穂高の岩と風…11峰
9月22日 岐阜県西穂高岳独標
怪我のことを考えて控えていた山行を、そろそろ再開しても良いのだろうと、肌寒い駐車場に向かいます。
4連休のSW。Go Toと共に各地の行楽地は賑わいをみせ、それは山も同じで21日のレポを見ると独標から12峰を越えて続く大渋滞。連休最終日は大丈夫だと思いながら、もしそんな状態なら手前で引き返すつもりで、早朝特別便(7時発)に乗車。今年7月に新しくなったロープウェイは定員の半分以下に制限しているのではないかと思う乗車人数でした。出発してすぐに見える槍ヶ岳には、毎回、テンションが上がります。そんなはやる気持ちを抑えて、急激な高度上昇に身体を慣らすべく、展望台からの景色を楽しみます。笠ケ岳から双六岳、槍ヶ岳から西穂高岳。初めて訪ねた40年前と変わりはありません。変わったのは、実際に歩いたこと。前回、雪に包まれていた千石園地。冬の場合は一本道ですが、夏道は枝分かれしており迷いそうです(笑)
40年前も独標を目指しました。しかし、途中で雲行きが怪しくなり、今のようにリアルな情報が得られない当時は、西穂高(独標)落雷遭難事故の教訓から撤退。それから30数年の時が経った8年前、幕営装備で訪ね、独標を越え、西穂高岳に登頂。その年の8月は、槍ヶ岳と前穂高岳にも登頂しており、正に、穂高(岩稜)の年でした。雪山を始めた時にもいつの日か独標、と思い迎えた2014年1月、強風でロープウェイが運行せず、鍋平で撤退。その2年後に登頂する訳ですが、時期尚早、正に天が止めてくれた出来事だと思っています。
さて、西穂山荘までは樹林帯を進みます。樹間に現れる展望に一息つき、頭上高く4m辺りの道標を見ては、冬はあの辺りを歩いていたことを知ります。夏道の記憶があまりなく、いきなり小屋に着いた感じです。小屋前のテラスは賑わっていたため、大岩の登りで小休止。笠ケ岳を正面に、杓子平や抜戸岳へのルートを追いかけます。
稜線に出ると丸山、そして、西穂高岳から独標へと続く岩峰群が目に飛び込みます。僕の好きな景色のひとつですが、冬はここからが風との闘い。後にも先にも、体感-30℃以下はこの稜線だけです。
今日の予報は大陸性高気圧に覆われ、気温は10℃前後。午後近くには雲が広がるものの風は数mと登山日和です。普段30℃近い気温で生活をしているため、10℃の感覚は想像しにくく、フリース等の防寒着を用意しましたが、結局、出番はありませんでした。(個人の感想www)
丸山を過ぎればハイマツの中、正念場の登り。やがて、丸い石が敷き詰められた道になれば、もうひと踏ん張り。下山後、しらかば平駅で開催されていた「飛騨山脈ジオパーク構想パネル展」では、丸山と独標の間で滝谷花崗閃緑岩から穂高安山岩に変わることが紹介されていました。ちなみに、上高地のウエストン碑が埋め込まれているのは、世界一若い花崗岩(140万年~100万年前)です。
やがて独標に立つ人影がはっきりと見え、ピラミッドピークを初めこの迫力ある岩峰に目を奪われがちですが、反対側、梓川から一気にせり上がる霞沢岳と荒ぶる焼岳の間を大正池に向かって流れる梓川越し、優雅に浮かんでいる乗鞍岳の景色を見逃す訳にいきません。番組で紹介されたのを見た瞬間に一目惚れ。それは今でも同じです。
12峰手前の開けた場所でヘルメットを被り、登頂に向けた準備を整えます。独標直下、冬には片足一足分の幅しかなかったトラバース道は肩幅を越える平坦道。雪道あるあるです。今年は上高地を中心に群発地震が発生し、核心部、最後の登りでは浮石に注意を払いました。大勢の方が登っているとは言え、それ故に危険もあり、特に、自分達だけでなく他人を巻き込むことは避けねばなりません。心配された大渋滞もなく自分達のペースで登ります。最近は軽い山行しかしておらず、独標とは言え、三点確保が必要な登山。経験だけに頼り過ぎることなく、また、穂高の岩の感触を楽しむ時間でした。登頂時、10数人の方が居ましたが、展望を楽しむ間に数人程度となり、思い思いの記念写真を収めることが出来るお土産付き(笑)。 やがて、予報通りに笠ケ岳や乗鞍岳の稜線は姿を隠し始め、青空も薄雲に染まってきました。そろそろ頃合いです。
風に色はなく、冬の厳しい時も少しひんやりとした今日みたいな時も峰々を通り過ぎて行きます。もう踏むことはないであろうあの岩稜には懐かしい思い出が残るだけ。時が流れ独標にも登れなくなれば丸山まで、それさえも許されなくなれば、温泉につかって遠くから眺めようか…。そんな近い将来について話しながら、転倒することのないよう慎重に戻りました。
下山後は季節を感じるいつもの…(笑)
久しぶりの穂高に心躍る景色…西穂高口展望台
黒いボディが景色に溶け込む 新型ロープウェイ
山荘を過ぎれば 定番の景色
滝谷花崗閃緑岩に座って 笠ヶ岳~双六岳~鷲羽岳
このルートで最も好きな場所
厳冬期は神々しさを放ちます
9峰 10峰 11峰…西穂高岳の末っ子たち
ハイマツの海に浮かぶ前穂高島
この先で 登山道は 赤(花崗岩)から青(安山岩)に変わります
ハイマツの登りは 展望への道
ガレ場(穂高安山岩)の登りは ゆっくりと…
いつの日か必ず…黒部五郎岳
立体感のある岩稜が 西穂高の特徴
岩稜とは対照的な美しさ
12峰のトラバースは 核心部への準備運動
12峰を過ぎると 独標のルートが確認できます
まずは左に巻いてから…夏は普通の道
冬はこの通りに一本道…核心部 最初の関門
三点確保は約束されていますが 浮石には注意
秋を感じる登頂でした
ピラミッドにチャンピオンピーク 本峰へ続く龍の背
一時期 目指した 憧れのジャンダルム
どの角度からも美しい…吊り尾根
下降点からの景色はこんな感じ
冬 日々状況は変化しますが 我々の時は 爪先だけの下り
足元に注意しながらも 美しい景色を楽しみます
海苔が西穂高岳に見えてくる (笑)
山荘からの下り…標識は気付けない?
…冬には 目線になります
ロープウェイから しばらくのお別れ
テイクアウトの和菓子三種盛で いつもの…(笑)