Satの 山と一期一会

春夏秋冬。山との出逢いはいつも一度限り。

アートなハイキング Part.2

10月23日 奈良県吉野
天気に誘われて、春には定番の駐車場へと向かいます。

先日2年振りに参加した「MIND TRAIL奥大和 心のなかの美術館」。自然と芸術の体験をコンセプトにした祭典は、奈良県南・東部に位置する奥大和の3つのエリアで開催され、これまでは曾爾エリアのみの参加でした。当初から他のエリアも歩いてみたいと思っていましたが、昼前からの時間が空いた週末、「吉野」エリアに向かうことにしました。
吉野エリアは全長10km、CTは5.5時間。完走するには時間が足りず、前半部分を周回するルート設定。起点は車と鉄道で分かれ、私達は車のため、観光駐車場からの出発。ここでも「千本のひげ根」が出迎えてくれます。
春、「一目千本」と言われる吉野山の桜。下千本から始まり、中、上、奥へと移ろいながら、桜を愛でることが出来ます。今は少し色付き始めた桜千本。その下千本エリアを下った先に次の作品があります。その道は地形図に載っていない道。ルートマップで凡その位置を下調べしていましたが、曽爾エリアと同様、要所には案内矢印が設置され、この後も道に迷うことはありませんでした。
鉄道最寄り駅からメインストリートへは標高差100m以上あり、現存する日本最古のロープウェイ「吉野大峯ケーブル」が季節運行をしています。丁度、その架線下に次の作品が展示されていました。その反対側にも作品はあるはずなんですが、見つけることが出来ず、先を急ぎます。地形図に載っていない道は作業道らしい雰囲気を醸し、普段歩くメインストリートとは違い注意が必要な個所もありました。中腹辺りの植林地をトラバース気味に歩いていくと、風を受けてゆらりゆらりと揺れる3番目の作品「The Windows Were Ajar」。木漏れ日の射す林は、時間の流れが遅くなったと思える世界でした。
やがて道は傾斜を増し、民家の間を抜けてメインストリートに合流。丁度、いつも買い物をするお店付近で、その店頭にも作品が展示されていました。曽爾でも感じましたが、普段歩くことのない道を歩きながら作品と触れ、その地域を知る。これが「MIND TRAIL」でしょう。
H16年「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録され、本堂の蔵王堂が国宝にも指定されている金峯山寺。その境内にも作品が展示され、いつもとは別のルートで向かったところ、首から上の守り神「脳天大神」の案内板。これからの人生で関係が深くなることから(笑)、お参りをしていこうと、しばしのコースアウト。案内に沿って先に進むと何やら下っていく模様。「あれっ?今、上ってきたのですが…」と思っているうちに、幟とともに石段が谷へと消えていきます。「ここまで来たら引き返せない」は山行では御法度。元来た道に戻るのが鉄則ですが、ここは一般参拝道。登り返しを覚悟し、石段を踏み外さぬよう注意しながら本殿を目指します。数人の参拝者とすれ違いながら、ようやく到着したお堂内には、大勢の参拝者が何かを待っている様子で、やがて護摩祈祷が始まりました。後で調べてみると、日曜日の午後1時に御祈祷があり、丁度、その時に到着しました。MIND TRAILによってここに導かれた気分です。
さて、コースに戻り、次の作品を探してみますが、中々見当たりません。結局、帰り道に作品を見つけますが、曽爾のように自然に囲まれたエリアとは異なり、生活圏の中を歩く吉野エリアは難易度が少し高かったです。また、映像を利用した作品や参加型の作品等、曽爾とは趣が異なる世界観もありました。桜の時期に歩く吉野エリアをこうした作品を通じて訪ねてみると、寄り道感覚で触れ合え、そこから自分だけの世界が広がっていきます。初めて参加した時から感じる「面白さ」がここ吉野エリアにもありました。
駐車場への帰り道、以前に訪ねた古民家カフェにて吉野名産の一品でいつもの…。


3度目にもなると 愛着のようなものを感じます

11月1日から通行規制…紅葉シーズンです

新旧のアートが ひとつの枠に…

地図上にない道を MIND TRAIL

林を抜ける風が 見えてきます

視線を感じました

お土産屋さんの店先で 溶け込む作品

ここから先は 別世界

国宝「蔵王堂」…吉野山のランドマーク

「森の中の図書館」は 素敵な作品

お気に入りの作品「さびしがりやの巨人は今日も一日」

本日のピークでした

2020年の展示作品は 景色と一体化していました

「吉野の時計」に参加 …

ひと休みしたカフェで 個人作 (笑)

ショーウィンドウの作品は 吉野エリアらしいと思いました

大峯に向かって 《JIKU #006 YOSHINO》

北面は 今を刻みます…空の時計

南面は 4次元の世界

廃屋さえ 作品に思えてきます…モビール

過去と現代をつなぐ「吉野の時計」

春は桜 今は秋…吉野山もアートです

訪ねた方の思いが この杖とともに…MIND TRAIL

吉野限定品を頂きました

作り手のぬくもりを感じる いつもの…

アートなハイキング… 関西バンビー3

10月15日 奈良県曽爾村
約4ヶ月振りの関西バンビー3で芸術祭の駐車場へと向かいます。

2020年から始まった「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」。奈良県南・東部に位置する奥大和をそれぞれのコンセプトで3つのエリアにわけ、様々な分野のアーティストがその地域に溶け込んだ作品を通じて、自然と芸術を体験する祭典です。
2年前、テレビで紹介されたことから何気なく参加した曾爾村エリア。全てを周った訳ではないものの、自然と調和する現代アートを感じ、普段歩くことのない曽爾村とともにその良さをあらためて知った体験でした。そして、3年目となる今年。今回は京都の山友を誘って、全てのルートを歩いてみたいと思いました。
ルートは毎年変化しており、2年前と比べるとパワーアップした模様。全長約10.3km。5時間のCTです。
出発は前回と同様の曽爾村役場。用意をしている間に数人の方が出発されていきました。全ての会場に設置された作品「千本のひげ根」が来訪者を迎え、共に会場を歩きます。今回はルートマップを地図アプリに落とし込み、ルートミスをしないよう準備をして来ましたが、要所には道標が設置され、随分と歩きやすくなっていました。
出発して間もなく次の作品。この後、トレイル中に点在するこの作品群は、ひとつの大きな柱になっているようにも感じました。HPに記載されているように、服装はその気候に合わせたもので大丈夫です。今日は最高気温が26℃となっていたため半袖。靴はトレランシューズ。村内を歩く道は当然舗装されていますが、今回は東海自然歩道がルートに組み込まれており、この区間はハイキングシューズ以上が必須です。
曽爾村を代表する景色として国の天然記念物にもなっている「鎧岳」。天を衝く山容を覆う柱状節理は、正しく鎧を纏っているように見えます。その鎧岳を借景にした作品「窓」曽爾村で実際に使われていた家具や食器を使った作品は、人々の営みを表しているかのようです。ちょうど作業をされていた村の方と少しお話をしました。これも含めて、MIND TRAILでしょう。
やがて道は集落を離れ傾斜を増します。鎧岳と共に天然記念物「兜岳」。その登山口へ続く県道を進み「横輪川」にかかる橋を渡れば、東海自然歩道の入口となります。今回もルート以外は予備知識がなく参加。ただ、「済浄坊の滝」があることは知っていました。自然歩道に入ってからの作品「コマノエ」。これも点在した作品ですが、最初の作品はあまりにも自然に溶け込み、しばらくは気付けませんでした。
歩道に沿う横輪川は予想だにしない清流で「済浄坊の滝」の他にも数多くの滝が目を楽しませくれました。ここから少し北に位置する赤目四十八滝と対を成す渓谷美です。途中、岩から滴り落ちる水滴で滑りやすくなった箇所やロープを伝って下るところもありました。そんな自然溢れる世界に設置された作品の数々は、正しく、見る人の数だけ、美術館があると言って良いでしょう。
舗装された道に戻った先にある展望地。そこから見る曽爾の集落は美しかったです。林業の盛んな曽爾村らしい植林地の道を進めば、少し入った林の中に「存在Xここと向こう側を意識する為の装置」と言う作品。今回一番のシュールな世界でした。
折り返し地点になる「屛風岩公苑」。桜の季節には大変な人で賑わう場所。柱状節理の断崖が屏風のように連なる光景を山友と見上げていると、繁った草木の中からガサッと言う大きな音。明らかに動物と思われ、山友と一瞬目を合わせた後、同時に走り出しました(少し離れたところに居たバディも、音を聞いて、同じ行動…笑)。 熊が出て来ないよう祈りながら、何度も後ろを振り返ります。結局正体は不明でしたが、ここ最近では一番の緊張でした。
屏風岩を眺めながらの昼食。そして、ここにも設置された数々の作品。「芸術の秋」と言いますが、今日の陽気は秋本番とは言えない気温。しかし、少し色付き始めた山桜とススキが揺れる景色は、やはり「秋」です。屛風岩公苑からの帰り道、こんなに上ったのかと思える下り坂。そして、集落を縫うように設置されたルートは作品よりも曽爾村の景色と生活を感じました。
「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」。他のエリアも気になりますが、自宅から近いここ曽爾村が、最も自分の心と一体になれるような気がします。
山ではなくても、帰宅後は 自宅にていつもの…(笑)


さて 今年はどんな美術館になることか…

題名は「私に気づいて」

前回は ここを下って来ました

それぞれ 別々の世界を覗かせてくれました

鏡は 別の世界を映す「窓」かも知れない

語源は「大地の母胎」…作品の数だけ切株がある

見る角度によって 作品も変わります

これが 全く 見えなかった… 作品名「コマノエ」

これも同じ作品名 … でも「私に気づいて」っぽい

秋の緑も美しい

済浄坊の滝(下の滝) … 一体感のある不自然な作品

歴史を感じる 東海自然歩道

絹のような 済浄坊の滝(上の滝)

そこかしこに 群生地…ダイモンジソウ

シュールな世界に 引き込まれました…「存在Xここと向こう側を意識する為の装置」

この写真を撮った後 駆けだしました (笑)

映画のワンシーン的な作品…屛風岩公苑

前回 お気に入りの作家さん

食後のデザートは 有名パン屋のカヌレ

揺れる様も 自然との調和…「外に囲まれている絵」

シュールな世界を創った方の別作品…「大地の子

霧氷の山(三峰山)から伊勢の槍(局ヶ岳)まで…

森を照らす魂たち

終盤 柿までが 作品に見えてきます…

ゴール間近 屛風岩公苑は 遥か遠くに見えました

秋の素材を用いた 我が家の作品が いつもの…(笑)

秋の足音を聞きに 南アルプス

10月1~2日 長野県 仙丈ヶ岳
SNSの情報に駐車場問題を心配しながら向かいます。

10月1日
週末は快晴予報となり、これまでの情報から混雑することは予想していました。仙丈ヶ岳の登山口「北沢峠」へは、山麓「仙流荘前」から伊那市が運行する南アルプス林道バスで向かいます。始発便は5時30分。しかし、未明から長蛇の列となり、繰り上げをし、随時運行になった模様です。
今日、私たちの行先は「藪沢小屋」。中腹にある避難小屋です。CTは3時間弱。10時5分発に乗車し、北沢峠着は11時。早めの昼食をとって出発しても、余裕の行程です。
心配された駐車場は河川敷に臨時が設けられ、まだ空きがありました。さすがにこの時間帯にもなれば、バス停に列はなく、出発50分前とは言え、5番目でした。と言っても、その後乗客は増え、結局、1台増便となります。この時間の乗客は日帰りではなく、峠にある「こもれび山荘」や「長衛小屋」、または「馬の瀬ヒュッテ」「仙丈小屋」になると思われます。まさか、私たちのように「藪沢小屋」を目指す方はいないでしょう。
昼食をとる間に乗客は居なくなり、その多くは仙丈ヶ岳方面へと行かれました。登山道はトイレ横から始まっていますが、私たちは少し長衛小屋方面に下がった所にある登山口から入ります。ここは小屋からの道と合流した後、2合目で主ルートと合流。直登で始まる主ルートではなく、トラバース気味に登るルートを教えてくれたのは藪沢小屋の管理人である高校の先輩。すでに南アルプスに入って40年を越える山人です。
初めて南アルプスを訪ねたのは8年前の夏。藪沢小屋を利用し、先輩の案内で兄夫婦と共に仙丈ヶ岳に登頂。梅雨真っ只中にも関わらず、青空の広がる山頂で見た南アルプスの峰々を、その後、歩くことになります。そして昨夏、7年振りに訪ねた夏の仙丈ヶ岳。帰りに寄った小屋で先輩と再会し、そのまま泊まることに。先輩が小屋の管理をされていることは昔から知っており、当時、何やら中途半端な場所だと思っていた「藪沢小屋」。今では避難小屋として絶妙の立ち位置であることはもちろん、今回のような山行にも重宝します。(1泊 5,000円)
2合目で合流した後は、直登-トラバース―直登の繰り返し。時代を語る森は同じような体をなす八ヶ岳とは趣が異なり、大人びた印象です。朝の賑わいを感じるのが、下山者とのすれ違い。山頂の混雑ぶりは想像できます。
5合目、大滝の頭を馬ノ背方面へ。ここでも周回してきた下山者とすれ違います。滝のような小川が落ちていく方に目をやれば、鋸岳から東駒ケ岳(甲斐駒ヶ岳)へと続く稜線が視界を二分し、ほどなくして藪沢小屋に到着。少し広くなった小屋前では、今まで目にしたことのない登山者が休憩する姿。そんな大勢の視線を背中に感じながら、建付けの悪い扉を開けた私たちは、薄暗い小屋へと消えて行きました。
事前に連絡を取り、中の様子は判っていました。まずは明かり窓の付いた2段ベッド式の上段に上がり、荷物の整理。時々、扉を開けて様子を窺っている気配を感じますが、さすがに入室はされません。やがて、人の声はしなくなり、私たちも活動を再開。と言っても、写真を撮ったり、水を汲んだりするだけですが…。AMラジオを聴きながらコーヒーを飲み、気が向けば小屋を出て東駒ケ岳を眺め、太陽とともに時間を過ごします。夕暮れ時、「冷えてきたなぁ」と思って室温を見れば、9.7℃。下界では冬です。
満天の星が輝く夜。7月に買ったカメラの星空軌跡機能を試します。撮影は簡単ですが、ラジオを片手に、小屋の外で待機した10分間は熊との恐怖に闘った時間でした…(笑)


1泊2日 南アルプス山行 始まりの朝

代理人のザックが バスを待ちます

この案内板は 仙丈岳駒ヶ岳・・・車窓より

8年振りに ここからスタート

大きな森の 小さな命

腰を屈めて 樹間の北岳

山の大きさを感じる登山道

背後にそっと 東駒ヶ岳

秋の足音が 近付いてきます

大滝頭と馬の背を結ぶ トラバース道

沢とともに 景色が近付きます

鋸岳が広がれば …

到着です…藪沢小屋

小屋内は シンプル イズ ベスト

小屋から数10秒で 唯一無二の展望

赤岳が 少しだけ顔を覗かせています

まるで 雪のような 白い岩体…東駒ヶ岳

藪沢小屋名物 その1…小屋を支えるワイヤー

藪沢小屋名物 その2…水場の赤いハート

山肌の影が 時間を告げます

賑わった一日を 終えようとしていました

やがて 闇に沈む 南アルプス

小屋前の狭い空には 果てしない世界

秋の星空と言えば 「アンドロメダ銀河」(左上は流れ星)

新しい星空を 頂きました

10月2日
午前4時 室温は4.7℃。
唯一、外界との接点は開けると閉めるのが困難な引違窓。そこから入る明かりは弱く、まだ、薄暗いと思いながら外に出ると、すっかり明るくなっており、東駒ヶ岳の右側には曙色に染まった雲。今日も良い山行日和でしょう。
先輩の顔を思い浮かべながら小屋にお礼を告げ、いざ出発。注意が必要な出発・到着前後15分。特に藪沢までのルートは片方が落ちたトラバースであることから、気負いや焦りは禁物です。
ヒュッテから馬の背までの登りは、ダケカンバとハイマツが共生する樹林帯。これぞ南アルプスです。そして、先輩たちが整備するこの山域。腰にナタをぶらさげて歩く後ろ姿が景色と重なります。
ナナカマドの実がひと足早く秋を演出すると、やがて視界が開けてきます。昨日から幾度となく見た鋸岳から東駒ヶ岳越しに八ヶ岳連峰。右側には中央アルプスと伊那谷。そして、御嶽、乗鞍から始まる北アルプスは白馬三山へと続きます。前方にはまだ小さな仙丈小屋と藪沢カールを抱く3,033m 仙丈ヶ岳。登頂した登山者の姿も見えます。あの山頂ではなく、行き交う人の少ないここで過ごしたい。そんな誘惑に襲われます。小屋が近付くにつれ、白いものが道端に見え、手に取ってみると、それは霜柱。水場の周囲には水滴が凍っているところもありました。
小屋前はカールを駆け下りた風が吹いていましたが、登り始めると、それも止み、朝の陽射しに身体が温まります。
「地蔵尾根は俺の通勤路や」と話していた先輩。その分岐を過ぎればピークへ続く一本道。
仙丈ヶ岳は藪沢、小仙丈沢、大仙丈沢と3つのカールを擁しています。これに、小仙丈、馬の背、地蔵、仙塩の4つの頂稜が組み合わさった端正な山容は南アルプスの女王と称される所以でしょう。
これまで登頂した3回は全て貸し切り状態であり、今日のように賑わった山頂は異世界。少し下ったところで休憩します。また、女王とは相性が良く、いつも全方位のパノラマ展望。そんなことで展望よりも、ウラシマツツジの草紅葉に感動しました。かつて歩いた南アルプスの稜線。時間の経過以上に懐かしく感じる山行。そのきっかけをくださった先輩にここでも感謝です。
藪沢カールを巻くようにして小仙丈尾根へと向かいます。このルートで最も好きな場所。ここだけ荒々しい東駒ヶ岳が小さく跪いているように感じます。反対側の大仙丈カール。その主峰、大仙丈ヶ岳はお花畑の先にある岩稜帯の頂。ここも先輩が勧めてくれた道。
この山を登るとき、常に先輩を感じ、そして、これからも大切に歩いていきたいと思う道。
仙丈ヶ岳と言えば、小仙丈カール越しの姿が代名詞。南アルプスらしい雄大な姿だと思えますが、ここからだと山頂は見えず、これは、初めて訪ねた人への試練かも知れません。そんな定番写真を撮れる小仙丈ヶ岳は山頂ほどではなくとも賑わっており、私たちは巻き道へと進みます。
ハイマツの海に開かれたひと筋の道。進んでほどなく2羽の雷鳥が何かを啄んでいました。この辺りに居ることは知っていましたが、この時間帯では無理だろうと思っていたため、女王からの素敵な贈り物をいただいた気分です。一向に立ち去る様子はなく、避けて通る道幅もないため、ゆっくりと距離を縮め、しかし雷鳥にとっては追い立てられる格好になりました。小走りに去っていくその後ろ姿は、映画「となりの…」のワンシーンのようです。
主ルートと合流。まだまだ北沢峠は遠く、小石に浮石、木の根に足を取られることがないよう注意しながらの山行が続きます。定刻13時10分発のバスを予定していましたが、今日も随時運行をしており、約1時間早く出発。途中、何台もすれ違う北沢峠行の回送バスを見る度に運行会社には感謝です。
下山後は、昨年寄れなかった古民家カフェでいつもの…(笑)


駒ヶ岳上空を 龍が泳ぐ

新しい一日を 東駒ヶ岳とともに

光の世界「馬の背」を目指します

少し遅れて 鋸岳も 目覚めてきました

朝陽が秋を演出します

ここから先は 展望の道

切り取って ナナカマドの秋

仙丈ヶ岳と言えば、広大なハイマツの海

藪沢カール越しの展望は 最も奥深い

振り返って 馬の背 そして 重なる峰々

高度を感じる西側…中央アルプスと伊那谷

仙丈ヶ岳と南部…大切な記憶

また 静かな時に 来ます

令和な表示板とお決まりの 1.2.3

残雪期は辛いが 今は ハイキング気分…藪沢カール

小仙丈尾根が 最も東駒ヶ岳と対峙します

遠望が変わる 小仙丈カール

眼下には 今朝の道…馬の背ヒュッテ

視覚的核心部…小仙丈尾根

秋の足音は そこかしこで 聞こえてきます

草紅葉 初めて見た時からのお気に入り…ウラシマツヅジ

またお会いしましょう…小仙丈カール

早くも 冬への準備が 始まります

素敵な 時間を ありがとう

ここで 東駒ヶ岳とは お別れです

素敵な音楽と共に いつもの…

夏の終わりに 北八の森

9月5日 長野県 ニュウ
遠く雲上に浮かぶ峰々を眺めながら、2,000mを超える駐車場を目指します。

予定していた夏山山行はすべて天候に阻まれ、今回、爺ケ岳へのテント山行を計画するも台風の影響で予定を組めず、北八の森山行としました。天候の読める日までは、高見石や雨池を候補地としていましたが、晴れ予報に「ニュウ」決定。ここは、20数年間封印し4年前に解禁した我が家にとって曰く付きの場所。まだ見ぬ天狗岳の展望を目指します。
2年振りの麦草峠駐車場。平日だと8時を過ぎていても余裕があります。麦草ヒュッテ前ではワレモコウやリンドウが咲き、アキノキリンソウと共に夏の終わりを告げています。
まずは白駒池までの準備運動。林床を覆う苔は、薄暗いコメツガやトウヒの森でも輝いて見え、樹間を貫く陽光でエメラルドを散りばめたように見えます。ひんやりとした朝の空気を身体いっぱいに吸い込むと、久し振りに感じる北八の世界。この森は普段の山行で感じることの出来ない特別なものです。頭上が広がる「白駒の奥庭」。初めて訪ねた時と比べると、岩が目立たなくなってきており、ゆっくりとした木々の成長を感じます。
観光駐車場からの道と合流すれば、あとひと登り。道は変われども、周囲の森は変わりません。悠久の時を感じる北八の森です。
水草が揺れる白駒池と対岸の景色。秋を感じるにはまだ早いものの、夏が過ぎていったことは五感に届きます。池畔を左回りで進めば、ニュウへの分岐点。朝霧で濡れた木道は滑りやすく、傾斜があれば尚のこと注意が必要でした。少し下った先にあるのが「白駒湿原」。紅葉の美しい場所。ちょうど、2羽のホシガラスがトウヒの実を夢中で突いています。そして、背後に感じた視線の主は1頭の雌鹿。甲高い声と共に、森の奥へと走り去っていきました。
ニュウを封印した理由は泥濘んだ道。当時はまだ登山道の情報も多くなく、大雨の中、天狗岳からの帰り道にて選んだルートは登り返しや水溜の多かった往路「高見石方面」ではなく、平坦が続くニュウ方面でした。
雨は落ち着き、雷の恐怖からは解放されたものの、視界を遮るフードにルートロスをしないか、新たな緊張感に襲われながらの山行が続きます。ようやく白駒池が近付いてきたと思える平坦地の先に待っていたのは、泥濘と水没の道。心が折れた時間です。
そして今回、道は泥濘んでいたものの、長年の間に迂回路が出来ていました。
至るところで目にする色とりどりのキノコ。苔の世界に新たな感動を呼びます。町はまだ残暑厳しくとも、森は確実に移ろいでいます。バディは稜線への中間地点を過ぎた辺りで足元に異変を感じ、靴を見ると、ソール剥がれ。山行前に点検をしていたものの、話に聞くとおり、突然それは起こりました。剥がれたのは踵部分であったことから、歩くことは出来、そのまま山頂を目指します。
中山への分岐点が稜線。稜線の向こうには青空が広がっていることを期待しましたが、それは次回へのお楽しみ…(-_-;)。天狗岳も前回同様姿を隠していますが、雲の動きがあるので、やがて姿を現すことでしょう。まずはソール対応をしなければなりません。歩いているうちに剥がれはひどくなり、中央部分も欠損していました。前方部分は結束バンドと予備紐、踵部分は接着剤で補修をしましたが、結局、踵部分も予備紐で固定しました。
そして、天狗岳。何とか東西の天狗岳頂を見ることができ、目的達成。次第に登山者も増え、少し下った場所から天狗岳を眺めながらのランチタイムは、久しく感じていない「山を味わった時間」でした。
下山後は、オーストリアの風を感じられるいつもの …(笑)


いつもは通り過ぎる「日向木場展望台」にて

花の付き方が特徴的でした…ツクバトリカブト

もう終わりですね…ハクサンフウロ

苔の森は 生命の集合体

白駒池に続く道は 北八のプロローグ

その立ち姿に 思わず 足を止めます

人通りのない遊歩道は 平日の特権

これはこれで美しいと思う

命を繋ぐ 白駒池

針葉樹と広葉樹のコラボレーション そして 手前の水草が好き

作業される方に 感謝です

この青空が 続きますように…

森を二分する 木道は 湿原への道

朝御飯中にお邪魔しました…ホシガラス

通称「ネバーエンディング ストリート」…

巨岩が道を覆う 「にゅうの森」

パックリと広げた 踵のお口…^^;

さて 稜線の向こうは如何に…

靴のトラブルと共に とりあえず 登頂

トンボも夏の終わりを教えてくれます

稲子岳山体崩壊越しに天狗岳…見られて良かった

残暑厳しい ランチタイムでした (笑)

これにて下山開始

今日は 周回せずに 戻ります

池畔から ニュウは 見えませんでした

最後まで 目を楽しませる 北八の森

補修キットを外せば このとおり

久しぶりのお店で 大満足した いつもの…(笑)

2022 夏山行を前に おらが山

7月18日 三重県尼ヶ岳
駐車場へはいつもの道をいつものように向かいます。

3連休。天候不順につき、仙丈ヶ岳と先輩へのご挨拶は無期限の順延。しかし、その界隈の山レポを見ると恐ろしいほどの混雑で、行かなくって良かったという結果論。
と言うことで、3連休最終日はおらが山の伊賀富士「尼ヶ岳」に朝トレ山散歩。今日は、先日N社のミラーレスから買い替えたC社のコンデジを試すことが目的。こうした気軽な目的を持って登れるのはおらが山であります。
今月の初め、鳥見で林道区間を訪ねていましたが、今日もミソサザイから始まり、オオルリ、カッコーの声が森に響きます。いつもより手前でオオルリの声がするなぁと思いながら先を急ぐと、突然、林道を横切る何かが目に入りました。初めは大きなカエルかと思いきや、何と羽ばたきを繰り返す鳥。しかも、尾羽の色はオオルリの幼鳥であることを示していました。特に逃げることもなかったため、何枚か写真を撮っていると親鳥なのか、近くで鳴き声がしたため、その場を後にしました。前回の鳥見もオオルリを撮ることが出来、何度が通うことで偶然の出逢いが増えるようです。
いつもの橋を渡れば、木の根道となる登山道の始まり。時折、雲間から顔を覗かす太陽が笹と幹を照らします。突然、ブーンと羽音を立てて飛び去る虫を何度が目にしますが、最後まで正体はつかめませんでした。幹から飛び去ったので、セミだと思うのですが、鳴き声は全くしません。
気温はさほど上がらないものの、桜峠への分岐点を過ぎる頃には、汗が滴り落ち、いつもより早めに水分補給をしてから第1階段を迎えました。
このブログで何度も登場するおらが山「尼ヶ岳」。その内容は5つに分かれた階段区間を書かずに紹介できません。1300段を超える階段は徐々に段数を伸ばしていき、第4階段が最も長くなりますが、段差や勾配、そして最も重要な心肺能力からして第5階段が核心部です。
今日も第3階段までは順調に進み、迎える最長第4階段。丁度広葉樹に飛び回っていたシジュウカラの様子を窺いながら、呼吸を整えます。地表を覆うシダ類の緑が火照った身体の清涼剤となり、一段一段確実に足を進めます。と言うのも、階段の踏面は水平ではなく、また、段差も不規則です。そのため、ふらついて後方に倒れ落ちてしまう危険性があります。次第に早くなる呼吸と流れる汗だけに囚われず、踏面に広がる小さな庭を楽しみながら、到達点を目指します。
火照った身体は最高潮。さほど気温が高くなくとも、熱中症対策として、第5階段を前にして一休み。「休憩はしないぞ」と無理して登るつもりはありません。自分に競う必要はなく、自分と正直な状態で登ります。呼吸を整えてから登れば、近道になることもあり、精神的にもゆとりが生まれます。
ハードル競技かと思える第5階段。本日一番の踏ん張りどころを過ぎれば、霞みながらも大展望が待つ山頂に到着。この上り階段から解放される瞬間も、この山の醍醐味でしょう。頬を撫でるかのような風は火照りがなければ感じられないもの、登頂した気持ちとともに次第に落ち着きが生まれます。見慣れた展望は、逆に一期一会を最も感じ、「おらが山」と思える所以です。
糖分を補給する間も山頂を訪ねる人はおらず、今日も独り占めの時間。そしてコンデジらしい機能は試せたので、当初の目的は達成。次はいつかと思いながら山頂を後にし、下りの階段へと向かいました。
下山後は、川辺の小さなお店に寄ってからのいつもの…。


木々の緑とは対照的なシダ類がお出迎え

「こんなことも あるんだ」が 第一声

ちゃんと育ってね~

フィトンチッドが見える森

ここまで来ると 何故か安心する…第1階段

綺麗な佇まいは 第2階段

小さな世界が ありました

この傾斜は 後半への準備運動…第3階段

広葉樹が見えれば 後半戦の始まり

明暗が美しい 第4階段

今日は シダ類とともに 登ります

あのベンチは 尼ヶ岳のオアシス

振り返れば 森へと消える 第4階段

第5階段を前に 一息つかせて 頂きます

踏面の世界は 一期一会

今日は 天使が見えました…(笑)

200度以上の展望山頂

至福のひと時

夏が やってきました

さて あの我が町へ 帰りましょう

帰り道は 障害物レース となります

遠くから 視線を感じました

曇り空ならではの 曲線美

高木が美しい 下り階段

夏のツートップで いつもの…(笑)

関西バンビー3の山散歩

6月26日 奈良県日出ヶ岳大台ヶ原
雨が上がることを信じて、雲が湧きたつドライブウェイを駐車場に向かいます。

4月以来の関西バンビー3。集まる回数は徐々に増えてきました。当初は前日の午後に向かう予定でしたが、大気が不安定で雷予報も発令されていたため、曇り後晴れの日曜に変更。午前中は前線の通過で雲の多い空模様という予報でしたが、出発時に雨雲レーダーを確認すれば、雨雲接近のマーク。予想よりも前線が北上したようで、雨の上がる予測時刻は11時。それでも予定通りに自宅を出発し、時折、雨脚が強まる中、駐車場にあるビジターセンターで雨宿りするか、駄目ならドライブで終わるかと余り気に掛けず車を走らせます。
 西や北の空は明るくなり始めたものの、向かう先はまだどんよりとした空模様。やがて窓を打つ雨は小粒となり、雨の上がる予測時刻も10時と早まりました。
 国道から県道に入ったところで、196の標識。先日向かったタイタン尾根の登山口90番ポストと同様、駐車場までの距離を示す数字です。ここから156番ポストの先にある「大台口隧道」までは旧国道であり、すれ違いに注意が必要な箇所も数ヶ所ありますが、そこから先は正しく山岳ドライブウェイ。連続するカーブの合間に、大峰山脈の鋭角峰「大普賢岳」や「行者還岳」が望め、また、眼下に望む谷には雲海のごとく雲が湧き起こり、無辺の広がりを感じさせます。
駐車場まで数㎞となったところで、ほぼ雨も上がり、木々からの滴が窓を濡らします。駐車場に着いてみると思った以上に車が停まっており、待機されていたのか、ちょうど動き始めた頃でした。
日出ヶ岳大台ヶ原一帯の最高峰。駐車場からの往復で目指す方やポスター等で紹介されている正木ヶ原に大蛇嵓、そして、最長ルートのシオカラ谷を経由して周回される方など、その方に合わせて色々な組み合わせが出来ます。また、野鳥を目的に訪ねる方も多く、望遠レンズを片手に登山者とは違う装いで歩いています。私たちは両方の目的で訪ねていますが、今日は雨上がりの山をゆっくりと散歩することが第一。駐車場から尾鷲辻を経由し、正木ヶ原、日出ヶ岳と周回するCT3時間の山散歩。
樹林帯から始まるこのルート。どの沢にもミソサザイが居るのではないかと思えるほど、森閑とした木々の間に響き渡ります。石橋の架かった沢で様子を窺っていると、段々と近付いてきて、遂には橋の下をくぐり抜けていきました。その一瞬の姿を何とか撮ることが出来たことより、今年初の目の前通過に大興奮です。所々で水溜りを避けながらも、尾鷲辻が近付くにつれて木漏れ日が森を照らし、薄青空も広がり始めました。
周回の交差点「尾鷲辻」。秋に利用する道を確認してから正木ヶ原へ向かいます。ここでも水溜りや雨に濡れた石に注意しながら進むと、次第に開放感のある森となり、至るところに枯れ木が広がる正木ヶ原に到着。正面には正木峠に向かう木道が笹原を横切り、大台ヶ原らしい景色となります。木階段から正木峠まではこのルート最大の見所。雨で心配された熊野灘の展望も、逆に洗い流されたかのように淀みのない景色。入り組んだ海岸線が熊野古道伊勢路と沿うようにして、志摩半島へ続いています。
途中にある展望ベンチで昼食タイム。日出ヶ岳山頂や正木峠で休息をとる方が多く、ここはお気に入りの休憩スポット。そして今日一番の青空が上空を通過し、私達を歓迎してくれました。
正木峠からいったん下って駐車場からの道と合流すれば、山頂へ続く最後の登り階段。幾度となく訪ねた山頂展望台も、関西バンビー3では初めてで、新鮮な世界へと変わります。再び、鳥の声を聞きながら歩き始めれば、あっという間に駐車場へと戻りました。
下山後は、奈良方面では定番となるお店でいつもの…(笑)


こんな景色に出逢えるのは 雨のお陰

しっとりとした森歩きは 今の季節にピッタリ

コゲラが 木々を飛び交っていました

雨の季節に 生き生きしています

一瞬の通過は 特急列車並…

大きな口から 発する「沢のメロディ」(トリミング処理)
緑深まる季節に 夏を感じます

木漏れ陽射す登山道を尾鷲辻へ

笹原を登れば 森が開けてきます

静かな 正木ヶ原展望台

トウヒの立ち枯れは 台風の影響

正木ヶ原を 雲が通り過ぎていきました

時代とともに 景色は移り変わります

正木峠に向かう メインストリート

昨年歩いた 尾鷲の稜線を眺めながらのランチタイム

貸し切りの展望台…関西バンビー3

主役の座は 立ち枯れから木階段へ …

笹原を抜ける風が 心地よかったです

振り返れば 大気が動く 夏の午後

志摩半島に英虞湾…伊勢路は続きます

シロヤシオの向こうには 本日の頂

枝葉の間に ゴジュウカラ

木々が 午後の陽射しから 守ります

小さな巨鳥…ミソサザイ

フルーツとタルトの共演に完敗した いつもの…(笑)

梅雨の定番「お散歩稜線」

6月17日 奈良県大峯奥駈道 1486P
梅雨の晴れ間と平日休暇が重なり、定番ルートの駐車地へと向かいます。

梅雨を迎えると一気に山域が限られるバンビーズ。ホームは蛭休み。比良の沢沿いルートは安全確保で遠慮気味。さすがに八ヶ岳方面は日帰りでは厳しく、大峰・台高方面となります。そして、丁度この時期に花期を迎えるクサタチバナ。その群生地を訪ねるのが、梅雨の定番となりました。
群生地は大峯奥駈道の行者還岳から弥山方面に向かった1486ピーク付近。登山口は90番ポストが一般的となりました。このルート、地形図には記されていませんが、特に危険な個所もなくルートも明確であることから、廃トラックにちなんだ「タイタン尾根」ルートとして今では一般化されています。
このルートを知らなかった9年前は行者還TN西口から直登ルートの「シナの木分岐」経由で向かっていましたが、7年前に知ってからはずっと利用しています。花の開花時期に合わせて向かうため、訪ねる時期もほぼ同じで、気付けば2年ごとに訪ねていました。初めは行者還岳やその先の七曜岳まで歩いていましたが、ここ数年はクサタチバナの咲く1486Pが折り返し地点となっています。
登山口からのCTは90分。ゆっくり出発しても十分な時間がお気に入りのひとつでもあります。ところが駐車地の90番ポストでは、駐車車両が意外と多く、行者還TN通行止めの影響があるかもしれません。週末の混雑が予測されます。
鉄階段から始まるこのルート。一般的になったと言っても、特に案内表示はなく、この先、奥駈道に合流するまではテープやリボンが道しるべ。唯一、廃トラックの分岐点(通称、タイタン広場)には大きな案内板が建てられており、これも時の流れかと思いました。
低山アルアルで、登り始めは急登。しかし、それも長くは続きません。ハルゼミの鳴き声がサラウンドで響く中、青葉繁る森を通り抜ける風が滲んだ汗を心地よく衣替えさせます。門番と呼ぶ、今にも動き出しそうな樹形をした木を過ぎれば、傾斜は穏やかになり、静かな山行が更に歩く速度を緩め、森と一体化します。
まっすぐに天を衝くヒノキの巨木。途中から分かれた枝は、陽の当たる方向を指し、私達の知らない森の共生が行われていることでしょう。少しだけつづら折りで登れば、「森の主」が登場。頭上を覆う枝葉は、他を寄せ付けない存在感。刻み込まれた樹皮をそっと触り、その生命力を分けてもらいます。
ここからタイタン尾根と呼ぶ「清明ノ尾」まではほんの一息。尾根の名前にもなる廃トラックは、今日も私達を迎え入れ、かつて行き来した林道跡は、巨木が連なる素晴らしき並木道。その尾根道が裾を拡げ始めれば、最後の直登となり、笹原は奥駈道が近いことを教えてくれます。
奥駈道合流から群生地手前までは公園の散歩道と呼ぶ稜線歩き。大普賢ファミリーの起伏に富んだ稜線を眺めながら美しき曲線が続く道を進みます。ほぼ直角に曲がる箇所に立つ石の案内板。このルート、唯一の核心部でしょう。露出した石灰岩のトラバース道を慎重に通過すれば、クサタチバナの群生地が出迎えくれます。
まだ蕾が目立っており、満開まではもう少しと言ったところですが、十分に見応えはありました。
来た道を戻り、春や晩秋に幕営をする弥山を正面にして昼食。前回はここでアカゲラやビンズイ、ゴジュウカラの鳥達がやってきましたが、今日はハルゼミの声だけです。下り始めた時、森の奥から聞こえたミソサザイの姿を追いかけてみますが… 。
午後からは晴れ間が広がり、森に届く陽射しは気温を高めますが、頭上を覆う巨木の青葉が守ってくれます。往きとは逆の順序で現れるルート上の役者たちにお別れを告げ、最後の鉄階段を慎重に下りました。
下山後は、以前から気になっていたいつもの…(笑)


定番の登山口 通い始めて7年目の梅雨…(笑)

木道には 時の流れを感じます

この季節 必ず 触ってしまいます…リョウブ

平日とは言え 静かな森歩きが 続きます

昔は 覆い隠されていたのでしょうか…

ブナの森は 新緑から青葉へ

巨木ゾーンに入れば 序盤の後半戦

「森の主」は 健在でした

廃トラックが見つめる先は かつて走っていた道

今は 山人が 通う道

そして 悠久の時を感じる道

「一期一会の道」と名付けたい

笹原に続く 開かれた森

バンビーズにとって 弥山とここが 大峯奥駈道

見るからに「山」の字…鉄山

ハルゼミとともに 稜線散歩道

石灰岩と苔のコラボを過ぎれば ゴールは近い

主役の前に…ミゾホウズキ

まだまだ これからの…「クサタチバナ」

ここで出逢って 早や 9年の歳月

ヒメレンゲは 名脇役と言ったところでしょうか

昼食兼デザート…ガトーブルトンとカヌレ

午後の陽射しが 森を照らします

また 次の機会まで…森の主

完成された集合体で いつもの…(笑)