Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

秋の円遊…静かなる比良

11月17日 滋賀県堂満岳
稜線から中腹へ移り変わる関西の紅葉。静かに秋を感じようと、以前から気になっていた山の麓を目指します。

かつて、近江国と呼ばれていたこの地域の優れた風景を描いた「近江八景」。そのひとつ、冬の比良山地を題材にした「比良暮雪」。そこに描かれている山が、比良山地の中央に位置し、三角形の頂を持つ山容が対岸からもひと際目立つ「堂満岳」、別名「暮雪山」。南北の急斜面は「南壁」「北壁」と呼ばれ、特に北壁は「堂満ルンゼ」、冬のエキスパートルートとして紹介されています。
頂を目指すルートは、山麓のイン谷口(通称、イン谷)から入る「堂満東稜道」と金糞峠を経由して入るシャクナゲ尾根の「東レ新道」。今回は東稜から山頂を目指し、東レ新道から北比良峠を経由してイン谷へ戻る、周回コースとしました。イン谷周辺にも駐車地はありますが、下山ルートの短縮を優先し、更に奥にある駐車地を利用します。ここは比良山地の主峰「武奈ヶ岳」方面へ行く方がよく利用されるものの、道幅が狭いことと、駐車地が舗装されていないのが欠点でしょう。
車道を5分ほど戻ってイン谷。ここから堂満岳の登山口へは林を抜け、小川を渡渉し、別荘地として利用しているかのような民家を過ぎれば到着です。まずは「ノタノホリ」と言う、モリアオガエルが生息する池を目指します。山に入って感じる匂いは秋から冬のもの。しかし、木漏れ日はすぐさまに身体を暖め、袖を捲って体温調節を図ります。所々に色付き始めた広葉樹を眺めながら、小1時間でノタノホリに到着。途中、比良らしい溝道や小川の畔を歩きます。ただ、雨上がりはちょっと避けたい道かもしれません。
ノタノホリを過ぎ、やがて道はトラバースに変わり、正面谷を境にして山腹を染め上げた「釈迦ヶ岳」が貫録のある姿を見せています。イン谷を出てすぐに渡渉した古崎川の源流域を過ぎると、いよいよ紅葉ゾーンに入り、そこからしばらくは足を止めては見上げる回数が増えてきました。赤や黄色に橙色。そして、夏から秋へのグラデーション。「日本の秋」が次々と現れては通り過ぎて行きます。東稜を境にして風の当たりが変化し、次第に指先が冷たく感じるようになるのは、さすがに11月。後方に広がる琵琶湖が木々越しに見えるようになってくると、このルートの核心部、急登の始まりです。前方には冬枯れの木々の間から見える三角形の影。実はこれは偽ピーク。手を使った登りは更に続き、このルートは下りに利用できないと感じました。この山域の特徴のひとつとして、琵琶湖を俯瞰しながらの山行でしょうが、最近訪ねる比良山地は西側の坊村から入る武奈ヶ岳が多く、湖岸から少し離れてしまいます。堂満岳は琵琶湖に向かって東稜が伸びるため、この山域ならでは景色を楽しめることが出来、そして、冬枯れの今だからこそ楽しめる展望もあります。遠く列車の走る音が聞こえれば、JR湖西線の高架橋に目を凝らし、過ぎ去る車両を探します。正に、巨大なジオラマ劇場です。
直登を終え、冬の比良の厳しさを物語る背の低いシャクナゲを抜ければ、1,057 m 堂満岳に登頂。さほど広くない山頂ですが、琵琶湖側に展望が開け、美しい湖岸を描く琵琶湖の向こうにはホーム鈴鹿の峰々が伊吹山へと続いています。錦秋の森と眼下に広がる琵琶湖。そして、彼方にはホーム鈴鹿青い山脈。ここまで出会った方はなく、この山を貸し切りで楽しむ贅沢な時間。
「主峰・武奈ヶ岳」の陰でひっそりと佇む「堂満岳」は秀峰で、変化に富んだルートを持ちながらも静かに山行を楽しめました。
金糞峠を経由してこの山域の人気スポット「北比良峠」に到着。ここから神爾谷の向こうに広がる琵琶湖と内湖。その展望を楽しみながら大勢の登山者が昼休憩を楽しんで居られますが、かつて、この谷にロープウェイが運行されていたことを何人の方がご存知でしょうか。ちなみに、僕は乗車したことがあります…(^^) 
下山に利用した「ダケ道」は、比較的歩きやすい道で、常緑樹の間から「堂満東稜」が垣間見え、午前中の山行を振り返ります。最後に川を渡って、正面谷ルートと合流すれば、駐車地まであと一息。車を利用した場合はピストン山行が多く、今回のような完全周回ルートは貴重であり、何より、素晴らしい自然の彩を大好きな琵琶湖と共に過ごせたことに感謝です。
冬枯れが山麓に広がり、稜線には霧氷や雪が付き始める。そんな景観を予感することの出来る今日の山行でした。
下山後はこれも気になっていた工場直売所でいつもの…(笑)

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早くも駐車地から 秋のお出迎え
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頭上から降り注ぐような 秋の香り
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何とも言えぬ雰囲気でした…ノタノホリ
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秋の玉手箱…古崎川源流付近
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足元にも秋は広がります
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東稜に向かう山腹が 紅葉祭りの入り口
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ひときわ高い木々が競う 紅葉広場
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静かな時間が流れる 錦秋の世界
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若さを感じる紅葉もあります
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東稜では 名残紅葉が出迎えてくれました
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琵琶湖の波光が 紅葉を陰らせます
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手元で感じる 稜線の紅葉
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冬枯れの散歩道は 青空が似合います
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琵琶湖を背に 核心の直登
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琵琶湖最大の島「沖島」を眺めます
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石楠花の先には…頂上の標識
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地図通り(笑)の湖岸線…小さく琵琶湖大橋
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主峰 武奈ヶ岳と西南稜…そして 霧氷の山 コヤマノ岳
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山肌の彩りを眺めながら 北比良峠へ
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前山から北比良峠と釈迦ヶ岳
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琵琶湖はやはり素敵な場所だ
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見た目以上の急登でした…堂満東稜道
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午後の陽射しは 紅葉に磨きがかかります
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湖岸の国道から 堂満岳と東稜
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暖かいお茶でほっとしたくなる いつもの…(笑)