宝石探しのように足元を注視しながら進みました。そして、三角屋根が再び見えると、駐車場まであとわずか。半球体の茶臼山縞枯山も出迎えてくれます。
駐車場に戻り片付けをしていると、森の中から突然現れた感じで娘が飛び出してきました。聞けば、追い着くのではと森を駈けてきたようです。コロナ禍で久しぶりの再会にまずは喜び合い、そのまま一緒にお昼ご飯を食べることにしました。次の再会を約束し、お互いの帰途につきましたが、我々は顔見知りのパティシエが作る至極の一品でいつもの…(笑)


南八ヶ岳の名峰とともに…蓼科湖

目覚めた森は 季節を問わず

苔ロード…これぞ 北八の森でしょう

苔にも 針葉樹の森があることを 知りました

先端がしっぽのように曲がる「チシマシッポゴケ」…丸山の森

目に見えない世界が きっとある…

悠久のときを感じます

光が見える 森の朝

丸山が近付いてきたことは 自然に気付くでしょう

光のシャワーが 降り注ぎます

足元の 小さな世界は 忘れずに

天を見つめるブルーアイ…白駒池

静かに並んで…バンビー3

深淵な雰囲気が漂う 晩秋の白駒池

森の向こうには 北八のシンボル 蓼科山

娘はあの頂にいるのだろうか…ニュウ

頂は白くなっていました...中央アルプス 木曽駒ケ岳

苔の壁が続く 白駒池への道

駐車場に戻るまで 苔の世界は続きます

森を貫く木道は 池畔の周回ルート

人の気配を感じない桟橋は いつまでも居たい

木々が白く見える晩秋も ここの魅力でしょう

森が明けると 秋の空…白駒の奥庭

矢じりの原料「黒曜石」…黒曜の森

始まりの案内板は 終焉のお知らせ

カラマツが燃える 山麓の秋

開放的な景色を前にして いつもの…(笑)

GoTo温泉…その前の紅葉狩り

10月25日 鳥取県大山
秋晴れか、ミルキーウェイか…。出発時間を迷いながら山麓の一本道を駐車場に向かいました。

GoToキャンペーンを利用し、鳥取県の中央に位置する三朝温泉を予約したのは8月。出発が近付くにつれ、大山の紅葉便りも届き、初日の天気次第で予定に組み込むことにしました。前日、冬型気圧配置となり雪マークが表示。念のため、チェーンスパイクを持参し、万が一に備えました。当日は高気圧が張り出すものの、朝は雲に覆われ、次第に晴れ間が広がる模様。北側に日本海を擁する独立峰「大山」は、山頂付近の雲が取れにくく、「下山すれば晴れていた」は大山アルアル。5年前の8月下旬に登った際も、9合目からはミルキーウェイでした。昼頃の登頂を目指せば、青空と展望が約束されていますが、本来の目的「温泉三昧」に影響が及び、下山開始10時をリミットとし、早朝から満車となった南光河原駐車場を出発しました。
中腹の紅葉が見頃を迎えているため、家族、友人、単独等、大勢の登山者が夏道登山口に向かいます。階段、木道を始め、良く整備された登山道と日本海を見下ろす山頂からの展望が地元だけでなく、多くの人が訪れる理由でしょう。大山の山頂(剣ヶ峰)付近は崩落が著しく、立入が禁止されており、東西にピークとなる小屋を目指すルートになっています。前回は5合目付近から行者ルートで下山する一部周回ルート。今回は最短の夏山ルート往復で秋の大山を愛でます。
出発時、河原から見上げた稜線は濃い雲が纏わりつき、そう簡単に取れそうにありません。晴れることを信じて、しばらく続く階段に意識を集中します。そんな中、時々響く大山寺の鐘の音。秋の深まりにシンクロします。6合目付近(正確には8合目?w)まで続く階段は身体をすぐに暖め、ブナ林を抜けるひんやりとした風が心地よく感じます。次第に頭上を飾るブナ等の木々は色付き始め、立ち止まる場面が増えてきました。とは言え、陽射しがないため、今は輝きに欠け、下山時に期待です。
「抜きつ抜かれつ」。競争している訳ではないものの、そんな状況下で改修された6合目避難小屋を過ぎ、何となく落ち着き始めた7合目。しかし、周囲はまだ霧に包まれたミルキーウェイの世界。晴れる前に感じる動きはありません。
ダイセンキャラボクが広がる木道に入ると、やはり風が通り抜け、薄手の防寒着を羽織ります。空を見上げては予兆を探りますが、全くの気配なし。今回も下山途中で晴れるのかとほぼ展望は諦め、とりあえず、前回に寄らなかった石室まで行くことにしました。9合目経由で山頂を行き来する人の声が霧の中から届く中、本日のピーク「石室」で写真を撮り、「さぁ帰ろう」と思った矢先、これまでも何度か現れては消えた「朧太陽」に違う力強さを感じます。まだ下山時刻まで余裕があることから、山頂へ向かうことにすると…
「来ました!」
何度、遭遇してもこの感動は一期一会。雲の波が山肌を打ち、稜線を越えては消えていきます。まるで、荒くれる冬の日本海のようです。ダイセンキャラボクの小さな葉は1枚1枚が煌めき、そこは静かな海。静と動が交差する一瞬として同じ景色のないダイナミックな世界に包まれ、ただただ見とれてしまいます。そして、再び訪れる静寂のミルキーウェイ。山で味わう感動の中でも、最高峰だと思います。
9合目からの道と合流してからは、青空の時間が長くなり、東へ真っすぐ伸びる海岸線と「弓ヶ浜」の弧。そして、1400m辺りで錦秋を迎えた見事な裾野が視界に広がります。
工事で制限されていた避難小屋付近も解除され、新たに設置された木製デッキから眺めた剣ヶ峰へ続く稜線は、まだ雲が動いていました。今この時しか見ることが出来ない景色に神秘的な雰囲気を感じ、その稜線の全容は、真っ白に染まった冬、青空を背景に拝ませていただこうと思います。
下山時、ついさっきまでミルキーウェイだったことを知らぬであろう登山者が列を作って山頂を目指し、それはこの後も延々と続きました。また、予想通りに陽射しを受けた赤や黄色の葉は日本の秋を代表する登山道となり、これから見頃を迎える4合目まで目を楽しませくれました。
下山後は、大山アルアルではっきりと姿を現した大山を見ながら、温泉地へと向かい、その手前でほっと一息のいつもの…(笑)

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予想通りの雲…南光河原駐車場からの三鈷峰
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まずは準備運動…1合目へ続く階段
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今年初めての紅葉山行
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下界は秋晴れ これからの道は ミルキーウェイ
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「駄目だこりゃ(笑)」…石室への道
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この朧太陽が 始まりの合図でした
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一期一会とは このことでしょう
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木道が青空とミルキーウェイの境界線
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天空の木道が現れました
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美しきかな 日本の秋
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秋で埋め尽くされた行者谷
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雲の合間から 日本海風力発電
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展望の象徴と言えば…「弓ヶ浜」
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南壁の雲はまだまだ活動を続けていました
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ようやく眺めることが出来ました…剣ヶ峰
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この世界は 年に何度 出逢えるであろう
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雲に向かって 帰ります
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大山アルアル…雲ひとつない北壁 (笑)
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全山真っ赤と一味異なる 大山の紅葉
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もうひとつのルート ユートピアと三鈷峰
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弧を描く山麓伯耆富士の名に相応しい
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振り返って 紅葉狩り
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行者ルートの分岐点より…三鈷峰
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見上げることも忘れずに…
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下山 そして再び 南光河原駐車場からの三鈷峰
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倉吉の銘菓が付いてきて いつもの…(笑)

GoTo地元…初めての完走

10月4日 三重県赤目四十八滝
当選した観光応援キャンペーン第2弾のお陰で、3ヶ月振りの駐車場に向かいます。

室生赤目青山国定公園にある「赤目四十八滝」。古くは修験道の開祖と言われる「役の小角」が滝に向かって行をしていた時の出来事から名前が付いたとされる伝説や清流と深い森がつくる深山幽谷伊賀忍者の拠点として修業を行っていたと言い伝えられています。
関西や東海からは日帰りで楽しめることから、新緑に避暑、そして紅葉に雪景色と、四季折々の表情を見せ、大勢の観光客が訪れます。また「生きている化石」と言われる特別天然記念物のオオサンショウウオが生息し、運が良ければ渓流でその姿を見ることができます。(経験あり)
過去に家族や訪ねてき知人を案内したことがありますが、約半分の百畳岩と名付けられたところまででした。今回は気候もよく、時間もあることから、ハイキングコースの終着滝「岩窟滝」を目指します。ガイドマップによると渓谷入口の日本サンショウウオセンターから岩窟滝までは3,290m90分。標高差は200mですが、滝を巻くアップダウンも多く、累積標高は低山ほどではと思います。また、手すりのない遊歩道は自然の岩を整備した箇所や幅の狭い箇所も多く、急勾配の階段も数多くあります。
決して危険なコースだとは言いませんが、渓流に沿って平坦な道が続くハイキンクコースではありません。自然豊かな散策路は、歩く側にも心構えが必要になります。
さて、渓谷散策の前には、今年改修が終わった「赤目ビジターセンター」を訪ねるのが良いでしょう。そこから5分ほど歩くと、切り立った岩を背景に年代を感じさせる建物とオオサンショウウオの看板が目に入ってきます。しばらくは散策路らしい道が続き、これから渡る橋を頭上に霊蛇滝が現れます。その橋を渡るため、最初の階段が出迎えます。マップによるとこの後、7ヶ所の階段マーク。橋(不動橋)まで登ると、高さ15mの「不動滝」が階段のことを忘れさせます。明治の中頃まで「滝参り」とはこの滝に参ることで、ここから先は原生林だったそうです。この後、岩を伝って千手のように落水するところから名付けられた「千手滝」(15m)、一条の布をかけたように落ちる高さ30m「布曳滝」。岩を挟んでふたつに分かれて流れ落ちる「荷担滝」(8m)、絶壁に囲まれ楽器の琵琶に似ている「琵琶滝」(15m)。この5つの滝を「赤目五瀑」と呼びます。(以上、ガイドマップより)
これら有名所以外にも名前を付けられた滝や名もなき小さな滝の数々。それ以外にも僕がお薦めするのは、深い緑色の淵や滝を巻いた後に上から眺める滝壺。この他、次の滝を目指すばかりに通り過ぎてしまいがちな木々の緑を映し出す清流と川面から大きく伸びる柱状節理。これら全てが赤目四十八滝散策の魅力だと思います。
茶屋を過ぎ、これまでの最奥地点「百畳岩」の手前でお昼ご飯。10月の曇り空、渓流沿いとあって防寒対策をしてきましたが、負荷トレーニングだけに終わりそうです(笑)。ここから先は未知の世界。ポスターで知っている五瀑「荷担滝」を見た時は、「地元でありながら、まさか、ここに来るとは思わなかった」のが正直な感想でした。「琵琶滝」を眺めながらコーヒータイムとしていると、まだ先へ進む大勢の人。「最後の五瀑」が「最後の滝」に変換し、ここが折り返し地点だと勘違いしていたことに気付き、再び、前進をはじめ、階段2ヶ所を通過して終着滝「岩窟滝」に到着。
これまでの散策とは異なり、水と岩と緑を肌で感じました。山行で見てきた渓谷の経験が地元の渓谷美を更に高めたと思います。帰り道、往路とは違う視線を楽しみながら、転倒・滑落しないよう入口へと向かいました。
下山後は、渓谷入口にある温泉施設に宿泊し、地元の食材を堪能させていただきました。そして次の朝、ホテル前で販売している地元が誇るB級グルメ筆頭でいつもの…(笑)

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初めて来たのは 遠足だったような 遠い記憶…
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不動明王にちなんだ通り 筋骨隆々の「不動滝」
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案内表示は随所にありました
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高さを感じさせない美しさ…「千手滝」
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名は体を表すの言葉どおり…「布曳滝」
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渓流沿いの道も このコースの見どころ
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新緑や紅葉がなくても美しい渓谷美
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清流の先にあるのは「柿窪滝」
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深淵な緑に足が止まります…横渕
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小さな命が 育んでいました
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柱状節理にも滝が落ちる…雨降滝
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水面が映す 赤目渓谷の森と空
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赤目随一と言われるのも納得...「荷担滝」
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自然の造形美は 名前を生みます…「雛段滝」
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苔むす岩は 渓谷の生き証人…「琴滝」
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まだ先があるのに 完走のポーズ(笑) …
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流れる音色は弦の響き…「琵琶滝」
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自然とは不思議なり…ダイモンジソウ
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川床の段差も 見逃してはなりません
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打ち止め感たっぷりでした(笑) …「岩窟滝」
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曇り空でも 森は光ります
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繊細な渓谷美と相反する 巨大な「柱状節理」
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この透き通った緑が 赤目渓谷美
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渓谷で発見したら大興奮ですよね…オオサンショウウオ
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地元の日本酒(アンプレヴュ)は シャンパングラスが似合います
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誰もが認める美味しさで いつもの…(笑)