Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

2021年 雪のホームで登り納め

12月28日 三重県入道ヶ岳
記録的な積雪により、今回も駐車場への道が核心部と思われます。

2021年 雪を踏んで終えようとホームを計画しますが、週末から続く寒波と28日の予報に行先が定まりません。概ね、ホームの冬ルートは5山。御在所岳本谷はエスケープがない。釈迦ヶ岳庵座谷はトレースがなく登頂出来そうにない。竜ヶ岳遠足尾根は稜線の風に負けそう。藤原岳天狗岩があるいなべ市はなだれ注意報発令中。鈴鹿セブン最南部の入道ヶ岳尾根ルートであれば、風の影響も最小限であり、曇り空でも雪山を楽しめ、何とか登頂出来るのではということになり、北尾根往復か北尾根~二本松尾根周回かは現地で判断しようと思います。
小雨降る中、車窓には厚い雲に覆われた稜線。近付くにつれ、薄っすらと白い山肌を見せ、小雨は雪へと変わります。入道ヶ岳の登山者用駐車場は椿大神社第3駐車場。私達はいつも林道を走った先にある堰堤広場まで車を走らせます。除雪されていない林道に2本の筋。一瞬、躊躇しましたが、先行車を信じて核心部を無事通過。二本松尾根ルートに向かうグループを見送りながらの支度中も雪は降り止まず、2021年登り納めは、アウターを羽織っての出発となりました。
今来た林道を数100m戻り、愛宕社参道が登山口になります。雪の重みで垂れ下がった枝を避けながら登る長い石段は標高差70m。一気に身体が温まります。参拝後、登山道と合流すれば、すでに一面の雪。ただし、雪の下に隠れた根っ子で足を滑らせる程度の積雪量。しかし標高を上げていくうちに、踝から膝下まで埋もれる箇所もあります。先行者(1名)の踏み跡だと思われるトレースに助けられ、10ヶ月振りの冬靴の重さにも次第に慣れてきました。
時折、手の支えが必要となる急登や急斜面のトラバースがあり、しっかりと踏み固められていないこのトレースでは危険と判断し、下山は二本松尾根ルートに決めました。二本松ルートは急坂の一本道が続くため、落石の注意は必要ですが、雪道では心配もなく、かえって安全ではないかと思えます。
通報ポイント5を過ぎたところにある避難小屋(現在、立入禁止)はこのルートの中間地点。ここを過ぎれば、開放的な尾根を進むことになり、今日のような展望のない日は冬の精霊を感じやすくなります。ポイント7を通過すれば、入道ヶ岳の代名詞「アセビトンネル」が現れ、その群落は、イヌツゲと合わせて「県の天然記念物」に指定されています。
時刻は正午前。ポイント9で山頂鳥居を確認。予報通りに青空が覗いてきました。今月上旬に訪ねた新道ルートの合流地点から風対策。北部へと続く稜線は雲に覆われたままで、ホームの蝶ヶ岳はその展望を許しませんが、伊勢湾方面は開ける時もあり、陽射しを受ける回数も増えてきました。
前回引き返した北の頭。今日は二本松尾根で下山するため、山頂に向かいます。途中、井戸谷を登ってくる登山者を見かけ、ノートレースの雪山を楽しんで居られるのか苦しんで居られるのかは、その方のみぞ知る。アセビトンネルを抜ければ、空と一体になった鳥居。ここから奥宮を参拝させていただきました。
思っていた通り二本松尾根ルートは急坂が続く箇所もありましたが、手を使うほどでもなく、トレースもしっかりとありました。雪の場合はこのルートの往復が一般的だと感じながら下山。
今シーズン初の雪山をホームで始められ、存分に楽しむことが出来ました。今年は2020年より山行回数が戻って23回。数年前の6割程度ですが、それは時代の変化もあるでしょう。ただ共通しているのは、安全登山を続けること。来年も無理なく楽しんで、山の思い出を増やしていければと思います。
下山後は、お礼参りに時間がかかり、1日遅れでいつもの…(笑)

f:id:Regulus0821:20211229191925j:plain
21-22 雪山シーズンが 始まりました
f:id:Regulus0821:20211229191943j:plain
冬靴の重みと共に 上ります
f:id:Regulus0821:20211229191957j:plain
振り返ったトレースは 雪山の記録
f:id:Regulus0821:20211229192011j:plain
陽射しのない世界を 良しと思えるのも雪山
f:id:Regulus0821:20211229192044j:plain
何気ない登り坂で緊張するのも雪山
f:id:Regulus0821:20211229192100j:plain
光のない明るさを感じる 冬枯れの森
f:id:Regulus0821:20211229192203j:plain
ホームにも感じる 精霊の息吹
f:id:Regulus0821:20211229192219j:plain
迷宮への入口?…アセビトンネル
f:id:Regulus0821:20211229192235j:plain
初めての展望は 山頂鳥居でした
f:id:Regulus0821:20211229192251j:plain
前回と衣替えした「雲母峰」がお出迎え
f:id:Regulus0821:20211229192306j:plain
自分にとって ブルーアイは雪山の守護神
f:id:Regulus0821:20211229192322j:plain
これから成長するのか 衰退するのか…
f:id:Regulus0821:20211229192337j:plain
今日も スポットライトが 山肌を浮かび上がらせます
f:id:Regulus0821:20211229192349j:plain
2021年 お世話になりました
f:id:Regulus0821:20211229192425j:plain
一歩踏み違えば このとおり…
f:id:Regulus0821:20211230071443j:plain
美しきホームの冬稜線
f:id:Regulus0821:20211229192504j:plain
山麓の景色を眺められて「感謝」
f:id:Regulus0821:20211229192445j:plain
以前ならこの谷を下っただろう…井戸谷
f:id:Regulus0821:20211229192519j:plain
地平線を感じる 入道ヶ岳の山頂
f:id:Regulus0821:20211229192534j:plain
白き県境尾根と奥宮
f:id:Regulus0821:20211229192553j:plain
この景色と出逢えるホームに再び「感謝」
f:id:Regulus0821:20211229192610j:plain
山頂から始まる 二本松尾根ルートの下り
f:id:Regulus0821:20211229192655j:plain
トレースはしっかりとありました…
f:id:Regulus0821:20211229192712j:plain
今シーズンは どんな出逢いが 待っているのでしょうか
f:id:Regulus0821:20211229193122j:plain
唯一無二のお店で いつもの…(笑)

2021年…ラストテントライフ

12月10~11日 奈良県釈迦ヶ岳
落石が散らばる核心部の林道を抜けて登山口の駐車場に向かいます。

12月10日
2021年も残り3週間となり、今年最後のテント泊山行。関西のテント場としてはホームになった大峰山脈弥山は、今日から国道が冬季通行止めとなり、大峯奥駈道で繋がる「釈迦ヶ岳」でラストテントライフ。
釈迦ヶ岳は8年前の6月以来の2度目。但し、前回は視界と天候が悪く、今では絶対に行かない状況。山頂直下の千丈平で幕営予定を奥駈道にある深仙宿避難小屋へ急遽変更し、周囲の景色を全く見ないままの下山。と言うことで、今回の山行はある意味初めて訪ねる感覚です。
登山口へは自宅から約3時間。登山口から幕営地の千丈平へはCT約 2時間。千丈平から山頂は15分。関西ならではのテント泊山行。行程は釈迦ヶ岳から南西に延びるなだらかな笹原の尾根を進み、登山口と千丈平(1,670m)の標高差は約400m。釈迦ヶ岳(1,799.9m)に向かう最短ルートとなります。今回はレナード彗星の撮影を目的のひとつにし、夜明け前の山頂で過ごす1時間30分が正念場。
笹原の尾根に向かう支尾根から登山スタート。樹間にはこれから歩く稜線が見えていますが、釈迦ヶ岳の姿はありません。短い梯子が2ヶ所あるものの、よく整備された道は歩きやすく、気温の上がった今日は早くも汗が流れ落ちます。
稜線に乗り、まずは旭登山口分岐点を目指します。午前中は前線の影響で雲が多いとの予報でしたが、時折、陽が射す登山日和で、次々と笹原に現れる自然の曲線美を進むと、開けた先には対照的な鋭角の頂。奥駈道 35番目の靡(なびき)「大日岳」です。前回は、この頂に挑戦してみたい気持ちはありましたが、今は眺めるだけで満足です。稜線上の小高いピークに立つと、大日岳から続く稜線、すなわち熊野から吉野へと続く奥駈道が見え、こんもりと一段高くなっている「釈迦ヶ岳」とご対面です。
釈迦ヶ岳の山頂には、高さ3.6mの釈迦如来立像があり、遠く弥山からも判ります。ここは、奥駈道の中では「釈迦入滅の地」とされ「釈迦如来の住む他界」とみなされているそうです。
分岐点を過ぎたところで、鞍部に建つ「深仙宿避難小屋」と再会。続いて、次の目的地「古田の森」を過ぎれば、千丈平と釈迦ヶ岳が目の前に広がり、最後の登りに取り付きます。ここまで2名の方とすれ違っており、駐車台数から差し引けば、この先には誰も居ません。
深仙宿に向かう分岐点から登山道を外れた奥に幕営適地があります。「かしく水」と言われる水場は、更に釈迦ヶ岳へ登った右側。丁度、鹿の親子が登山道を横切って、こちらを見ていましたが、人馴れしているのか、警戒する様子もなく、ゆっくりと立ち去って行きました。
昼食をとり、休憩している間に2組の方が通り過ぎて行きました。その2組目の方が下山するのを見送り、青空が広がり始めた午後2時、私達も山頂に向かいます。日帰り山行だと正念場になる奥駈道までの登り坂。視界がぐんぐんと広がってくるのが判ります。合流点から更に笹原を登れば、偽ピーク。もう山頂はそこだと思っても、如来像が見えません。平坦になり岩が露出する木の陰に黒みがかった緑青色の「釈迦牟尼仏」の姿。まずは参拝。安全登山を祈願します。見つめるその眼差しに安堵を覚えるのは自分だけではないでしょう。
これまでは向こうに立って眺めていた弥山から始まる360度の大展望。どの方向も尾根と谷が連なる山深い景色。1300年以上の前から修験者達は何を思い、何をお祈りしてきたのでしょうか。
明日の登頂をお祈りし、山頂を後にしました。テントに戻り、くつろぎタイム。ラジオから流れてくるのは、何とFM徳島。しかも、ノイズなし…。
奈良県の日没時刻は16時46分。次第に森がオレンジ色に染まり始めます。一旦姿を隠した太陽は、山の稜線にゆっくりと身体を預け、16時53分 最後の一遍を私達に送り届けました。
明日にかけての予報は晴れマークひとつ。ところが、夕食後に空を見上げると雲が覆っています。しばらくして再び見上げると、上弦の月が照らす雲ひとつない星空。安堵するも束の間、上空を吹く風の音が聞こえ始め、それに伴って星空は消え、やがて森もミルキーウェイに包まれ始めます。きっと朝には回復しているだろうと思いつつも、一向に止まない風を聞きながら、眠りにつきました。

f:id:Regulus0821:20211212171405j:plain
自然の曲線美は 場所を選ばない
f:id:Regulus0821:20211212171425j:plain
ようやく 目にすることが出来ました…大日岳
f:id:Regulus0821:20211212171445j:plain
このようなピークを いくつも越えていきます
f:id:Regulus0821:20211212171507j:plain
ピークの数だけ 向こうの世界があります
f:id:Regulus0821:20211212171602j:plain
「笹原になったのは いつのことだろう」と 思う道
f:id:Regulus0821:20211212171628j:plain
振り返ってみれば 新しい世界観
f:id:Regulus0821:20211212171650j:plain
大峯奥駈道…鞍部には「深仙宿避難小屋」
f:id:Regulus0821:20211212171710j:plain
過ごした時間だけ 前に進めます
f:id:Regulus0821:20211212171730j:plain
「古田の森」を過ぎたこの場所が 素敵だった
f:id:Regulus0821:20211212171748j:plain
ふと足を止めて 振り返りたくなります
f:id:Regulus0821:20211212171807j:plain
警戒しているような いないような…
f:id:Regulus0821:20211212171832j:plain
自然の区画割が 数多くありました…千丈平
f:id:Regulus0821:20211212171855j:plain
関西最高峰「八経ヶ岳
f:id:Regulus0821:20211212171916j:plain
遥か彼方へと 峰々が続く 西方
f:id:Regulus0821:20211212171936j:plain
ご尊顔を拝しましては恐悦至極に存じます
f:id:Regulus0821:20211212202342j:plain
真新しい文字が 光っていました
f:id:Regulus0821:20211212171958j:plain
雲が降り立つ 午後のひと時
f:id:Regulus0821:20211212172022j:plain
南面には 大日岳から続く 大峯奥駈道南部
f:id:Regulus0821:20211212172059j:plain
北面に対峙するは「八経ヶ岳と弥山」
f:id:Regulus0821:20211212172125j:plain
台座の連弁には 聖宝ノ宿跡「理源大師」の姿
f:id:Regulus0821:20211212172152j:plain
山頂から眺めても 素敵な道
f:id:Regulus0821:20211212172213j:plain
森が セピアに染まっていく
f:id:Regulus0821:20211212172535j:plain
苔は金色の野となり 一日を終えます
f:id:Regulus0821:20211212172234j:plain
幽玄の世界に包まれる 千丈平
f:id:Regulus0821:20211212172608j:plain
西方浄土阿弥陀仏の世界観

12月11日
目覚める度に聞こえる風の音。しかも、風は息を付かずに吹いています。幸いにも上空を通り過ぎているため、幕営地に影響はありません。ただ、時折ボタッとフライシートを叩く音が、雨なのか、雪なのかは判断がつきません。同じ山域とは言え、風も穏やかで晴れる予報は20km北にある山上ヶ岳熊野灘により近いこの山は、気象条件が大きく変わるのかも知れません。とにかく、夜明けまでの回復を信じます。
アラーム音が5時を知らせます。風の勢いは変わらず、山における気象条件の厳しさを感じます。念のために外の様子を窺いますが、ミルキーウェイな世界。残念ながら、彗星の撮影は諦めざるを得ません。次の期待はご来光。1時間後にアラームをセットするも、やはり、状況は変わらずで「駄目だこりゃ」。(自宅に帰って考え直せば、もしかしたら幕営地は雲海ゾーンに入っており、山頂は晴れていたかも知れない。でも、そのリスクを負うほど自分は若くない…)
日の出時刻は6時55分。外に出てみると、雪は降っておらず、霧氷もなし。ただ、フライシートは氷結していました。稜線を覆う雲は激しく流れているのがここからも判ります。やがて雲間に広がる薄っすらとした青空。東の空は夜が明けたことを知らせる光彩を放ち、雲が取れるのも時間の問題でしょう。
朝食後、片付けの準備をしながら、気になるのは山頂からの景色。今朝の状況から、きっと谷間に雲海が見えていることでしょう。すでに青空は広がり、周囲の稜線も見え始めてきました。山頂方面も雲が取れている様子です。
今回の山行は体力的に余裕があり、山頂までの15分を登るのは、気持ちの問題。今年の2月 編笠山で感じた出来事から、まだ、気力を失うわけにはいかず、バディに了解を得て、1人で出発。9時前でしたが、すでに何人かの登山者が山頂に向かっていました。
出合までの途中で振り返ってみれば、昨日歩いた笹原稜線越しに谷間を埋める雲海。思っていた通りの世界がそこにありました。更に出合を過ぎたところから、昨日は気付かなかった熊野灘が、朝陽を浴びて輝いています。その手前、幾つも連なる雲海の谷間は天上界へ続く階段にも思え、黄金に輝く他界がその先に広がっているようで、正しく、釈迦ヶ岳の世界観。彗星や御来光は残念でしたが、この景色のためだと思えば、納得も出来ます。
真っ青な空一面の山頂には、10名近い方。それぞれがそれぞれに時間を過ごされています。春まで登れない八経ヶ岳や弥山は、どの頂よりも白く、大台ヶ原山の大蛇嵓は望遠レンズを通してその岩壁の険しさを知ります。同じ山でも時間や天候が異なれば別の世界。山と一期一会。
山頂を後にし、テントに戻る時にも何人かの登山者とすれ違い、アクセスの不便さを差し引いても、快晴の週末は賑わうものです。それは下山途中も続き、笹原の稜線歩きを皆さんが楽しんでいる様子でした。
さて、テントに戻って撤収開始。結局、私達の貸し切りでしたが、深夜、バディの所へは訪問者(多分、小動物)があったようです。静かな幕営地は望むところですが、登山口には「熊注意」の看板。登山道とは違うリスクがあります。
暖かい陽射しを受けながら、緩やかな笹原稜線を下ります。熊野灘は黄金色に輝き続け、現実世界に戻る私達を見送っているかのようです。振り返って眺める釈迦ヶ岳如来像の立つ山頂はここから見えないことも登ることで初めて知ります。角度によって様相が変わる大日岳。鋭角な姿に戻れば、笹原稜線ともお別れの時。巨木ゾーンを過ぎ、今歩いてきた稜線を樹間に見れば、駐車場の登山口に到着。
最後の階段を降りきるまで慎重に歩いて、今回の山行は終了。あとは、20km近い核心部の林道を抜け、国道へ合流することです。
下山後は、家庭的なお店でいつもの…(笑)

f:id:Regulus0821:20211212172635j:plain
こんなはずではなかった朝…
f:id:Regulus0821:20211212172654j:plain
今はこの世界を 楽しみます
f:id:Regulus0821:20211212172719j:plain
ミルキーウェイが 解き放たれようとしています
f:id:Regulus0821:20211212172746j:plain
どうやら 夜が明けたようです
f:id:Regulus0821:20211212172812j:plain
今は大地を 彩っていました
f:id:Regulus0821:20211212172831j:plain
雲海へ続く 笹原の一本道
f:id:Regulus0821:20211212172853j:plain
遥か彼方につづく 黄金の世界
f:id:Regulus0821:20211212172914j:plain
天を衝く錫杖は 大峯奥駈道の頂
f:id:Regulus0821:20211212172935j:plain
御来光に代わるこの展望に…感謝
f:id:Regulus0821:20211212172957j:plain
山散歩ルートも来春までお預け…大台ヶ原
f:id:Regulus0821:20211212173018j:plain
今冬初の霧氷でした
f:id:Regulus0821:20211212173040j:plain
いつまでも 眺めていたい世界
f:id:Regulus0821:20211212173104j:plain
次は 御来光を拝ませてください
f:id:Regulus0821:20211212173128j:plain
さて バディのところへ 帰ります
f:id:Regulus0821:20211212173150j:plain
また 来年もお世話になろうと思いました
f:id:Regulus0821:20211212173210j:plain
山が連なる景色は 大峰山系の世界
f:id:Regulus0821:20211212173231j:plain
熊野灘と共に 下山します
f:id:Regulus0821:20211212173253j:plain
立ち枯れと冬枯れが混在する「聖なる森」
f:id:Regulus0821:20211212173313j:plain
前回と違い 存分に頂を 拝めました
f:id:Regulus0821:20211212173334j:plain
帰りは 巻き道で…古田の森 1,618m
f:id:Regulus0821:20211212173355j:plain
少し露出を補正して…
f:id:Regulus0821:20211212173419j:plain
この道は 釈迦ヶ岳の代名詞になります
f:id:Regulus0821:20211212173439j:plain
駐車場が見えてくると 笹道も終わりが近い
f:id:Regulus0821:20211212173501j:plain
素晴らしい稜線に あらためて感謝
f:id:Regulus0821:20211212173519j:plain
冬の味覚を素材にした いつもの…(笑)

冬山に向けて…山散歩

12月4日 三重県入道ヶ岳(北の頭)
紅葉が彩る山麓の谷を抜けて、先にある駐車場に向かいます。

鈴鹿セブンマウンテンのひとつ「入道ヶ岳」。七山の中で最も南に位置し、標高は唯一1,000mに届かず906m。しかし、標高の低さはCTが短いことになり、最も身近に感じる山でもあります。一般的には椿大神社(つばきおおかみのやしろ)からのルートを組み合わせて計画することが多いですが、今日は、北から南下する最短の新道ルートで向かいます。
起点はセブンマウンテン「鎌ヶ岳」のカズラ谷ルートと同じく「宮妻峡駐車場」。8時30分頃に到着しましたが、すでに10数台が停まっていました。恐らく、鎌ヶ岳に向かう方でしょう。週末とは言え、紅葉シーズンの終わった曇天。人気の高さが窺い知れます
6年振りの新道ルート。樹林帯を抜けた後の展望の良さが印象に残っています。
すぐに林道と分かれ、まずはいきなりの核心部「渡渉」。ひとつ目は難なく通過できますが、ふたつ目が問題でした。3ヶ所ほど渡れそうな場所があるものの、どれも足場が足りません。結局、15分ほど掛けて河原の石を積み上げ、足場を完成。前回、積み上げた記憶がなかったため、帰宅してから写真を見ると張られたロープに沿って大きな石の上を渡っていました。増水すれば、私達が作った足場は跡形もなくなっていることでしょう。
大きなケルンの横から登り坂となり、1から始まる案内標識が目安になります。ここは登り始めから広葉樹であり、今は冬枯れの森になっています。そんな中、僅かに残る紅葉が目を惹いていました。しばらくガレた沢に注意しながら登り、ポイント3からはアブラチャン並木の直線登路。滑りやすい足元に注意しながら一気に高度を上げます。ポイント4からは背後にホームのツートップ主峰「御在所岳」と「鎌ヶ岳」が姿を現し、一息つきます。アセビトンネルを過ぎればポイント5。左側に伊勢湾を望みながらポイント6となり、続いて痩せ尾根を注意しながら通過すれば、入道ヶ岳らしい「笹原とアセビの一本道」が頂上稜線の近いことを教えてくれます。
宮妻林道の分岐点がポイント7。ここからこのルートのハイライトでしょう。今日は北部の稜線が雲に隠れていますが、連なる「鎌ヶ岳・御在所岳釈迦ヶ岳」の光景は圧巻です。海側の視界は良好で、知多半島越しに三河湾渥美半島もはっきりと見えました。
ポイント8・9をすっ飛ばして10。椿大神社の北尾根ルートと合流です。多くの方がこのルートを利用するため、ここからは登山者の声が聞こえてきました。すぐに「北の頭」と呼ばれるピークに到着。標高は910mと入道ヶ岳山頂より高くなっています。そしてここは、山頂と最高点915m「椿大神社奥社」の分岐点。
今日の目的はホームの蝶ヶ岳と呼ぶ山頂稜線の展望と冬山に向けて身体を慣らすことであったため、青空の見えない山頂等には興味はなく、「北の頭」を折り返し地点としました。
アセビの陰で昼食休憩される方が増えてくる中、再び、笹原の一本道へと戻り、ホームの峰々を楽しみつつ、今年の冬山に思いを馳せます。先ほどまでと打って変わって強くなってきた風。寒風に身体を慣らすのも目的のひとつですが、「避けられるものなら避ける」のが冬山の必須条件。
風の来ないアセビのトンネルで昼食。足元には紅葉の絨毯が敷き詰められていました。
今日、すれ違ったのは4組。秋から冬へと移り変わる静かな山散歩。冬枯れの道がやがて白く染まり、霧氷の花が咲く頃に再びホームを訪れることが出来ればと思いながら下山。核心部は自分達の作った置石で難なく通過。すれ違った方も利用していただけたでしょうか。
下山後は、定番のお店で新作のいつもの…。

f:id:Regulus0821:20211205113121j:plain
今年最後の紅葉に見送られて出発
f:id:Regulus0821:20211205113202j:plain
手前の丸石から向こう岸へと続く 置石
f:id:Regulus0821:20211205113241j:plain
この頃は 山肌を照らす陽射しがありました
f:id:Regulus0821:20211205113256j:plain
陽射しがなくとも 美しいものは美しい
f:id:Regulus0821:20211205113312j:plain
このルートの名物になるでしょう…アブラチャン並木
f:id:Regulus0821:20211205113332j:plain
人工林と自然林 そして 秋から冬へのグラデーション
f:id:Regulus0821:20211205113347j:plain
主峰「御在所岳」…今冬も ルート本谷は 歩けるだろうか…
f:id:Regulus0821:20211205113401j:plain
イブネと反対方向から…ホームの槍「鎌ヶ岳」
f:id:Regulus0821:20211205113415j:plain
ルートは違えども 入道ヶ岳と言えば 「アセビのトンネル」
f:id:Regulus0821:20211205113430j:plain
海が近いのも お薦めポイント
f:id:Regulus0821:20211205113447j:plain
入道ヶ岳随一の展望ルートではないでしょうか
f:id:Regulus0821:20211205113506j:plain
冬支度を始めた ホームの峰々
f:id:Regulus0821:20211205113523j:plain
体は風を表します…
f:id:Regulus0821:20211205113539j:plain
笹原道から振り返って「雲母峰(きららみね)」
f:id:Regulus0821:20211205113554j:plain
こんなにはっきりは初めて…知多・渥美半島
f:id:Regulus0821:20211205113610j:plain
美しき アセビ庭園の曲線
f:id:Regulus0821:20211205113627j:plain
数多くの行先が交差する「北の頭」
f:id:Regulus0821:20211205113643j:plain
山頂を 目指さないのが 山散歩
f:id:Regulus0821:20211205113700j:plain
歩きたくなる道が 奥社へと続きます
f:id:Regulus0821:20211205113716j:plain
見えてさえいれば 高曇りでも 構いません…鎌尾根~鎌ヶ岳、御在所岳釈迦ヶ岳
f:id:Regulus0821:20211205113731j:plain
天使のライトが 山肌を照らします
f:id:Regulus0821:20211205113748j:plain
今年は 山の秋を楽しめました
f:id:Regulus0821:20211205162347j:plain
笹原から冬枯れの森へ 帰ります
f:id:Regulus0821:20211205113823j:plain
帰り道…入道ヶ岳(左:山頂 右:北の頭)と鎌ヶ岳
f:id:Regulus0821:20211205113843j:plain
季節外れのテントウムシが 飾る いつもの…

ホームの奥座敷…テントライフ

11月12~13日 滋賀県イブネ
雨の上がりと共に予定を遅らせて、青空が見え始めた駐車場に向かいます。

11月12日
先週、訪ねたブナ清水。そのルート上から頂上台地の山容が良く見えていました。ホームにて、北の御池岳と共にテーブルランドと言われる「イブネ」。私達の住む県側から見て主稜線の向こう側にあることからか「鈴鹿奥座敷」と呼ばれています。ホームの滋賀県側は滅多に計画をしませんが、唯一歩くのがこのルート。先週と同様、根の平峠に向かう旧千種街道。
初めてイブネを訪ねたのは8年前の4月。その時は、三重県側の武平峠から入り、雨乞岳を経由して向かう計画でした。ところが、林業用のテープにつられて道を間違え、廃ルートで御在所岳に登ってしまいます。結局、当初と反対回りで向かうことになり、イブネまでは7時間半もかかってしまいました。三重県側から入る場合は主稜線を越えねばならず、また、雨乞岳周辺の沢は遭難者も多いことから、その後は滋賀県側ルートになりました。
出発の朝、予報とおりの雨。ただし、9時頃には上がる見込みで、予定を2時間ずらして10時に出発し、4年半ぶりの奥座敷を目指します。(滋賀県側からだと、前座敷か?)
杉峠の直下までは渋川に沿って歩きます。駐車地から眺めていた川を最後は一跨ぎで横切り、その源流域で水を補給する予定。
まずは桜地蔵で安全祈願をし、イワナの泳ぐ姿を橋の上から覗けば、登山道らしくなってきます。小さな沢にかかる木橋を渡ること数度。眼下に清流を眺めながら道幅の狭い箇所を通過することも数度。危険なルートと表現することはありませんが、ひとつ間違えれば大怪我に繋がり、渋川に滑落すれば発見も遅れます。そして、高巻きのトラバース道は人によっては怖いと思うことでしょう。
鈴鹿アルアルのひとつとして「一般道だからすべてが安全」とは思わないことです。
ゆっくりと標高を上げる中で、紅葉帯に入りました。先週は黄色が目立ったホーム。今日は赤系でした。巨木並木を過ぎれば、いよいよ川幅は狭くなり、流れも勢いを増します。落ち葉のトラバース道を過ぎると水場に到着しますが、何と、枯れていました。やむなく5分ほど戻り、先ほど跨いだ川で補給。一応これは想定内。
この期に及んで5kg加算されたザックの重みをひしひしと感じながら杉峠に到着。先週歩いた県境尾根と再会です。ここで街道から離れて杉峠ノ頭、佐目峠を経由して、イブネに向かいます。樹間に見るイブネの登坂は高低差を感じますが、周囲の景色に助けられ、ほどなくイブネワールドの玄関に立っています。以前は表札代わりに「イブネ」と書かれた木札のかかった木がありました。鈴鹿10座に数えられた今は、少し進んだ先にりっぱな山名標識が立ち、その美しき苔の世界は数多くの山雑誌で紹介されています。
4年半振りに歩いた旧千種街道は、記憶とは定かではないことを思い知りました。それは頂上台地も同じことで、何となく道の変化を感じ、帰宅後に過去の写真と見比べて驚きました。頂上台地を覆う苔はなく、荒れ地のように地面が露出し、笹枯れの跡や地被類が目立っています。前回、台地の中央を突っ切って歩いた道は苔に覆われ、ようやく歩ける程度の幅となり、その先はアセビに消えていました。苔の台地はここ数年に生まれ、今なお成長中だと言えます。
30数年前は隣の雨乞岳と同様、笹に覆われていた「イブネ」。ホームを襲った笹枯れ現象で今の姿になり、私たちに頂上台地を見せています。それはイブネだけに限らず、入道ヶ岳、竜ヶ岳、藤原岳、御池岳。今となっては当たり前の稜線も身の丈を超える笹に覆われていました。20年以上前に藤原岳に登った時は、小屋から展望丘まで続く笹ブッシュに何度も顔を打たれたことです。(笑)
そして今回、アセビから顔を出す笹を多く見ると、やがて、過去の姿に戻るのかも知れません。未来を見ることは出来ませんが、過去を知り、現在のイブネや稜線を歩けることは、貴重な出逢いだと知ります。
所々にある笹枯れの名残地に幕営し、本日の予定は終了。今回もホーム主峰を眺める好適地。見渡す限りの頂上台地にテントは見当たらず、あとはホームの山々を見ながら過ごす時間。
夕方、雲に隠れたまま陽が沈み、四日市方面の街並みにぽつぽつと灯り見え始めます。気温は2℃ですが、鍋の準備をしていると、それほどの寒さは感じません。主峰、御在所岳の頭上高くにある月が宝石のように輝く木星と競演し、やがて地上の銀河の光芒が稜線を浮かび上がらせます。聞こえてくるのはテントを揺らす風。上弦の月が照らす頂上台地にて、ホームの山が守ってくれる秋の夜長のテントライフ。

f:id:Regulus0821:20211114143754j:plain
しばらく続く林道歩きで 準備運動
f:id:Regulus0821:20211114143815j:plain
今は千草(ちくさ)と書きます…千種街道
f:id:Regulus0821:20211114143836j:plain
先週より紅葉帯は下がったことでしょう
f:id:Regulus0821:20211114143855j:plain
紅葉の先にも「紅葉」
f:id:Regulus0821:20211114143912j:plain
ここは 街道随一の紅葉でした
f:id:Regulus0821:20211114143930j:plain
この橋に名前を付けるなら「もみじ橋」でしょう
f:id:Regulus0821:20211114143954j:plain
大シデ…枯れ木となっても その存在は大きい
f:id:Regulus0821:20211114144014j:plain
古木がこの街道を見守る…シデ並木
f:id:Regulus0821:20211114144033j:plain
水場手前のトラバース道は 落葉に注意…
f:id:Regulus0821:20211114144053j:plain
1本になっても その名を残します…杉峠
f:id:Regulus0821:20211114144113j:plain
先週はあの県境尾根から…
f:id:Regulus0821:20211114144133j:plain
比良山系に琵琶湖、近江富士滋賀県側の展望
f:id:Regulus0821:20211114144152j:plain
14時でも 長い影…「秋の日は釣瓶落とし
f:id:Regulus0821:20211114144213j:plain
ようやく イブネと向き合えました
f:id:Regulus0821:20211114144237j:plain
最も鈴鹿の槍らしい展望地…「鎌ヶ岳と鎌尾根」
f:id:Regulus0821:20211114144303j:plain
イブネワールドの予告編
f:id:Regulus0821:20211114144410j:plain
頂上台地「イブネ」の南玄関
f:id:Regulus0821:20211114192723j:plain
アセビから 笹が顔を出し始めてきました
f:id:Regulus0821:20211114144435j:plain
苔の海に浮かぶは 御在所岳と鎌ヶ岳
f:id:Regulus0821:20211114144506j:plain
苔の台地を見守るは ホームの薬師「雨乞岳」
f:id:Regulus0821:20211114144527j:plain
明日 初めて訪ねる「チョウシ」方面
f:id:Regulus0821:20211114144546j:plain
このアセビを 見届けたいと思う
f:id:Regulus0821:20211114144607j:plain
テントライフに欠かせない いつもの…
f:id:Regulus0821:20211114144629j:plain
春は 比良山系に陽が沈みました
f:id:Regulus0821:20211114171100j:plain
ほんのりと 山肌を染める 夕暮れ
f:id:Regulus0821:20211114144649j:plain
向こうから 眺められているような 気もします…
f:id:Regulus0821:20211114144709j:plain
静かに時間が流れた イブネワールド
f:id:Regulus0821:20211114144739j:plain
ここまで届きそうな 街の灯り

11月13日
午前2時。星空を確認しようとファスナーを下せば、霜になった結露が落ち、首をすくめます。散りばめられた星空は、満天に輝くとは言えず、街の灯りが撮影を遮ります。
午前5時20分。まだ、夜明けには早く。午前5時45分、活動開始。
頂上台地は凍てつき、白い衣を纏っているよう…。この冷たい空気を久しぶりに身体へ取り込み、ホームの朝と同化します。次第に明けてくる東の空。暗闇が燃えつくされるグラデーション。
主稜線の向こうから上る太陽を、少しでも早く拝むため、イブネ北端まで移動すると、何と、1張りのテント。まだ活動されていないようなので、静かに御来光の時を待ちます。
夜明けを知らせる紅帯が両手を伸ばし、浮かび上がる峰々は南アルプス。その右側を追いかければ、真っ直ぐな頂上と両側に広がる裾野。ほんの一部しか見えていなくとも、その存在が「富士山」であることを示していました。
御在所岳の中道ルートにある富士見岩。イブネからも見えるだろうと思っても、見えるかどうかは運次第。
太陽が上がれば、それらは暁光とともに消え、イブネワールドが目覚め始めます。一期一会の言葉どおり、時と共に変化する世界。もう戻ることのない今を、少しでも多く感じようとしますが、気持ちが浮つきがちです。
雲ひとつなかった空は、朝食を終える頃には太陽が隠れるほどの雲。そんな中、クラシ、チョウシ、熊ノ戸平に向けて、朝の散歩。
週末とは言え、まだ、登山者は着きません。正に、テント泊した者だけが過ごせる時間。イブネ北端からクラシに続く冬枯れの林へ。ここもまた、美しい変化を遂げている場所。シンボルツリーは今も健在で、その先に見える苔の道は、ホームで最も美しいと思う道。
今日はクラシの標識まで向かいました。特に展望がよい訳ではありませんが、崖とも言えるその切れ落ちた稜線は、頂上台地の生い立ちを物語っているように思えます。
シンボルツリーまで戻り、初めて訪ねるチョウシを目指します。地形図ではこの辺りに登山道はありません。とは言え、目的地が見えていることと踏み跡があるため、迷うことはないでしょう。ただし、チョウシがどこにあるかを知っていることが前提です…。
次の目的地は「熊ノ戸平」。滋賀県側での「イブネ」の呼び方であると、何かで読みました。ここは別名「イブネのヘソ」。チョウシとイブネに囲まれた小さなピーク。そのピーク標識を探すのも一興ですが、そこに向かう時に横切る頂上清流や日本庭園の中を歩くように大小の石が配置された場所はイブネと異なる趣。
今回の散歩で新たに感じた進化するイブネの多様性と美しさ。次回までの変化が楽しみです。そして、これからの景色は訪ねる登山者以上に、この自然の成長に委ねられていることでしょう。
テントに戻る頃には登山者を見かけるようになり、その数は増えていきます。時間的に滋賀県側からの入山者と思われ、駐車地の混雑も予測されます。
何組かのグループが行き来する中、撤収を終え、20時間余り過ごしたイブネともお別れです。ホームであること、散策範囲が限られていること、平日だったこと。時間を大切に過ごせたテントライフでした。
大勢の人が寛ぐ頂上台地は、肩を並べた御在所岳と鎌ヶ岳のツートップを唯一眺められ、鈴鹿奥座敷と呼ぶに相応しい場所。
真正面に雨乞岳を望みながら下るイブネ坂。苔の道がどんどんなくなっていくのは、イブネワールドが遠のいていく証です。今日も佐目峠から上り返した杉峠ノ頭で昼食。陽射しが背中を暖め、冬枯れの林は休息の好適地。樹間に見えるイブネはもう遠い世界になりました。杉峠から再び旧千種街道を下れば、昨日とは違う景色が目を楽しませ、落ち葉を踏む音がやがて乾いていく駐車地へ戻りました。
下山後は、滋賀県の名店で秋を感じるいつもの…

f:id:Regulus0821:20211114144817j:plain
朝ぼらけに 高さや場所は関係ありません
f:id:Regulus0821:20211114144853j:plain
街の灯りが朝陽に変わります…木曽三川
f:id:Regulus0821:20211114150552j:plain
南アルプスから追いかけて…富士山
f:id:Regulus0821:20211114150613j:plain
山の端が 黄金色に染まっていきました…イブネ北端
f:id:Regulus0821:20211114150632j:plain
夜明けを迎える準備は 整いました
f:id:Regulus0821:20211114150653j:plain
イブネに届く 一日のはじまり
f:id:Regulus0821:20211114170150j:plain
さて 朝のお散歩に出かけましょう
f:id:Regulus0821:20211114170214j:plain
8年半前のイブネ…左の黒っぽい筋が 現在の道
f:id:Regulus0821:20211114165037j:plain
イブネ北端からクラシへは 一旦 下ります
f:id:Regulus0821:20211114165113j:plain
4年半前…林の手前の苔はまだまだ成長過程
f:id:Regulus0821:20211114150713j:plain
僕にとって 自然の曲線美は イブネの代名詞
f:id:Regulus0821:20211114150733j:plain
頂上台地を振り返ります
f:id:Regulus0821:20211114150836j:plain
唯一無二の世界が イブネワールド
f:id:Regulus0821:20211114150859j:plain
関西の富士山も素敵です…三上山(近江富士
f:id:Regulus0821:20211114150921j:plain
チョウシへの道…並木が特徴
f:id:Regulus0821:20211114150940j:plain
頂上清流は佐目子谷へ…熊ノ戸
f:id:Regulus0821:20211114150959j:plain
石、苔、アセビ…自然が生む日本庭園…熊ノ戸平
f:id:Regulus0821:20211114151019j:plain
クラシのシンボルツリーは 人間味溢れる美しさ
f:id:Regulus0821:20211114151050j:plain
鹿の苔道と名付けました
f:id:Regulus0821:20211114151113j:plain
まるでここは「苔の惑星」
f:id:Regulus0821:20211114151136j:plain
熊ノ戸平からイブネへは 苔光る道
f:id:Regulus0821:20211114151203j:plain
遠くに近江平野を従えて…イブネから熊ノ戸平
f:id:Regulus0821:20211114151229j:plain
自然区画の幕営適地
f:id:Regulus0821:20211114151249j:plain
鎌ヶ岳の先には 伊勢国の海
f:id:Regulus0821:20211114194545j:plain
また 次の機会まで…正面は 雨乞岳
f:id:Regulus0821:20211114151330j:plain
イブネ坂を振り返ります
f:id:Regulus0821:20211114151351j:plain
ここから見る鎌尾根が 最も美しい
f:id:Regulus0821:20211114151413j:plain
往き帰り 案内板に 足が止まります
f:id:Regulus0821:20211114151735j:plain
午後の陽射しが 染める道
f:id:Regulus0821:20211114151522j:plain
余韻を楽しむ時間だった いつもの…

秋が奏でるホーム...周回とその向こう側

11月6日 三重県ブナ清水
賑わいを見せるホームの峰々、その駐車場のひとつに向かいます。

毎年、GW頃からホームは蛭休み。そして、再開する頃に迎える行楽シーズンの人混みを避け、気付けばホームの紅葉は山麓辺りまで下りています。今年の5月、久しぶりに訪ねたブナ清水ルートは新緑が美しく、「ホームの楽園」と名付けました。知名度が上がってきたとは言え、まだ訪ねる人は少なく、ブナやカエデが着飾る頃に訪ねてみたいと思い、天気と休みが重なった今回の山行計画。
ここの核心部は登山口の駐車場。午前7時、100台を超える駐車場のほぼ最終組で停めることが出来、あとは安全登山を心掛けるだけです。
この朝明大駐車場は人気の高い釈迦ヶ岳のほか、国見岳、ハライド、イブネなど、多くの起点になっています。私達の予定は、旧千種街道で根の平峠を目指し、その手前からブナ清水を経由し、ヤシオ尾根、県境尾根で根の平峠へ。そこから、滋賀県側に下り、「鈴鹿上高地」と言われる場所にある大カツラを最終目的地とする「周回&ピストン」。
まずは、車道を歩いて羽鳥峰峠の分岐から朝明川にかかる橋を渡り、旧千種街道で伊勢谷を遡ります。オオルリの声が響いた林は、今は川のせせらぎが響く静寂の林。秋から冬へと眠りにつく準備をしているかのようです。何度か徒渉をくり返し、山肌が迫ってきた頃、空を覆う木々に変化が見えてきました。
黄、橙、赤…。すでに葉を落とした木や赤茶けた木もあります。そして、常緑樹がそれらと競合するかのように濃く、深い緑を発します。森が奏でる秋のシンフォニー…第1章。
短い直登の先に明るく光っているのが見えるとブナ清水の分岐点。ここから先が本日のメインストリート。落ち葉の絨毯に照らされて見頃を迎えた木々が私たちを囲みます。朝明水系は登るにつれてその川幅をどんどんと細め、やがて、一歩で跨ぐことになり、その出発点が「ブナ清水」。大きな岩の奥から流れ出すその滴は、多くの命を育んでいることでしょう。
意外なことに、分岐後は登山者を見かけず、あの駐車場の喧騒が嘘のような静けさ。そんな場所をアップするのはどうかと思う反面、さほど影響力もないから大丈夫と自己弁護。
さやさやと微かな音をたてて落ちていく葉。ただ歩くだけでなく、この世界と同化する楽しみ。ホームの楽園は、静かに秋を過ごす時間と音を与えてくれました…第2章。
ヤシオ尾根とは県境尾根からハライドへ伸びる支尾根。その尾根に向かう途中、アルペンムードが漂う釈迦ヶ岳を真正面に捉える展望地。稜線から山肌へ下りる木々のパッチワーク。重なり合う緑も美しい伊勢谷。出発点の駐車場が眼下に小さく見え、思った以上に登ってきたことを感じます。
県境尾根に合流するとすれ違う登山者も増えましたが、駐車台数から思えば少ない感じです。最後の分岐点「根の平峠」まで戻り、ここからは初めて通る道でタケ谷出合を目指します。
県境尾根と呼ぶように、鈴鹿の主稜線は三重県滋賀県に跨っています。急崖な三重県側と違い、緩やかに近江平野へと続く滋賀県側。「鈴鹿の山と谷」というシリーズ本があるように谷が入り組み、必然的に、沢の多い鈴鹿山脈 。ホームとは言え、奥深くなる滋賀県側は、その魅力と合わせてリスクも背負うことから、県境尾根の向こう側は滅多に歩きません。
事前に大カツラの場所を調べ、ここだと思う脇道から神崎川沿いの台地状になった林を進みます。膝下まで埋まる落ち葉道を過ぎ、少し高台から開けたブナ林を見下ろせば、「鈴鹿上高地」と呼ばれるのも合点がいきます。最近はここで幕営するレポも見かけ、今日も3張。そして、帰り道でも何組かの幕営組とすれ違いました。目指す大カツラは更に進んだ台地にあり、圧倒的な迫力は他の木々を寄せ付けない威厳さえ感じました。その大カツラを背に、川の畔でのランチタイム。時々、対岸の道を歩く方の話し声が聞こえますが、こちらは貸切状態。見上げれば奥座敷イブネに続く稜線。県境尾根との狭間に出来たこの森と川は、ホームの多様さと奥深さを五感で楽しむ世界でした…第3章。
根の平峠まで戻り、ブナ清水の分岐点で周回は終了。秋の陽は短く、昼下がりの陽射しでも夕方のように柔らかい発色。林を抜けた陽が照らす木々は、より一層に色付き、山行のフィナーレを飾ってくれました…第4章。
下山後は、新規開拓した小さなお店でいつもの…。

f:id:Regulus0821:20211114083839j:plain
アクセスの良さは 混雑と表裏一体…朝明駐車場
f:id:Regulus0821:20211114083857j:plain
旧街道を行く山歩きは 景色と歴史を楽しめる
f:id:Regulus0821:20211114083916j:plain
街道から離れ ブナ清水ワールドへ
f:id:Regulus0821:20211114083934j:plain
谷間の変化も楽しみのひとつ
f:id:Regulus0821:20211114083954j:plain
新緑 紅葉 落葉…繰り返される時間
f:id:Regulus0821:20211114084015j:plain
頭上を飾る 陽の当らない道
f:id:Regulus0821:20211114084035j:plain
錦の森は 静かな朝が 良いと思う
f:id:Regulus0821:20211114084052j:plain
紅の森でした…ブナ清水
f:id:Regulus0821:20211114084126j:plain
今日は 紅葉カラーの バンビーズ
f:id:Regulus0821:20211114084148j:plain
次からは ここで 時間を過ごせばいいか…
f:id:Regulus0821:20211114084208j:plain
点を繋げば線になる ホームの紅葉…釈迦ヶ岳
f:id:Regulus0821:20211114084225j:plain
明るく染まる ヤシオ尾根に続く道
f:id:Regulus0821:20211114084243j:plain
巨大な箱庭…伊勢谷
f:id:Regulus0821:20211114084302j:plain
県境尾根からの奥座敷「イブネ」
f:id:Regulus0821:20211114084320j:plain
ヤシオ尾根北斜面を照らす「黄色の雪洞」
f:id:Regulus0821:20211114084338j:plain
県境尾根の向こう側へ…根の平峠
f:id:Regulus0821:20211114084356j:plain
足元にも 秋はありました
f:id:Regulus0821:20211114084415j:plain
穏やかな道が 果てない道に感じる 滋賀県
f:id:Regulus0821:20211114084435j:plain
神崎川…標高650mの谷間を流れる ホームの深淵
f:id:Regulus0821:20211114084805j:plain
この森のシンボルツリーは 圧倒的な力系 (笑)
f:id:Regulus0821:20211114084509j:plain
秋が奏でるホームの「ランチタイム」
f:id:Regulus0821:20211114084529j:plain
ブナ清水と 対照的な森でした
f:id:Regulus0821:20211114084821j:plain
美しいホームの秋に 感謝
f:id:Regulus0821:20211114084841j:plain
午後の陽を 楽しみながらの下山
f:id:Regulus0821:20211114084907j:plain
紅葉にも負けない 色とりどりで いつもの…(笑)

秋の周回と木枯らし1号

10月23日 奈良県薊岳
近づくにつれて雲が多くなるのはいつものことと思いながら、駐車場に向かいます。

僕が精霊の森と呼ぶ明神平。凍てついた冬、ミルキーウェイに閉ざされている森は、人を寄せ付けない世界。この明神平へは四郷川に沿って向かうのが一般的なルート。この他に、バス停大又から縦走するルートがあり、そのルート上の最高峰が薊岳 1,406m。その頂は明神平のある台高山脈から、西に派生する支尾根が南へ折れ曲がったところ。明神平から見れば、お椀を伏せたような形の頂は、いつも目に留まっていました。とは言え、駐車場からバス停までは林道を1時間近く歩くため、計画することはありません。近年、その稜線上にある1334Pへダイレクトに登り、薊岳からの霧氷を楽しむレポを見て、冬の前には試登しなければと思っていました。このルートは林業用であり、地図上に示されておらず、急登が続きます。登山口は駐車場から林道歩きを始めてすぐに現れる鉄階段。ここから稜線までは、ほぼ直登で向かいます。随所にテープが巻かれており、目印がたくさんあるものの、900m付近のトラバース道へは入り込まないよう注意が必要です。「稜線まで上を目指すこと」が、このルートの原則。
1200m付近からの自然林に合わせて、傾斜が更に厳しくなる、このルートの核心部。歩いた感覚としては、滑落のリスクはあり、雪があれば尚更でしょう。そのため、私達の中では、このルートを利用する選択肢はなくなりました。
稜線に立てば、木々の向こうに薊岳。近くで見てもこんもりと盛り上がっています。色付き始めた葉やすでに赤い実のみを残す木。苔の緑が赤茶けた落ち葉道の縁を飾る縦走路を西へ向かいます。今日は木枯らし1号が吹く予報の関西。稜線を抜ける北西の風に、今シーズン一番の寒い山行となりました。
南に折れると、広かった尾根は急に細くなり、やせ尾根は頂まで続きます。特に北側は切れ落ちている箇所もあり、注意が必要でした。こんもりした姿から丸みのある頂を想像していましたが、地形図でも判るように、細長い山頂部。規模は全く異なりますが、ジャンダルムと同じ見え方であることが登ってわかりました。岩が点在し始め、切れ落ちた先に細い立ち枯れが1本。薊岳の山頂です。
コブのように稜線から飛び出た山頂は、大峯奥駈道台高山脈の「台」である大台ヶ原から「高」の高見山へと続く稜線。また、奈良盆地や大阪方面の街並みに地元、おらが山まで見事な展望でした。そして、台高山脈の稜線上に見える開けた場所がこれから向かう「明神平」。まずは、来た道を戻ります。
登り詰めた1334Pで10名ほどのグループが休憩をしており、その後、10数名の方が薊岳方面に歩いて行かれました。その人数を許容できる山頂ではなかったため、事故がなければと思います。冬、霧氷のトンネルが続くだろう歩きやすい稜線をのんびり歩いて前山へ。山頂部にあった大きな倒木を風除けにし、昼食タイム。しばらくすると、青空が広がり始め、太陽の暖かみを全身に感じます。
最近は明神平までが多く、しかも冬のミルキーウェイ。この前山は県境を除く三重県の最高峰「桧塚奥峰」で幕営して以来の8年ぶりでした。明神平へ下る際、道の両側を埋めるシダは赤くなり始め、青空とともに新鮮な風景。関西の山でも稀有な世界の明神平。この緩やかで、おとぎの国を想像させる場所は貴重な存在です。
今年はこんな空の下、白く染まった精霊の森を訪ねることが出来るのだろうか。でも、晴れていれば、精霊を感じることは出来ないだろう…。期待と不安が交差しながら、シンボルツリーのもとへ。数張りのテントが点在する明神平からは、いつものように薊岳を眺めます。先ほどまで居た頂には、いつもと違う思いが繋がりました。
下山後は、自宅と反対方向に車を走らせたお店でいつもの…。

f:id:Regulus0821:20211028193900j:plain
登れども 登れども…時間が経たねば稜線に着かず
f:id:Regulus0821:20211028193919j:plain
落ち葉が美しい季節になりました
f:id:Regulus0821:20211028193949j:plain
間近でも見ても いつもの雰囲気…薊岳
f:id:Regulus0821:20211028194012j:plain
写真だけ見れば 暖かな稜線
f:id:Regulus0821:20211028194031j:plain
赤い実りが 稜線を飾ります
f:id:Regulus0821:20211028194051j:plain
大通りから路地裏に入った感じの尾根歩き
f:id:Regulus0821:20211028194115j:plain
この岩を覆うには どれほどの時間が…
f:id:Regulus0821:20211028194136j:plain
明神平の山荘が 遠くに見えました
f:id:Regulus0821:20211028194157j:plain
山頂はこの道を過ぎてから 眺めましょう
f:id:Regulus0821:20211028194925j:plain
青山高原と俱留尊山 そして おらが山(右から2番目の頂)
f:id:Regulus0821:20211028194217j:plain
やっと立てた感じが強い 頂です
f:id:Regulus0821:20211028194236j:plain
これから向かう明神平と前山への稜線
f:id:Regulus0821:20211028194258j:plain
秋色が 台高山脈を縁取ります
f:id:Regulus0821:20211028194321j:plain
関西の前穂高北尾根…大普賢岳ファミリー
f:id:Regulus0821:20211028194342j:plain
霧氷も良いだろうけど 落ち葉道も素敵
f:id:Regulus0821:20211028194402j:plain
足元の小さな森に 風が吹き抜けます
f:id:Regulus0821:20211028194424j:plain
素晴らしい防風林でした
f:id:Regulus0821:20211028194446j:plain
8年振りのとは思えなかった この展望
f:id:Regulus0821:20211028194510j:plain
今は 森の精が 踊り始めそうに思えました
f:id:Regulus0821:20211028194535j:plain
シダの一本道が 明神平へと導く
f:id:Regulus0821:20211028194557j:plain
晴れ間の明神平は 遥か彼方の記憶
f:id:Regulus0821:20211028194618j:plain
「孤高の貴婦人」は いつでも 素敵です
f:id:Regulus0821:20211028194657j:plain
次は霧氷の世界に立ってみたい
f:id:Regulus0821:20211028194717j:plain
では また…
f:id:Regulus0821:20211028194736j:plain
頭上を飾る紅一点
f:id:Regulus0821:20211028194800j:plain
扉を開ければイタリアの風で いつもの…

霊峰とともに 秋のテントライフ

10月15~16日 愛媛県瓶ヶ森(かめがもり)

10月15日
核心部の林道を抜け、日帰り登山者で賑わう駐車場に着きました。

四国の名峰「石鎚山」。山岳信仰の山として日本七霊山のひとつです。その石鎚山脈にある「瓶ヶ森」。山名に「森」が付くのは、この地域の特徴で、山頂が森になっている訳ではありません。稜線上には、男山(1,830m)、女山(1,897m)のピークがあり、三角点のある女山に「瓶ヶ森」の標識があります。
この山は初めて石鎚山に登った時に知り、2020年の登り初めで見た山頂部に広がる笹原と急峻な中腹部。そして、その峰に続く石鎚山脈の稜線。本州では味わえない印象的な景色。調べると、キャンプ場もあることが判り、いつの日かと思っていた6年越しの山行計画。
当初の予定は立山雷鳥沢3泊4日。ところが、17日の天気が悪く、晴れた地域を探した結果の計画。1泊2日に減りましたが、残りは観光登山家らしい行程を組みます。
早朝、自宅を出発し、核心部の瓶ヶ森林道、通称「UFOライン」へ。この道は中盤以降、尾根沿いを走る展望道路ですが、途中、連続カーブはもちろん、基本1.5車線の道路で、すれ違い困難な箇所も多く、1時間以上も緊張が強いられます。
キャンプ場は第1、第2があり、駐車場に近いのは第2。私たちはトイレが整備され、女山に近い第1を選択。遠いと言っても、ゆっくり歩いて30分。最大高低差も70m程です。早速、駐車場で石鎚山と再会。向こう側から眺めた場所に立つことは、立体的にその山域を理解し、思い出も重なります。
左側に石鎚山、右側に氷見二千石原と呼ばれる笹原と瓶ヶ森を眺めながら進む一本道。あっという間に避難小屋へ到着し、そこから林を抜ければ、ベンチが目印のキャンプ場入口に到着。テントサイトは登山道から下がった先にあり、その途中にも1~2張のサイトが数段。今宵の宿地はテントから石鎚山を眺めることの出来る最上段としました。
午後から瓶ヶ森に向けて出発。第2キャンプ場を経由して、瓶ヶ森の語源になった「瓶壺」に立ち寄り、そこから駐車場近くまで戻ってからの登山開始。まず男山に登り、女山瓶ヶ森)から第1キャンプ場に戻る周回ルートです。第2キャンプ場のある旧白石小屋へ続く道は腰高までの笹を掻き分けて進まねばならず、足元の注意が必要でした。午後になって気温が上がるにつれ雲も上がり、石鎚山が隠れることもありますが、夕方に雲が上がると思っているため、今はその変化を楽しむ余裕があります。水場とされている「瓶壺」には、イシヅチサンショウウオが生息しており、運良く見ることが出来ました。また、版画家の畦地梅太郎さんの作品で「石鎚山」を描いたものが数点あり、我が家にもあります。その作品を描いた場所がここ瓶ヶ森。場所の特定は困難でも、想像は景色以上に広がります。こうした登山以外の要素が詰まった「見て」「感じる」前半部分です。
昼下がりの陽射しが容赦なく照り付ける中、本格的な登りになり、岩の先端に立ち止まって一休みすれば、広大な笹原の海へ飛び込めそうな錯覚に陥ります。笹原の反対側は、核心部UFOライン。吉野川源流域から立ち上がる山腹に引かれた道路は、日本と思えない開放的な景色を見せています。
祠が祀られた男山。そこから女山へは緩やかに続く道。この稜線は見る場所によって新たな興奮を覚える世界観。遠く雲の上に顔を出す石鎚山と針葉樹林。そして一面に広がる笹原。奥深さと色調の連続変化を伴った景観は女山に登ることが勿体ないとさえ思わせます。山頂では幾分傾いた太陽が一足早く秋の夕暮れを感じさせ、眼下で踊る雲にブロッケン現象と似た光輪が映し出されていました。
テントに戻り、ベンチで夕食の準備をしていると、途中から始まったマジックアワー。これまでの山行史上稀にみる夕暮れショーの始まりは、調理をしながらの慌ただしいもので、撮影、調理、撮影、食事、撮影…。17時までに食事を済ませておくべきだったとは「後悔先に立たず」。この後、山麓の夜景が瞬くまでの時間は、生涯語れるものになりました。
木星土星を連れた上弦の月は、林の小道に影を浮かび上がらせ、天の川の流れを止めます。静かな静かな夜。これが私たちの求めるテントライフ。

f:id:Regulus0821:20211024111607j:plain
前方に今日の稜線…UFOライン
f:id:Regulus0821:20211024111625j:plain
堂々たる姿の美しさ…石鎚山
f:id:Regulus0821:20211024111645j:plain
午後から歩く稜線と並走して 第1キャンプ場へ
f:id:Regulus0821:20211024111706j:plain
石鎚山が見守る テントサイト
f:id:Regulus0821:20211024111726j:plain
キャンプ場から振り返れば 青空と瓶ヶ森
f:id:Regulus0821:20211024111744j:plain
メインストリートから外れれば この通り…
f:id:Regulus0821:20211024111803j:plain
これほどまでの笹原は 初めて…氷見二千石原
f:id:Regulus0821:20211024111823j:plain
石鎚山の賑わいが嘘のような 静寂さ
f:id:Regulus0821:20211024111842j:plain
修験の山らしく 厳しい登頂への道…子持権現山
f:id:Regulus0821:20211024111903j:plain
一気に高度を上げる男山への道
f:id:Regulus0821:20211024111925j:plain
特徴は花弁の紅色筋…シコクフウロ(イヨフウロ)
f:id:Regulus0821:20211024111945j:plain
リンドウは あちらこちらで 咲いていました
f:id:Regulus0821:20211024112005j:plain
一部を切り取って 秋を味わいます
f:id:Regulus0821:20211024112024j:plain
10月の陽射しとは思えない
f:id:Regulus0821:20211024112044j:plain
頭を雲の上に出し~♪ これも山の醍醐味
f:id:Regulus0821:20211024112103j:plain
女山瓶ヶ森)からの稜線とUFOライン…男山頂上
f:id:Regulus0821:20211024112122j:plain
見た目以上に穏やかな稜線
f:id:Regulus0821:20211024112142j:plain
振り返って 男山からの稜線と石鎚山
f:id:Regulus0821:20211024112201j:plain
瓶ヶ森に続く 最後の一筋
f:id:Regulus0821:20211024112221j:plain
午後の光は一期一会
f:id:Regulus0821:20211024112244j:plain
石鎚山脈の稜線が彼方へと…女山頂上
f:id:Regulus0821:20211024112304j:plain
二千石原を二分する 駐車場への道
f:id:Regulus0821:20211024112324j:plain
雲が上がり始め マジックアワーの訪れ
f:id:Regulus0821:20211024112343j:plain
時間に合わせて 主役の登場です
f:id:Regulus0821:20211024112404j:plain
雲が湧いてこその 茜空
f:id:Regulus0821:20211024112425j:plain
再び 顔を出した夕陽は 蜜柑色
f:id:Regulus0821:20211024112445j:plain
時が見えそうな 今日の夕暮れ
f:id:Regulus0821:20211024112505j:plain
静かに そして長く続く 秋の黄昏
f:id:Regulus0821:20211024112532j:plain
夜の帳が マジックアワーの終焉
f:id:Regulus0821:20211024112559j:plain
小屋の灯りと星明り 瓶ヶ森には マイハウス

10月16日
最近の山行で、体力以外に回復したのが「気力」。2月の編笠山山行で消えかけていた灯火に、「欲」という酸素が送り込まれ、CT40分の瓶ヶ森女山)に向けて夜明け前山行。
5時前、テントから顔を覗かせば満天の星。予報では雲が湧き、西風が吹くとのことでしたが、雲海から昇る朝陽やモルゲンロートの石鎚山を想像し、オリオン座が照らす笹原の登山道を登り返します。
「ヘッデンの灯りだけで登るのはいつ以来だろう」と思いながら、まだ起ききれていない身体に気を配ります。中腹で星空撮影をしているグループを通り過ごしてからの登頂。慌てずに登っても20分弱で着いたのは、やはり、山に入り始めたからであり、もう少し頑張ってみようと更なる「欲」が高まります。
山麓の夜景と東の空に走る一筋の光明筋。しかしそれも束の間で、西風が雲を連れてきます。標高を下げた方が展望は良いのではと、男山を目指そうかと思いましたが、予定外の行動は事故の元と思い直し、一瞬の雲間に期待します。その後、雲のカーテンが開く度に漆黒の空が明けていく様子を感じます。ただそれを撮影しても、その空気感が出せないのは、自分の力量と諦めます。
今日の日の出時刻は6時過ぎ。この頃になると一向に雲が取れる気配はなく、西の空ではすでに太陽が昇ったことを教えてくれます。6時30分を下山時刻と決め、バディに連絡。少し下って振り返ってみると、やはりガスは稜線部のみ覆われていました。素晴らしい展望は昨日に満喫しており、これもまた新しい世界観。陽射しを受けない笹原は悠久の時を感じさせ、霧がかかった立木は晴れ間より風情があります。対面の石鎚山も暗い雲が稜線を覆い、その姿を望める雰囲気はありません。今日は冬曇りを思わせる空。モノトーンに染まった世界に紅葉した葉が映えます。
瓶ヶ森の周回ルートは、男山を先に登る左回りと女山を先にする右回りがあります。左回りは駐車場からの直登で始まり樹林帯からの男山登頂。右回りは瓶ヶ森をトラバースする道から笹原の女山直登。個人的感想としては、急坂を登りに利用するのが常套ルート。また、真正面に石鎚山を眺めながらの下りになる左回りがお薦めです。
午後遅く雨になるという予報でしたが、今にも降り出しそうな雲行きに、予定を早めて下山準備にかかります。天候次第で雰囲気の変わるテントライフ。「昨日があっての今日」です。
出発間際、細かい雨が降り始めたものの、降雨までには至らず。お世話になったキャンプ場にお礼を告げて出発。早くも周回をされてきた方やこれから瓶ヶ森に向かう方とそれぞれですが、天候に左右されることなく、この氷見二千石原の景色を満喫されていることでしょう。
岩峰「子持権現山」が間近に見えると駐車場。谷から沸き起こる雲が、修験の山らしい厳しさを醸し出します。半時間もかからずテントサイトに到着できるアクセスの良さは何度でも訪ねてみたい場所ですが、自宅からの距離を考えれば、次回の予定は立ちません。
雨の気配がなくなったため、駐車場でコーヒータイム。昨日の景色をオーバーラップしながら石鎚山を眺めていました。平日の昨日より駐車台数が少ないのは、やはり天気の影響でしょう。
この後、UFOラインの終着点「石鎚山登山口」に移動し、石鎚神社土小屋遥拝殿に参拝。そこに向かう途中で見た瓶ヶ森は、笹原の山頂部を残し、巨大なスプーンで掬い取ったような山体で「鎧を纏った女王」のように思えました。昨日、あの頂に立ち、こちらを眺めていた。ここでも思い出が重なりあって、この山域は更に近くなりました。
下山後は、眺めていた夜景の町でいつもの…。

f:id:Regulus0821:20211024112623j:plain
町は眠らない…西条市新居浜市
f:id:Regulus0821:20211024112651j:plain
昨日の黄昏と この暁の空は 続いている
f:id:Regulus0821:20211024112729j:plain
「春は、あけぼの…秋は、夕暮…」ですが 秋の曙も素敵です
f:id:Regulus0821:20211024113958j:plain
この後 山頂は 永遠のミルキーウェイ (笑)
f:id:Regulus0821:20211024112800j:plain
さて 昨日とは違う光で 戻りましょう
f:id:Regulus0821:20211024112819j:plain
朝の冷え切った空気とこの景色が 身体を浄化します
f:id:Regulus0821:20211024112840j:plain
振り返ってみれば 稜線を覆う ミルキーウェイ
f:id:Regulus0821:20211024112900j:plain
旧ヒュッテの右上が 第1キャンプ場
f:id:Regulus0821:20211024112924j:plain
今日は 石鎚山も 姿を現さないでしょう
f:id:Regulus0821:20211024112942j:plain
下界は 晴れる様子です
f:id:Regulus0821:20211024113024j:plain
快適な時間を過ごせた 第1キャンプ場でした
f:id:Regulus0821:20211024113044j:plain
昨日を振り返りながら 駐車場まで戻ります
f:id:Regulus0821:20211024113105j:plain
紅葉の見頃は 1週間先でしょうか
f:id:Regulus0821:20211024114807j:plain
明日向かう 遥か彼方の 松山市
f:id:Regulus0821:20211024113127j:plain
モミ、ツガ、ササ等々の立体的な世界でした…瓶ヶ森
f:id:Regulus0821:20211024115132j:plain
関西とは異なる 四国の山深さ
f:id:Regulus0821:20211024113148j:plain
畦地さんの世界が 至るところにあります
f:id:Regulus0821:20211024113210j:plain
遠くの石鎚山より 近くの子持権現山…(笑)
f:id:Regulus0821:20211024113231j:plain
UFOラインで土小屋へ…瓶ヶ森と子持権現山
f:id:Regulus0821:20211024113337j:plain
0番は 寒風山登山口…UFOライン 土小屋(石鎚スカイライン終点)
f:id:Regulus0821:20211024113250j:plain
汗を流して登った昨日が 嘘のよう…男山
f:id:Regulus0821:20211024113655j:plain
UFOラインから瓶ヶ森女山)を見上げます…吉野川源流の碑
f:id:Regulus0821:20211024113718j:plain
吉野川源流は 入り組んだ谷
f:id:Regulus0821:20211024113740j:plain
まだまだ続く核心部…UFOライン
f:id:Regulus0821:20211024113804j:plain
陽射しの秋を表現した いつもの…